登録日:2017/02/18 Sat 23:14:22
更新日:2022/09/12 Mon 12:12:28
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「これなる陰陽師。謹んで泰山府君、冥道の諸神に申し上げ奉る――」
本ストーリーにおいて重要度の高い呪術であり、そのため様々な秘密の鍵となっている。
神様の概要
『泰山府君』は地獄にて審判を司る十王の一柱であり、また陰陽道では主祭神とされる神である。
元々『泰山』とは中国にある山で、死者が住まうという伝説を持つ。その伝説が高じて信仰となり、道教へと取り入れられた。
そして西暦序盤、道教は日本へと伝来し、『泰山府君』を含む道教の神々は日本の風土に根ざしていくことになる。
この道教の思想・文化が、やがて日本における陰陽道の誕生のきっかけとなっていく。
呪術の概要
現代において禁忌とされる魂の呪術で、生者の命と引き換えに、死者の魂を現世に引き戻すと言われている。
かつて
安倍晴明はこの泰山府君祭を用いて、死の運命を辿ろうとした三井寺の高僧『智興』を、その弟子『證空』の命と引き換えに延命したという説話が残されている
以降、泰山府君祭は晴明の血筋である土御門家(室町時代以前は安倍家)が代々、国家の秘祭として執り行ってきた。
そして昭和初期、土御門夜光による呪術改革が行われた際、他の呪術と同じくこの呪術も『帝式』に組み込まれた。
『帝式』の泰山府君祭は大幅なアレンジが加えられているが、根本的な部分は変わっていないらしい。
現代では魂に関しての研究は一部を除き行われていない
魂の呪術は現代において「失われた技術」であり、また人が手を出すべきではない領域とされている。
手を出すべきではない。これは「宗教色の排除」といった技術的な方向性の違いや、道徳的・倫理的な観念のみから出た言葉ではない。
太平洋戦争末期に起きた歴史的な大霊災。その原因とされる夜光が行い失敗した呪術儀式、それが何であるかは記録に残されていない。だが関係者の間では様々な憶測がなされ、その中である一つの呪術の名が、後世に伝えられることになった。
『泰山府君祭』
土御門夜光は自身を現代へと“転生”させるためにこの呪術を用い、結果東京は霊災という凶事に見舞われることになったと言われている。
この呪術は、個人が社会に多大な悪影響を与えかねないため、呪術史における最大のタブーとして現代の陰陽師たちに認識されている。
『天壇』と呼ばれる特殊な祭壇に供物を捧げ、祭具を用いて儀式を進行し、都状(陰陽道の儀式で用いられる書状)に書かれた祭文を読み上げることで呪術が発動する。
供物として銀銭、白絹、甲冑、弓箭(弓と矢)、太刀、七宝、砂金、琴、琵琶、勇奴(たぶん奴隷の一種)、鞍馬(鞍を置いた馬)が捧げられるが、それらは本物ではなく紙で作られた形代で代用される。
祭具は太鼓、法螺貝、鈴、幣、香、呪符、鐸(大型の鈴)、撫物(なでもの。身のけがれを除くために用いる呪物。人形や衣類など)を用いる。
使用巻:1巻、3巻、6巻、9巻、10巻、13巻、14巻、15巻、16巻
使用者:大連寺鈴鹿、比良多篤祢、早乙女、土御門夜光
分類 :帝式
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上記はあくまで実情を知らない現代の人間たちの見解であり、実際は異なる。
泰山府君祭とは『泰山府君』と呼ばれる霊的存在にアクセスし、霊魂に対して干渉を行う呪術システム全般のことである。
「生者の命と引き換えに、死者の魂を現世に引き戻す」というのは、泰山府君祭に存在する呪術群の一つであり、その全貌からすればごくごく一部でしかない。
「魂を加工して式神にする」「死者の魂を特定の人物へと転生させる」「人間の死体を形代にフェーズ5の御霊を現世へと降臨させる」「代償なしに死者を蘇生する」など、この呪術システムを通して行えることは非常に幅広く、こと魂に関しては万能であるかもしれないと作中では語られている。
だが、この万能というのは神の全能とほぼ同義であり、それを完全に制御することは人知では不可能であるとも語られている。
そのため泰山府君祭を実際に利用するならば、無条件という訳にはいかない。
例えば「代償なしに死者を蘇生する」には、対象の生前に一定の準備を行わなければならない。その準備が省かれた場合はタイムリミットが生じ、対象の死後にその時間を越えてしまえば、代償なしの蘇生は不可能となる。
他にもこの呪術には『天壇』、あるいは特定の呪具が必要とされ、無手で行使することはできないなど、様々な条件をクリア―しなくてはいけない。
また大霊災の原因となった呪術は、この『泰山府君祭』ではない。
