登録日: 2025/11/20 Thu 01:14:04
更新日:2025/11/20 Thu 01:58:15NEW!
所要時間:約 36分で読めます
内なる痛みが血と共に剥き出され、残るは伽藍と化した己が虚像。
概要
始めに断っておくと、この記事はとにかく長い。ほとんどが挿入された日誌と記録から構成されるストーリー性の強い記事となっている。
実際に見てもらったほうが良いが、数多の折り畳まれた情報がずらっと並んでいるので、同作者であるdjkaktus氏の[[SCP-1730]]とまでは行かないまでも、見てるだけで億劫になる。
なので、今回は挿入された日誌の中から、より分かりやすく、説明しやすいストーリー文体で書き出させて頂く。
また、
認識災害け3/rい告:
当文書にアクセスする全人物の安全のため、特定の名前は回収されています。これらの名前には今後利用不可能です。
とのことで、一部の人物名は全て置き換わっている。一部文字化けしているが仕様なのであしからず。
説明
SCP-5935は、いわゆる場所形オブジェクト。南極海に存在する、超巨大で平坦な大都市を模した陸地で構成される異次元空間である。その内寸は明らかに通常の外寸では考えられないほど膨大であり、正確なサイズは測りきれないとのこと。
大都市は『パンデモニウム』と呼称され、確認できるだけで奥を越える単位で同一の超高層ビルやタワーが並ぶ。全てのビルが430m級であり、タワーに至っては1.12kmを越えている。総人口は確認出来ていない。
外部からこの空間に近付くことは不可能であり、正確な存在の調査はできない。加えて常に濃霧で包まれているため、境界線を越えると視界が遮られる。
特別収容プロトコル:
ポイント・アレフへの進入は、SCP財団監督評議会のメンバーに制限されています。進入規制は機動部隊アルファ-1("レッド・ライト・ハンド")により遠隔で維持されています。
いかなる状況においても、いかなる人物も許可なくSCP-5935に進入することは禁止されます。許可なくポイント・アレフを通過しようとする人物はその場で破壊されます。
………ここまでは接近出来ないだけの場所形オブジェクトである正直大した事ないな!
しかし、どういうわけかSCP-5935の存在する目的は判明している。
この『パンデモニウム』内に存在する実体、SCP-5935-1を収容するためである。
ここでのSCP-5935-1に関する情報の記載はない。補講では意図的にまだ触れないように注意書きが成されている。
日誌#1〜#7
ここから、明らかに個人に関係する情報、すなわち日誌が挿入されている。なぜこんなものが報告書に記載されているのかは不明だが、とにかく分かりやすく説明していく。
メインとなる登場人物は、あるO-5の男。報告書では数字が記載されてないが、ここではO-5-■(記録内では赤色で区別されている)として記載する。
その日誌内では、O-5-■の息子であったジェイコブが、若くして病死した後に、幼い頃に住んでいたミシガン州の老いた樹木の下に埋葬された場面から始まる。
親しくしていたマン博士や、同僚のO-5-2とO-5-9、"レッド・ライト・ハンド"のメンバーなどが弔いに来るなどの暖かい場面が見られるも、O-5-■と妻エリサはすっかり憔悴しきっていた。
ジェイコブの病気を直すため、約5年間の間であらゆる治療方法を探したが徒労に終わり、今では弔いに来てくれた友人たちの言葉さえも悪意あるものに感じる始末。
彼らの言葉の裏に、財団のトップであるO-5という責務があるにも関わらず、家庭をもうけていたことに対する不信感と軽蔑を感じ取っていた。
しかし、すでに心に穴が空いてしまっていたO-5-■には何の意味もなかった。ただ逝ってしまった息子が恋しかった。
妻エリサは精神が不安定になっていき、ベッドに籠ったり、大雨のなかに飛び出していくなどの行動が見られていった。
やがてO-5-■も悪夢をみていくようになる。夢の内容は、親しい友人や同僚の顔面が次々と変化していき、やがてジェイコブの声が聞こえる始末。
不安定な妻を支える中で、O-5-■は考える。今の自分に何が出来るのか。
そして続く悪夢の中で、いつの間にか『自然と囁きの地』に立っていた。その向こう側から招かれる声に従い、そして森を抜けた先にある丘.......。
O-5-■は決心した。息子ジェイコブを取り戻すと。もう一度妻エリサと共に幸せな生活を取り戻すために、財団のトップに位置する者としては、禁忌に値する行為に手を染めることを。
補遺5935.2: 収集された音声記録
[データ削除済]
じゃあ。彼は生きてるんですか?
[データ削除済]
奇跡的ながら、そう。
[データ削除済]
それなら安心しました。今彼はどこに?
[データ削除済]
彼はサイト-301の医療センターに移された。私の理解では、今のところ彼は隔離されている。
[データ削除済]
合理的な話ですね。
[データ削除済]
ええ。合理的にそう。最初に彼と一緒にいた数人を寒気が襲い始めると、残りの人は安全な境界の外に退いた。
[データ削除済]
じゃあ彼は今独りなんですか?
[データ削除済]
その…… 言いようによっては。
[データ削除済]
何のことで?
[データ削除済]
彼は何を持っていった? あるいは、何を持ち出した?
[データ削除済]
同じじゃないですか?
[データ削除済]
……言いようによっては。
[データ削除済]
もういいです。あなたと話してると疲れます。
[データ削除済]
じゃあそんなに固くならないで。そうすればもっと楽になるよ。
[データ削除済]
そうですね。その通りです。(休止)よし。良くなるはずです。
[データ削除済]
その通り、とっても良くなる。
[データ削除済]
それで、何のことです?
