山荘包帯男殺人事件(名探偵コナン)

登録日:2012/02/21 Tue 08:25:57
更新日:2023/03/28 Tue 05:05:08NEW!
所要時間:約 10 分で読めます





気をつけろ…

油断すると奴がまた
人の心の中から顔を出す…

復讐という名の
殺人鬼が…


『山荘包帯男殺人事件』とは、「名探偵コナン」において、江戸川コナンが解決した事件のうちの一件。
単行本第5巻に収録されている。テレビアニメでは第34話・第35話として1996年10月21日・28日に放送。


以下、ネタバレにご注意ください。


【あらすじ】
コナンと蘭は、蘭の親友である鈴木園子に群馬県の別荘で行う姉の映研仲間の同窓会に招待された。
その別荘に行く途中で怪しい「包帯男」を目撃するなど不穏な状況ではあったが、参加者は全員無事に到着していた。
和やかな雰囲気の中始まった同窓会だったが、「敦子」という名前が出た途端その場の空気が一変する。

その後、散歩中に太田勝とはぐれてしまった蘭に、謎の「包帯男」が斧で襲いかかる。
悲鳴を聞いたコナンが駆けつけると包帯男は去り、何とか事なきを得るが、電話線が切られて電話は不通、さらには唯一の脱出ルートである吊橋も落とされ、山荘は外界から隔離されてしまった。
さらに夕食時、皆の前で「包帯男」に池田知佳子が連れ去られてしまい、コナン達男性陣が追跡するが、彼女は森の中でバラバラ死体となって発見される。

そして、全員部屋の窓に戸締りをして眠りについた夜、コナン達の部屋に再び包帯男が現れ、蘭に襲いかかる。コナンの奮闘と蘭の悲鳴で園子が駆けつけたことで、包帯男は逃げ去るが、コナンは犯人が蘭を狙う理由がわからず、苦悩するのだった…。


【事件関係者】
  • 鈴木綾子(すずき あやこ)
CV:元井須美子
園子の姉で大学院生。24歳。
大学時代は映研でメイク・衣装を担当しており、今回の同窓会を計画した。
性格は妹とだいぶ違って清楚なタイプだが、財閥令嬢であることを鼻にかけない点は同じ。
知佳子が殺されたことについて、同窓会を計画したせいだと自分を責め、角谷に慰められた。
それほど目立つわけではないが重要人物で、連れ去られる前の知佳子が部屋のドアの下に挟まっていた手紙を読んで顔色を変えるところを目撃。
さらに、コナン達が「包帯男」を追って森に行った後、彼女のチョーカーを玄関で発見、回収していた。

  • 太田勝(おおた まさる)
CV:井上倫宏
外車ブローカー。24歳。
大学時代は映研で主に主役を張っていた。
イケメンで園子に目をつけられるが、キザな性格で蘭に言い寄ろうとしたり、コナンをガキ呼ばわりしたり、知佳子が殺害された際は「このことは忘れてさっさと寝ちまおうぜ」などと仮にも仲間が殺されたにも関わらずドライに振る舞ったりと性格はあまりよろしくない。
散歩中に落ちた雷のせいで蘭が逃げてしまい舌打ちしていた。
名前の元ネタは特別編の作者の一人である太田勝氏と思われる。

  • 高橋良一(たかはし りょういち)
CV:加藤満
食品会社社員。背は低いがかなりの肥満体。25歳。
大学時代は映研で大道具を担当していた。
大学時代からさらに太り、現在は100キロくらいになったらしい。
かなり怖がりなのか、「包帯男」どころか、停電にさえ怯えていた。

  • 角谷弘樹(すみや ひろき)
CV:後藤哲夫
映画雑誌編集者。25歳。のっぽ。
大学時代は映研でカメラマン、特に特撮を担当。撮影好きであり、常時ビデオカメラを回している。
まるで別作品の誰かさんみたいである。
彼が撮影したビデオがトリックを見破る鍵になる、という点も…。

知佳子とは学生時代交際していたらしく、角谷はまだ彼女に好意を持っていたようだが、知佳子の方は冷たくあしらっていた。それを見た太田は「あの二人ももう終わりかな」と呟いていた。

  • 池田知佳子(いけだ ちかこ)
CV:唐沢潤
人気の若手脚本家であり、映画「青の王国」で一躍時の人となる。24歳。
大学時代は映研の部長であり、脚本と監督を務めていた。
映研の仲間たちとは普通に接するが、自殺した徳本敦子の話になるとなぜかヒステリー気味になる。
蘭を襲った「包帯男」に対しては「皆が怖がるのを見て楽しむため」と主張するも、その後、皆の前で包帯男に連れ去られ、森の中でバラバラ死体となって発見される
角谷が胴体を起こそうとした瞬間に首が落ちるシーンは多くの読者と視聴者にトラウマを植え付けた。
綾子によれば、連れ去られる前の彼女は、自分の部屋に戻った直後、扉の下にあった手紙を見て顔色を変えたらしい。


