成る(世にも奇妙な物語)

登録日:2021/10/17 (日) 02:11:37
更新日:2021/11/06 Sat 17:33:05
所要時間:約6分で読めます




「成る」は世にも妙な物語のエピソードの1つ。放送は2021年夏の特別編。

将棋において自分の駒を敵陣に入れて「成る」というのは動きが大幅に強化されるため戦略として非常に重要である。
が、妙な世界の将棋ではもちろんそんな分かりやすい「成り」ではなく…

プロローグ

「『人生詰んだ』最近よく耳にする言葉です。」
「『詰む』は元々は『行き詰まり』『立ち行かなくなる』という意味の将棋用語です。」


「『詰む』と対照的な言葉に『成る』という言葉があります。敵陣に入り、より強い駒に進化する事を『成る』といいます。」

「ここに己の人生を賭けて戦う1人の棋士がいます。彼は果たして『詰んでしまう』のか?それとも『成る』のか?」

タモリが敵陣最奥に飛車を進め裏返すと『成る』と書かれていた…

登場人物

  • 岩屋賢太郎
演 - 又吉直樹
棋士(七段)。第6回「電将戦」に人間代表として将棋AIに挑戦する。

  • 解説
演 - 浅野和之
別室での解説を担当。解説になるとやけにはじけるタイプの人。

  • 聞き手
演 - 工藤美桜
別室での聞き手を担当。一般的には聞き手は女流棋士が務める。

  • 不惑
岩屋と戦う将棋AI。
読みの正確性はもちろん、「セルフ扇子仰ぎ」機能も搭載。
が、次第に岩屋と将棋盤内で「盤外戦術」を使い始める…

あらすじ

和室で進む棋士・岩屋と将棋AI「不惑」との対決。モノリスのように黒い板に「不惑」と書かれたAIはロボットアームを動かし操作する。
と、不惑が歩兵を裏返すと「」という字が書かれていた。
見た事のない漢字に当然戸惑う岩屋。

お互い守備固めの相穴熊という粘り勝負の中で動きが出てきたと普通に解説する2人に対し当然岩屋がツッコむが聞き手からは「待ったは無しですよ」とスルー。
岩屋は持ち時間を使い切っており1分将棋。謎の駒に悩む中、とりあえず「朮」を取る。

気を取り直して勝利へ集中しようとするが、続いて不惑が金取りの飛車成には「明美」という文字が。その文字に思わず「えっ!?」と飛び退く岩屋。

動揺する岩屋に対し解説は昨年週刊誌でスクープされた岩屋の不倫記事に映っている「Aさん」と解説。
明美は一般人であり、名前は表に出ていないにも関わらず実名を出してくる不惑に動揺する岩屋。
岩屋は一夜の過ちを犯したことで妻とは離婚協議中だった。
それにしてもなんでこんな駒があるのか。岩屋はすぐに「明美」を取る。
だが不惑の攻めの手は緩まない。不惑は自陣の玉の隣にある桂馬を動かした。
これは将棋用語で「パンツを脱ぐ」と呼ばれるもの。

聞き手「つまり岩屋七段はパンツを脱いで明美さんと『成った』という意味でしょうか?」
解説「はい。しかしその指し手のせいで奥さんには逃げられ岩屋七段は『人生詰みかけてる』という話ですね。」

失礼なトークの解説室とは裏腹に、岩屋はその桂馬の前に裏が「朮」の歩を置く。
一方、不惑はロボットアームで扇子を仰ぐ余裕モード。
着々と不惑の桂馬が跳ねていく中、ついに岩屋の陣へ。岩屋がお茶を飲むが、その間に裏返った桂馬を見て思わずお茶を吹きだしてしまう。
裏返った桂馬には「ケンタウロス」と書かれていた。

岩屋には「ケンタウロス」に苦い思い出があった。
14歳の時、学芸会で馬の役をやった岩屋。2人で馬を担当し、岩屋は前足と頭を担当していたものの、舞台のクライマックスで上半身が外れてしまい、中から上半身裸の岩屋が。場内に悲鳴や笑い声が響き、当時好きだった子も大笑いし「何あれ?ケンタウロス?チョーダサいんだけどw」という打ちのめされる一言。それ以来「ケンタウロス」という言葉はトラウマになっていた。

