聖戦のイベリア

登録日:2021/01/08 (金曜日) 14:25:03
更新日:2024/10/10 Thu 04:09:38
所要時間:約 4 分で読めます




聖戦のイベリア』とは、Sound Horizonから2007年8月1日に発売されたマキシシングルである。

●概要

サンホラとしては2作目となるシングル作品であり、収録された3曲を通して一つのストーリーが描かれている。

モチーフは題にある「イベリア」…現在のスペイン・ポルトガル地方で中世に繰り広げられた戦乱「再征服(レコンキスタ、国土回復)運動」。
イスラム系の「後ウマイヤ朝」によって一度イスラムの色に染められたイベリアを、再びキリスト教の民が総べるため、ウマイヤ崩壊後のイスラム勢力へとキリスト系小国家群が攻め入り、長き戦いを経てついにスペインに統一キリスト教王国を築き上げたこの運動。
…しかし、それに巻き込まれた名もなき民にとってはイスラム教側もキリスト教側も同じ暴威なのではないか?…そうしたやり切れない想いと、果てなく続く争いの負の連鎖からなる歴史の流れを謡っている。(注:建て主の個人的解釈です)。

●収録曲

シングル冒頭の語りは深見梨加、曲中の英語語りはアイク・ネルソンが担当している。

1.争いの系譜

イベリアの地で長きにわたって続く「聖戦」。それに巻き込まれ全てから逃げようと駆けだすも「月夜に散った」少女は、蒼氷の石に眠る「悪魔」を呼び覚ます。

「再征服(レコンキスタ)!」コールが印象深いオープニングナンバー。本作の「~将軍に続けー!」枠でもあり、物語の基礎設定を語りとバラードで綴っている。
また歌詞の中には次に発表された第六の地平線『Moira』に繋がる「六番目の女神(うんめい)」と言うワードも存在する。

2.石畳の緋き悪魔

悪魔と契約した少女は、彼からその望みを問われる。

本作中で一番「普通の歌らしい」楽曲であり、CDの初回限定版にPVが付属している。

3.侵略する者される者

イベリアの地で繰り返される侵略と争乱、「啓典の民」と「聖典の民」の不毛な相違とぶつかり合い。その中で少女の望みを聞いた悪魔は、戦場で全てを薙ぎ払う。

冒頭でイベリア史の概略が歌われ、後半では派手な展開に。ライブ版では出演者や会場の観客が左右で「聖典の民」(黒の軍)「啓典の民」(白の軍)になり合唱を行っている。
エンディングでは一応元ネタに近い「啓典連合王国」が成立したらしいが、サディ先生の最後の台詞は新しい聖戦が起きる可能性を暗示させて縁起でもない…。


●登場人物


  • サディ先生(演:Jimang)
はるばる西進してイベリアまで流れ着いた流浪の民の老預言者で、歴史を3人の弟子と共に見守る。
かつて故郷を喪ったらしいがその詳細は不明。只曲中に「離散の(diaspora)」と言う冠詞がついている。

  • サランダ(演:RIKKI)
  • トゥリン(演:REMI)
  • エーニャ(演:KAORI)
先生と共に歴史を見守る「流浪の三姉妹」(Gitano Sisters)。曲中では主に「歴史」に関わる部分を歌う。
名前の表記や曲中で「流浪の」を「Gitano」(スペイン語で「ジプシー」を示す単語)と読む事から、リアルで言う「ロマ」(放浪の民族集団ジプシー)の一員と思われる。

  • 《美シキ夜ノ娘》(ライラ)(演:YUUKI)
父を啓典の民、母を聖典の「兄弟(アーフ)」のせいで喪った少女。
家や自分を取り巻く全てから逃げ出そうとした時、胸を火の矢で射抜かれるが*1、地の底で封印されしシャイターンと出会い、「人」で無くなることを理解しながらも焔を纏い彼の伴侶となる。
そして彼の問いにより、自分の弱さから迷い続けていた「自分が何を憎むべきか」を理解することに…(但し曲中で明言はされない)。

