23分間の奇跡(世にも奇妙な物語)

登録日:2014/06/29 (日) 12:40:04
更新日:2022/03/25 Fri 22:40:44
所要時間:約 6 分で読めます




世にも奇妙な物語'91年冬の特別編で放送されたエピソードの一つ。
小学校の教室という狭い空間を舞台にしながら、穏やかながら冷たい空気の中の濃密な会話劇と裏設定を含みに持たせた意味深な台詞の応酬による
恐怖心を煽る演出により、初期の「世にも」の傑作として名高い作品である。
原作はジェームズ・クラベルの同名の小説(日本語訳:青島幸男)で、映像化に当たり舞台を戦時下の欧州某国から現代の日本(のような国)に変更している。





以下、物語の結末部分にまで触れています。ネタバレにはご留意ください。








【あらすじ】
とある小さな小学校。その中の3年2組の教室。
教壇では担任のベテラン女教師・安西がむせび泣いていた。
不安な空気が生徒達を包む中、時計の針が9時を指し、一人の女性が現れた。
彼女は安西に他の先生と同じように校長室に集まるように、と指示をする。
だが安西は必死に、
「そんな!私はどうなっちゃうんですか?この子たちはどうなっちゃうんですか?こんな事って…!」
と抵抗。しかし女性はにこやかな顔で圧力をかけ、安西は泣きながら教室を後にしていった。


その緑色のワンピースを身にまとった穏やかな雰囲気の女性、鈴木(賀来千香子)は、今日から2組の新しい担任だと自己紹介する。
まず彼女は、朝の日課として「外国のいろんなお歌」を聞かせたいと語り、「アメイジング・グレイス」のカセットを流す。
皆の反応が薄いことにショックを見せる鈴木だったが、女子の一人が「綺麗な曲だと思うけど…」と言うと、すかさず嬉しそうに「ありがとう!」と微笑む。
そして彼女は、生徒達の一人一人のプロフィールを言い当ててみせ、皆を感心させた。

「職員室にはみんなの事を描いた写真付きのカードがあるの。それを先生は、三日かけて覚えていたわけ!」

そんな中、男子の一人の俊之は鈴木を睨みつけたままだ。
次に鈴木は、安西先生は普段朝何をしていたのか、と聞く。
生徒達が答えたのは「朝のニュースや昨日の出来事と言ったお話」。そして教室に飾られてある額を指さす。


平 自 平

和 由 等


安西は大事なことだ、と語っていたという三つの概念。
だが鈴木は、生徒達にこう聞き返す。
「平等ってどういうこと?自由ってどういうことかな?何が大事なんだろう?意味が分からないのに難しい言葉を使うのは良くないと思うな」

すかさず俊之も言い返す。
「どうして安西先生は泣いていたんですか!」
鈴木は安西は病気で療養する、と言って誤魔化す。
すると女子から、鈴木の着ている服について質問。
「もしみんながこの服を気に入ったら、みんなも同じ制服を着ていいのよ」
「そしたら今日は何着て学校に行こうかなんて考えなくていいのよ、みんな同じで。それが、この『平等』ってことじゃない?」
「みんながこの服を着るのも『自由』でしょ、それがこの『自由』ってことじゃない?」
皆がその言葉に賛同する中、頭ごなしに否定する俊之。

「僕の父さんはどこ行ったんだよ!どこに連れて行ったんだよ!」
彼の父親は嫌がるのを無理矢理何処かへと連れて行かれたのだという。
すると鈴木は『間違った考え』を直すために学校へ行ったのだ、と宥め、
「考え方が間違ってた時には大人にだって教えてあげなきゃいけないでしょ、違う?」と言いくるめる。
うちの親も間違ったところを直せばいいのに、と沸き立つ生徒達。

だが俊之は新聞記事の切り抜きを出して叫ぶ。
「クーデターだ!クーデターが起きたんだよ、日本に!『けんぽう』っていうのが変わっちまったんだぞ!」
「決まりが変わったんだ、大変なことが起こるって!」
鈴木はその新聞は間違いで、国の決まりも間違っていたから直したのだ、と言ってさりげなく記事を丸め潰した。

