登録日:2012/01/22 Sun 21:41:06
更新日:2022/02/08 Tue 06:14:50
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『ドラキュラ紀元』とは英国人作家キム・ニューマンの小説作品。原題は「Anno Dracula」。
続編も幾つか存在しており、第4部では舞台は日本に移る。
●ストーリー
ドラキュラ伯爵が決戦でヘルシング教授に勝利した世界。
その後ドラキュラは
ヴィクトリア女王を
吸血鬼に転化させ結婚し、夫君殿下(プリンス・コンソート)として英国の支配権を握る。
更にドラキュラは自らの“子”を増やし欧州に隠れ住む同族を呼び寄せ、英国とロンドンは日に日に闇へと沈んでいく。
そんな中ロンドンの貧民地区ホワイトチャペルで、
吸血鬼の娼婦が連続して惨殺される事件が起こる。
秘密諜報員ボウルガードは任務として、女吸血鬼ジュヌヴィエーヴは街の平穏を取り戻すため犯人を追い始める。
●主要登場人物
闇内閣(ディオゲネスクラブ)に仕える秘密諜報員。
経験豊富・凄腕の諜報員で、少し前までは極東に赴任していた。
武器は仕込み杖で、剣術の腕も一流。
かつて赴任先のインドで、妻のパメラと子供と死別している。
本名ジュヌヴィエーヴ・サンドリン・ド・リール・デュドネ。
光の下で16年、闇の中で400年以上生きてきた女ヴァンパイア。
実はドラキュラ伯爵よりも年上で、ドラキュラとは違う血統のヴァンパイア。
現在はホワイトチャペルにあるトインビー・ホールで女医として働いている。
「吸血鬼ドラキュラ」の登場人物。
ドラキュラとの決戦後諸々の事情でなんとか罪を逃れる。
現在はトインビー・ホールの院長として失意の日々を送っている。
「吸血鬼ドラキュラ」の登場人物で現在ヴァンパイア。
本名アーサー・ホルムウッド・ゴダルミング。
ドラキュラとの決戦後ドラキュラ統治下の英国首相ルスヴン卿の“子”となり罪を逃れる。
現在ルスヴン卿の側近として仕えているが、更なる地位への野心を燃やしている。
プリンセス・コンソート(ドラキュラ)より大英帝国の首相を任されている「長行者(エルダー)」の一人。
ドラキュラとその治世をあまり快く思っておらず、ホモ行為禁止の布告に批判的だったりと、
ドラキュラには暗に否定的。
しかしドラキュラと国民の間に立ち、大英帝国を取りまとめる事ができる長生者は自分だけとも考えており、
自身の職務はきちんと努めている。
元はジョン・ポリドリの小説「
吸血鬼」に登場する
吸血鬼。
海外の学者の間では、今の
吸血鬼像を作り上げた最初の
吸血鬼小説という認識である。
そしてこの作品は当時、「事実は小説より奇なり」の言葉で有名な詩人バイロン卿の作品だと思われており、
ルスヴン卿はどうみてもバイロン卿をモデルにしたとしか思えない人物設定であった。
ルスヴンに男色趣味が垣間見えると考察する海外の学者が多いが、これはモデルと考えられたバイロンに
男色趣味があったからだろう。
ボウルガードの婚約者で、先妻パメラの従姉妹にあたり姉妹同然に育てられた。
美人ではあるがプライドが高い。ボウルガードを愛してはいるが……。
ペネロピ・パメラの幼馴染で親友。ジャーナリストでもある。
そばかすの眼鏡っ娘。作中でヴァンパイアへと転化している。
プリンス・コンソート直属カルパティア人近衛部隊に所属するヴァンパイア。
温血者やドラキュラ配下でないヴァンパイアを見下す者の多い近衛部隊の中で、相手の力量等を正確に評価する数少ない一員。
スコットランドヤードに属する温血者のマッケンジー警部と友誼を結び共に連続殺人犯を追うが……。
元は「三銃士(ダルタニャン物語)」や「
モンテ・クリスト伯」の作者でお馴染み、
アレクサンドル・デュマ(大デュマ)原作の「蒼ざめた貴婦人」という小説に出てくる
吸血鬼。
原作では山賊であり、粗野な印象をうける。一度死んでから
吸血鬼となる。
主人公兼ヒロインのヘドヴィッヒを巡って兄のグレゴリスカと争うが死亡する。
ホワイトチャペルで
吸血鬼の娼婦を連続して惨殺している犯人。
作中で警察に手紙を送り、その中で自ら通称を名乗る。
その名は“切り裂きジャック”
●特徴や用語解説等
この作品の登場人物(例えば名前が出てくるだけでも)のほとんどは、
実在人物or19世紀を舞台にした作品orヴァンパイアの出る作品の登場人物である。
その為か巻末には登場人物事典があり、訳者曰く登場人物について調べるのが一番大変だったそうだ。
この世界ではヴァンパイアでないものは温血者(ウォーム)と呼ばれる。
ヴァンパイアに転化したばかりの者は新生者(ニューボーン)、数十~数百年経った者は長生者(エルダー)と呼ばれる。
この世界のヴァンパイアに最も致命的なものは銀であり、銀によってつけられた傷には高い再生力も働かない。
闇内閣とは大英帝国の諜報活動、所謂グレート・ゲームを取り仕切る組織。
その本部?・会合場所が
シャーロック・ホームズで出てきたディオゲネスクラブに存在する。
闇内閣の5人の上級メンバーにはホームズの兄マイクロフトも所属している。
題名にも出てくるドラキュラは実際作中にはあまり登場しない。
とはいえ登場するとその存在感は大きなものがある。
●書籍情報
本作は90年代に創元推理文庫より第1部が単巻で刊行されて以来、永らく絶版状態が続き、入手するには中古本を探すしか手段は無かった。
が、2017年にアトリエサードから完全版が発売されることがアナウンスされ、翌2018年5月に完訳第一弾として『ドラキュラ紀元一八八八』の題で発売された。
今回は創元推理文庫で邦訳が無かった第4部以降も翻訳されており、2021年時点で既刊5巻が販売中である(第4部は上下巻構成)。
ただし第4部までは確定だが、それ以降続くかは売り上げによるとのこと。
多少割安な電子書籍版もあるので、続編販売の為にも興味ある読者はぜひ一度手に取ってみて欲しい。
追記・修正をお願いします。
- キム・ニューマンがジョジョ一部を知っていれば……と夢想してやまない。ディオは長生者からは「小生意気な新生者」みたいに言われるんだろーなー、とか妄想。 -- 名無しさん (2013-09-12 05:47:38)
- モリアーティー教授とフーマンチュー博士の二大犯罪王が
ドラキュラと戦うみたいな設定と聞いた -- 松永さん (2013-11-17 23:13:07)
- ↑マンチュー博士と教授は登場しますが少しだけです。確かにドラキュラとは敵対状態ですが、あくまで主人公の協力者にとどまります。 -- 名無しさん (2013-11-17 23:50:59)
- ↑成る程
後 ショーンコネリー主演のリーグオブレジェンドの原作だったような -- 松永さん (2013-11-18 00:41:49)
- ↑4 石仮面の吸血鬼って伝承のバンパイアとは別物だがね。銀は効かないし十字架なんて素手で握りつぶしちゃうw -- 名無しさん (2013-11-18 02:05:22)
- ウォーハンマーの人の別名技 -- 名無しさん (2018-05-11 23:26:43)
- ヘルシングの元ネタ -- 名無しさん (2018-05-26 08:33:17)
最終更新:2022年02月08日 06:14