自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

登録日:2025/07/12 Sun 00:05:12
更新日:2025/07/20 Sun 22:39:47
所要時間:約 8 分で読めます




交通事故に巻き込まれた俺が転生したのは……なんと

「自動販売機」だった!?

【概要】

自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う』は、昼熊による異世界ファンタジーライトノベル作品。
略称は「俺自販機」。

イラスト担当は加藤いつわ→憂姫はぐれ*1
2016年より小説投稿サイト「小説家になろう」で連載が開始され、完結した(全10章)。

書籍版は角川スニーカー文庫にて刊行されている。
旧版は2025年6月現在既刊3巻・新装版は既刊4巻。
メディアミックスとしては、九二枝によるコミカライズ版が2021年よりスタートし、「月刊コミック電撃大王」にて連載中(既刊2巻)。
また、テレビアニメ版が2023年7月~9月および2025年7月~9月にそれぞれ放送されている(1期は全12話。1クール)。




【特徴・見どころ】

本作の見所は、主人公が

に転生してしまった、

ということ。そう、現実世界にならどこにでもあり、道ゆく人々に何かと便利なものを売ってくれるアレ。
前世で自動販売機マニアだった主人公が、交通事故で亡くなり転生を果たしたら自動販売機の姿になっていたのだ。

勿論、自動販売機なので、自らの意志で動くどころか*2転生先の住民たちと満足にコミュニケーションをとることはできない。*3
しかし、自身の特性を理解した主人公が、あの手この手で商品を提供し、時に異世界の住民の腹を満たすこともあれば、時に自動販売機で販売可能な様々な商品を提供することで魔物をはじめとする強敵や盗賊を退治するヒントを得ることもある。こうした取組を通じて異世界の住人と信頼関係を構築し、異世界で自販機としてどのように生きていくかが描かれる。

何より、前世のマニアックな知識をふまえて、色んな種類の自動販売機に「変化」することも本作の大きな見所と言えよう。本作を読んだりアニメを見たりして、こんな自動販売機もあるんだと思った方もいるのではないだろうか。
そんな自動販売機の醍醐味を楽しむことができる作品である。


【あらすじ】


交通事故にあった俺は、目が覚めると湖のほとりに立っていた。身動きも取れず、声も出せず、どうやら自動販売機に生まれ変わってしまったらしい!?
戸惑う間にも魔物に襲われ、危機的な状況に。困り果てていると、目の前にハンターの少女・ラッミスが現れた。
(アニメHPより引用)


【キャラクター】

(主人公)

・ハッコン
CV:福山潤
本作の主人公。

前世は根っからの自動販売機マニア*4だった青年。
しかしある日交通事故に遭い、自身が好きな自動販売機を守ろうと不幸にも亡くなってしまった経緯を持つ。ちなみにその際は好きな自動販売機に押しつぶされることとなった。

当たり前だが、人間としての意志は持つものの、自動販売機である以上以下の定型の文言しか話せない。

「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
「またのごりようをおまちしています」
「ざんねん」
「あたりがでたらもういっぽん」

このため、上記の文言をパターン化して異世界の住民とコミュニケーションすることを試みている。また、物語が進むにつれて、上記の文言の文字を抽出して言葉を紡ぎ出すことができるようになっている。

最初はその現実を受け入れられなかったところもあるが、ラッミスと出会い、彼女に飲み物や食べ物を販売し、信頼関係を築いていった。
以降はラッミスを始めとする村の人々のために自分にできることを模索している。

基本的には購入時の金銭の金額に応じて、ポイントが加算される。
このポイントがいわばハッコンの動力源で、これが0になると機能停止になる。
また、ポイントを消費することで、様々な形状の自販機に変身して食料・飲料・氷・燃料、はたまたアダルトグッズに至るまで多種多様のものを販売できる*5

(主要人物)

