岸辺露伴は動かない 〜エピソード16‥懺悔室〜

登録日:2011/09/18(日) 19:09:04
更新日:2021/01/03 Sun 12:36:26
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1997年に週刊少年ジャンプに掲載された読み切り作品。原作は岸辺露伴、漫画は荒木飛呂彦
荒木の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない』の登場人物である岸辺露伴を主要人物に据えた作品。

週刊少年ジャンプで行われたリーダーズカップに参加した作品の一つ。
この企画には「外伝禁止」というルールがあるのだが、タイトルに『ジョジョの奇妙な冒険』が入っておらず、
『ジョジョ』を知らなくても問題ない内容のためか、掲載された。

タイトルの「動かない」というのは岸辺露伴は主人公ではなく、物語の語り部という意味。
英語版の「岸辺露伴は動かない」のタイトルは「Thus spoke Kishibe Rohan.(岸辺露伴はかく語りき)」となっており、彼の立場が「語り手」であることが強調されている。


後に荒木の短編集『死刑執行中脱獄進行中』に収録され、収録作品の中で唯一の少年誌からの作品となった。

2013年にはその他の岸辺露伴を主人公とする外伝作品として、同じく「岸辺露伴は動かない」シリーズより六壁坂富豪村密漁海岸、そしてグッチ設立90周年兼荒木氏の執筆30周年記念作品として「SPUR」に掲載された特別編、岸辺露伴 グッチへ行くの4編と共に「岸辺露伴は動かない」という外伝集コミックスに収録された。


◆あらすじ
ま……知ってるヤツが多かろーが少なかろうがどうでもいいことだが

ぼくの名は岸辺露伴 マンガ家だ

以前ぼくは「ピンクダークの少年」という作品を少年ジャンプに連載していたことがあり………

あの傑作を読んでないからって編集部に電話するのはやめてくれ

ま…ある事故によるちょっとした負傷のため執筆をひと夏ほど中断したことがあったんだ

その中断期間中ストーリー新展開の取材のためぼくはイタリア旅行に行きヴェネツィアに8日間ほど滞在したことがあった

これからここに紹介するエピソードは

その時にこの岸辺露伴が偶然取材した不思議な話であり『実際にこの耳で聞いた』恐怖の出来事なのだ



◆登場人物
本編と変わらずやりたい放題な漫画家。タイトルに名前があるが主人公ではない。そしてタイトルに動かないとあるがイタリアへ取材に行った。

教会の懺悔室に興味を持ち、撮影禁止でありながら何十枚も激写していた。

体験はリアリティを作品に生むという考えの元でプライバシーが守られている懺悔室に入る。
神父が入る部屋に意図せず入ってしまい、*1そんなことは知らずに呑気に懺悔の内容を考えていたらある男が告白しにやってきてしまったが、
ここぞとばかりに自身の好奇心に従い前出の通り体験すべく、殺人と裏切りと恨みのエピソードを聞く事になる。

ヘブンズ・ドアーは登場しない。ただ男の話を聞くだけなので使う機会は一度もなかった。


  • 告白した男(CV:高橋広樹)
露伴を神父だと思い自身の罪を告白した本作の主人公。荒木先生に気に入られている。

24歳の時、トウモロコシの食品市場で残業していた彼の前に突然飢えた浮浪者が現れ、弁当を分けてほしいと頼まれるが、
浮浪者をただの怠け者と決めつけた男は食べ物を報酬として力仕事を無理に押し付け、数日間絶食状態だった浮浪者を死なせてしまう*2

自分を恨んで死んだ浮浪者の幽霊に「幸せの絶頂の時に迎えに来る」と告げられるが…。


  • 浮浪者(CV:樫井笙人)
残業中だった『男』の前に現れた、東洋人の浮浪者。

数日間何も食べられずにいたため、『男』の弁当を分けてほしいと懇願するが、
仕事を手伝うことを交換条件に出され、空腹のあまりふらつきながら働き始めるもすぐに力尽き倒れてそのまま死亡する。

『男』の心ない仕打ちで死に追いやられたことを恨み、霊魂となって『男』に「幸せの絶頂の時に迎えに来る」と告げ、いずこかへ消えた。



以下ネタバレ注意










この事件の後、『男』は信じられないほどの幸運に恵まれ、巨万の富を得るだけでなく、スーパーモデルと結婚し、可愛い娘も生まれた。
しかし、死んだ浮浪者の言葉が頭の片隅に残っていた『男』は、あり得ないほどの「バカつき」にむしろ不安を覚える日々を送っていた。

