登録日:2025/07/21 (月) 09:40:32
更新日:2025/07/21 Mon 16:47:11NEW!
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ツキノワグマ(月輪熊、学名: Ursus thibetanus)は、哺乳綱食肉目
クマ科クマ属に分類される食肉類。
概要
日本や中国、朝鮮半島からロシアにかけて生息している。
以前は日本のものだけをツキノワグマと呼び、大陸のものはヒマラヤグマと呼んでいたが同種とわかって日本産は亜種のニホンツキノワグマと呼ばれるようになったという経緯があるため、現在でもこの別名が使われることがある。
名前の通り胸に月の輪を思わせる模様を持つのが特徴で、体毛は黒い。
形態
体毛や体型にはバリエーションもあり、赤みがかった個体や茶色みがかった個体、月の輪の存在しない個体も存在する。また、東南アジアのツキノワグマには金色の毛色の個体まで確認されている。
クマ科全般に言えることだが、肩甲骨が発達しているため中にはヒグマを思わせる広い肩幅を持つ個体もいる。
大きさ
日本にいる個体群は平均体長120cm〜140cm。体重70〜120kgほどとされ、一応はこれでも比較的小柄な部類。
それでも体長160cm、体重150kgクラスは日本でも普通に見られるとされており、大きい場合では、体長165cm、体重200kgに至ったという記録も存在する。
また、更に寒いロシアでは体長180cm体重250kgにもなる巨大な個体が確認された事例もあるという。
4歳からが成熊のラインだが、オスは15才くらいまでは体が成長する。十代後半辺りから急激に衰え、20歳手前辺りに寿命を迎えるというケースが多い。
豆知識
かつては
ニホングマと呼ばれていた。
金太郎と相撲を取った熊も生息地的にこの種だと言われているようだ。
巨大個体の記録
- 1993年春、長野県秋山郷にて冬眠明け直後にして体長240cm体重210kgにもなる巨大な個体が捕獲された。
恐らく日本最大のツキノワグマだろうと推測される。体長が大きいことに加え、痩せた冬眠明けの時期での唯一の200kg級であるためである。体重の測定値ならこれ以上の例はいくつかあるが、いずれも10月以降のメタボ期である。
冬眠前には300kg級と推定され、ヒグマと比較しても巨大な部類になる。
他の巨大クマとしては以下の個体が知られている。
- 1966年に秋田県で捕獲されたという体長200cm、体重200kg。
- 2020年代と最近の記録ではマタギYouTuberが捕獲に成功した237kgのオス。および、180kgのメスの個体が確認されている。
- 岩手県では2015年体重こそ100kg級だが体長2mの巨大な個体が捕獲されている。メスでも夏場で体長135cm体重100kgの例がある。
- 山形県、有害駆除、体長170cm体重170kg、体長150cm体重180kgいずれも冬眠明けのオスグマ。メスでも体長140cm体重110kgの例がある。
- 新潟県三条市、1日に体長150cm体重150kgの個体が2体同時に有害駆除される。
- 富山県、5歳と未熟ながら体長130cm体重130kgのオスグマ。
- 学術調査では栃木県で夏場で130kg級の個体が確認されている。
- 東京都、有害駆除、体長140cm体重120kgオスと体長130cm体重80kgメス。
- 群馬県では狩猟で190kgの例がある。
- 兵庫県で有害駆除された15歳のオスグマに131kgの例がある。
- 広島県、体長152cm体重135kgオスと体長139cm体重98kgメスいずれも夏場の学術調査。
- 九州のツキノワグマは何故か巨大でオス220kg、メス133kgの記録がある。
- 最も巨大な亜種であるチベットツキノワグマだと体長2.5m体重318kgの例もある。
体重の季節変動
クマは冬眠中に痩せるため、冬眠直前から明けるまでに体重が3割減少すると言われている。また、オスの場合は夏の繁殖期になると食事そっちのけでメス探しとオス同士での喧嘩に励むため更に痩せていく。ちなみに冬に見かける個体は、何らかの理由で冬眠し損ねている場合が多い(通称:穴持たず)のでやはり痩せる(そして殆どは空腹や寝不足で機嫌が悪い)。
なので、冬眠直前が一番体が重く、真夏になると体重もその半分近くまで痩せることになる。
