JR東日本E653系電車

登録日:2025/07/08 Tue 12:28:28
更新日:2025/07/11 Fri 08:32:50
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E653系電車とは、JR東日本が保有する交直流特急型電車である。
本項では当形式をベースに開発された交流特急型電車のE751系についても解説する。

概要

常磐線特急「ひたち」で使用されていた485系置き換えのために7連8本・4連4本の計72両が導入された。
それまでのJR東日本は線区の特性に準じた専用設計の特急車両を導入してきたが、本形式はバブル崩壊後の輸送状況の変化などもあってコストパフォーマンスや汎用性を重視して開発されたのが最大の特徴である。

本形式で導入された新機軸はその後の特急車にも採用されたものが多く、JR東日本の特急車第2世代の基礎を築いた。

車両解説

本項では新造車の仕様について解説する。

車体はアルミ合金製で、先頭形状は高運転台・非貫通のボンネット形状ではあるが、651系に比べると曲線的で近代化したデザインとなっている。
ボンネット下部には「Hitachi Express」と描かれた点灯式のヘッドサインが装備されている。

塗装は上半分が白、窓周りをシルバーメタリックとし、下半分は編成毎に異なる5種類の塗装を採用。乗降口付近にはモチーフとなったロゴも貼られた。
なお、オレンジパーシモンは4両編成のみでの採用である。
塗装 デザインモチーフ 編成
スカーレットブロッサム 偕楽園の紅梅 K301・K305
ブルーオーシャン 太平洋と塩屋崎灯台 K302・K308
イエロージョンキル ひたち海浜公園の水仙 K302・K308
グリーンレイク 霞ケ浦の帆曳舟 K304・K307
オレンジパーシモン 袋田の滝と紅葉 K351~K354

車内は全車普通車で、シートピッチは定員確保のために910mmと485系と同じになった。
シートピッチは狭くなったが、座席スライド機構を採用したことで実感覚は651系等と変わらない工夫がなされた。
側面方向幕はJR東日本の特急車では初のLED式となっており、行先のほか号車番号の表示も実施している。

本形式はJR化後に新設計された交直流電車では初めて50/60Hzの両周波数に対応した車両でもある。
これは485系の置き換えを目的にしており、将来信越・北陸地区の同系列置き換えにも充当できるようにしたものである。
交直流電車は分割民営化後広域転配がなくなったせいか、新造車では交流電源が50または60Hzどちらかに固定した形式がほとんどであり、極めて異例の扱いと言えよう。
3電源対応の鉄道車両はその後E655系・E001形「TRAIN SUITE 四季島」と登場したが、これらの2形式は乗るのにまあまあハードルが高く、定期列車に使用かつ気楽に乗れる形式での採用は2025年現在もこの形式が唯一である。

改造

E657系の導入に伴い、全車が上信越地区の485系置き換えのために転用されることとなった。
改造の内容は次述するが、共通項目として耐寒・耐雪構造の強化を実施しており、スカートの形状が変更され電気連結器が撤去されている。
なお、転用に際しては7両のK308編成と4両のK354編成の中間車がトレードされ、前者が4両、後者が7両に組成変更された。
これはK354編成は交通バリアフリー法施工後の導入(2005年製造)であるが、単独運転をしないことを前提に車いす対応トイレなどの装備を省いて製造されており、転用後はそのまま使用できなくなったことが理由。

  • 1000番台
羽越本線「いなほ」置き換え用に7両編成を転用したもの。
秋田寄りの先頭車は全室グリーン車化されクロE652に形式変更された。
このグリーン車、普通車当時の窓位置に座席を合わせた結果、1820mmというグランクラスより520mmも広い驚異的なシートピッチを誇っている。
JR東日本の在来線特急グリーン車はしょぼいと揶揄されがち*1だが、これについてはそのイメージを覆す脅威ぶり。
塗装は日本海に沈む夕日と稲穂をイメージしたフルーツ牛乳カラーリングに変更された。
ヘッドサインは当初空白だったが、2016年からオリジナルの「いなほ」ヘッドサインが装備されている。
なお、2編成が勝田に里帰りを果たした(詳細後述)。

