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T・M・P(タシロマサシズポジション)

登録日:2010/09/18(土) 00:23:41
更新日:2026/10/17 Sat 20:12:03
所要時間:約 2 分で読めます




『タシロマサシズポジション(T・M・P)』とは、木多康昭の漫画『泣くようぐいす』に登場する概念である。

T・M・P概要

芸能界における一種の「おいしいポジション」を指す言葉である。
例えて言うなら、桃太郎のキジのような。
バレーボールならセッターにあたるような。
決して中心的な位置にはいない。しかし、だからといって目立たないわけでもない。
むしろ主役やエースのすぐ近くに陣取り、場を動かし、周囲を引き立て、場合によっては自分も鮮烈な印象を残す。

主役に寄り添いながら、自分自身の存在価値も確立する。
番組やグループの空気を読み、必要な場面では前に出る。
それでいて、主役と同じ種類の重圧を常に背負う必要はない。
そうした、目立ちすぎず、目立たなすぎず、主役の隣で確かな存在感を発揮しながら、芸能界の高みにまで上り詰めることのできる立場──それこそがT・M・Pなのである。

田代まさしに見るT・M・P

その名の通り、芸能界でこのポジションを確立した代表例として挙げられるのが田代まさしである。
田代は歌手としてのキャリアを持ちながら、コメディアンとしても独自の存在感を発揮していた。

『志村けんのだいじょうぶだぁ』や『志村けんのバカ殿様』などで見せた活躍は、まさにその代表例だろう。志村という強烈な個性を持つ男の隣で、田代は単に相手の言動に反応するだけでなく、ボケやツッコミを通じて笑いを生み出す役割を担っていた。

また、ダウンタウンとの共演も見逃せない。
2023年に放送された『ダウンタウンDX』の30周年記念特番では、田代の出演回数が159回で歴代4位だったことが紹介された。長年にわたって番組に出演してきた実績は、当時の田代がいかに番組から必要とされていたかを物語っている。

主役の面白さを引き出しながら、自分も面白い。
主役の存在感を損なわず、それでいて自分の存在を忘れさせない。
この絶妙なバランスこそがT・M・Pの本質である。
『うぐいす』が連載されていた当時、田代以外でこの域に達していることを確認できる人物は渡辺満里奈くらいであるとされていた。

もっとも、これはあくまで理想形の話。
実際には、主役の隣にいるだけでおいしい思いができるほど、芸能界は甘くない。
そもそも、このポジションを確立するためには、まず「主役の隣にいても違和感がない」という段階まで到達しなければならない。その上で、「周囲との関係性」「話術」「知名度」「空気を読む能力」など、さまざまな要素が要求される。
T・M・Pは、実力と経験を積み重ねた者が、結果としてたどり着くことのできる境地なのだ。田代の道は厳しいのである。

『うぐいす』には、T・M・P獲得を目指し、わざわざ道場に通ったり、自分で道場を開いたりする者が登場した。
もちろん現実にはそんな道場は存在しないが、それほどまでにT・M・Pというポジションには独特の魅力がある、ということである。

そして、T・M・P獲得において最も重要なもの。
それは「過去の伝説」である。

田代がT・M・Pを確立することができたのも、シャネルズという大きな伝説があったからこそ。
過去の実績や知名度、そして「あの人は昔こんなことをしていた」という語り継がれる要素が、本人の現在の立ち位置に説得力を与えるのである。

何の実績もない人間が、いきなり大物の隣に立っても、周囲は戸惑うだろう。
しかし、過去に大きな舞台を経験し、知名度と実力を備えた人物であれば話は違う。

本人が現在の主役でなくとも、その存在には重みがある。
主役に遠慮する必要もなければ、必要以上に自分を大きく見せる必要もない。
すでに自分の価値を証明しているからこそ、主役の隣という場所に自然に収まることができるのだ。

もちろん、過去の実績さえあればよいというわけではない。昔の栄光にすがるだけで、現在の番組に何の貢献もできないのであれば、単なる「懐かしのアノ人」で終わってしまう。
T・M・Pに重要なのは、過去の実績を土台にしながら、現在も周囲から必要とされることである。

T・M・P余談

ちなみに『うぐいす』の世界において田代まさし六段の昇段試験に合格するには「甲子園出場経験」程度の伝説が必要とされる。
逆に言えば、甲子園出場級の伝説を持ちながら、主役の座を奪うほど前面には出ず、なおかつ確かな存在感を維持できれば、T・M・Pへの道は開かれる……のかもしれない。

ただし、伝説の大きさだけを競い始めたら、それはそれで本末転倒である。
T・M・Pに必要なのは、過去の実績をひけらかすことではなく、その実績を背景に、現在の場で何ができるかということなのだから。

そして、時代が変わった今、T・M・Pというポジションもまた、以前と同じ形では成立しなくなってきている。
かつては、テレビ番組への出演や音楽活動を通じて知名度を獲得し、人気番組の常連になることが、芸能界での地位を築く重要な道筋だった。しかし現在は、インターネット、動画配信、SNSなどによって、活動の場が大きく広がっている。

テレビでは脇役でも、動画配信では主役になれる。
大人数のグループでは補佐的な役割でも、個人の発信では中心人物になれる。
逆に、特定のコミュニティーでは絶大な存在感を持ちながら、一般的な知名度はそれほど高くない人物もいる。
つまり、現代では「主役」と「脇役」の境界そのものが、以前よりも流動的になっているのだ。

そのため、現在のT・M・Pを考えるなら、単純にテレビでの立ち位置だけを見るのでは不十分だろう。
複数の活動領域を行き来し、周囲の人間を引き立てながら、自分自身の存在価値も確立する。
一つの分野で頂点に立つことだけにこだわらず、さまざまな場所で必要とされる──そうした人物こそ、現代におけるT・M・Pの候補になり得るのではないだろうか。

T・M・P。
それは、目立ちすぎず、目立たなすぎず。
主役にならずとも名を残し、なおかつ、おいしいところはしっかり持っていく。
そんな、絶妙な黄金ポジションなのである。


T・M・Pのさらなる高みを目指すため、伝説を積み重ねた方から追記・修正お願いします。


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最終更新:2026年10月17日 20:12