そのため、ツキノワグマの体重については計測された時期もかなり重要である。(例えば、上記のように冬眠前なら300kg前後の大台にも乗っていた可能性も推定されている。)
一般的な大きさ
ニュースなどで発表される国産ツキノワグマの大きさは体長1mとされ世界最小の熊であるマレーグマの平均体長120〜150cm程度と比較しても異様に小さい。
また、体長がマレーグマの子熊並みなのに対し体重は60kg程度とマレーグマの成熊並みである。よく「立派なオスグマは100kg程度」と紹介されるが体長が1mぽっきりでは大変なメタボであり「山に餌がなく出没」と明らかに矛盾である。
国産ツキノワグマの場合、北海道のヒグマなどと違い体長は背中に這わせるのではなく鼻先から尾の付け根まで直線であるため体の凹凸分小さな数字になる計り方をしている。
また、学術調査や行政の計量では100kgが上限の体重計を用いているため、それ以上重い個体は100kg超として一括りとなる。
とはいえ、100kg以上の個体でも勿論具体的な記録はあり、駆除された個体の年齢などの詳しい記録も公表している場合がある。例えば
山形県と
富山県によれば、概ね成熊の平均は
- オス 体長140cm 体重90kg 身長180㎝
- メス 体長130cm 体重70kg 身長170㎝
ほどである模様。オスの成熊であれば100㎏は中堅サイズである。
ちなみに山形県の記録は冬眠明けの痩せた時期、それも4〜5歳のやや年若い個体が多く、若干小さめな傾向となる。両県ともに体長なら170cm体重なら180kgという記録もある。
こういった資料を見る限り、オスグマは体長130〜160cm、体重70〜130kg、メスグマなら体長120〜150cm、体重50〜80kg、立ち上がった背丈なら160cm〜2m、ほどが「現実的に遭う可能性があるサイズ」と言えるようだ。
ちなみに、新しい資料ほどより小さいサイズに更新されており、かつて
とマレーグマを一回り大きくしたようなサイズだったようだ。
遺伝的性質
国産のツキノワグマはツキノワグマの枠内にいながらも大陸産のツキノワグマより原始的でありやや特異な位置にいる。そのため、日本固有種とまでは残念ながら言えないようだが遺伝的に個性があるため
エゾヒグマが海外産と同じ遺伝子であるのとは対照的にニホンツキノワグマは日本にしかいないことになる。
そもそもツキノワグマ自体が熊の原型に近い骨格とされるため国産のツキノワグマはいわゆる「
生きた化石」に近いと言える。
遺伝的には東北から北陸までの東日本グループ、紀伊半島・四国のグループ、中国・近畿などの西日本グループに分かれる。
最大記録はともかく平均的な大きさは地域ごとにほとんど格差はなくなんなら九州で220㎏の記録もある。
戦闘力
クマとしては確かに小柄の種類とはいえ、日本の本州においては事実上生態系の頂点に立つ肉食獣である。
「ククク…奴は日本のクマの中でも最弱」というのも嘘ではないが、日本国内では比較対象がヒグマしかいないため数値上はあちらに劣るというだけに過ぎない。
そもそも生息地は綺麗に分かれているので、本州以南ではヒグマと比べてもあまり意味はない…。
尚、小柄なだけあってか非常に敏捷性が高いという長所もあり、移動力もある。寧ろ、活動範囲の広さ故に脅威となるケースも挙がっている。
- 体長1メートルほどのメスグマでも成人男性のふともくらいの生木をへし折ったり猪用の檻の鉄格子を引きちぎるのは余裕であるため、小柄な分むしろ捕まえ辛く厄介という考え方もできる。
- ジャンプはやや苦手なようだが2.5メートルの高さに届くため、体長50cm程度の小熊に跳びつかれて大人が失明させられた事例も複数存在する。
- 牙で1cm弱程度の鉄の棒は切断することが可能。
2024年12月の秋田県のスーパーでは、ツキノワグマが立て籠もった際特注クマスーツをはじめ完全武装の
機動隊が対応に当たったが、突入してクマを取り押さえるなどはできなかった。
これはクマスーツで鋭い牙や爪を防げるとしても、膂力による衝撃は受けてしまうため。
プロボクサーのグーパンチや成人並の体重で踏みつけ(しかも自動車並みのスピード)されては防具を着込んでも厳しい。
ヘルメット越しでも頭部に大きなダメージを受けて亡くなったというケースも多数存在する。
そんな訳で