  • 1100番台
信越本線えちごトキめき鉄道線の特急「しらゆき」用に4両編成を転用したもの。
改造に際してはクハに車いす対応スぺースを設置し、その部分は一人掛けの座席となった。
塗装は日本海の海と空の青、夕日をイメージした白に青・赤帯のカラーリングとなり、かつての485系で運行されていた新幹線連絡特急「かがやき・きらめき」を彷彿させる。
2024年3月改正からは「いなほ」運用にも入るようになった。

E751系

E653系の交流版で、1999年から2000年にかけて6両編成3本が製造された。
見た目はまんまE653系だが、寒冷地を走るからか灯具類や警笛類がE653系よりも高い位置に取り付けられている。
塗装は上半分が白色、下半分が朱色のツートンとなり境界に青の線を引いており、側面窓上部には黄色い帯が引かれている。
また、先頭車に半室グリーン車を製造当初から連結している。

2000年3月に東北本線の盛岡~青森間を結ぶ特急「スーパーはつかり」としてデビューし、2002年12月の東北新幹線八戸開業以降は運行区間の変更を続けながら特急「つがる」*2にて運行されている。
2011年4月以降は4両編成に短縮されており、余剰となったモハユニット6両は保留車を経て2015年に廃車となった。

なお、本形式の車両検査は登場から長らく郡山車両センターで行われており、東北新幹線八戸開業後は東北本線が分断された影響で奥羽本線羽越本線上越線高崎線武蔵野線常磐線~東北本線という回りくどさ全開のルートで入場していた。
これは3セク区間への配給列車の設定ができないことや線路使用料の支払いが生じることからの措置である。
その後、本形式の検査は2016年から秋田総合車両センターでの施工に変わり、この大回りも廃止されている。

運用の変遷

  • 常磐線・フレッシュひたち時代(1997年~2014年)
1997年10月のダイヤ改正で上野~勝田・土浦・高萩・いわき間の「フレッシュひたち」にてデビュー。
順当に増備が進み、1998年12月改正で485系使用列車は全て「フレッシュひたち」となった。
7両の基本編成、あるいは7+4、7+7の2編成増結で運用され、4両編成単独での運用は存在しなかった。
以降651系は「スーパーひたち」、E653系は「フレッシュひたち」と分けられていたが、2002年12月改正で運行系統の整理がなされ、651系の「フレッシュひたち」も登場している。
2012年からのE657系導入に伴い、2013年3月改正で定期「フレッシュひたち」の運用から撤退。これ以降も次述の転用改造の隙間を縫って2014年8月まで臨時「フレッシュひたち」に充当されることがあった。

  • 上信越地区への転用(2013年~)
当初の転用計画では7両編成「いなほ」に、4両編成はいわき~仙台間に新設される区間特急にE653系を充当する予定であった。
しかし、2011年3月に発生した東日本大震災の影響で常磐線に不通区間が生じ、特急新設の話は消滅*3
結果全車上信越地区へと転用された。

2013年9月より1000番台が「いなほ」で運用を開始し、2014年7月までに「いなほ」の全運用がE653系化された。
2015年3月からは1100番台が北陸新幹線金沢開業に伴い新設された特急「しらゆき」で運用を開始した。
特急以外では新潟~村上間の「らくらくトレイン村上」や新潟~直江津間の「おはよう信越」「ホームタウン信越」(2021年3月以降は「信越」)といった快速列車に充当されていたほか、2023年3月改正以降はえちごトキめき鉄道線妙高はねうまラインの普通列車運用「おかえり上越」にも使用されている。

なお、1000番台は2017年にU-106編成が「瑠璃色」、U-107編成が「ハマナス色」とそれぞれ単色に塗り替えられた。
登場時、とうとうJR東日本も末期色化を始めたのではないかと思った人は正直に挙手しよう。

1100番台は2024年の新潟駅開業120周年と羽越本線全線開通100周年を記念し、同年6月からはH-202編成が485系の「上沼垂色」となって登場。
復活に際しては485系の特急シンボルマークを設置した撮影会も行われており、そのままで運用に入ったこともある(通常は外す)。

