登録日:2025/11/07 (Fri) 14:00:00
更新日:2025/11/07 Fri 18:21:55NEW!
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もしも量子力学を理解できたと思ったならば…それは量子力学を理解できていない証拠だ。
■概要
量子技術(quantum technology)とは、量子力学の原理を応用した技術の総称である。
例えば量子コンピューターや量子通信、量子センサーのことをいう。
つまり、
量子論により体系化された量子現象を、プログラムなどにより人為的に引き起こし、これを観測することで情報処理をしたり計算結果を得るための技術のことである。
広義には、ダイオードやCPUにも量子現象が使われているといえるが、狭義だと量子現象を主体的に操作するものだけを指す。
・・・え?
とまあ、量子技術の定義だけを説明しても、何を言っているのかチンプンカンプンだろう。
それもそのはず、
量子技術は「今のところ未完成の、未来の技術」なのである。
というか量子力学そのものが、現代
物理学のなかでも殊更に難解な学問であって、かのアインシュタインをして「奇怪な現象」といわしめる分野である。
量子力学に真正面からぶつかって勉強しようとしても、
ナルトや
のび太、
ゴンでなくても頭から煙が出るだろう。
しかし、
量子技術だけなら量子力学を把握せずとも、十分理解可能になってきている。
通信技術の仕組みを熟知しないでも、皆が
スマホが扱えているのと同じだ。
実は、量子技術開発における最近五年間のブレイクスルー的な目覚ましい発展により、
量子技術の実用化はあと一歩のところまで来ている。
科学の力ってスゲー!となるかどうかは分からないが、なるべく噛み砕いて説明していく。
■そもそも量子って?
量子技術を語るうえで避けては通れない「量子」について、ある程度の説明をしなくてはならない。
「ちょっと何言ってるかわかんないですね」な部分があるかもしれないが、適度に読み飛ばしつつ、ついて来て欲しい。
端的に言うと、
量子とは「ミクロの世界」における法則のことである。
我々人間の「マクロの世界」(つまり目に見える世界)では、運動にはエネルギーを必要とするし、
ミッキーは二匹同時に存在できないし、双子でも完璧に一致した動きをするわけではない。
俗に言う「物理的に無理」というやつだ。
しかし原子や電子、光子といった「水素ガスの成分の成分」レベルの小さな物体の話になると、上記の例えみたいな現象すら起こることがある。
現在判明している量子独特な性質を3つだけ挙げておく。
波動性のある物質が、障壁があってもその壁の反対側に行くことがある、という現象。
障壁を「押しのける」のではなく、トンネルの穴が開いているかのように「すり抜ける」ため、運動エネルギーは少なく、トンネル効果と呼ばれている。
素粒子は、幾つかの状態を同時に持ったまま存在することができるという現象。
この「複数の状態」というのは確率的な話であり、
シュレディンガーの猫のように人間が観測することで、一つの状態に確定する。
「量子もつれ状態」(双子のような状態)になった粒子の、片方が観測されて確定されると、もう片方の状態も瞬時に確定するという現象。
この現象は、双子の粒子の距離がどれだけ離れていても発生する。
アインシュタインもこの現象には否定的であるほど、理解困難な現象である。
これらは明らかに我々マクロの世界の常識とはかけ離れた動きをしている。嘘みたいに思えるのだが、実証実験により確かなことが明らかとなっている。
これら以外にも光は
波と粒子の両方の性質を併せ持つなど、不可思議なことがいろいろと起きている。
このようなミクロの世界だけで起こる現象のことを、量子効果と呼んだりする。
とにかく、原子レベルの世界だと、別のルール(量子力学)が適用されるんだ、ということさえ分かればOKだ。
量子コンピューターとは「ミクロの法則を利用したコンピューター」ということになるし、
量子通信とは「ミクロの法則を利用した暗号通信」ということになる。
量子技術の沿革
このような量子力学を活用した技術を作り出そうという発想は、結構古い時代からある。
2025年度
ノーベル物理学賞を受賞したのも1980年代に行われた量子実験であり、量子コンピューター構想が打ち出されたのも1980年代のことである。
しかし、発想自体はあっても、これを実現させるまでには紆余曲折があった。
そりゃそうだ。第一に量子力学をちゃんと理解できる人間がどれだけいるのか。そして技術に落とし込むには、その人がコンピューターサイエンスまでマスターしている必要がある。
さらにアルゴリズムやソフトを作るだけでなく、ハードも一から作る必要がある。
人間の世界とは異なるルールを、人間の世界に適用させようというのだから、とにかく大変だった。