一人一人が武道の有段者など腕利きの格闘家である機動隊員であっても、クマの傍に突入して素手で叩きのめすのは困難であるとされる。
石川県でもツキノワグマの立て籠もりが起きているが、やはり機動隊などが突入することはできず、最終的に猟友会によって駆除されている。また、同県では自衛官が襲われて重症を負ったケースも有る。
頭に20発の散弾銃の弾が入っていても元気に暴れていた事がある他、子連れの母熊の場合胸に2発猟銃を打ち込まれても数日生きて走っていた事があるなど生命力も非常に高い。
余談だが、熊爪や牙による筋肉や血管の断裂はマッチョな人ほどハイリスクである。マッチョな人ほど断裂する筋肉量が多く血管が太く、血流も多いためである。
また、筋肉が断裂すると物理的に動けなくなる上、傷完治後も運動能力低下などの後遺症のリスクがある。
同様に血管が太く、血流の良い人ほど出血が多くなる。出血が多くなると当然死亡リスクも高くなる。
パンチ力
ツキノワグマのパンチ力はせいぜいボクサー並みというデータも存在する。ただし、こういった測定値は大抵動物園の個体に餌か何かを与えてやらせたケースが多い。動物園の動物は基本どんなに怠けていても、餌は十分もらえるためこういった測定には本気を出さない場合がほとんどである。
例えばチーターの走る速さが時速65km程度という記録も存在するが、これでは時速90Kmのインパラは捕まえられない。
また餌をもらうためのパンチと敵意が明確にある時のパンチでもまた異なってくるだろう。
日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏によれば、ツキノワグマのパンチ力は
- 80kg以上のオスと100kg以上のメスは人間の頭部を破壊して一撃必殺可能
であるとのことである。
十和利山熊襲撃事件におけるスーパーKは84kgとギリギリでありながらヘルメットごと被害者の頭部を破壊していた。
また、このサイズのオスのツキノワグマには体重200〜400kg級になる成豚の食害例も複数あるため、人間の力の及ぶところではないだろう。
50kg級の小型のメスグマにおいても、サフォーク種という千代の富士くらいのサイズの羊を捕食した事例がありそのため、このくらいのサイズにもなれば人間の一撃必殺は決して難しい話ではないだろう。
運動エネルギー
ツキノワグマ、大谷翔平、力士の全力疾走の運動エネルギーを計算してみよう。
- ツキノワグマ(体重50kg/時速50km)⇒81×10⁴J
- 大谷翔平(体重95kg/時速33km)⇒67×10⁴J
- 大の里(体重190kg/時速22.5km)⇒63×10⁴J
50kgと小型もしくは亜成獣熊を想定したがそれでも大谷選手より運動エネルギーが大分大きいことがわかる。体重の大きな大の里が以外にも運動エネルギーが比較的小さいが、これは体重は1乗に対し速度は2乗されるためである。
さらに、ただ運動エネルギーが大きいだけでなく1点に集中してくる。大谷選手の全力疾走を優に超えるエネルギーが顔や胸腰膝などに集中するため、タックルの一撃でも人間には重大な一撃になることは間違いない。
一般的にスポーツ選手の記録は整備されたフィールドで装備とコンディションを整えた上でのものなのに対し野生のツキノワグマの記録は山道を全裸で雑に走ったときのものなのでそのあたりも違いが出るだろう。
また、ツキノワグマの体重は上記の通り50kgがボトムであり、新潟では車と並走した例もあるため実際には上記より幾分大きな運動エネルギーになることが予想される。例えば80㎏のツキノワグマが時速60㎞で走れば運動エネルギーは187×10⁴Jと大谷選手の3倍近くなる。
食性
野生下の食性
どんぐり食のイメージがあるがこれはどんぐりの実がなる秋だけである。
その他の食性については個体ごとの「好み」による部分も多く一概には言えない。
草食寄りとされる場合が多いが、勿論肉も食べる時にはきっちり食べる。一般的に冬眠明け〜初夏にかけては腐肉食もしくは子鹿狩りで肉食性が高い傾向にある。
鹿やカモシカ、猪といった草食獣の捕食に加えて牛や豚など大型家畜の食害例も存在する。実際に岐阜県などを調査した海外の研究者もカモシカの捕食が複数回確認されていて、「カモシカの唯一の捕食者」とされている。
- 滋賀県で野生のツキノワグマがカモシカ狩りをする映像がyoutubeで公開されているが、ツキノワグマの食肉目としての1面を垣間見ることができる。