  • Shaytan(シャイターン、シャイタン)
かつて古の賢者により蒼氷の石に封じられ、しかしその伝承も自分自身が何だったのかも忘れられる程長き時に渡って封印されていた「焔の悪魔」。
だがライラとの出会いで「焔」を取り戻し、彼の言葉を聞き取れなかったライラが彼の名を「シャイターン(悪魔)」とした事で復活。彼女に「何を願うか」「何を滅ぼすべきか」と問う。
つまりこの2人はバカップルであるというのが半ば公式になっていたり。
そして黒の軍と白の軍がそれぞれの「正義」を掲げ相争う戦場に降り立ち、「兄弟同士」で殺し合いを続ける「人類諸君」へと宣戦布告する…。

ちなみにライブ版では作者のRevo(PVに少しだけ登場)と混じったレヴォタンや頭だけ『Roman』のイヴェールなイヴェタン(イヴェターン)なる謎存在が誕生した。

●ライブ版

『第二次領土拡大遠征』と『国王生誕祭2009』初日等での本作全てのフル披露の他、『Moira』と『進撃の軌跡』のコンサート版千秋楽にて、『争いの系譜』の「再征服!」コールから直で『侵略する者される者』に繋げる短縮バージョンが登場*2
前者ではMoiraのエレフセウス(ギター装備)が幼き日の自分・後者ではRevo本人が歌姫2人をライラの代わりに従えシャイターン役となっている。
妹を喪い冥王の器たる「紫眼の狼」と化したエレフと、ライブ後の展開で「仲間達以外の人類を駆逐し制止する友とも対する『進撃の巨人』」と化す『進撃の巨人』主人公エレンにこの歌を擬えるのは似合いすぎではないだろうか。
また、Around15周年記念祭の第3部にて2回披露されたが、1回目の曲名は『石畳の緋き悪魔関係者』であり、歌詞も「ライラ」が「巫女よ」になるなどの変更があった。

●残された謎

本作には発売当時「隠しトラックへたどり着けるかも知れない謎解きページ」が存在しており(現在は閉鎖)、謎を解くため多くのファンがチャレンジした。
全部で「流浪の詩」「焔の詩」「刻の詩」「深遠の詩」の4つがあり、「刻の詩」までは(相当コアな知識や、グッズにちりばめられたヒントが必要になるが)解くことが可能。
ところが、そこまでの3つは全て難解なれど「問いかけ」であるのに対し、「深遠の詩」のみ内容がこうなっている。

蒼き星が泣き緋き月が嗤った

天に花が煌き地に星が咲いた

闇の声が響き光の花が揺れた

鎖と焔が喚き楔と声が朽ちた

(テキスト入力欄)

「深遠の地平へと赴く」のボタン*3

と、もはや問題ですらないポエムじみたセンテンスだけが存在しており、そもそも謎なのかどうかすら不明。*4
わざわざ3問の難問の後に用意されているのだから、とチャレンジャーは続出したが「深遠の詩」の謎は誰にも解けず、結局「隠しトラックが何だったのか」は謎のままとなった。*5
そのため「そもそも隠しトラックなんて無かったのではないか」説や「国王生誕祭2009でイヴェタンが披露したライブ限定曲『海を渡った征服者達』(スペインからアステカへの征服戦争を元にし、「聖戦」「石畳」という台詞も登場する曲)がそれではないか*6」説があるが、真実は謎である。

追記・修正お願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 聖戦のイベリア
  • Sound_Horizon
  • シャイターン
  • 争いの系譜
  • 石畳の緋き悪魔
  • 侵略する者される者
  • レコンキスタ!
  • 六番目の女神
  • 再征服運動
  • Sound Horizon
最終更新:2024年10月10日 04:09

*1 その時の台詞や国王生誕祭を編集した映画『Across The Horizon』時付加された「火の矢の雨」からすると、逃げ出そうとしたと時街を襲った軍からの流れ矢にあたったらしい。

*2 『Moira』版は「聖戦のJCBホール」・『進撃の軌跡』版は「凱旋のLinked Horizon ARENA」とライブ会場名が付加されている。

*3 この先のページでは「深遠へト至ル数トハ異ナル詩を君ニ今、敢エテ問オウ……」の一文だけが用意されている。

*4 「刻の詩」までは答えについて「何番目?」と問いかけているが、それすらない。

*5 有志がサイトを直接解析した結果、「深遠の詩」のページは「刻の詩」までと異なりテキストボックスと遷移ボタンが連動しておらず、答えにあたるページが存在しないことが判明している。

*6 曲前のMCにてイヴェタン自ら「シャイターンと少し関係している」と発言している。