そんな中、召使いを連れて愛する娘と公園でのどかな時間を過ごしていた『男』が、
ふと「自分はなんと幸せなのだろう」と考えたその瞬間、豹変した娘に首を絞めつけられた。
死んだ浮浪者の霊が、娘に取り憑いて『男』を迎えに来たのである。


浮浪者の霊は、「今まで『男』が享受してきた数々の幸運は、今この瞬間のために自分が与えた」と告げ、復讐しようとするが、
『男』の「逆恨みはやめてくれ」という言葉を受け、『男』に逆恨みと思われたまま復讐を遂げるのは自分の本懐ではないとし、
自分の行為が逆恨みか、それとも正当な復讐かを天に委ねるために、『男』に運試しのゲームを提案する。

それは、取り憑いた娘が持っていたポップコーンを『男』が浮浪者の霊の合図で高く放り投げ、地面に落とすことなく口に入れられるかというもの。
三回連続で『男』が成功すれば、自分の行為は「逆恨み」と神が判断したと見なして浮浪者の霊は消え、『男』は死なずに済むが、
一度でも失敗すれば自分の行為は「正当な復讐」と判断されたと見なして浮浪者の霊が『男』を殺すというデスゲームであった。


『男』は二回目までアクシデントに見舞われつつも成功させるが、三回目で自分の策が裏目に出る形で失敗。
自分の行為を神は「正当な復讐」と判断したと見なした浮浪者の霊に『男』は首を切断されて死亡。

復讐を果たした浮浪者の霊も、取り憑いていた『男』の娘から離れ、昇天していった。



以下更なるネタバレ注意
















衝撃的な告白に驚く露伴だが、同時にある疑問が彼の頭をよぎる。
件の『男』がその出来事で死んだのであれば、今自分にそれを「自分の罪」として告白した男は一体誰なのかと。


こっそり男がいる部屋を覗くと、そこには、懺悔していたと思しき中年男性と、
その足元にいる、胴体と首が分かたれた若い男と件の浮浪者らしき男の幽霊がいた。

浮浪者の言葉をずっと覚えていた『男』は、富豪となって雇った召使いのうちの一人を金で釣り、整形手術でお互いの顔に整形していた。
いつか自分を迎えに来るであろう浮浪者の霊の復讐に備え、召使いを自分の影武者とすることでその矛先を自分から逸らそうとしたのである。

※なお、件の復讐直前に娘に話しかけている『男』と召使いのフキダシの位置や、浮浪者にしたことを覚えているにしては『男』(実は召使い)の台詞がおかしい*3等、
注意深く見ると『男』と召使いが実は入れ替わっていると思しき描写がちりばめられていることが分かる*4

その結果、『男』は目論見通り浮浪者の霊の復讐の矛先を逸らして生還することに成功したが、知らないまま影武者にされた挙句身代わりで殺された召使いに当然恨まれ、
自身の「正当な復讐」を台無しにされたことで天から戻ってきたらしき浮浪者の霊と召使いの霊から、「『男』の娘が幸せの絶頂を迎えた頃に復讐する」と告げられ、
今度は影武者を立てるなどの対策を『男』が立てることがないよう、四六時中彼らに見張られる羽目になった。  


露伴は、男の行為そのものは『悪』であると理解しつつも、悪霊に取り憑かれながらも生きようとするその男に対し尊敬の念を持ち、いつか取材に行きたいと考えるのであった。



◆余談
16年越しの2013年11月、とうとう「岸辺露伴は動かない」の単行本が発売された。
その際に荒木飛呂彦先生本人のこぼれ話によると、本作は編集部からの45ページ以内の短編の依頼で、「スピンオフ・外伝は禁止」という条件の元での執筆だったとのこと。
そして出来上がったのがスピンオフ作品の本作であった。さすが荒木先生!俺たちにできないことを平然とry

ちなみにもちろん当初は露伴なしバージョンでも描いたのだが、解説がいないと「香りのない食事のようになってしまう」ということから露伴を出したということ。

ちなみにリーダーズカップの企画で発表された10作品のうちルールを破ったのはこの作品のみである。

結果としてこの「スピンオフ禁止令」がなければ「岸辺露伴は動かない」シリーズはなかったので、先生本人は今となっては感謝しているという。




荒らしに遭いながらもあきらめず孤独に項目を編集するアニヲタ…

彼は変態だと思うがそこのところは尊敬できる…

そう思うのはぼくだけかもしれないが…

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最終更新:2021年01月03日 12:36