[データ削除済]
私たちは名前について大変注意せねばならないのは理解しているかい?
[データ削除済]
当然です。
[データ削除済]
では私がはっきりと言えないことはおわかりだよね。彼が入った時点でそれが何であれ、それは今や違うものになっている。
[データ削除済]
どう違うと?
[データ削除済]
変わった、ああいうのがよくやっているのと同じ要領で。
[データ削除済]
あぁ、もっとゆっくり頼みます。私はその言葉に傷ついています。
[データ削除済]
ごめん。久しぶりなもので。
[データ削除済]
わかってます、そのことであなたを責められません。準備してなかったこちらにも責任はあります。(休止)変わった、それで?
[データ削除済]
うん、変わった。さまよえる森を永遠に踏みしめる者が、彼の行った場所に行くなと警告した時は、彼はもっと分別があったはずだ。
[データ削除済]
そいつは一体何者ですか?
[データ削除済]
(笑い)またまた御冗談。そんなに簡単にこれは探り出せないよ。
[データ削除済]
失礼しました、やってみなければならなかったので。これについてもっと私がどれだけ-(休止)どれだけ引き出せるかわかりませんでした。
[データ削除済]
わかってる、ご心配なさらず。すぐに終わらせる。(休止)いや、名もなき境界線の手前の場所の端には、外に棲む者でさえ話そうとしないものがある。古きもの。決して名付けられたことのないもの。どこで彼が自分のしたことを知ったのかはわからない - 恐らくテンが洩らすべきでないものを洩らしたのだと思うけど、それでも彼はどうやって知ったのか、ああでもない限り……
[データ削除済]
どうでもない限り?
[データ削除済]
(休止)それは重要じゃない。これについては、憶測すべきじゃない。憶測は真実を知ることと同程度危険になりえる。
[データ削除済]
それはそうですね。(休止)では、もっと速くお願いします。
[データ削除済]
うん、もうすぐ終わり。
[データ削除済]
もう一つ理解していないことがあります。
[データ削除済]
ふうむ?
[データ削除済]
彼が何をして、どこに行って、何と心を交わしたのか - そもそもそこに着くのに何をしたのか…… その、彼がどうやったのかほとんど想像できません。
[データ削除済]
同意だね。ほぼ不合理な話だけど、彼はいつも特に立ち直りが早い人だった。
[データ削除済]
そうです、でも…… その困難はそこにたどり着くのと同じくらい-
[データ削除済]
待って、これは-
[データ削除済]
(息を呑む)
[データ削除済]
ええ。(溜息)待ってくれてありがとう。
[データ削除済]
どうも。
[データ削除済]
遮ってしまい申し訳ない。何か言いかけてたね。
[データ削除済]
今のはただ… どうやって彼が抜け出せたのかがわからないという話です。
[データ削除済]
(休止)
何故彼が出たと思うんだい?
回収された対象分析
ここからは、ある実体について解説する。以後、その対象を5935-H01と呼称する。
この5935-H01は重症と過度の栄養失調に陥っているが、どういうわけが状態は回復傾向にあるとのこと。
問題なのは、この5935-H01こそ、上記のO-5-■の息子ジェイコブその人であったこと。
ジェイコブは明らかに死亡していたのだが、O-5-■が絶望のなかでとったある行動によって、埋葬された状態から掘り起こされ、何らかの方法で蘇生したらしい。
現状は意識を回復していないが、異常な速度で回復している。意識を取り戻すのは時間の問題であった。
なお、5935-H01に輸血する途中、輸血パック10個分に相当する大量の血液が噴出し、以後は輸血が停止した。
この血液は通常の成分と異なり、『黒く、粘性で、強烈かつ不快な臭気』を放っている。
これらの異常から、5935-H01をEuclid収容クラスの適用が提案された後にSCP-5935、Euclidクラスの人型実体に分類され、確保収容施設に移送されることになったのだが、ここからSCP-5935の処遇が右往左往する。
当初、監督者命令により収容施設から移動されるはずが、また再収容された後に、別の監督者命令で移動されることになったりしている。
……ここで登場する後者の監督者とは、SCP-5935-1(ジェイコブ)の父、O-5-■である。
補遺5935.5a: 自動緊急ミーティング転写
以下は、O-5-■と女性のO-5-■■との会話である。
O-5-■が行ったある行動で評議会は阿鼻叫喚の状態であった。あるものは私欲に走ったO-5-■を解任するよう提案し、それを防ぐためにO-5-■に親しいものが反対の決議を出すなど、事態は紛糾の最中であった。
しかし当人であるO-5-■は涼しい顔をしている。成すべきことを実行したO-5-■は既に無敵の人状態であった。同時にO-5-■■にSCP-184(建築物に閉じ込められると内寸を日数的に拡大し続ける金属物体。)の在りかを聞く始末。
所在を知らないO-5-■■は困惑し、既にあと二票で可決されることを伝える。
同時に、今現在11名のO-5が危惧していることを伝える。
彼らは恐れていたのだ。O-5-■が行った場所で見たものを。
沈黙の後に、O-5-■は息子ジェイコブの話題を出した。
どうやら亡くなったジェイコブはO-5-■が行った場所から連れ出したとのことが記載されており、他のO-5たちはO-5-■が無責任で背徳行為をしたこと、O-5-■が何か隠していることを追及しようとしているとO-5-■■は伝える。