【主要人物】
ご存知主人公。
蘭に言い寄ってくる太田に嫉妬したりするが、「包帯男」に狙われた彼女を守るために必死で戦う。
部屋で襲撃された蘭を守った際、「包帯男」に投げ飛ばされたことで、足をくじいてしまった。

ご存知蘭姉ちゃん。
今回は別荘に行く際に道に迷ったり、ノックせずに男性の映研メンバーの部屋を間違えて勝手に開けるといった、ハプニングを起こしている。
何故か「包帯男」に執拗に狙われており、それゆえか寝込みを襲われるなど不意打ちを食らうシーンが多かったため、空手で撃退する場面が少なかった。
それでも3度目の時は暗闇の中で気配を察知、背後から来る斧の柄を蹴りでへし折る、という見せ場を作っている。
ちなみに「なぜ空手でやっつけなかったのか」と園子に言われるが、本人は「お化けとか怪物が苦手だから」と返答。
斧自体にビビっていたわけではないようで、実際、最初の襲撃時も包帯男の姿を見るまでは襲われた直後に距離を取って追撃が出来ないように対応している。包帯男の姿でなかったら犯人は詰んでた。
皆の部屋を間違えて開けたあたりから何かが引っかかっているらしいが、それが何なのか思い出せないという…。

蘭の親友で鈴木財閥の令嬢のお調子者。原作ではこの回が初登場になる。
彼氏ゲットに燃えており、クールでカッコいい太田を狙っている。
得体の知れない人物に閉じ込められても、怯えるどころか映画みたいに感じており、(蘭と自分の姉も含めて)周囲が皆殺しにされる中、自分と太田だけが助かって「包帯男」を倒すというどっかのホラー映画にありそうな妄想をしており、コナンや蘭に呆れられていた。
さすがに本当に殺人が起きた際には、ふざけずに調子に乗った行動も自粛していた。


【その他の人物】
  • 包帯男
この別荘近辺に度々現れる、顔に包帯を巻き、チューリップ帽に黒いマントを身にまとった謎の人物。
最初に蘭が別荘に付いたときに別荘の方向へ向かって消えてしまう。
その後、蘭を襲ったり、山荘を外界から隔離して、最終的には知佳子を連れ去り殺している。知佳子殺害後も、なぜか蘭を執拗に襲撃。コナンに不審がられている。
ちなみにコナンではわりと珍しい「衣装付きの怪人」である。

  • 徳本敦子(とくもと あつこ)
綾子の大学時代の映研仲間。
2年前に部室で自殺しており、そのことがきっかけでみんなバラバラになってしまった。


【以下、事件の真相。さらなるネタバレにご注意ください】


















敦子の夢を奪ったあのメスブタの首をなぁ!!


  • 高橋良一
この事件の真犯人「包帯男」
太っているように見えるが、実は標準体型。
空気人形や知佳子の生首を腹に入れて運ぶトリックに利用すると同時に、「包帯男」との体型の違いから容疑者から外れることにも利用した。
以前の体型は不明だが*1、角谷に「また太った」と言われていたことから、かなり前から痩せているものを太っているように見せかけ、徐々に増量していたものと思われる。
また、知佳子が「包帯男」にさらわれたように見せる場面を作り上げたのもピアノ線と人形、それに被害者の首を使ったトリックであり、大道具係だった高橋であれば難なくできる芸当だった(当時いた場所からしても、屋根の修理をしていた彼以外に可能な人間はいなかった)。
別荘に来た時に皆が見たという「包帯男」も彼。おそらくは、その存在を強く印象付けるためだろう。

しかし、昼間に部屋で着替え中、到着したばかりの蘭がノックせずにドアを開けてしまうという想定外のハプニングが発生。
その時の高橋はちょうど着替え中だった為、蘭に本当の体型、即ち自分が肥満体なのが嘘である事実を目撃されてしまった。蘭が「引っかかっているが思い出せない」と言っていたのは、そのことだったのである。
彼女は気にも留めていなかったが、もし思い出されたら計画に綻びが生じる恐れがある為、口封じ目的で、3度に渡って蘭を襲撃、殺害しようとしたのだった
しかし、最初は蘭の悲鳴を聞いたコナンが駆けつけたために失敗、2回目は寝込みを襲うが、コナンの奮戦とやはり悲鳴で園子が駆けつけた*2為に逃走。3回目は蘭自身の空手の蹴りで斧をへし折られてしまい、結局全て失敗に終わった。