・ラッミス
CV:本渡楓
本作のヒロインの1人。
一人称は「ウチ」。由来は不明であるが関西弁を話す。

明るく元気なムードメーカー。怪力の加護持ち*6で、戦闘では持ち前のパワーを生かした格闘術を主に使う。

空腹でダンジョンを彷徨っていたところで、転生したばかりのハッコンと出会った。
そしてハッコンの商品を初めて購入したキャラでもあり、コーンスープを買ってこれまで食べたことのない味に感動した。
ちなみにその後、ミルクティーや水も購入している。

それ以降はハッコンを気に入り、いつも彼を背中に背負ってダンジョンを踏破しており、今ではすっかり相棒とも言える関係性にまでなっている。
なお巨大な金属の塊を背負いながら戦うのは一見動きに支障がありそうだが、逆に重心が安定して戦いやすくなったとか。


・ヒュールミ
CV:青木志貴(1期)→藍原ことみ(2期)
ヤンキー口調のクールガール。
ラッミスの幼なじみで、魔道具を調べる魔道具技師。

ハッコンが盗賊団につかまった際に彼らのアジトで初対面を果たした。
意志疎通でき、この世界にはないだろう商品を提供するハッコンを調査する魔道具技師として自身も拉致られてしまったようだ。
その後はラッミスにより救助され、以降はダンジョンやボス攻略に必要な知識や戦略を授けてくれるブレーンとなる。

冥府の王との戦闘時に心配停止する事態に陥るが、ハッコンがAED販売機になりAEDを提供したことで事なきを得た。

(愚者の奇行団)

・ケリオイル
CV:中井和哉
リーダーの男。テンガロンハットをかぶっている。
凄腕のハンター集団だが、自身は大体面倒事を部下に任せているような素振りを見せることが多く、副団長らから突っ込まれることも多い。
とは言え、シュイが冥府の王によって心肺停止に追い込まれた際は怒りを露わにするなど、仲間思いである。
ハッコンの能力に興味を持ち、ラッミスと共に仲間に加えようとしているが、大体2人(?)から断られる。

・フィルミナ
CV:茅野愛衣
副団長の女。
冷静沈着な性格で、魔法でのサポートを行う場面が多い。何かと面倒事や仲間に丸投げしがちなケリオイルに突っ込みを入れる参謀役でもある。
実は怖いものが苦手。

・シュイ
CV:富田美憂
弓を使って戦う女戦士。「~っす」みたいな感じの体育会系口調で話す。
健啖家で大食い大会ではどのメンバーよりも「うまそうに食いつつ」見事優勝を決めた。
「はじまりの階層」にある孤児院出身で、大食い大会優勝に伴い、ハッコンを自由に使って良いとなった際は、孤児院に彼を連れて行き、子どもたちに「魔法の箱」と称したハッコンの商品を提供した。

冥府の王との戦いでヒュールミ同様、心配停止に陥るもハッコンのAEDで奇跡的に蘇生を果たした。

・赤、白
CV:山下大輝、榎木淳弥
偵察係を務める双子の兄弟。

・ミシュェル
CV:江口拓也
仮入団した金髪の男剣士。
イケメンな上に単独で戦うこともできるなど、戦力として期待できるが、本人は極度のコミュ障。もったいない。
ハッコンは人間ではないためか、彼となら安心して打ち解けることができ慕うにまで至っている(そしてラッミスは彼の感情について少々懸念している節がある)。

どうやら命を狙われていることから、やんごとなき血筋なのかと思わせるところがある。

(清流の湖階層)

・熊会長
CV:宮内敦士
ハンター教会会長。
文字通り熊でコートを羽織っている。
内面はとても紳士な人物(?)で、ダンジョン攻略やハンター達のためならば協力は惜しまない。

・ムナミ
CV:奥井ゆうこ
宿屋の看板娘でラッミスとも仲が良い。
階層にある宿屋に大手チェーンの食堂が進出し対抗策を考える際や、大食い大会の企画の際にはハッコンが提供する商品を材料に盛り上げようと狙う。
異世界人に現代製品というオーパーツで対抗するあたり、いささかセコイ気がするが……。

・スオリ
CV:星ノ谷しずく
典型的なお金持ちのお嬢様みたいなキャラ。
やや高飛車な面が見られる。自慢の財力でハッコンをラッミスから買い取ろうとしたこともある。だが断る!

