豊ケ岡駅

登録日:2016/11/05 Sat 23:45:39
更新日:2018/03/19 Mon 11:41:28
所要時間:約 13 分で読めます





—学 園 都 市 線—
とよがおか
豊ケ岡
< ●  Toyogaoka  ● >
  いしかりつきがた    さっぴない
Ishikari-tsukigata    Sappinai


(撮影者:建て主)

豊ケ岡駅とはJR北海道の駅の一つ(無人駅)。月形町に存在する。

  • 概要
札沼線(愛称:学園都市線)にある駅の一つ。そのうち利用者数の多めの桑園〜北海道医療大学より向こう側(通称:札沼北線)の閑散区間にある。
駅舎である木造の小屋がシンボルの、林に囲まれた駅である。
この駅が名高いのは秘境駅として高い評価を受けているためであろう。その順位はなんと11位(2016年度)。
ちょっとした山林の中にあり、ホームは崖っぷち、聞こえるのはせせらぎや虫・鳥の鳴き声だけ。そんな静かな駅である。まさに秘境駅というにふさわしいたたずまいである。
その割に本数も(秘境駅としては)少なくなく、更に大都市・札幌と案外近い。
秘境の雰囲気とアクセスのよさ、この二つを両立した希有な駅として鉄オタの注目を集める駅である。

  • 駅とその周辺
駅に降り立つと、まず板張りホームが迎えてくれる。さほど広くないホームだが、人の乗降が少ないこの駅ではこれぐらいあれば十分だろう。ちなみに以前はコンクリート製(しかも傾いている)だったそうだが、2016年春あたりに改修されたらしい。
もし訪れたのが冬場なら雪かきをしている地域住民の方に出会えるかもしれない。地域の方の善意による助けもあってこのローカル線は運行しているのだ。
さて、ホームの階段を降りると左手に山小屋といった風情の建物が現れる。これが駅舎にあたる。その内部には時刻表や運賃表、北海道の駅につきものの除雪道具、そして写真が飾られている。もちろん駅ノートもあるよ! そしてなぜか薄い本も。
飾られている写真は夏か冬か、昼か夜かなどの違いはあるが、全て豊ケ岡の駅と列車を写したものである。ローカル番組の撮影でこの駅が取材された時の話によれば、これらの写真は地元・月形町の公務員の方が撮影したものらしい。
さて外に出てみよう。駅に通じる道は2本あるが、どちらも砂利道である。最終的に2つの道は合流するが、ここはまず踏切をわたらない方に行ってみよう。
この道を進んで右(南)に曲がったところに跨線橋がある。そこから西側を覗き込めば豊ケ岡駅のホームが見渡せる。駅舎にあった写真の撮影地点であることからも分かる通り、絶好の撮影スポットだ。もし豊ケ岡に列車がやってきたら橋を見てほしい。もしかしたらカメラを構えている人が橋上にいるかもしれない(特に来たのが浦臼方面に行く列車なら)。
更に道を南に進んでいくと、さきほど分かれた道が合流し、やがて国道275号にたどり着く。その道のりは駅から1km以上。
正直、知らない人が国道から見たらこの先に駅があるなんて分からないだろう。どう見てもその辺の農家専用道路にしか見えないし。農家の家屋と農地と倉庫以外の何がその先にあると思うのか。
そんなもんだから(鉄オタ以外の)利用者数はとても少ない。仕方ないね。