彼女は話を変え、明日からみんなには先生と一緒にお泊りをすることになった、と言う。
楽しそうな「お泊り」に歓声を上げる一同。
そして、持って行くお菓子をもらおうということになり、「お空の神様」にお菓子をくれるようお祈りするという。

「お空の神様」
「どうかお菓子をくださいますように」

お祈りを斉唱する一同だが、当然お菓子は現れない。すると鈴木は、
「お祈りする相手が違ってたのかな?じゃあ今度は『私達の指導者様』って言ってみない?」

右手を胸に当てさせ、目を瞑らせ生徒達に復唱させる鈴木。


「私達の指導者様」

「どうかお菓子をくださいますように」

「お願いします」


生徒達が目を開けると、それぞれの机の上にチョコレートが。
皆一様に嬉しがり、「今度からは指導者様にお祈りする!」と言う者も出る始末。
すると実は薄目を開けていた俊之が、チョコを配ったのは先生だ、お祈りして出てきたわけじゃない、と糾弾。
だが鈴木はあっさり「チョコは先生が配ったんです、嘘ついてごめんなさい」と白状した。
そして「神様にお祈りしたって欲しいものは手に入らない、何かしてくれるとしたらそれは先生とか他の人の力なの」と言い、
さらに
「そういうことを俊之くんは私達に教えてくれたんです」と俊之を皆の前で称賛した。
クラス全員から褒められ、複雑そうな俊之。
しかも新しいクラス委員を決めることになると、クラス全員の推薦で俊之に決まってしまった。
頭がいい、はっきり言える、お利口さん…そう褒め殺され、あれだけ反発していた彼はすっかり何も言えなくなってしまった。

そして、最初の仕事として教室に飾るものを決めることになる。
だが、そこには安西が大切にしていた三つの理念を書いた額縁が。


平 自 平

和 由 等


すると鈴木は
「大事なのはここに書いてある中身よね?本当に大事なものはみんなの心の中に掛けておいた方がいいんじゃない?」
と言い、さらに新しいものは俊之の自由だと譲渡する。

次に、彼女は俊之に古い額を外してもらう。
戸惑いながら外す彼を鋭い眼光で見つめる鈴木…。

外した後は?と聞く俊之に鈴木は「窓から投げちゃえば?」と進言。

全員が見守る中、額縁が大きいカーブを描いて放り投げられる。

大きな音を立て、割れる額縁。
歓声が響く中で、額縁に書いていた単語はこの瞬間、彼らの中で意味をなさなくなった。

時計を見る鈴木。時間は9時23分を指していた。

そして、新しい教科書と制服を配ると言い、古い教科書を出させ、
想いきり破いて見せる。

「全部破き終わった人から取りに来てください」

その言葉に、嬉々として目の前にある教科書を破く生徒達。
その中には俊之の姿もある。


歓声の中、鈴木は一人満足気に微笑んでいた…。



タモリ「子供達の純真な心。それをコントロールするのは、なんと簡単なことでしょう」
   「子供だけではありません。どんな人間においても、ある状況に置かれては、いとも容易く操ることができるのです」
   「そしてそれを、悪用する者達も。みなさん、くれぐれもご注意を」



【解説】
この物語は一言で言えば『1984年』などと同じく、「子供達が23分間と言う短い時間の間で一人の人間に洗脳される」物語である。
教師が子供に分かりやすい言葉で、曖昧な、だが道徳めいたことを聞こえのいい言葉で反論し、それに賛同させる。
それはまさに今の世の中でも小規模なり、大規模なり現実に起こっている出来事である。
このエピソードはその社会を予期したと言っても過言ではなく、現在注目を浴びている。

…ちなみに原作では、鈴木にあたる女教師の行動は上からの指示をなぞったものであり、本人も満足というよりは「仕事を無事やり遂げた」感を最後に抱いていた。どちらが恐ろしいかは人によるだろうが。

また、原作では大国に占領された小国の物語だったが、映像版ではクーデターの起きた日本という設定である。
どちらもシャレになっていない、現実の「恐怖」に近い物語かもしれない。

ちなみに本エピソードの放送時間は17分である。

2015年に「世にも~」公式サイト上で行われた「一番好きな奇妙作品」の投票で15位を勝ち取った。

空気に流されがちな皆さん、追記修正する前にふと思い返してみてください。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2022年03月25日 22:40