(その他)

・冥府の王
CV:速水奨
亡者の嘆きの階層に救っていた魔王軍配下の将軍*7
圧倒的な力で愚者の奇行団のメンバーを追い詰め、ヒュールミとシュイを心肺停止に一時追い込んだ。


【用語】

・ポイント
ハッコンを起動・維持させるために必要なもの。
金銭を基に返還させ、ポイントを消費させることで商品の補充や変更、機能拡充を可能にさせているらしい。
ポイントが0になるとハッコンは機能停止する。
基本的には一時間で1ポイント消費する。

・加護
神から与えられる特別な力。
1つだけポイントを消費せず得ることも可能である。

・結界
ハッコンが選んだ「加護」。
自分の周囲半径一メートルの範囲であれば不可侵の結界をはることができ、敵の攻撃(魔法含む)を防ぐことができるらしい。

・この作品の硬貨
青銅貨・銅貨・銀貨・金貨が存在している。

・ハッコンから出される商品
さまざま存在する。
なお飲み物などで生じたゴミは自動で消滅するようになっており、環境に優しいらしい。

・ハンター
魔物の討伐や素材集めや護衛の依頼を受けたり迷宮探索をして一攫千金を狙ったりする存在。
それらを束ねる組織としてハンター協会というものがある。ハンター達への依頼などを請け負っている。

・ダンジョン階層
各階層に特色がある。
また、階層には「階層主」と呼ばれるボスクラスの魔物がおり、討伐対象となるが、そう簡単には攻略できない。
階層主を倒さなくても金さえ払えば転送陣を使うことが可能なので、ダンジョンの行き来はそれを活用することが多い。


【世界観】

・清流の湖階層
ハッコンが転生して来たダンジョン階層。
清流に住んでいる魚介系の魔物や「蛙人魔」と呼ばれるカエル人間が存在している。

・迷宮階層
ハッコンが不慮の事故で落ちてしまった階層。
迷路が張り巡らされており、階層主に辿り着くのはこの迷路の攻略も欠かせない。
階層主は炎巨骨魔という巨大な骨のみの魔物。

・始まりの階層
清流の湖階層よりも1段上にある階層。
シュイの孤児院もそこにある。

・亡者の嘆き階層
迷宮階層より下にある階層。
魔物はアンデッド系が多く。怖いものが嫌いなラッミス(やフィルミナ)は苦手意識を抱いている。

【テレビアニメ版】


2023年7月~9月にアニメ第1期が、2025年7月~9月にアニメ第2期が展開されている。
1期は第1章から第3章の内容をベースにアニメ化がなされている。

アニメーション制作はStudio五組とAXsiZ。

(主題歌)

1期

OP:「ファンファーレ」BRADIOによる第1期オープニングテーマ。
ED:「いつものスープ」Peel the Appleによる第1期エンディングテーマ。

2期

OP:「未来サイダー」BRADIOによる第2期オープニングテーマ。
ED:「僕だけの地平線」相羽あいなによる第2期エンディングテーマ。

追記・修正は自動販売機に転生してからお願いします。

この項目が面白かったなら……\ありがとうございました/

最終更新:2025年07月20日 22:39

*1 新装版の刊行を契機にイラストレーターが変更された。

*2 後述のようにラッミスに担いでもらうことで移動できるようにはなるが。

*3 一応意志はもっているし前世の記憶は存在している。

*4 その外観も販売されれている商品も何もかも受け入れられる程、生粋の自販機好きである。

*5 これにはハッコンが前世で様々な自動販売機を探す旅をしていたことから、その経験も多分にあるのだろう。

*6 ハッコンと出会う前は「女の子っぽい加護がよかった」と時折口にしていたとか。

*7 実力はトップの魔王から数えて三番手程だという