- 兵庫県では罠にかかった鹿を襲って食べるケースが頻発している。
- ↑鉄の檻を引き裂いて中にいる鹿を取り出したそうだ。
- ニホンジカの新生児が産まれる初夏にはオスグマを中心に積極的に捕食するという調査もある。これはニホンジカをエゾシカに変えればヒグマ同様の生態である。
家畜の食害
体格差も考えてか主に幼獣を襲うケースが多いものの、
1999年栃木県で体重90kgのツキノワグマが種豚(体重300kg級)始め複数の成豚を捕食した例もある。
- 2022年長野県で豚3匹が食害される。
- 2017年以降秋田県でも子牛の食害事件が頻発している。
- 秋田では牛豚を食われて廃農するケースも複数出ている。
- 2007年には宮城県仙台市で子牛が食害される。
- 1997年には東京都でジンギスカン用の大型羊7匹が食害される。
- 鶏の食害と廃農は全国で例がある。
- ↑島根県では体長60cm体重20kgの子熊が金網を破って侵入し鶏を食害した例もある。
以上の事例などから自重の2倍から3倍程度の獲物は問題なく狩れると思われる。
炭素同位体の研究ではオスの大熊に肉食性の高い個体がいることが分かっている。
海外では水牛を捕食した事例が知られている。
人食い・人的被害
日本最大の獣害事件はヒグマによる
三毛別羆事件とされるが、
ツキノワグマも江戸時代に11人の人間を捕食した記録がある。現在の青森県八甲田山である。仕留められたツキノワグマは体長160cmの高齢のオスグマだったと言われている。(「弘前藩庁護国日記」がこの事件の大元の出典とされている。)詳細は
青森県を参照
ヒグマの人食い事件が大きく報じられるのは有名だが、
ツキノワグマの場合、人食い事件は婉曲表現だったりそもそも報じられない場合もあるなど対応に大きな差が見られる。
有名な
十和利山熊襲撃事件、戸沢村の人食い熊(
山形県を参照)以外に以下の事例がある。
- 1949年30代女性食害。石川県
- 1969年30代男性食害。福島県
- 1989年70代女性食害。福井県
- 2000年60代男性食害。山梨県
- 2006年成人男性食害。長野県
- 2007年60代男性食害。秋田県
- 2013年70代男性食害。福島県
以上、隠蔽されるケースが多いと思われるツキノワグマによる人食い被害だが、漏れ聞こえる例だけで7例もある。
2013年福島県の事例は捜索隊の警官二人を含む男性4人に重軽傷被害を出すなど二次被害も大きかった。
これらが「氷山の一角」というのは当然として事件のあった地域や年代から、決して東北の一部の話でも「近年の異常行動」でもない。
ちなみに2000年の山梨県の事例は海外の研究者により詳細が調査され、論文も発表されている。Angeli,C.B.2000.Death by Asiatic black bear in Japan :a predator attack ? International Bear News 9(3):10-11
また、若年・壮年男性の重症死亡事例もツキノワグマの場合大きく報じられないが実際は毎年多数の事例がある。
高齢化で山間部にお年寄りが多く居住していることと、お年寄りの人的被害が多すぎて比率が低くなっているだけである。
- 2023年40代男性死亡奈良県
- 2024年40代男性重症山口県
- 2024年40代男性死亡福島県
- 2024年20代と40代の男性重症(いずれも警官)秋田県
- 2025年46歳男性(現場作業員)死亡長野県
- 2025年29歳男性、39歳男性(いずれも自衛官)重症岩手県
のようにざっと挙げただけでも近年だけでも全国で例がある。
残念ながら亡くなってしまわれた方には背後から頭や首に強烈な一撃を加えた形跡が無かったため、あくまで熊側からすればだが、うっかり命を奪ってしまった事例である。
昔は若い人の被害が多かった。
二次被害
奥日光ではツキノワグマ出没を受けて修学旅行がキャンセルになるなど、人的被害に対する二次被害として観光客のキャンセルも発生している。
こういった点も知床や三毛別事件跡地が観光名所になっているヒグマとの大きな違いと言える。
北海道という特別な場所が非日常感を演出してくれる効果があるのだろう。