電話線を切って橋を落としたのは、最初の蘭殺害失敗の騒ぎで、本当のターゲットである知佳子が下山してしまうのを防ぐ為。
つまり、当初の計画には無い作業だったと思われる。
知佳子に送った手紙の内容は、「「青の王国」の秘密をバラされたくなければ森に来い」というものだった。

結局、先述のピアノ線を作ったトリックの痕跡(ベランダの手すりに残ったピアノ線の跡)があったことをきっかけに、コナンに正体を見破られてしまうことになる。
停電中に2階の窓を壊したのは、「包帯男」が外から侵入したと思わせるための工作と思われるが、外に出る為に中から鍵を外して窓を開けたことで、内部の人間によるものと、コナンにすぐ見破られた。
また、外で連れ去られたはずの知佳子のチョーカー(連れ去られた時に着けていたことは、角谷のビデオに映っていたことで証明されている)が、なぜか別荘の中の玄関に落ちていたのも、彼が首を運ぶ際にうっかり落としてしまった為。
これも「知佳子の死体を抱えて玄関を通った人間がいる」ということで、コナンに内部犯であることを気づかせるきっかけの1つになってしまった。

事件の動機は自殺した徳本敦子の復讐。
敦子の自殺の理由は、知佳子が彼女の書いた小説「空色の国」を盗作して「青の王国」として発表したことだった。
高橋は、自殺の前日に敦子から「もう誰も信じられない」と言われたこと、さらに「青の王国」のストーリーが、以前に敦子から見せてもらった「空色の国」と全く同じだったことで、盗作に気付くことになる。
そして、高橋は敦子の無念を晴らすために、原因を作った知佳子を同窓会で殺害しようと画策していた*3

罪を認めた後、狂気じみた笑みを浮かべながら「仇をとった正義の使者」として、敦子の後を追おうと自殺を図った。
しかし、計画実行前の口封じの為とはいえ、何の罪も無い蘭までも狙ったうえ、さらに本懐を遂げた後も執拗に襲い続けた行為に至っては、もはや敦子の為でも何でもない単なる自己保身でしかなく、その無様な姿にはもはや彼の言う「正義」など微塵も無かった。
そんな彼の名前に『良』があるとは何たる皮肉だろうか…。
それにもかかわらず自身の行為を「正義」と称したことが、コナンの怒りを買う。そしてコナンは怒りに任せ「死にたきゃ勝手に死にやがれ、バーロォ!!」「(今のお前は)ただの醜い血に飢えた殺人鬼なんだよ!!」と激昂、ショックを受けた高橋はその場で泣き崩れた。
コナンの言葉が余程こたえたのか、次回の冒頭での蘭の話によると、その後は潔く自首したと語られている。
ちなみにアニメでは、自殺を図る際の表情が狂気じみた笑みではなくなっている。

  • 池田知佳子
受賞作「青の王国」は敦子が書いた作品「空色の国」の盗作だった為、彼女が自殺する原因を作ってしまう。
「青の王国」の秘密をネタに森の中に呼び出されて、斧で首を切断され殺された後、さらに両手両足を切断される

敦子を自殺に追い込むつもりなどはなかったようだが、その後盗作を自ら告白したり、受賞を辞退したり、脚本家としての仕事を辞める(=諦める)というようなことはなかった。
また、敦子の話をヒステリック気味に終わらせようとしたあたり、自殺に追い込んだことについて全く反省しておらず、むしろ彼女が自殺したことで盗作がばれる心配がなくなったと考えていたようである。
高橋が蘭を襲ったことについては全く共感されないが、知佳子が少しでも反省していたなら高橋も殺さずに盗作の事実の公表で済ませていた可能性もある為、被害者とはいえ世間からの共感も薄いだろう。
仮に盗作の件が公になった場合は、知佳子の脚本家としての評価は急落したものと思われ、名声も失った可能性もある。

余談だが、遺体の首が切断されていた事件は『コナン』でも何回かあるものの、手足までバラバラに切断された状態で発見された被害者は彼女だけである*4

  • 鈴木綾子
事件によって大きなショックを受けて一週間寝込んでいたが、立ち直って大学院に通えるようなったという。
だが、後に『三つ子別荘殺人事件』で、今度は自分の婚約者に殺人容疑がかけられる事になる。

  • 太田勝
怪しい行動は多かったが、高橋がナイフを振り回した時は腰を抜かしていた。
園子もこの情けなさに(勝手に)愛想を尽かしたらしい。
もっとも、目の前で殺人事件が起きて、しかも親友が犯人で包丁振り回されてビビらないほうがどうかしているが…。
ちなみに、園子は後にそのシーンをさも見ていたかのように語っているが、この時の園子は麻酔銃で眠らされていたはずであるため矛盾が生じている。
その為なのか、アニメでは彼が腰を抜かすシーンはカットされている。おかげでヘタレ要素が無くなった。

