高齢者所在不明問題

登録日:2010/08/06(金) 02:33:30
更新日:2025/05/28 Wed 02:06:39
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2010年7月29日、東京都足立区の住宅で高齢者のミイラ化した遺体が発見された。
約30年間部屋に閉じこもったままで、室内には1978年11月に発行された新聞が置かれていることから、その頃に死亡したとされている。
しかし死亡届は出されておらず、戸籍上は都内男性最高齢の111歳とされていた。
年金や役所からの祝い金は支払われていたが、家族によって引き出されていた。

8月2日、足立区で遺体が発見されたことを受け、杉並区が113歳の都内最高齢の高齢者の所在を確認したが、住民登録地にはこの高齢者の娘だけが住んでいた。
この娘によると「最後にあったのは1986年か1987年頃で、(この娘の)弟と一緒に千葉県内に住んでいると思う」と話していた。
しかしその住所は既に更地となっていて、また過去5年間に医療保険や介護保険が利用された形もはなかった。

これらの事件を皮切りに、人知れず闇に消えた
謎の超高齢者達の存在が次々明らかになっていく。

これには幾らかの原因があり、ひとつは足立区のケースのように故意に死亡を伏せているというもの。
収入を年金や祝い金などに依存しており、年金が無くなると生活が困難になるため受給者が死んでも届出を出さない。
書類上は受給者が生存し、家族が年金を詐取することになるため、このような行為は詐欺罪に問われる。

一方、杉並区のケースは故意でないため罪には問われない。
これは家族関係が希薄になっていて連絡も取れず、
1.家族でも近況を一切知らないため所在届も出せない
2.届出なしで引っ越したため引っ越し先の人間も家族に連絡できない
3.当然、誰も行方を知らないことになる

独居老人として死亡することにまつわる問題と言える。


この年の8月5日時点で、100歳以上の高齢者で所在が分からなくなっているのは71人(時事通信社調べ)。
中には外国籍の高齢者もいる。
調査対象は100歳以上の高齢者だが、これを90歳とか80歳に広げたらもっと多くなるかもしれない。

この問題は外国でも報道されるほどであり、日本の長寿について疑問視するものが多い。

韓国では、「長寿大国日本は幻である」と報じた。
現にあるコメンテーターは「そのうち、(書類上)150歳の老人が次々と出てくる」とあるテレビ番組でコメントをしていた。
それは現実となり、とうとう、書類上200歳(2010年8月27日時点)の生存者が確認された。
彼が本当に生存していたら、かの泉重千代*1が生まれた時すでに56歳で、あのフレデリック・ショパンやロベルト・シューマン、緒方洪庵、レオ13世(256代目のローマ教皇。現在267代目)といった錚々たる面々が同い年になるのである。

ただし、これは大袈裟に騒いでいるだけという部分も否めない。
昭和期には第二次世界大戦があったので、一家一族全員が死亡していたり、家族揃って移民したり、戦後の混乱期で有耶無耶になってそのまま忘れられてしまったり……こうなれば役所はその後の動向を把握できず、生きているかどうか分からない。
当然だが役所は確実に死んでいる者しか死亡として処理できないため宙ぶらりんの状態となり、結果的に死んでも届出がない以上は延々と生存扱いになってしまうのである。

止むを得ざる理由で生存扱いになったものと、故意に死亡を伏せたものを十把一からげにし、記録の上でしか生存していない高齢者が多いと問題にするのは如何なものだろうか?


こうした問題を受けて2011年から制度が変わり、戸籍上120歳以上ならば届け出がなくても死亡と扱い(存命の可能性がゼロに等しい為)、100~120歳未満の者は万が一もあるので調査した上で処理を行い、そもそも失踪して誰も行方を知らない連中は年金や祝い金を停止するという対策がなされた。*2
なので件の200歳じい様や、江戸末期(幕末よりも前)~明治時代初期生まれで失踪しているご老人たちは既に死んだものと見なされている。

そもそも人体の構造上、どんなに健康体であっても120歳前後が「寿命の限界」とされており、現在の理論を覆すようなレベルの医術でも開拓されない限り彼らのようなウルトラご長寿は存在し得ないのだ。

■余談

  • 風刺コント
コント番組の『笑う犬2010 ~新たなる旅~』にて、この問題を風刺したコント「消えたお年寄り問題 生きていれば180歳!?」が披露されている。
そのあらすじは「戸籍上では180歳で生きていることになっている男性の住所にリポーターが突撃してみた」という、当センシティブな問題を面白おかしく風刺したもの。

  • 現代用語の基礎知識
あまりにも問題になったので、当時の「現代用語の基礎知識」にも掲載され、やくみつるによる一枚絵も描かれた。
「尋ね人、桶屋の鶴吉……生きてりゃ御年180か」


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最終更新:2025年05月28日 02:06

*1 120歳まで生きたとされ、1995年までギネス記録・2010年までは男性として長寿世界一だったウルトラ爺。生没1880(明治13)~1986(昭和61)とされるが、戸籍上は1865(慶応1)年8月20日生まれなので15歳も差が生じ、1880年生まれだと105歳没となりギネスには遠ざかる。どちらにせよ、既に故人である以上は関係ないが

*2 現在でも、遺族が死亡を隠して年金を不正受給する事件は絶えないが、だからといって「年金世代全員を四六時中監視し隠蔽できないようにする」なんぞできるわけもないので根深い問題である