SCP-1864

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SCP-1864 - (2020/04/01 (水) 21:53:10) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2020/04/01 Wed 21:37:24
更新日:2022/01/10 Mon 22:45:55
所要時間:約 8分で読めます






深淵から引き揚げられたのは、楽園へと導く救世主か、それとも邪なる嘘つきか、或いは両方か。




SCP-1864はシェアード・ワールドSCP Foundationに登場するオブジェクト(SCiP)の一つである。
オブジェクトクラスはEuclid。

項目名は『The Lonely Liar (孤独な嘘つき)』。



概要

SCP-1864は、カナダ北東部のハドソン湾から南西およそ80km地点にある島である。この島内部の施設と異常存在を含めた、いわば場所系オブジェクト。
この島全体をSCP-1864-アルファと呼称する。

現在、SCP-1864-アルファの上には、観測用サイト-1864が建造されており、後述のSCP-1864-アルファ具現化イベントの間、その島に在中する職員の拠点として使用される。

収容プロトコルは、周囲の船舶が5㎞以内に近付いた場合は追い払うというシンプルなもの。また、イベント中はSCP-1864-アルファ及びSCP-1864内の施設を捜索し、内部でSCP-1864-3なる実体と遭遇した場合、直ぐに排除する。




説明

異常性は以下の通り

  • この島(SCP-1864-アルファ)全体が、新月の時だけでしか島に近付けず、イベント発生中は、如何なる場合においても島から出ることが出来ない。新月以外の時期に島に向かっても、絶対にたどり着けない(新月以外に島から出ようとした職員全員が失敗し、島に逆戻りすることになった)。


  • SCP-1864自体は、SCP-1864-アルファ中心に存在する建築物、その内部の空間異常である。内部は第一次大戦時代の病院に見えるが、既存の物ではない兵器や機器が現存している。
  • 内部は迷宮になっており、明らかに島の大きさよりもデカく、迷宮の中央部には、凡そ直径65㎝、深さ約120mのプールがある。なお、プールの水は"その先の部屋"に侵入出来ない。


  • プールのすぐ側にSCP-1864-1が存在している。クラスII疑人型実体であり、立ち上がると頭と胴体だけで4.3mの身長を誇り、人間の顔に目が4つ追加されている。SCP-1864-1の細長い胴体は下の床へつながっており、また1本の伸縮する腕のような外肢が背中の中心につながっている中々強烈な外見だ........
  • 自身を嘗て島の病院(SCP-1864)に勤めていた研究者、ハインリッヒ・ボフ博士と名乗っている(以降、ボフ博士と呼称)。外見に反して、財団職員には非情に友好的だが、後述のSCP-1864-2とSCP-1864-3に対しては非情に敵対的である。


  • SCP-1864-2はプールの奥底の鉄格子に存在する人型実体。身長130㎝の小さな実体がプールの底の四角い部屋に閉じ込められている。
  • ボフ博士曰く、自身をパン・ハンと名乗っており、目を合わせるだけでどんな病や怪我も治癒させる能力をもつ。とある海域で漁師たちが網に引っ掛かっているのを発見したらしい。
  • 自身を神の使いと称し、世界平和のため遣わされたと証言していたが、実際は"全く別のことをしでかそう"としたらしい。
  • ボフ博士はパン・ハンの目を縫い合わせることで力を封じた。加えて水に包まれると弱体化するらしく、ボフ博士お手製の牢獄によって幽閉されてる。


  • SCP-1864-3はSCP-1864全体に無数に出現する、クラスIV非人型実体。財団世界ではよくあることだが、カメラなどの機材では確認することが出来ず、明確な姿に至っては、視認してきた対象の記憶を改変して証言出来ないようにする特性をもつ。
  • 実は、嘗ての島の研究者たちやボフ博士の家族の成れの果て。パン・ハンによって異常存在へと姿を変えられてしまい、全員が中央のプールに集まろうと行動し、パン・ハンを解放しようとする。このSCP-1864-3達を操ることで、パン・ハンは牢獄から抜け出そうとしている。




包括的なSCP-1864-1のインタビュー(抜粋)



インタビュアー: エージェント・アーネル・トラン

インタビュー対象: SCP-1864-1

通訳者: エージェント・トレバー・ウィルソン



トラン: (省略)この場所が何であるのか教えてもらえますか?