解説「はは~、これは『岩屋賢太郎』が『岩屋ケンタウロス』になったということでしょうか。」

不惑の容赦ない精神攻撃についに岩屋も「こんなの将棋じゃねぇだろ!」と対局場を開けてくれるよう頼むが、それでも容赦なく秒読みが。ついに詰みか…と思われたが、それでも勝負師の性かちゃんと手を指す。
が、次に不惑が香車を成らせるとそこには「五月三日」が。
成香は金将と同じ動きをするが、こちらは金は金でも「黄金週間」ことゴールデンウィーク、その後半戦始まりの日ともいえる五月三日。
だが、岩屋にとって五月三日は母が男を作って出ていったというこれもまた苦い思い出の日。何も言わず突然出ていった母を岩屋は憎んでいた。

だが、ふと駒台に目を向けると、そこにあった駒がプラスチックになっていた。
岩屋の家庭は貧乏であり、将棋教室では岩屋だけがプラスチック製の安物の駒を使っており、そのことで他の子からは「貧乏人」「一文無しのおけら」といじめられていた。
そんな岩屋の姿を知っていた母はなけなしの金でプロが使うような高級の駒を買ってくれた。
いつか自分の姿を母が見てくれるかもしれない。そんな思いで将棋の道に打ち込んだのだった。
「こんな姿を見せていいのか…」
不惑に反射する自分の姿を見てうなだれる岩屋だが…




いや、俺はこんなところで詰むわけにはいかないんだ。


心機一転し、持ち駒をどんどん捨てる鋭い攻めを見せる。不惑の持ち時間も無くなり焦りで扇子の仰ぎも激しくなる。勝負の行方は分からなくなった。

岩屋が盤上で打開策を探す中、幼少期の母の言葉を思い出す。



おけらってね、身の皮を剥いで使う事から『一文無し』って言われてるらしいの。
でもね、おけらはどこでも咲くことができる強い花なの。
だから『おけらだ』『貧乏だ』って言われても賢太郎が強い子だからいつかきっときれいな花を咲かせられる。


その言葉で閃いた岩屋。歩を成らせて「朮」にする。この字は「おけら」の漢字表記だったのだ。


今の一手に不惑はガタガタと揺れ始める。秒読みが迫り王将をつかむが、時間切れと共に王将を取り落とした。不惑は活動停止しオーバーヒートの煙が出ていた。
「AI超え」の奇跡の一手を見せ岩屋が勝利を掴むことができた。

「ありがとうございました」と岩屋は礼をするが、不惑も「マイリマシタ」と礼をするように岩屋に倒れ下敷きに…




救急隊員が呼びかける中、岩屋の意識が薄れていく…





俺はここで詰むのか…?













それから10年後。
岩屋はある対局中に脳卒中を起こし九死に一生を得ていた。
不惑との対決は本当だったのか?あるいは将棋の神様が見せてくれた走馬灯だったのか?それは岩屋でもわからなかった。
だが、岩屋は棋士を引退。妻とヨリを戻し、小さなお好み焼き屋を開業していた。



俺はまだ詰んでない。

と、ひっくり返したお好み焼きには「」の文字の焼き目が。
妻と2人で笑いあう中、女性店員から話しかけられる。その女性店員の名前は「アユミ」…

妻からは静かに「どういうこと…」と詰問される…


岩屋の「詰み」への秒読みがまたしても始まってしまった…


備考

モデルとなっているのは2016年度まで開催された「電王戦」。こちらは全棋士によるトーナメントによって決まった「叡王」と将棋電王トーナメントで優勝したソフトが対局する形で行われた。2016年度で電王戦は終了し、2017年度からは叡王戦がタイトル戦に昇格。当エピソードが放送された2021年度は叡王戦第6期であったため、もしかしたら電王戦が続いていたらあり得ていた未来なのかもしれない…?
なお、実際の電王戦では手を考える将棋AIと操作を行うロボットアームはあくまで別口(AIは着手手のみ考え、操作はデンソーが開発した「電王手シリーズ」が担当する)である。

実際に不惑の投了図からは11手詰めすることができる(なお、流石に「朮」などは元の駒の成りとする)。

作中で着手手の読み上げと秒読みの声を担当したのは実際に女流棋士として秒読みなどを経験し、女流棋士引退後にフジテレビアナウンサーとして入社という異例の経歴を持つ竹俣紅アナが担当している。

追記・修正は人生の「詰み」から逃れられた人がお願いします。


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最終更新:2021年11月06日 17:33