  • 評価
さて豊ケ岡が全国的に(ただし鉄オタ間のみ)有名のは高ランクの秘境駅だからであろう。
駅の雰囲気は前述の通り。山と林が織りなす静かさがすばらしい。
外部からのアクセスは「知らないと難しい」上に「冬は雪が積もって相当厳しい」といった有様。
そして評価を底上げする要因として、この駅が札沼線の駅としては異色の存在である点も考えていいかもしれない。
この点を説明するために、まずは札沼線の車窓について語らせて頂きたい。
この路線は愛称の学園都市線にふさわしく、複数の大学を結んでいる。その途中の駅周辺には住宅が立ち並ぶ。人工物の多い町並みが車窓に現れる。
石狩川をわたった先、当別町のあたりの風景は少し田園が広がるけど、それでもそれなりに大きな街を持っている。特に石狩当別の駅は地域の中心にふさわしい規模だ。
その次の北海道医療大学駅のすぐ近くには大きな建物がある。駅名にもなっている北海道医療大学で、愛称の由来の一つだ。
そして、愛称にふさわしいのはここまで。
その先の光景はもはや学園都市線というより田園都市線と言った方がいいような光景である。田園と都市(=札幌)を結ぶ路線だからあながち的外れでもないだろう。
ただひたすら田んぼの中を突き進むのである。田んぼでなければ減反政策の名残か転作地か離農地である。そして少し集落が見えたら、そのあたりに駅があり列車は停まる。だいたいこんな感じである(多分)。それどころか田んぼのど真ん中にあるという駅すらある。於札内や南下徳富がそれにあたる。
しかしながらこの豊ケ岡の駅はなぜか山林の中にあるのである。
石狩月形または札比内の駅を出発してしばらくすると急に林が現れる。他の所にも林はあるけど、わりかしすぐに途切れる。でもここでは進むにつれ林は深くなり山の中の景色となっていく。その中で列車はスピードを落としやがて駅に停まる。その駅こそ豊ケ岡である。
別の視点で語れば、石狩平野をひた走る札沼線は全体的に平坦な路線である。その中で数少ない坂道が石狩月形の東、札比内の西にある。すなわち豊ケ岡の周辺である。
駅の成り立ちは後で述べる通りだが、そもそもなぜこんな所に駅を作ったのかと疑問を抱かざるを得ない。きっと現代では分からない、当時なりの事情があったのだろう。

更なる評価点として豊ケ岡は地域住人から愛されていることが挙げられる。
なぜか? 実は秘境駅には意外にも地元の方に愛されている駅が多いそうだが、この駅の場合はその由来も要因となっているようだ。
札沼線が開通した1935年、豊ケ岡地区には駅がなかった……否、厳密には駅自体はあったものの近くの炭鉱(月形炭鉱)の荷物を積み下ろすだけの駅でしかなかった。
もちろん地域住民が足として利用できるものではなく、月形町中心部まで徒歩で行くことを強いられた。石狩月形〜豊ケ岡の距離が4.7kmだから、片道1時間以上かかることになる。
大変不便だったので地域住民は月形町に嘆願し、国鉄(当時)に豊ケ岡の駅を乗客の乗り降りができる駅にするように掛け合ってもらうことにした。
そして「費用を町と近隣住民で負担すればOK」ということになり、ホームも駅舎も完備の豊ケ岡駅が着工。そして1960年、めでたく乗客の乗り降りができる豊ケ岡駅が開業した。
こうした経緯から地域の財産と見なされているようだ。実際に地域住民の手によって駅は管理されている。
もちろん月形町からも大切な存在と思われているようだ。豊ケ岡の写真を使って「学園都市線でおいでよ」と言ってみたり、地域紹介パンフレットにしれっと書いてあったり。更には町公認の町おこしイベント(町長によるガイドつき)の会場の一つとして選ばれるまでになっている。

秘境駅としての高い評価。それにふさわしい秘境的雰囲気。
それでいてダイヤは6往復(2016年度)となかなか多い。
更に札幌からかなり近い(運賃1070円、所要時間1時間半程度)上、一日散歩きっぷ(土日祝のみ利用可能なフリーパス)の利用範囲内である。
周辺住民や旅人からの愛も大いに感じられる。
これらの要素が合わさり、この駅のマニア人気(にんき)はかなり高い。鉄オタ以外の人気(ひとけ)はほとんどないが。

ただ、北海道医療大学〜新十津川は路線存続の危機にある。
営業成績の指標となる輸送密度ではJR北海道全体で下から2番目である。これより低い留萌〜増毛が2016年12月に廃止されれば、めでたく(?)ワースト1の地位を獲得することになってしまうほどだ。そして維持困難ゆえに地元自治体と存続の協議に入る路線の候補としてもちろん名前を挙げられてしまっている。
地元の支援は受けられているので路線さえ残っていれば豊ケ岡は駅として存続できるだろうが、その路線自体があと数年でなくなるかもしれないという状況である。
さすがに一日一往復の浦臼〜新十津川が廃止される方が先だろうけど、もしそうなったらこの駅のある石狩月形〜浦臼、あるいは更に範囲を広げて残りの札沼北線もかなり危ないことになる。

交通の主役は鉄道から車になったのだろう。鉄道は地域の足としての役割を終えたのだろう。
しかし設立の経緯から町の宝と見なされ、地域住民に愛されたこの駅はぜひとも長く残ってほしいものである。


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