SCP-1864-1: *沈黙* これは答えにくい問題のようだな。表向きは、ここは宇宙ポケット内部にある迷宮だ。しかしこれは君たちが興味を持つことではないだろうな。

トラン: この異常性の起源は何ですか?

SCP-1864-1: それも答えにくい。こう言うのは簡単だ。何か奇妙なものを見つけた鉱業コロニー、岩の中にではなく、奥の部屋の中に。

トラン: その後の施設の目的は何ですか?

SCP-1864-1: *沈黙*

トラン: SCP-1864-1?

SCP-1864-1: その頃は多くの奇妙な出来事があった、エージェントよ。奇妙な時間だ。世界は変化していて、私たちが十分速く変化することが出来ないことをカイザルは恐れていた。

トラン: つまりその頃は軍事施設でしか?第一次世界大戦の間?

SCP-1864-1: 違う。私たちは決して軍ではなかった、エージェントよ。私たちは常に科学者であった。私たちは神と化学に献身していた。私たちが到着しとき、この異常性は第一の目的であった、そう、しかし、その次に来たものに比べれば2番目であった。




元々この島自体はパン・ハンとは何の関係もなかった。世界大戦が勃発し、研究者たちはSCP-1864-アルファを初めとした様々な異常存在などを今後の発展や戦争への対抗策に使用しようとしていた。そんな中、ヤツはやってきた........




トラン: …それは一体?

SCP-1864-1: あぁ… *首を伸ばす* 孤独な嘘つき。小さなパン・ハン

トラン: パン・ハンは誰でしたか?

SCP-1864-1: でした?違う、エージェントよ。パン・ハンは過去ではない。パン・ハンはいる。パン・ハンは私たちに嘘をついた、物語を話し、私たちに虚偽を信じ込ませた。忌々しい小さなパン・ハン、彼は- *声は途切れる*

トラン: 何か悪いことでも?

SCP-1864-1: コロニーのための漁船が、ネットの中に小さなパン・ハンを見つけ、海から彼を引きずり出した。病気がちな小さな少年、しかし輝かしさがあった。彼を見つめた者は病気にならなかった。病気があり彼を見つめた者は癒された。毒が、エージェントよ、国の敵が私たちを破壊し、戦争させていた。私たちは救いを見た。

トラン: この施設と、そしてあなた達に何が起こったのですか?

SCP-1864-1: 小さなパン・ハンは彼は神によって送り出されたと私たちに話した。永遠の平和の使者として、疫病を終わらせるために。間違いを犯してはならない、エージェントよ、疑わなかった者はない、私自身も含めて。しかし証拠は…驚異的であった。

トラン: この施設、あるいはあなた達に起こったことの説明になっていません。

SCP-1864-1: *歌うような声で答え始める* 小さなパン・ハン、孤独な嘘つき。彼が私たちに嘘をついたとき、私たちは彼を箱に入れ、穴の中に箱を捨てた。穴の中から私たちに届くことがない、パン・ハンよ、お前の病的な目は縫われてしまえば私たちを見ることができない。

トラン: 理解できません、SCP-1864-1。それで-

SCP-1864-1: 水がパン・ハンを静かにさせる、彼をしまったままにする。パン・ハンはある夜目覚め…違った。そして空気に変化があった。彼らの残りは…怒っていた。私よりも怒っていた。

トラン: あなたは私たちが見たSCP-1864-3実体のことを-

SCP-1864-1: 私の友人、私の家族、全てだ。パン・ハンが私にしたことは無だった。私は依然として人間であるが、失った人間だ。残りの者は、君たちは言うことさえできない。私は彼を箱に入れ、彼の病的な小さな目を縫い合わせ、そして箱を閉じた。私はいまだに叫び声を思い出すことが出来る。まるで… *声は途切れる*

トラン: SCP-1864-3実体はどういうことですか?

SCP-1864-1: 彼らはただパン・ハンを彼らとともに闇の中へ引き込もうとしているにすぎない、エージェントよ。私は彼らが格子を開けないようにしなければならない。彼らは上の世界を覚えていないが、私は覚えている。パン・ハンはそれを消費するだろう、彼が私たちを消費したように。

トラン: それではつまり、パン・ハンとは、一体何なのですか?

