ベーリング海峡ダム

登録日:2019/06/12 Wed 23:21:42
更新日:2022/05/08 Sun 13:58:41
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ベーリング海峡ダムとは、科学の勝利である。

概要

この計画が実現すれば、人類の居住可能領域が大幅に広がり、さらに農業生産量も劇的に増えることが予測される。
さらに海運などの側面でも大きな恩恵に預かれ、特に日本はヨーロッパ方面への劇的な時間短縮ができるようになる。
まさにこれからの人口爆発時代に相応しい夢の溢れる計画と言えるだろう。

追記・修正はベーリング海峡ダム計画の実現を夢見ながらお願いします。



































ほとんど嘘です。



……というか、

一時期は真面目に検討されていたけど、現代の視線から見ればそりゃねーよな計画です

本当の概要

ベーリング海峡ダムとは、 科学の敗北である
一応上に書いたメリットは当時真面目に検討されていた。だが、その方法が問題だったのである。
そのやり方は計画名を見れば一目瞭然、だがにわかには信じられないやり方である。

その名の通り、ベーリング海峡にダムを作って海流をせき止めてしまおう という計画なのだ。

この現代の視線から見れば狂気の沙汰としか思えない計画を提唱したのは、ペトル・ボリソフ・ミハイロヴィッチという学者(なお彼の専門は鉱山で海洋・海流などに関しては専門外)。1968年のことである。
さて、ミハイロヴィッチ博士の考えていたことは以下の通り。

ベーリング海峡をせき止め、北極海の冷たい水をひたすら太平洋に排出し、太平洋からの水を北極海に流し込む。

すると当然、北極海の温度は上がり、氷は全て溶ける。

北極海を通して海運が可能になり、地球北部の交通が格段に楽になる。

さらに、永久凍土にさらされたシベリアやグリーンランドの沿岸部も温暖化する。

人間が住める領域が大幅に広がって万々歳。

ちなみにミハイロヴィッチ博士の構想によると、当時の技術でも十分実現可能なものである。

実際に実現したらどうなるか?

まず、 シロクマは絶滅する 。当たり前だろう。ただ、当時は生物多様性とかあんまり考慮されていなかったので仕方ない。
次に 海水面は確実に上昇する 。北極海の氷は海水に浮かんでいるので、これが溶けても実質的な海水面への影響はないのだが。その周辺のグリーンランドやシベリアの氷河が溶けるため、海水面は確実に上がる。
現代でも沈みかけている太平洋の島々には悪夢だろう。当然それ以外の国への影響も計り知れない。
そもそも、氷が解けたからと言ってそれをすぐさま農地に転用できるかというと怪しいだろう。氷が解けたらそこは大抵湿地になるだろうし、農地への改造にはかなり手間がかかりそうだ。
また、北極海は死の海のようにも見えるが、実際は豊富なミネラル分を含み、多くの生命を育む命の海でもある。そこの海流を弄ったら全世界の海の生態系や漁業にどんな影響があるのかは現代でも予測困難である。

そもそも根本的に、 地球温暖化に悩んでいるのに温度上げてどーすんだ という話である。

だが、当時は人口爆発による食糧不足と、(温暖化ではなく)寒冷化が真剣に心配されていたので、決してトンデモ学説と安易に切り捨てていいものではないだろう。
というか当時は割と「最先端の環境改善技術」ともてはやされ、児童誌なんかの「未来の生活」の記事では頻繁に取り上げられていた。
現代の環境に対する考え方が正しいと保証されているわけではないので、ミハイロヴィッチ博士の構想がいつか再び見直される日も来る……かもしれない。

当時のソ連は真剣に検討していたようだが、流石に周辺国が大反対して棄却せざるを得なかったらしい。
というか、実際に実現しようとしたらアメリカの協力が不可避になるし、「ダムを伝って陸路でソ連軍が攻めてくる」可能性を考えたらいくら何でも冷戦下のアメリカが許可を出すわけがないだろう。アラスカを切り売りしなければ……とソ連が金鉱脈の発見に続いて後悔したかは知らない


余談

これと似たような構想として、ドイツの技術者が提唱した『アトラントローパ計画』が存在する。
ジブラルタル海峡を塞き止めて地中海の水を排出し、ヨーロッパとアフリカを地続きにする というベーリング海峡ダムに負けず劣らずトンデモなもの。
当然ながら実行されることはなかったが、ドイツ発祥かつ生存圏思想に基づいた計画であることから、第二次世界大戦でナチス・ドイツが勝利した仮想戦記に登場することがある。


追記・修正はベーリング海峡ダムに代わる計画を考えながらお願いします。


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最終更新:2022年05月08日 13:58