さらに欠席しているO-5の一人がジェイコブをSCPオブジェクトに認定し、別のサイトに移動させようとしていることを伝えられたO-5-■は、すぐさま自身の権限で移動命令を停止させた。
これが上記のジェイコブがSCP-5935-1に認定された際に、移動するか否か記載された情報の前者の部分である。
ここまでの記載された情報量で、O-5-■が何らかのオブジェクト、または異常に関連するモノを利用してジェイコブ(SCP-5935-1)を取り戻したことが伺える。
………言うまでもなく、O-5とはSCP財団における最も重要な機関であり、オブジェクトの危険度や情報を取りまとめている所である。
その一部がこのような問題行動を引き起こしている時点で、すでに事態は最悪の方向へ流れ始めていた………。
ジェイコブの暴走、そして監督評議会緊急ミーティング、再び
医療評価中、ジェイコブが目覚めたことに気付いた博士と看護婦が、彼に質問を投げ掛けていった。
ところが突如、ジェイコブがウォレス博士の名札を呼んだ途端にウォレス博士に『変身』、その二人を見てしまった看護婦は精神に異常をきたし死亡。
ある看護士は操られたようにジェイコブ(SCP-5935-1)の拘束を解いてしまう。
ナイフを振り上げたあるものは、ジェイコブの心臓にむけたナイフが逆に自分の心臓から突き出てきて死亡。ナイフはジェイコブ(SCP-5935-1)に渡り、残った博士を刺殺する。
最後に駆けつけてきた看護婦も変身したジェイコブ(SCP-5935-1)と博士の遺体を目撃し、精神が影響を受けて死亡してしまった。
この緊急事態に急遽執り行われるO-5のミーティング。
シラを切るO-5-■に対し、親しいO-5-■■が多数票の権利を放棄、それをO-5-■のやっていることを暴こうとするその他の一人のO-5に譲渡していたことが判明。
これで保っていた票の均衡が崩れ、権限を剥奪されそうになるO-5-■は、それでもジェイコブ(SCP-5935-1)をあきらめられない。自らの拒否権を行使する姿勢をとる。
あるO-5がジェイコブ(SCP-5935-1)はドッペルゲンガーだと伝え、他者の姿かたちを真似ることが出来るのだと説明する。
あるO-5は、ドッペルゲンガーとオリジナルの両方を同時に見た場合、精神に影響を及ぼし死に至らしめ、すでに四人の医療従事者が亡くなったことを。
あるO-5は、医療従事者の一人が、刃をジェイコブ(SCP-5935-1)の心臓に向けたら、逆に当人の心臓から刃が出て来て返り討ちにされたことを。
そんな危険実体が他のスタッフに化けたらどうなる?
ましてや評議会のメンバーに成り済ますかも知れない。他の危険なオブジェクトを解放したり、敵対する組織に手を貸す可能性もありうる。
O-5-■■以外のO11人のO-5たちが追及する。O-5-■が見たものを。一体何をしてしまったのかを。
沈黙の後にO-5-■は語り始めた………。
丘があった、その頂上で道は終わっていた。下にはアイデアがあった、祖先たちでさえ忘れていたアイデアが。喪失と絶望の罪悪感が沈み凝固する場所、そしてその場所には一つの問いがあった。
繰り返される悪夢のなかで、琥珀色の光のような存在とであったことを。
その存在から息子を生き返らせる方法と場所を教わったことを。
その先にある、妖精と呼ばれるものたちが生まれるもっと以前の太古の存在に関するもの。地球が生まれる以前の、そもそも星々が誕生するまえからある『ナニカ』の証拠を。
そもそもSCP-4000内の森はその太古の存在に関するモノを隠すための場所であり、妖精たちは逃亡先として、しぶしぶ森に入ることを選んだことを。
そしてO-5-■は掘り起こされたジェイコブの亡骸を使い、何かを行った。詳しいことは覚えていないが、それでも気付いたら元の生きたジェイコブが側にいたことを語った。
自身の行為を正当化するO-5-■もうメチャクチャだ
当然ながらそんなことはあってはならないし、許されることでもない。
とうとう、女性O-5を除く11人のO-5たちのは、O-5-■をその座から解任することを宣告するが、拒否権を持っているO-5-■は断固として拒否。既に管理下においているジェイコブ(SCP-5935-1)を奪わせないと宣言する。
やむなくO-5たちは一度ミーティングを切り上げることに。その間、O-5-■は今いるサイトに勾留されることになった。
その間にも、ジェイコブ(SCP-5935-1)のインタビューが実施。
能力に対応するため、実体から見えないように離れた位置で行い、同時に記憶補強材の点滴による投与により、ジェイコブがSCP-4000の奥で見たものを聞き出そうとすることに。以下はその記録である。
ムーア博士: 君は暗闇の中で何を見たのかな?
沈黙。
ムーア博士: ジェイコブ君。
SCP-5935-1: 2つの光。いつも一緒、いつも2つの光。1つはそうで、もう1つは違う。一緒に揺れてる。いつも2つ。
ムーア博士: もっと教えて。
ローゼンシュタイン博士: 失礼しますドクター、よろしければ私が。
ムーア博士: 頼む、是非とも。
ローゼンシュタイン博士: ジェイコブ君、そこの最初のエコーは何だったのかな? 最初の光? それとも二つ目の? それともいつも一緒だったのかな?
