ループ(小説)

登録日:2011/05/10(火) 23:35:26
更新日:2024/09/30 Mon 12:34:19
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『ループ』は鈴木光司のホラー小説。映画・ドラマ化されたリング三部作の完結編として位置づけられた作品。
「同じ時間を繰り返すようなジャンル」を説明する項目についてはループ(ジャンル)を参照。

「身近な恐怖」「ラストのどんでん返し」で話題を呼んだ『リング』、医学的視点で書かれた科学サスペンス『らせん』と
作品毎に毛色が変わっていったシリーズで、当然ながら『ループ』も期待を集めていた。

内容としては読者の想像の遥か上を行くものとなっており、何と言うかもう「ホラー」ではなく、死生観・宗教観・進化論を問う壮大なもので、もはやSFの領域である。
あまりにも斬新な方向転換をしたからか、評価としては賛否両論である。

シリーズの中で唯一映像化されていない作品であるが、これは前述のとおり大きく風呂敷を広げたストーリー展開や、前二作のようなホラーテイストを期待したファンを裏切るような内容、映画会社との折り合いなどが原因とされている。
映画『らせん』の尻切れとんぼな終わり方や映画『リング2』が製作されたのも、そうした事情が影響している。


あらすじ
舞台は近未来。二見馨は重力異常ポイントに住む人々が長寿であると気づき、科学者の父と共に重力異常ポイントであるアメリカ、ニューメキシコに行く約束をする。
しかし父はその直後、現在猛威を振るっている「転移性ヒトガンウィルス」に感染していることが発覚する。

馨は病院で礼子と言うシングルマザーと恋仲になる。礼子は馨の子どもを身籠るが、「転移性ヒトガンウィルス」のキャリアだった。

そんな中、馨は重力異常ポイント、所謂「長寿村」に行った者がヒトガンウィルスを克服した情報を得る。
父、礼子、そして新しく生まれる命のために馨はアメリカに旅立つが驚愕の事実を知ることになる……。


◆登場人物

二見馨
人工生命プロジェクト「ループ」研究員の秀幸の息子。終盤にその驚きの出生が明らかになる。

杉浦礼子
馨と出会ったシングルマザー。ヒトガンウィルスのキャリア。後日談である『ハッピー・バースデイ』でも登場する。

クリストフ・エリオット
ループプロジェクト最高責任者。本作品のキーとなる人物。


以下ネタバレ含む
















◆前作との関連
『リング』における貞子の呪いは『らせん』にてリングウィルスと名付けられる。
『らせん』作中にて貞子の呪いはビデオに留まらず、小説やテレビ、果てはインターネットなど様々なメディアに伝染し、
さらに「排卵日の女性に伝染するとウィルスは心臓に向かわずに子宮に行き、卵子と結合し貞子が生まれる」ようになった。
生まれた貞子は生前の記憶を持つ完璧な半陰陽者であり、自らの精子と卵子で新たな貞子を生み出せるという生命体へと進化していった。

世界の全ての生命体は、貞子の遺伝子に収斂していくことになる。

簡単に言えば、貞子は自家発電で子どもが産めるようになって殖え続け、
映画『マトリックス』のように全世界の生命体が貞子だけになったという感じである(本作の発表はマトリックスより早い)。
そして本作の序盤で『リング』『らせん』の世界が、
128万ものスーパーコンピュータで作られ、人類の進化と可能性をシミュレーションするプログラムの世界「ループ」であることが発覚する。
進化は偶然に左右されるはずだから、二つと同じものは出来ないはずなのに、ループの世界の進化は現実世界とあまりにも酷似し過ぎていた。
『リング』の主人公である高山竜司は死ぬ間際に自分の住む世界が仮想世界だと気づき、「そっちへ連れて行ってくれ」と懇願。
ループプロジェクト最高責任者であるエリオットはその願いを聞き入れて、現実世界での蘇生を図る。
そうして生まれたのが「二見馨」であり、同時に「高山竜司」でもある。

しかし現実世界に甦った「二見=高山」の体内の「仮想世界で感染したリングウィルスが現実世界で転移性ヒトガンウィルスとなり」人類を脅かすようになる。
だが同時に彼の体はリングウィルスにもヒトガンウィルスにも抗体があった。

「二見=高山」はウィルスのワクチンを作りループを、ひいては現実世界を救うために、リングウィルスが再び蔓延する前のループへと戻る。




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最終更新:2024年09月30日 12:34