30秒間の沈黙。この間、SCP-1864-1はその肢をプールへと伸ばし、中へ消えるまで伸ばし続けた。SCP-1864-1は水を見ている。

SCP-1864-1: 私たちが海の中から引っ張り上げた腐敗した何かだ。永遠に闇の中にいるべき何かだ。





彼がなぜ嘘をついたのか、その嘘とはなんだったのか。一体どのタイミングで嘘に気づいたのか........正確な記述は記載されていない。
しかしながら、ボフ博士のインタビュー終盤からパン・ハンが、一体何の目的を持って彼らの前に姿を表したのか、その理由は伺うことができる。




パン・ハンは世界に平和をもたらそうとは考えておらず、逆に世界を侵略しようとしたのではないだろうか?



理由はどうあれ、ボフ博士たちはパン・ハンの怒りを買ってしまった。ボフ博士の仲間や家族はパン・ハンの眷属と化し、彼を解放しようと今なお蠢いている。博士自身も、到底まともとは呼べない姿へと変えられてしまった........。

少なからず言えることは、今のボフ博士には、パン・ハンが解放されないように嘗ての仲間や家族を殺し続けることしか出来ないということだけだろう。








SCP-1864


孤独な嘘つき(The Lonely Liar)








余談

この記事には、パン・ハンの正体を匂わせているtale『Folly』が存在する。2020年4月1日時点で日本語訳が存在しないため、大まかに内容を記載する。


その前に、本taleの世界観を理解するため、カノンハブ『甦──リザレクション』の説明を簡単にする。
時系列は、SCP-076:アベルによって、機動部隊Ω-7がメンバーを一人除いて全滅した事件から9年後の財団世界。
世界各地で危険なオブジェクトが続々発見されていることを危惧し、O-5はやむ無く異常存在(人型オブジェクト)を編入させた機動部隊、機動部隊アルファ-9 ("残された希望")を設立したのである過去の失敗から全く学んでいない
なお、Ω-7唯一の生き残りであったSCP-105:アイリスは、半ば脅される形で編入されることとなった(曰く『貴女がやらなければ、他の人が死ぬことになりますよ😊』と)

機動部隊アルファ-9はその後、マーシャル・カーター&ダーク社の不始末で大量発生したSCP-008のゾンビたちを何とかしたりと、相当の活躍を見せていくこととなった。



........話を戻して、財団に勤める研究者の一人、アクタス博士は傭兵上がりのボディーガード、ジョシュアと供にSCP-1864を訪れた。あろうことがSCP-1864-2(パン・ハン)を機動部隊に組み込もうとしたのである。

これにはボフ博士もドン引き。必死に止めようとしたものの、圧力には勝てずパン・ハンを長い腕を使って牢獄から連れ出すことになった(ボフ博士が長い腕で、パン・ハンの動きを封じるというシュールな行動を見ることができる)。

連れてこられたパン・ハンの見た目は、アジア系の8〜9歳くらいの少年のようであった。もちろんパン・ハンはそのチャンスを逃さない。アクタス博士を異常な能力でグロッキー状態へと追い込み、ボフ博士の胴体をズタボロに引き裂いて自由に。

さらに巨大化し、体全体に何十もの長く湿った肢をもつ、人型の怪物というヤバい姿を現した。


しかし、この絶体絶命の場面でジョシュアが動いた。ジョシュアはパン・ハンの肢をあろうことか噛み千切り、続けて顔面に傷をつけてからの銃をぶちこみ吹き飛ばしたのである何者だよジョシュアさん................

その後、何度も噛み千切っては銃で胴体や他の部分を吹き飛ばし、何とかパン・ハンを再び封じることに成功、アクタス博士は何とか助かった(一方のボフ博士はというと、引き裂かれた所が再生してたため無事 ? だった)。

ジョシュアとパン・ハンの最後の問答は、実にパン・ハンに対する皮肉がたっぷりなため、非情にスカッとする内容となっている。


taleの最後は、財団の医療チームがアクタス博士を運んでいくのを眺めてから去っていくジョシュアと、その後ろ姿を朧気ながらも確認し、意識を手放すアクタス博士の視点で幕切れとなったのだった。


追記・修正よろしくお願いします。


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