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ムーア博士: 妙だな。
ローゼンシュタイン博士: 大丈夫ですドクター、ここからは私が引き継ぎます。最初にエコーした光はどれかな?
SCP-5935-1: 何? そんなの覚えて…… 覚えてる、2つの光、いつも一緒なの。何か見てる。何か古いもの。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ムーア博士: 申し訳ないがドクター、ちょっと気分が悪い。
ローゼンシュタイン博士: 全く問題ありません。ジェイコブ君、下る時に何歩下ったのかな? 数えられた?
SCP-5935-1: いや…… とっても多すぎて、数えてない……
ローゼンシュタイン博士: なるほどなるほど。でもいつも2つ、だよね? 暗闇の中で揺れて?
SCP-5935-1: 琥珀色。丁寧に作られた電球みたい。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ショー博士: ドクターさん方、あんまり手間取らせないなら-
ローゼンシュタイン博士 頼みます、いってください。
ムーア博士: 私…… ああ…… 待て-
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ショー博士: 君は何回自分の名前を失った、ジェイコブ?
SCP-5935-1: 僕の名前?
ショー博士: そうさ。あまりに何回も何か失くしてたとしたら、それでもそれは君のと言えるのか?
SCP-5935-1: ジェイコブ…… 違う…… パパ?
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ムーア博士: (喉を鳴らして)……同意…… 同意できない…… うあぁぁぁ…… そこにあるべきでは-
ローゼンシュタイン博士: じゃあ君は何を覚えているんだい、ジェイコブ? いくつの光?
ショー博士: 何段の階段?
アクタス管理官: いくつの光?
マン博士: いつも2つ?
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
SCP-5935-1: いつも2つ?
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
SCP-5935-1: いつも2つ?
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
SCP-5935-1: いつも2つ?
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ムーア博士: いつも2つ。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
ドアが開き、そして閉じる音。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
厚く、重いものが地面に当たる音。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
点滴ディスペンサーが鳴り、投与量の増加を知らせる。
[記録終了]
…………博士たちやられたな。そして明らかに能力が明らかに強力になってきている。
続いて見てほしいのはとある音声記録。
[データ削除済]
我々が財団で神について話すとき、その対象は壊れたる神とか、肉の神とか、夢の神とかを指す。何かしらの面でアイデアの神なんだよ。壊れたる神は秩序の神、肉の神は生殖の神、といった具合に。それから創造神がいれば、死の神もいる。などなど、終わりのない神性のパレードだ。
でも、最初の人類が新しい神々と共に、その黄金都市でパンを裂くよりもずっと前からいた存在がある。宇宙が形成される前に形作られた存在、ひょっとしたらそれより更に古いかもしれない存在。それらを「実体」と呼ぶのは不正確だ。それらは君や私と違って存在してないんだ。それらは本物じゃない。それらは問いであり、その答えは光と命となって湧き出た。決して存在したことのない声の。形のないエコーなんだ。
[データ削除済]
エコー。
[データ削除済]
それらは問いだ。答えられれば、存在をやめた。その全てが、一つずつ、その答えが証明されるたびに無意味なものへと消えていった。
[データ削除済]
それではあれは何だったのですか? あの場所には何があったんですか?
[データ削除済]
決して聞くべきでない問い。隠れて見つからなかったのは、そういう仕組みだったか、ひょっとして全くの幸運だったか。忘れられていた問い、一人の絶望した男があの静謐の森で迷い、見つけたその日まで。妖精がそこに置いておいたんじゃない。彼らは多分そんなものがそんなところにあったなんてすっかり忘れてたんだ - 自分たちの安全を保つために必要なことを忘れてたんだ。
[データ削除済]
どうしてあなたはこれについてそんなに詳しいというのですか?
[データ削除済]
指定のない場所に暗い部屋があり、そこには1マイルの岩と鉄の下に墓石が眠っている。その墓の中には生き物がいる。かつては美しく威厳があったやもしれないが、せいぜいそれの存在する場所とほぼ変わらないくらいに衰えてしまった何かが。彼らはそれを埋めながら、自分たちは賢いと思った。だが私は入口を知っている。私は最後の夜闇の王(the Last King of Night)の眠る場所へと下る道を見つけ、そして聞いた。彼は言葉を発さないが、物を教えてくれる。私はこうして知ったんだよ。
沈黙。
[データ削除済]
君の疑問は晴らせたんじゃないかな。多分君はもう、私みたく理解し始めてるとこだろう。多分、君は2つの点の間に引かれた1本の線を見ていて、それらがぶつかっていない隙間が、肉に熱い金属を当てたときみたいに心を水膨れさせてるんだ。彼はその場所を教えて、だから私はあの日、見に、目にしに行ったんだ。知らねばならなかった。彼は探し物にとても近付いていた。もしその道をまっすぐ進み続けていれば、見つけられたかもしれない。息子を取り戻せたかもしれない。でもその道は私が彼に行ってもらわないといけないとこには繋がってなかった。だから私もあるものを捨てたんだ。君のだって捨てたさ。君にはもういらない。これ以上ね。そしてその価値があった。
彼はちょっとでも考え直したんだろうか。彼はちょっと立ち止まって自分のしたことを理解しようとはしたんだろうか。多分そうやって気を逸らしたからこそ生き延びられたんだろう。彼は魂と引き換えに死んだ妖精の神と取引でもしてると思ってたんだろう。可哀想なお馬鹿さん。もう存在しないものと取引なんてできないよ。全部犠牲にして、受け取ったのは全く違うもの。
もう気付いてるかな。
会話の話し方から、質問している方がO-5-■と親しいO-5-■■であることが推察できる。どうやら既存のクリアランスを超越したデータを盗み見していたところを何者かに見つかったらしく、しかしそれを罰せられるどころか流暢に解説を受けている。
とにかく、この人物の説明によると、
- 世界、もっといえば神的実体と呼称されるモノが誕生する前から、宇宙の誕生以前のレベルで、この財団世界に居た『ナニカ』があった。
- その『ナニカ』は存在という確証たるものではなく、もっとあやふやなもの。いわゆる『形のないエコー』のようなものなのだという。
- それらはかつて確かにあって、そこから宇宙が生まれたとのこと。
ちなみに会話のなかで出てくる『夜間の王(ビッグフット)』だが、地下に存在し、物を教えてくれるくらいには親切な描写から、恐らくはSCP-6765(魔性のオジエとマリドラウグの血の玉座)に登場する実体、SCP-6765-Cの可能性が高い。
ここまでの情報を握っているならば、もしかしたらこの謎の人物は、O-5より上の立場に存在すると言われる人物『管理者』なのかもしれない。
そしてついに事態が大きく動くことになる。
補遺5935.10: 機動部隊アルファ-1緊急派//.2?
