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我以外皆 異性也(バキ道)

登録日:2021/07/22 (木) 00:57:16
更新日:2026/07/29 Wed 20:10:08
所要時間:約 8 分で読めます






「ワレイガイミナ イセイナリ」…?




「我以外皆 異性也」とは、バキシリーズ第5部『バキ道』第99話『Ogre』において出た台詞。
続く第100話のサブタイトルにもなっている。

目次

発言の経緯


第二代野見宿禰が「地上最強の生物」こと範馬勇次郎への挑戦を決意した頃。

とある大学総合病院にて、内科医学博士の秦公芳は正体不明の『Ogre』と呼ばれる存在の血液の分析結果に驚きを見せる。
その血液は、テストステロン及び男性ホルモンが通常の10倍をオーバーして測定不可となっており、ヒト科のレベルを超えて哺乳類のものではないという結果だった。
そんなに男性ホルモンが多いにもかかわらず、勇次郎はヒゲが薄く髪がフサフサなのは突っ込んではいかんのだろう
雄としてのホルモン指数が異次元だという診断結果を聞いた鎬紅葉は、秦に「Ogre=勇次郎の視点から見た世界の景色」を訊ねるが、その答えとして「我以外皆 異性也」という言葉が返された。

「我以外皆 異性也」という言葉に最初はキョトンとしていた紅葉だったが、その表現にやがて笑いを見せる。
対照的に深刻な表情の秦は、老人も老女も力士もラガーマンも異性として見ている状態を「オンナ盛り」と評する。
紅葉はある意味幸せかもな、と軽口を叩くのだった。


実例


第100話ではジョー・ウィリアムなる新キャラが唐突に登場する。

彼は48歳の冒険家の男性であり、容姿は立派な髭が特徴的で毛深い。
取材中でも葉巻を吸いながら煙を漂わせており、喫煙家であることが読み取れる。
1990年代にチョモランマ無酸素登頂、2000年代には熱気球による太平洋横断とナイアガラの瀑布を登攀するという実績を残した。
死と隣り合わせの冒険をする理由を「内なる雄に出会いたい」と語る彼だが、そう考えたキッカケについては頑なに口を開かないでいた。


前回の二代目野見宿禰が勇次郎に挑むことを表明した次の回にこの流れ。
これを読んだ読者は「またインタビューで既存キャラの紹介かよ…」と思ったことだろう。
しかし、ジョーの回想にて描かれたシーンは読者の想像を完全に脱しており…


夜を迎えて取材が終わったジョーは部屋で酒を飲みながら、「死んでも言えない理由」を思い出す。



言えるワケねぇわな

「実は…………………」

手ごめ(・・・)にされたンだ」


死んでも言えねぇ!!


死んでも言えない理由、それはジョーはかつて範馬勇次郎に襲われて強姦されたという過去だった。
錯乱した顔を見せるジョーを後ろから無理矢理抱きかかえる勇次郎。


初めて知ったよ……

俺にも――


「女」がある!!! ことを……


勇次郎に頭を掴まれて無理やりキスをされベルトを力ずくで外され稲妻が走ったような衝撃♂を感じるジョー。
ジョーが勇次郎に襲われた過去は現在から16年前の32歳の時期、勇次郎の息子である範馬刃牙は2歳の時期だった(『グラップラー刃牙』本編前の時系列となる)。
行為を終えて絶望から膝を抱えてしゃがみ込むジョーとは対照的に、背中を向けて去っていく勇次郎は顔こそ見えないが満足そうな雰囲気にも見えた。*1

ジョーは勇次郎に強姦されてから、各地で危険な冒険を行うという「命を的に掛ける」行為を続けるようになる。
それは女にされてしまった自分の雄を探す旅でもあり、見方を変えれば性的被害を受けた末の一種の自殺願望でもあった。*2


反響


100話の内容がネットで拡散されると、ある意味当然の反応ではあるがSNSやファンブログは騒然となった。
匿名掲示板におけるバキ関連のスレはお祭り状態の勢いへと加速し、各サイトでも激しい議論や考察が交わされた。
内容自体はかなりの賛否両論であり、肯定的意見と否定的意見が真っ二つに分かれる形である。

このエピソードの恐ろしい点としては、長期連載作品の根幹を揺るがす設定の解説でありながらも過去シリーズとはこれといった矛盾点がほぼ見られない点だろう。
むしろこれまで「変なノリ」「ライヴ感」程度に見られていた描写や一部設定などが、今回の勇次郎の性的指向を考慮すると大体説明可能なのだ。(例:勇次郎の子がジャックと刃牙以外一切出て来ない理由)
シリーズのテーマとしては「親子」とか「愛」とか「強者故の孤独」などが存在するのだが、そのようなテーマも勇次郎の性的指向を前提に解釈するとテーマが深まってくるのである。

バキシリーズはシナリオの変更が激しい作風とされているが、これは果たして後付け設定なのかという所も非常に判断は難しい。
後述のメディア展開などを見据えたシナリオと言う見方がある一方、上述したようにあまりにも過去シリーズとの整合性が整いすぎているために単純な後付けとして切り捨てられないという見方も多い。
それどころか、作中では勇次郎に欲情した男性のエピソードや勇次郎が高齢の女性に勃起するエピソードなども描かれていたため、これらの要素が伏線だったとも考えることが出来る。
何にせよ初期から考えていた設定ならばまさかのどんでん返しになるし、後付けならばその割には設定の矛盾が生じていないため、どちらにせよ凄い結果である事には変わりはないのだが。

『グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ』というエッセイのドラマ化が動いていたため、このエッセイを意識したという説もある。
しかし、今回の勇次郎の設定はBLと呼ぶにも難しいので、エッセイを意識していると仮定してもその意図が「ファンサービス」なのか「対抗意識」なのか「BLに対する一種のアンサー」なのかはファンの間でも見解が分かれる。
なお、著者の金田淳子はこのエピソードについて勇次郎の行動などを批判しているが、批判の内容に過去シリーズの描写と食い違う解釈がある点を指摘する意見もファンから出ている。

シリーズを重ねる毎に理性的な面やコミカルな面が強くなっていった勇次郎が、シリーズ初期における凶悪なレイパーとしての側面が久々に強調されたことに驚く声も多い。
レイプ事件は本編前の時系列の出来事である(つまり人格が丸くなる前)と説明されているので、長期連載にありがちな「色々とキャラが一周してある意味人格が初期に回帰する」的な現象ではないのだが…。
性欲が抑えきれない異常な怪物としての存在を読者に改めてぶつける形となり、長期連載で薄れていた勇次郎の恐怖感を思い出したという読者も続出した。


勇次郎の性的指向


楽しそうに同性を犯している勇次郎は同性愛者に見えるため、ホモ呼ばわりされがちである。
しかし、主人公の存在からも分かるように、勇次郎は決して同性愛者ではない。
同性も異性も性的対象として見れるという辺り、性的指向としては両性愛(バイセクシュアリティ)が近いと考えられる。

ところが、勇次郎は性別や年齢など関係なく他人が異性に見えて欲情が可能という感覚の持ち主であるため、これを純粋なバイと呼ぶべきなのかも解釈が分かれる。
他人を全て異性として捉えて欲情していると考えると、見方次第では異性愛(ヘテロセクシュアリティ)の一種とも言える。

結論から言うと、勇次郎のような他者観の持ち主が現実で見られないため、現実的な性的指向に当てはめるのは非常に難しい。
そもそも他者を強姦する癖があるレイパーなので、性的指向とか以前に異常性欲の持ち主であるとしか言いようがない。
結局は刃牙や光成が例えていたように、勇次郎の他者への関心は「病気」の一種なのかもしれない。
またマイノリティ側と言っても決して抑圧される側ではなく、地上最強の生物であるため自分以外の全人類を抑圧する側という恐ろしい存在になっているとも言える。
あえて言うのならばオーガは己以外の全ての存在を「雌」とみなし差別しているのである。

ちなみに、本エピソードや第四部『刃牙道』の第137話では勇次郎は老人にも欲情することが描写されているが、逆に幼児や小児に対して欲情することがあるのかと言う点は議論になる。
これに関しては色々と解釈があるが、普通に欲情は可能であると見る意見が多い。初期の勇次郎の性格的にそのような相手に対して性的暴行を行っていたのではないかとする考察もある。
メタ的な視点で言うと、少年誌では子供に対する性的欲情の明言は避けられたと考えられる。老人はいいのかという点は置いといて
勇次郎は第四部の第14話において無謀にもサインを求めてきた少年に優しく対応したことを示唆する描写はあるが、これは性格が緩くなった親子喧嘩後の出来事であるために勇次郎の子供への基本的な対応と見れるかは不明。


余談


  • 発言の元ネタは戦前から戦後にかけての大作家、吉川英治の言葉とされる「我以外皆我師也」だと考えられる。
    意味は「自分以外の人々は自分にとって足らないものを埋めようとしてくれる師である」という謙虚な内容であり、勇次郎の傲慢さとは真逆の性質と言える。
    秦も吉川英治の言葉を知っていて改変したのかもしれないが、そうだとすれば彼は独特な表現センスの持ち主かもしれない。

  • ジョーの回想で勇次郎はまず羽交い絞めにしてディープキスらしき行為をしている。
    江珠との初対面でも性的な行為はキスから始めており、性欲の発露としては実は勇次郎はキスから始める主義なのかもしれない。
    また、ジェーンとはしてないため性欲よりも戦場における騙しへの制裁、あるいは戦士としての否定と言った意味の方が強い行為の可能性がある。
    さらに息子である刃牙も梢江との行為の際キスから始めている。範馬はみんなキスから始める性癖の持ち主なのかもしれない。あるいはメタ的に言えば作中で愛のあるセックスの表現として初手キスという可能性もある。

  • ジョーをレイプした16年前の時系列は*3刃牙が数歳程度の時にあたるため、グラップラー刃牙という勇次郎が最も狂暴だった連載時系列に該当する。

  • 第4部『刃牙道』にて勇次郎は本部以蔵に「守護(まも)ってやる」と言われ、その時や武蔵の攻撃から本部が自分を勝手に庇った時には涙を流し激昂していた。
    となれば本部は「勇次郎の中の雌を目覚めさせた唯一の生物」と言えなくもないかもしれない。

  • リアル風格闘漫画の金字塔としてバキシリーズと並び立つ格闘漫画シリーズでも「男もいけるしな」(被害者の師匠の項目を参照)というシーンがあり、また同時期にはジェンダーレスを名乗るバイのレイパーキャラも登場しているが、恐らく偶然だと思われる。シンクロニシティ?


追記・修正は他人が全員異性に見える人にお願いします。

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最終更新:2026年07月29日 20:10

*1 郭海皇との激戦後に郭海皇に向けた後ろ姿と一致している。

*2 範馬勇次郎というあの世界の神話的と言ってもいい存在に犯されてなお、ジョーはその事実を安易に肯定や美化せず否定するべき嫌な思い出とちゃんと認識したままとも言える。バキシリーズの世界ではその強さに魅了され、勇次郎に飛びついてキスしたくなる衝動に駆られる男性すら存在するにもかかわらずである。

*3 バキシリーズの世界は長期連載の影響か時系列や年代表記がかなり歪んではいるが