  • 角谷弘樹
癖が強い今回の登場人物では屈指の常識人。
高橋がナイフを振り回した際も彼を止めようするなど、太田よりもしっかりしていた。
しかし、その時に「それ(脚本の内容が全く同じだったこと)が自殺の原因と決まったわけではないのでは」と激昂した高橋に言うなど、やや思慮に欠ける面があった。
知佳子が賞を受賞した直後、部室で自殺したことを考えれば盗作が自殺の原因であることは明白であり、この言葉は火に油を注ぐ形になってしまった。
ちなみに、「それが自殺の原因~」のセリフを言ったのは、アニメでは声からして太田に変更されている模様。

  • 徳本敦子
高橋とは事実上相思相愛で、自身が書いた小説「空色の国」を見せて夢を語っていた。
しかし知佳子による盗作で受賞を奪われ絶望し、自らの命を絶つ。
その事実を、実際に「空色の国」を読んだ高橋以外の人間は誰も気づかなかった。
盗作の事実は気の毒ではあるが、彼女自身も自殺する前にせめて素直に高橋に盗作された事を相談していれば、この事件は起きなかったかもしれない。

  • 毛利蘭
冒頭で男性の映研メンバーの部屋をノックもせず勝手に開けまくった際、偶然高橋の本当の体型を見てしまったが為に*5、「包帯男」に扮した高橋に執拗に狙われることになる。
しかし、彼女はそのことを「何か引っかかっている」と思っていた程度で、全く思い出せず気にもしていない状態だった。
(見たのはほんの一瞬で、しかも背中側だった為、無理からぬことである)

最初は「包帯男」を怖がるだけであったが、コナンが自分を守るために奮闘し負傷したのもあってか、3度目の停電中に襲われた時は得意の空手で「包帯男」の斧をへし折って自己防衛している*6

  • 鈴木園子
小五郎不在の為、蘭を狙った麻酔銃の針が外れて彼女に命中してしまい、推理ショーを行うことになる。
これが初めての麻酔銃被害になるが、本人は推理したことを覚えていないにも関わらず自分の名探偵っぷりをアピールするなど、コナンがフォローせずとも勝手に納得していた。


【余談】
原作では園子の初登場であり、同時に彼女の推理ショーも初であるが、アニメでは初のオリジナルエピソードの『バレンタイン殺人事件』で初登場し、
推理ショーも原作では後に掲載された『6月の花嫁殺人事件』に追い越されることになった。
……にも関わらず、間違って園子に麻酔銃が命中したくだりは原作通りだったりする。ちなみにアニメでもこの事件から推理クイーン園子が始まった事になっている。
つまり、アニメの『6月の花嫁殺人事件』では初めて小五郎以外を探偵役にする必要があったにも関わらず、何の躊躇いもなく園子を探偵役に選んだという矛盾が生じていることとなった。

本エピソードでは、コナンが高橋の言動にキレていたとはいえ「死にたきゃ勝手に死にやがれバーロォ!!」と罵倒するという探偵にあるまじき行為をしている。
アニメ版ではかの『ピアノソナタ「月光」殺人事件』が先に放映された為、コナンの犯人への上記の発言と矛盾が生じてしまっている。
そう思うようになったきっかけこそ月影島の事件でも、「犯人を推理で追い詰めて~」の発言そのものは、原作にてもっと後の事件に出たものである。
また、服部平次にも似た理由で犯人にキレた事件に『鳥取クモ屋敷の怪』がある。

ちなみにだいぶ後になって、再びこの別荘を訪れることになったが、
今回の事件後に吊り橋を直した業者は手抜き工事をしていたらしく、すでに吊り橋が落ちていて別荘に辿り着けなかった。
そして、それがまたしても殺人事件に巻き込まれる原因となってしまった。
山村刑事の話によると、それ以前にも近くの別荘で殺人や自殺があったらしい。…呪われているんじゃないか?この辺りの土地。



秘密を見られても、追記・修正は関係ない相手を巻き込まずにお願いします。

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最終更新:2023年03月28日 05:05

*1 自白時に敦子と話す過去の1カットがあるが、体型ははっきりわからない。

*2 一度寝たら起きない蘭を起こす為に、コナンが蝶ネクタイ型変声機のボリュームを最大にして叫んだ結果である。

*3 アニメ版では上記の台詞の一部が「あのメスブタ」から「あいつ」へと変更されている

*4 部分的な切断は特別編でも扱っているが、アニオリでは扱っていない。

*5 もっとも、このハプニング自体は、彼女に部屋を「2階」としか言わず、具体的にどの部屋と教えなかった園子にも多少責任はあるが。

*6 相手の姿が見えなかった為、かえって怖がらず撃退できたのかもしれない。また、落ちた斧を見て驚いていたことから、暗闇で気配だけを頼りに撃退したため、相手が「包帯男」だと認識していなかった可能性もある。