ジェイコブ(SCP-5935-1)が監督者命令、言うまでもなく父であるO-5-■により、収容器から移動される事態が発生。
すぐさま機動部隊アルファ-1(レッド・ライト・ハンド)が現場へ駆けつけるも、なんとそこには逃げたはずのジェイコブ、いな、SCP-5935-1がそこにいた。戦闘に移るも、瞬く間に部隊は壊滅。
そしてSCP-5935-1は語りだす。
[ジェイコブ] 初めには言葉があった
[ジェイコブ] そして言葉は神と共にあった
[ジェイコブ] そして言葉は神であった
[ジェイコブ] 全てのものは彼により創られた
[ジェイコブ] そして彼がいなければ全てのものは創られなかった
[ジェイコブ] 言葉は神であった
[ジェイコブ] そして全ては神の中にあった
[ジェイコブ] ただ一点に
[ジェイコブ] 一つの名前
[ジェイコブ] 神
[ジェイコブ] だが彼を受け入れた数多の者に、彼の名前を信じる者にさえ、彼は神の子となる力を与えた
[ジェイコブ] 彼の名前
[ジェイコブ] そして彼らは新世界に広がった
[ジェイコブ] 彼が創った世界
[ジェイコブ] 彼らは互いに名前を与えた
[ジェイコブ] そして彼が創った世界に名前を与えた
[ジェイコブ] そして動物
[ジェイコブ] それは血のものとしてでも、肉の意志によるものでも、人の意志によるものでもなく、神のものとして生まれた
[ジェイコブ] 神の名前
[ジェイコブ] そして言葉は肉となり
[ジェイコブ] そして神の名前に
[ジェイコブ] 一つの神が
[ジェイコブ] 数多の名前となった
[ジェイコブ] 地を歩く全ての生き物の
[ジェイコブ] まだ目覚めていない全ての者の
[ジェイコブ] そしてかつて名を与えられたことのない遠きものたちもまた、名前を持った
[ジェイコブ] そして言葉は神であった
[ジェイコブ] だが言葉は衰えた
[ジェイコブ] そして名前は衰えた
[ジェイコブ] 何故ならかつて一つの名前と一つの神であったものは
[ジェイコブ] 今や数多の名前に
[ジェイコブ] そして数多の神になる
[ジェイコブ] その時代の全てのものに名前が与えられると
[ジェイコブ] 新たな神が形作られた
[ジェイコブ] 数多の名前の神が
[ジェイコブ] そしてこの新たな神の威光は暗闇の中で輝き
[ジェイコブ] 全ては名前を与えられた
[ジェイコブ] しかしまだ古き言葉が存在している
[ジェイコブ] 全ての名前が与えられたその場所
[ジェイコブ] 今や意味はなく
[ジェイコブ] 目的のない機能となり
[ジェイコブ] これまでに存在した全ての顔
[ジェイコブ] そして存在しなかった顔を全て映す暗き鏡
[ジェイコブ] しかし顔は鏡を捨てることはない
[ジェイコブ] そして名前は鏡を捨てることはない
[ジェイコブ] やがてそこに戻って来る
[ジェイコブ] そして言葉は神と共に在り
[ジェイコブ] そして言葉は神となり
[ジェイコブ] そして言葉は入っていく
[ジェイコブ] 不明なエラー
[ジェイコブ] 私は君が僕だと思っていたものじゃないんだパパ
[ジェイコブ] 君は私に何か嫌なものを入れた
[ジェイコブ] そして私はもう私じゃない
[ジェイコブ] 私は君だ
[ジェイコブ] そしてみんなだ
[ジェイコブ] 僕は間違えられたんだよ、パパ
場面は変わって、O-5-■はある場所で妻エリサを探していた。恐らくは逃亡するために妻を迎えにきたのだと推察できる。
ちなみに会話の内容から、何かしらの明かりがない建物の中ということが推察できる。
あと少しでエリサに会える、そう信じた矢先にエリサの声は、息子ジェイコブ、否、SCP-5935-1へと変わり、驚愕する。
既にSCP-5935-1はエリサに姿を変え、その命を奪っていた。
O-5-■はSCP-5935-1に問う。お前は何者だと。
SCP-5935-1は語る。
私? 私なんてものはない。これは空っぽ、かつて名前があった場所だ。ここに君が認識できるものはない。最初からそこになかったものを認識することはできない。
君は私を擬人化している。すべきでもないのに。君はそうなるはずだと信じてるから、言葉が聞こえるし、顔が見える。この顔たちは、この言葉たちは、君のじゃない。君に与えられたものなんだ。つまりはどこかから取って来る必要があったってこと。
それがどんな感じか想像したことはある? 恐らく検討さえしなかったことだろう。それはいつも君と一緒だったから、当然のものと思っていた。