この呪術は個人を対象としたものが主であり、たとえ失敗したとしても、その影響は限定的な規模にとどまる。しかも土御門夜光は泰山府君祭を行い、転生に“成功”しているのだ。
ゆえに彼が失敗したのは別の呪術であり、作中でそれは『泰山府君祭』の上位システム※であると述べられている。
※ 14巻ネタバレ
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「――以上、相馬家当主相馬多軌子、祖霊平将門公に謹んで啓す――」
天と地におはす十二座の神々を祀り、日の本の国の霊的要(かなめ)たる『皇(すめらぎ)』の息災を願う秘儀。読み方は「てんちゅうちふさい」
天曺とは天曹すなわち天上の神々を、地府は地上や冥府の神々や冥官のことを指す。
この秘儀にて祀る神々は十二柱おり、それぞれ泰山府君・天曹・地府・水官・北帝大王・五道大王・司命・司禄・六曹判官・南斗・北斗・家親丈人という。
本来は国家の至尊、天皇が践祚(せんそ。即位)する際に、その無病息災・延命長寿を言祝(ことほ)ぐために、土御門家が代々執り行ってきた秘祭であった。
だが、この秘儀は時代と共に形骸化していき、明治維新を機に廃された。
そして時代はさらに移ろい、『帝式』の誕生する昭和前期。この呪術は相馬家の思惑のもと、土御門夜光の手によって復活することとなった。
本来は天皇に対して執り行われていたこの呪術は、相馬家に伝わる『神降ろし』の秘儀と組み合わされ、新皇『平将門』のための祭儀として生まれ変わった。
この呪術は平将門公の人格を降ろすものではなく、フェーズ5の領域に至った高次元の霊的存在『平将門』を現世に固定するものであり、その影響は東京全土に及ぶ。
霊災のフェーズ5。この段階に至った霊的存在はいわゆる『神』と呼ばれるものとなる。
『神』は世界に“遍在”するため、人としての自我が拡散し、普遍的集合的意識なる状態に変化すると言われており、この呪術によって顕現される平将門公も同様に自我を持った人ではなく、森羅万象に宿る『神』として世界に根ざすこととなる。
ただ、フェーズ5に関しては作中でも不明な部分が多く、これがどういった意味を持つかはまだ考察の域を出ない。
『天壇』に様々な神撰(しんせん。お供え物)を祀り、祭文を読み上げていく。法螺貝、太鼓、幣、日鐸、月鐸などの祭具や呪具を用いて祭儀を進め、それとともに核たる“相馬の巫女”へと天から霊脈が伸び、十二座の神々とつながっていく。
祭文を読み終えると、それが書かれた都状が青い炎に包まれ灰となり、巫女に集束していた霊気が鬼門の方角へと抜ける。霊気は、その先に備えられた本殿から東京中に広く点在する社へと呪力線となって放射され、大地に潜む霊脈を取り込みながら儀式の一部としていく。
“天”の霊脈と“地”の霊脈。それらを巫女でつなげ、循環させ、そして新皇『平将門』の御魂(みたま)が、巫女の内に光のごとく灯ることで、祭儀は完了する。
『神』とのチャンネルは容易に開くことができないため、作中では二度の霊災テロを行い、その回線に道筋をつけた。またこの道筋をつけた二人は巫女の護法『八瀬童子』となっており、巫女同様にこの天曺地府祭の術式の中に組み込まれている。
またこの儀式は規模が大きければ大きいほど安定すると言われている。作中ではこの課題に対して、早期霊災感知網を東京全土に設置することで解決を図った。
使用者:土御門夜光、相馬多軌子、夜叉丸、倉橋源司、蜘蛛丸
使用巻:14巻、16巻
分類 :帝式
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※ EX3巻ネタバレ
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土御門夜光の見解によれば、安倍晴明は死後に『泰山府君』と混じり、その一面を成したらしい。
これは夜光が10代後半の頃に導き出した結論であるが、その確度は極めて高いものと思われる。
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追記・修正は泰山府君祭で転生して、かわいい異性の幼馴染みにほっぺたをprprしてもらってからお願いします。
- 元ページの容量削減のため、こちらを分割してみました。 -- 名無しさん (2017-02-18 23:14:22)
- 使用者と使用巻逆じゃない? -- 名無しさん (2017-02-18 23:57:20)
- ※1〜4ってコメント欄下に記載するやつじゃないのか?やった事無いからよく分からんが -- 名無しさん (2017-02-19 00:00:22)
- ↑2,3 修正しました。 -- 名無しさん (2017-02-19 01:01:49)
最終更新:2022年09月12日 12:12