  • 常磐線への帰還(2018年~)
平成も終わりに近づいた2018年、衝撃のニュースが報じられた。

E653系が国鉄特急色となって常磐線に帰ってきます

こ、国鉄特急色!?と誰もが驚く中、同年末にU-108編成が出場。
その姿は九州地区の初期485系を彷彿させる赤スカート*4、上越線の181系等に見られた赤帯を締めたスタイルとなり、決して単なるウソ電にはならない比較的まとまったデザインとなった。
新たな編成番号は「K70」となり、以降は首都圏発着の臨時列車をメインに使用。
時折国鉄リバイバル列車に駆り出されることもある。

そしてさらに、2023年にはU-102編成が勝田に転属した。
今度の編成番号は「K71」で、運用についてはK70と似たような波動用だが注目すべきは塗装。
フレッシュひたち時代のツートンカラーが9年ぶりに復活したのだ。
下半分のカラーは従来に存在しなかった水色。この色は特にイメージは発表されていないが、どことなくひたち海浜公園の春の風物詩である「ネモフィラの花」を彷彿させる。

奇しくも常磐線ではE657系で「フレッシュひたち」のリバイバル塗装が開始されたこともあり、このタイミングでE653系のツートン復活はスーパー戦隊追加戦士登場を彷彿させることとなった。

関連作品

プラレール:1990年代末期に販売。通常品での販売時期が1998年から2002年と当時から短いうえに、1998年から1999年はスカーレットブロッサム、1999年から2002年はオレンジパーシモンのみが通常品として販売、ブルーオーシャン、イエロージョンキル、グリーンレークの3色は1998年の初回生産限定品であった。一応2004年にブルーオーシャンのみプラレールの日記念の限定品として再販がされた。カラーバリエーションが売りではあるが、玩具展開の都合上、大半の色が限定品扱いだったため、5色そろえられたプラレールユーザーはほんの一握りだろう。例の洪水で金型が喪失したためか最近の塗装は発売されていないが国鉄色はカプセルプラレールで出ている。

Nゲージ:「フレッシュひたち」が現役だった時期にマイクロエースが各色を出していたほか、現行商品だとグリーンマックスがフレッシュひたち時代・信越地区移籍後・勝田に戻った波動用と各バージョンを取り揃えている。ひたち時代のものは「7両の増結セット」もあるため、7+7の14両編成で運転される列車も再現可能。GMは物価高の影響を特に強く受けているメーカーなのが玉に瑕。

超特急ヒカリアン:上述のプラレールの派生商品およびそれを題材にしたアニメ。7両編成の4色が兄弟となっている。K301~304編成とまったく同じ色の順番で兄弟順になるように設定されている。初登場時は「四つ子」に近い描写だったが、準レギュラー入りの際に普通に年齢差のある兄弟に設定しなおされた。そのため頻繁に登場するようになってからの緑編成の子はかなり幼く、内面的な年齢はウエスト(500系新幹線。当時登場したばかりのためほぼ幼児)よりは上程度、くらいの様子。

駅メモ! -ステーションメモリーズ!-:いなほ色がモチーフの豊栄なほが登場。後にJR東日本公認キャラに昇格し、イベントで上沼垂色の衣装も入手出来た。

変わったところでは『未来戦隊タイムレンジャー*5などでも本車が背景に確認できる。


追記・修正はE653系の全カラーを見つけた人にお願いします。

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最終更新:2025年07月11日 08:32

*1 首都圏はグリーン車の通勤需要も高いので、定員確保のためにあえて2+2列にしているという事情もある。

*2 2024年3月改正からは1往復が「スーパーつがる」に変更された。

*3 その後常磐線の特急は2020年3月の全線運転再開で復活したが、いわき~仙台間の区間特急の設定はなく全て「ひたち」の延長となっている。

*4 常磐線に転属後もその姿で運用されたことがある。

*5 Case File 8のラスト、画家志望の青年が帰郷するのをみんなで見送るシーンに「青年が乗る列車」として登場。