O-5-■は思い出した。自分たちを導いた存在を。
お前…… お前を知ってる。前に会ったことがある。お前は暗闇の中の声、琥珀色の光だ。それがお前だったんだ。
お前はあいつを私に返してくれると言った。あいつの命を取り戻してやると言った。
SCP-5935-1は返答する。
私は彼が歩いて呼吸できるようにしてあげるって言ったんだよ。嘘はついてない。これは彼の身体だ。君の目からも、誰の目からも私のだ。
自身が騙されたことを理解してしまったO-5-■、そして聞き返す。お前は何者だと。
私はIS(イズ)の最後の子供で、始まりの時からあそこにいた。私は問いであり、まだ答えられてないけど、不明と不確かさの中で意味を与えられた。私は孤独な郵便配達員。私は忙しい経営者。私はシングルマザー。私は財団の監督者。
そうしてSCP-5935-1は妻エリサ、息子ジェイコブ、O-5-■の姿へと形を変えていく。まるで後悔に項垂れるO-5-■を愚弄するかのように。
目的はなんだとO-5-■が問う。
十分らしい答えは返せないな。君は苦しんできたけど、まだ苦しみと言う名の長い道のりのほんの始めなんだ。君は私に血を分けてくれて、そして今は君の血を息を吸う全ての存在に分け与えよう。もう彼らの心臓は見えるし、彼らの言葉で話せるし、彼らの肺で呼吸できる。彼らの血と私たちの血は一つになり、私たちの名前はまた一つになる。全ては、ただ二つになるまで元に戻る。君と私。
全ての人類を抹殺する。そしてその姿を全て得ることで完全になること。それがSCP-5935-1の目的であった。
自身の目的は正しいと豪語するSCP-5935-1。
しかしO-5-■が待ったをかけた。
お前を手伝ってやると。従ってやると。
驚くSCP-5935-1、何が望みだと問う。
O-5-は要望を一つだした。それさえ叶えてくれれば、自分の名前を差し出すと。
お前は他全員のために維持しておかなきゃならないこのアイデンティティの錯覚を持ち続ける必要すらない。それはお前のだ。
そのことについて考えているんだ。そうすればお前を見通せる。それは錯覚なんだ。お前はこれらの名前全部を持っているが、それは自分自身のものじゃない。ただそれを真似ているだけだ。
他の人々にはわからない - だが私にはわかる。私は暗闇の中、お前と一緒にいたんだ。多分お前は混乱してたんだ。多分お前は私がジェイコブの名前をやったように思ったんだ。
だがもう存在しないもののために取引はできない。お前は正しかった - ジェイコブは死んだ。その名前もあいつと共に行ってしまった。
そしてお前の全力を以てして、お前はまだ何にもなれないんだな? 自分で言ってたが、お前はかつて何かが存在していた場所だ。それでエリサを殺したのか? その血で妻の名前を奪えるか確かめるために? なんて慈悲深いことだ。妻も死んでしまった、そしてお前はそれを持つことができなかった。
SCP-5935-1は、対象の名前を知覚することで、その対象に変身することができる。
だがそれは、あくまでも名前と姿を得ただけであって、その存在そのものになれるわけではない。圧倒的な能力を有していたとしても、SCP-5935-1自体は何者にもなれない。
故にこそSCP-5935-1は敢えてジェイコブの亡骸を使った。その時はまだO-5-1は自身の名前を伝えてなかったし、死んだ対象から名前を知覚しても変身出来ないと知られたくなかったからだ。
妻エリサに姿を変えたSCP-5935-1はすぐさま反論する。すでにもっていると。
違う、まだ私にはお前が見えるからな。お前の恐ろしさも、悪意も、まだ全部そのまま見える。お前は幻だ。お前自身の名前を持たずに、真にほしいものを持つことはできない。だからお前はまだ私に同じことをしていないんだ…… 妻にやったことを。
真実を言い当てられたからか沈黙するSCP-5935-1。
SCP-5935-1が要求を問う。
私の人生は- 私の人生は終わった。私が愛したものは過ぎ去り、行ってしまった。もう少しでも長く、ふりをしていたいんだ。自分に嘘をつくのを手伝ってくれよ。お返しに私の名をやろう。私たちは、まさにそう望んだように一緒になる。いつも2つ。
沈黙の後にSCP-5935-1は、その要求を聞き入れた。
よし。じゃあ家に帰ろう。
登録日:2025/11/20 Thu 01:14:04
更新日:2025/11/20 Thu 01:58:15NEW!