他に、ヒグマの場合何m何百kgというサイズで解説されるがこういう巨獣に襲われる姿は少々想像し辛いのではないだろうか。一方、ツキノワグマは普通サイズは大型犬程度、大型でもせいぜいヘビィ級の格闘家程度のサイズを解説されるため、襲われた際の痛みやダメージを想像し易いのではないだろうか。
実際、追記者はトラやライオンよりヒョウやオオヤマネコのほうが出会った時を想像すると怖い。
九州のツキノワグマ
九州の個体は1987年に
大分県で捕獲されたのを最後に確認できず、2012年に絶滅が宣言されている。
なおその個体はDNA鑑定の結果、ミトコンドリアDNAが
福井県嶺北地方から
岐阜県西部にかけて分布しているものと同一という結果が出ており琵琶湖以東から九州へ移入された個体、もしくはその子孫と考えられている。
九州では温暖な気候によって林業が発展し、クマの餌となるドングリの生る広葉樹林が伐採されてスギやヒノキなどの植林が進み、森の分断も進んだことで越冬が難しくなったためと考えられている。
よりによって熊の名を冠する県が九州にあることについては後述。九州最後のツキノワグマについては
宮崎県を参照。
九州産のツキノワグマは骨格からの推定で130㎏級の雌熊が確認されるなどベルグマンの法則に反して大型の個体が多いことやそもそもツキノワグマは九州から北上してきたことなどから大陸産大型亜種とのハイブリッドではないかといわれている。
ロシアのツキノワグマ
ロシアのツキノワグマは国産のツキノワグマよりはるかに大きくなる。10数個体の簡素な調査で体長190cm体重190kgの雄熊が含まれるなど日本なら伝説級の個体がゴロゴロいる。日本で同様の調査を行えば体長130㎝体重100㎏程の雄熊がいれば御の字だろう。
ロシアでは、
- オス 平均130~160㎏ 大型200~250㎏
- メス 平均120~140㎏ 大型170㎏
という学術調査がある。学術調査は一般にガリガリや小物しかかからないため実際より過少に推定される(学術調査だと北海道のヒグマでも180kgで「オスの大熊」と評された事例がある。)がこれだけのサイズである。
日本での学術調査ではオスが70~80㎏、メス50~60㎏が平均的、オスの大熊でも100〜130㎏程度であるから倍ほどの体格差があることがわかる。
台湾のツキノワグマ
国産のツキノワグマはタイワンツキノワグマに次いで小兵の部類と言われている。よってツキノワグマの中では最小の部類になる。
- 体長 120〜180cm 身長は170〜200cm程度
- 体重 60〜200kg
台湾では最大最強にして唯一の大型肉食獣であるためか軍隊の士気バッチに使われるなど国の象徴的野生動物である。
日本同様カモシカの唯一の捕食者であり、台湾ウンピョウが健在だった時代は食べ残しを狙っていた。
2024年11月体重125㎏のオスのタイワンツキノワグマが養鶏場に乱入し鶏400羽が被害にあった。台湾では貴重動物のためか山に返された。
遺伝的には大陸産のツキノワグマと共通である。
他の熊種とのハイブリッドについて
国外では他の熊種とハイブリッドを生じた事例があり、ナマケグマ・マレーグマとは野生下で交雑した例がある。また、アメリカクロクマとは飼育下で交雑例があるが、遺伝的近縁性から野外でも会う機会があれば交雑すると予想される。
これらのハイブリッド熊はいずれも繁殖力の無い1代限りのものであると推定される。
国内では秋田県で熊牧場から脱走したヒグマとハイブリッドが生じていてそれが十和利山熊事件などを起こしたとする説がある。週刊誌の記事が元ネタであり信憑性は高いものではない(
十和利山熊襲撃事件を参照)。また、
国内ではヒグマとツキノワグマの体格の差を(いささか誇張しながら)強調して「別の生き物」とする解説がニュースや行政などほとんどを占めている。ハイブリッド熊は果たしてできるのだろうか?例えば大型犬と小型犬では交尾行動から難しいことが知られており、また強いて言えば大型種のメスと小型種のオスの間にしかハイブリッドが生じないのが一般的である。一般的に解説されるツキノワグマとヒグマの間の「非常に大きな体格差」を考えれば交尾行動からして不可能であることは想像に難くない。
現実的なサイズでもせいぜいオスのツキノワグマとメスのヒグマが動物園のような環境で交尾行動に至るかどうか、といったところだろう。
マスコミや行政の発表
行政の資料やマスコミによる報道によるツキノワグマについては主に以下の特徴が見受けられる。