2000年代になってようやく量子コンピューターの原型が「
15は3×5だ」という素因数分解に成功したぐらい。当初は「2050年ぐらいまでには何か形になっていればいいよね」ぐらいの感覚であった。
しかし、各国の研究機関やグーグルやIBMなどの大企業がこぞって巨額の資金を投じていく中で、開発は一気に進んでいく。
日本政府も2016年の「第5期科学技術基本計画」から量子技術の価値を高く見積もり、2025年の「日本成長戦略本部」が掲げた重点投資をする「17の分野」の中にも「量子」分野を組み込まれている。
我らが理化学研究所でも、2021年にNTTや東京大学と共同で、スクィーズド光を測定できる高量子ノイズ圧搾、テラヘルツ級の周波数で動作が可能な量子光源モジュールを作成、2025年には低損失なコプレーナ線路にスタブ型の容量素子を採用することで、1デシベル未満の挿入損失を達成、さらに窓関数変調により、インピーダンス変調を滑らかにし、望ましくないゲインリップルを除去することで付加雑音を量子限界に迫る+0.18量子(理想増幅器の量子効率84%)となる増幅器を開発している(早口)。
…話を戻すと、それだけ急速に量子技術は発達してきているということなのだ。
量子技術でできること
では、
量子技術ってなにができるの?という話だが、実は、
能力的な範囲では既存のものと何ら変わらない。
量子コンピューターで出来る事は今までのコンピューターでも出来る。
量子技術でいきなり
ゲルバナができたり、
時がループしたり、
人間がワープできたりするわけではない。
じゃあ大した事ないのかというと、そうではなく、
今までのコンピューターでは時間的、空間的な制約からコストに見合わないとされてきたことが可能になる。。。とされている。
あくまで実現可能性の話である。
まだまだ解決すべき課題が山積みなので、今すぐに実現するものではない。
以下は挙げるのはすべて、理論上は出来るとされている量子技術である。
①マシンの超々小型化
従来の集積回路(トランジスタなど)には、小型化における限界が存在する。
これには前述のトンネル効果が関係してくる。原子レベルまで機器を小さくしようとすると電流漏れや過度な発熱が発生し、エネルギー効率がとても悪くなってしまうのだ。
量子コンピューターは、はじめから原子レベルでの話なので、このような制約がない。動物や人間にマイクロチップを埋め込む技術があるが、あのサイズでパソコン並みの計算処理ができる機械を作れるだろう…と言われている。
②超並列的処理による計算の高速化
量子コンピューターでは、
人間の頭の考え方とは全く異なる処理方法が可能である。
例えば素因数分解なら、素数で割れるかどうかを一つ一つ試すことで解いていくのが普通だが、量子コンピューターの場合、何千個もの素数について割り切れるかを同時に計算することができる。
量子の世界には、量子かさね合わせのような「確率論的な法則」が度々出現してくる。量子コンピューターは、そのような
「可能性をすべて探る」ことが得意なのだ。
膨大な時間がかかるとされる
SCP-1941のような問題も、量子コンピューターなら一瞬で解けるようになるらしい。
効率的な輸送方法を考える物流問題などでの活用が期待されている。
ちなみに、これは既に実用化の目途が立っている。
③タイムラグ0の長距離通信
いわゆる量子テレポーテーションという技術である。
先ほど人間はワープできないといったが、情報ならワープ可能という代物だ。
今ある光ファイバーケーブルを使用した通信だと、低遅延を目指そうとしてもどうしてもラグを0にはできないのだが、量子もつれを応用すればこれが可能だという理論である。
また、量子情報理論という分野では、データのさらなる圧縮方法の研究もおこなわれている。
これら以外にも、まじで言ってるの?と思っちゃう眉唾物の技術が考案されている。
そう思うのも全く無理はない。量子の世界はそれほどまでに荒唐無稽な世界なのだから。
SFにも感じられる量子技術だが、2030年代には量産化、低価格化が行われているだろうという予測もあるほど、近未来の話なのでした。
追記・修正は(割と本気で)現代物理学に精通した人がお願いします。
- つまり、未だ実現は出来ていないけど実現は可能な技術? -- 名無しさん (2025-11-07 15:00:28)
- 量子コンピューターってあれだろ?根源的破滅招来体の出現予言したりできるんだろ?アルケミースターズはよ -- 名無しさん (2025-11-07 15:31:54)
- 量子世界だと因果律が成立しないから因果律を無視した現象を引き起こせるってのとは違う? 一昨年当たり東京大学が量子世界を利用する事で因果を踏み倒して複数のバッテリーに同時充電するみたいな事やってた記憶 -- 名無しさん (2025-11-07 18:21:55)
最終更新:2025年11月07日 18:21