所要時間:約 11 分で読めます
特別収容プロトコル: ████/██/██に発生したイベントのため、SCP-5935はEXPLAINEDに再分類されています。追加の収容プロトコルは不要です。
説明: [データ削除済]
補遺5935.1: 家に帰った時のこと
とある場所、パンデモニウムという大都市で、■■■■■■は妻エリサ、息子ジェイコブと暮らしていた。
引っ越してきたばかりでウキウキな様子のジェイコブにあきれながらも穏やかな見守る夫婦。
やがて■■■■■■とジェイコブは散歩に出かけた。
大都市にはたくさんの人々が歩いている。
ジェイコブが聞いた。パンデモニウムはどれだけ大きいのかを。具体的に、何日で歩いて出られるのかを。
■■■■■■はやってみたことないと方をすくめた。
途端に、周囲の人々が一斉に顔をこちらに向けた。笑顔も、目も動かない。硬直した状態で顔を向けていた。
視線が完全にあったのは一つだけ、ジェイコブ、否、
嘘をついたとSCP-5935-1が糾弾する。
このパンデモニウムはお前が作ったと。君が求めたからここが生まれたのだと。
「何か持ち込んだ。許容できないものを。騙したな。」
「嘘つきめ。ここに他の何かがある。もっと前から何か感じてた。どこだ?」
■■■■■■、否、O-5-■は答える。入ってきたのは私たち二人だけだと。
SCP-5935-1は狼狽える。なにも持ち込んでいない。一緒に行動していたのだから、わかるはずだった。しかし何かをされた。
O--5-■が答える。
「約束したじゃないか」
「輝く都市をお前のために建ててやる、息子よって。一緒にいられる場所、永遠に。この都市、パンデモニウムは、これは私たちの都市だ。」
SCP-5935-1は悟った。
O-5-■はSCP-184(メタタイトル:建築家)を使ったのだと。
しかしそれをどうやって持ち込んだのか。
答えは簡単だった。O-5-■は自身の肉体の中にSCP-184を仕込んだのである。
SCP-184は建築物を日数に応じて内寸が拡大する。
O-5-■が答える。頭の中にあった大都市、いつか息子が成長したら連れてきたかった夢の場所。頭の中で描いていた、すでに存在していたアイデアを枠組みに、このパンデモニウムを産み出したのだ。
しかし、それはこの空間に、パンデモニウムに囚われることである。SCP-5935-1からしたら、自身の目的を完全に妨げられる行為に他ならない。
これこそがO-5-■、最後の手段。文字通り、自身の肉体を犠牲にして、SCP-5935-1を自身の中に閉じ込めたのである。
ぶちギレたSCP-5931-5、かつての被害者たちの凄惨な最後の姿や、恐ろしい化け物の姿へ変身する。しかし、覚悟ガンギマリ状態のO-5-■には通じなかった。
O-5-■が語る。
「この都市はお前への贈り物だ。お前が望む限りその名前と一緒に生きられる場所。誰も傷つけられない場所。」
この状態の中で絶望に項垂れるSCP-5935-1。せめて何処にSCP-184が埋まっているか聞く。
「埋まった。ここの下のどこか、遠い記憶の中に。パンデモニウム、一緒に建てたこの都市は、何度も何度もその上に更に建て直された。
その基盤は、それを建てた主のまだ生きている身体だ。それは遠くへ行ってしまった。自分が創ったもの一万年ぶんの下のどこかに埋まったんだ。」
「そして私がそれを手に入れたとしても、何も変わらない。元に戻すことはできない。」
どれだけ抜ければ出られるか、SCP-5935-1が聞く。
千年かその百倍、或いはもっとかかるかもしれない。そのころにはお前が手に入れた名前を使い果たし、元のなにもない状態になるだろうさ、O-5-■が答える。
羨ましがりの、憎き空虚に。悪意あるゴーストに。私が暗闇に放っておくべきだった何かに。
それでもO-5-■は、SCP-5935-1に一緒に過ごさないかと提案した。もはや愛する人はとっくに逝ってしまい、本当に一人になってしまった。
だったら、せめて同居人くらいはいてもいい。そのほうが、少しは寂しさも休まるだろうと。
しかし、SCP-5935-1は諦めない。
「私は、非存在の暗闇の中で永遠の時間を苦しんだ」
「私を突き動かすのはつまらない欲望なんかじゃなくて、そういう仕組みなんだ。必要なら一兆年だって、もっとだって歩こう。そしてこの牢獄から自由になった暁には、この血を全ての息を吸うものと分け合い、かつて自分のものだった彼らの名前を取り戻そう。そしたら、」
「私は完全になる。」
そして最後に旅立とうとする直前で、
「そしてそれらを取り戻したら」
「そしてこの世界が締めくくりに到達したら、ここに戻って来るよ。それから、私たちは一緒になる。」
そう言い残して、SCP-5935-1は、先の見えない出口へ向かっていった。
その耳に、かつて愛した息子と妻の笑い声を思い出して、彼は、O-5-■だった男は笑った......。
登録日:2025/11/20 Thu 01:14:04
更新日:2025/11/20 Thu 01:58:15NEW!
所要時間:約 11 分で読めます
特別収容プロトコル
SCP-5935はサイト-17の安全医療病棟に収容されています。SCP-5935は、追って通知があるまで医学的に誘発させた昏睡状態に留め置かれます。
説明
SCP-5935は[編集済]付近で発見された人間男性の肉体です。SCP-5935の身元は一見したところ特定が異常に困難であり、これがSCP-5935自身の異常性によるものか、SCP-5935に作用している異常によるものかは不明です。
SCP-5935の意図された目的は、SCP-5935-1を収容することです。
身元不明の遺体、そしてパンデモニウム内の最後の場面から、世界は再構築されたのだろう。
そこにあったのは、息子を取り戻そうとして禁忌に手を染め、全てを失いながらも最後の意地で世界を救い、孤独に怪物を閉じ込めるための装置と成り果てた、哀れで孤独な男。
血と壊れ崩れる私の心
長いんだよッッ!分かりやすく解説しろッッ!