- 「体長1mで草食」などマレーグマなどと比較しても違和感があるほど「体格の小ささ」及び「草食性」を強調する。
- 大きさ以前に顔や体系が幼いツキノワグマしか映さない。
- ツキノワグマの場合「若年・壮年男性の重症死亡被害」「大型家畜の食害」「人食い」が事実上タブー化している。
- 「熊問題といえば北海道」といわんばかりにやや大げさにヒグマを中心に報道する。ツキノワグマの場合しいて言えば秋田がやや優遇されるくらいである。
では実際の被害はどうなのか?人的被害の約95%死亡事例についても80%ほどがツキノワグマによるものである。それどころかヒグマの人的被害が全くなかった年すら存在する。
家畜の被害についても子牛どころか関東で成豚の食害が出ている。
人的被害についても若年・壮年男性の重症死亡被害は決して珍しい話ではなく、全国各地で毎年事例がある。
2000年代には山梨と長野で人食い事例があり被害者が成人男性であるのも上述した通り。これらの人食い事件は報道されず一部の熊研究者の間でのみ共有された。
いずれもヒグマならそれなりの誇張すら含めて大きく報道されたであろう事件である。
ここまで読んだ読者は「ツキノワグマに金でも積まれているのか?」とあらぬ疑いを抱く人もいると推察する。
こういった行政やマスコミなどの姿勢も日本の本州のような狭く人口の密集した島国にしかも建前上は軍隊すらない平和で安全な島国にツキノワグマのような大型の食肉目が生息していることを考えれば一概に責められない。
体重僅か10kgほどのボブキャットがアメリカで恐れられていることを考えれば事の重大さがわかるだろう。アメリカなど北米では筋肉マッチョな欧米人が国産ツキノワグマサイズのアメリカクロクマにビビっている動画がYouTubeなどにある。
強いて言えば熊スプレーと防御姿勢に実績があるものの確実な対処法は何一つない。また、大規模駆除にも自衛隊員などが半矢にして顔をつぶされるリスクがあるなど簡単ではない。
上記のように観光旅行のキャンセルなどに片鱗が出ているが熊の恐怖が広まればパニックに陥るなど市民生活に必要以上の支障をきたすリスクがある。
「臭い物に蓋」も現状はやむなしだろうか。
結局のところ、ツキノワグマに限らず野生の獣に対しては「過度に怯えても仕方ないが侮っては痛い目に遭う」という一言に尽きるのである。
- 愚問だが、ヒグマはでかいから危険、ツキノワグマが小さいからかわいいなんてことはない!! -- 名無しさん (2025-07-21 10:10:06)
- ぼのぼののヒグマの大将は作者のミスでツキノワグマみたいな模様が付いているというのをネットで知ったな -- 名無しさん (2025-07-21 11:18:50)
- 月の輪グマとは言うけど、三日月模様じゃん。全然、月の“輪”じゃねーじゃん -- 名無しさん (2025-07-21 11:22:14)
- 牛漫画家「ヒグマに慣れてるとツキノワグマくらいなら倒せる気がする」→「やっぱ無理ですゴメンナサイ」 -- 名無しさん (2025-07-21 11:26:04)
- 熊肉が食用肉としても販売されていて通販で買える -- 名無しさん (2025-07-21 11:34:18)
- そんな餌で俺様が釣られクマー 熊と出会ったら、熊から目をそらさずに後ずさりするのが良いそうだ -- 名無しさん (2025-07-21 11:45:29)
- どうして人間の脅威となる生き物の能力の比較に大谷翔平が出てくるんだ… -- 名無しさん (2025-07-21 13:55:46)
- 「ヒグマをライオンとしたらツキノワグマは犬くらい」と甘く見られることがあるけど、あくまでヒグマがヤバすぎるってだけでツキノワグマだって恐ろしい動物であることに違いはないんだよね。そもそも人間は生身じゃ犬にも勝てないって話でもあるけど。それはそれとして熊肉は美味しかったな。ジビエっぽい風味はあるけど、獣臭くはなくていい意味でワイルドな味わいになってた -- 名無しさん (2025-07-21 14:04:39)
- ガトリングガンに比べたらマシンガンは弱いって言ってるようなもんだからな、どちらも脅威であることに変わりはないわけで -- 名無しさん (2025-07-21 14:25:19)
最終更新:2025年07月21日 16:47