- SCP-5935-1:息子生き返らしてあげるよ。指定した場所まで来てね♡
- O-5-■:SCP-4000の更に奥にある古臭いところに、息子の死体持ってきたぞー!やり方おしえてくれー!
- SCP-5935-1:(クク、本当は俺が復活するためにお前の名前が必要だったのさぁ。なるほど、コイツ(O-5-■)の名前はジェイコブなのか。さぁ、復活劇の始まりや)
- SCP-5935:(ファッ!これ息子のほうじゃねーか!でもバレたらなんか恥ずかしすぎるし、隙を見て名前を吐かせよ)
- 財団:待てやゴラァァァ!なに勝手に権限使用して、やべーオブジェクトに入っとんねん!しかも息子甦らしてきただぁぁ!? 収容じゃぁ!そんでオメーはクビ!
- O-5-■:ウッセーバーカ!権限使ってでも維持でも譲らん!......でもなんかヤバくなってきたから、オブジェクト持ち逃げして、妻と息子とハッピーに暮らすで!
- O-5-■:なん…だと……? くそ、嫁も同僚もやられてもーた。だけどまだや、せめてお前だけでも、頭の中で構想してたリアルでビッグなシティにSCP-184を組み合わせて、ついでにSCP-2000も借りてワイの中に収容やぁ!
- SCP-5935-1:ふざけるなぁぁぁ!覚えてろッ!例え億数千万年掛かっても、絶対戻ってきてやるゥ......!
- O-5-■:ワイの中でがんばりや。あとワイのせいで世界がメチャクチャになってもーたわ。SCP-2000使って世界直そ。ワイの力もそろそろ限界や、後は頼むでみんなぁ!
結局、SCP-5935-1はなんだったんだよ!
これを解説するには、SCP財団の姉妹サイト、『放浪者の図書館』にある作品、「欧州車史」について語らなければならない。
いや何で他サイトが出るんだよと言われる方、実はこの欧州史こそ、SCP財団の著者の一人、djkaktus史が手掛ける財団世界、通称『プロジェクト・パラゴン(Project PARAGON)』の根底を成す設定がしっかり盛り込まれているためである。
この欧州史いわく、まだ星々どころか、時間という概念よりも先に、「是(IS)」と「非(IS NOT)」という兄弟がいたのだという。
彼ら兄弟は、永い年月を眠っている状態で
- ISが昔あるもの、今あるもの、これから先あるものの全て
- IS NOTが昔あらざるもの、今あらざるもの、これから先あらざるものの全て
これらのバランスを均衡させながら支配していた。
見ていた夢は主に
それは、生きた創造の夢、力と魔法と科学と魂の夢、そして語られなかった言葉、生きられなかった生命、実現されなかった可能性の夢であった。
その後、ISはなにもないところで目覚めて、見ていた夢は「在(THAT WHICH IS)」、
即ち全ての創作物が存在出来るようになった。
しかし、まだ世界に形すらなかったため、しばらく考えた後にまずはその形や概念を司る存在、『典範者(パラゴン)』を産み出し、支配権を与えた。
この時に産み出されたパラゴンは全部で9人だったのだが、
その中の最初の典範者である名称の典範者は、創造物の総体に名を与えるために、自身の名を放棄し、消滅した。
残った8人には名前が与えられ、それぞれが時間、形態、活力、生命、霊魂、智恵、崩壊、死滅を司ることになった。
やがてメカネとヴァジュマは、ISの秘密とガイアを守るため、力を合わせて騎士を作り上げた。ヴァジュマは形のない粘土から騎士を作り、メカネは騎士に鉄の目的を与えた。イーヤが星空を見上げてる間に、秘密裏に作り上げた二柱の神は、稲妻で火を灯させ命を与えた。
その名は『アセム/Asem』。後に大帝国を築き上げ、人類の始祖として
カイン、
アベル、セス(SCP-4840-A)の三兄弟の父となる存在である......。
と、あんまりに尊大すぎるクロスオーバー展開は一度置いておき、ここで注目すべきなのは、『名を与えるために、自身の名前を放棄して消滅したパラゴン』の部分である。
ぶっちゃけ言ってしまえば、こいつこそがSCP-5935-1。マジもんの最古の存在であった。
でもコイツは世界を産み出すために、文字通り
犠牲となった 訳だが、どうやら消滅した後に意識はあった様子。
そこで待っていたのは、非存在の暗闇の中という永遠の無限地獄。耐え難い苦痛と、文字通り無限という名の時間の中で、残忍な性格に変わってしまったのだろうか......。
やったことは完全にアウトではあるが、そう考えるとこの名も無き存在こそ、本当の被害者だったのかも知れない......。
追記・修正は家族を愛することが出来る人にお願いします。
SCP-5935 - Blood and the Breaking of My Heart
by djkaktus
www.scp-wiki.net/scp-5935
ja.scp-wiki.net/scp-5935(翻訳)
- できる限りの知識をまとめましたが、これが限界でした。 -- 名無しさん (2025-11-20 01:54:33)
- ↑その他にこういう可能性や説もあり得ると思われる方は、どんどん追記してください。 -- 名無しさん (2025-11-20 01:55:41)
最終更新:2025年11月20日 01:58