ツキノワグマ

登録日:2025/07/21 Mon 09:40:32
更新日:2025/08/11 Mon 01:19:50NEW!
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ツキノワグマ


ツキノワグマ(月輪熊、学名: Ursus thibetanus)は、哺乳綱食肉目クマ科クマ属に分類される食肉類。


🌙概要

ツキノワグマは日本や中国、朝鮮半島からロシアにかけて分布している。
以前は日本のものだけをツキノワグマと呼び、大陸のものはヒマラヤグマと呼んでいた。
だが、両者が同種とわかり、日本産は亜種のニホンツキノワグマと呼ばれるようになったという経緯がある。
そのため、現在でもこの別名が使われることがある。
名前の通り胸に三日月状の月の輪を思わせる模様を持つのが特徴で、体毛は黒い。

◇形態

体毛や体型にはバリエーションもあり、赤みがかった個体や茶色みがかった個体もいる。また、東南アジアのツキノワグマには金色の毛色の個体まで確認されている。
トレードマークの月の輪の存在しない個体(ミナグロ)も存在する。逆にヒグマにも月の輪を持つ個体も存在するので必ずしもツキノワグマだけの特徴という訳ではない。
また、ナマケグマやマレーグマにも形状や色は違うものの月の輪が存在する。
クマ科全般に言えることだが、肩甲骨が発達しているため中にはヒグマを思わせる広い肩幅を持つ個体もいる。
骨格的にはヒグマとの強い類似性が指摘されており、大きさ以外の特徴では同定できないといわれている。(現在はDNA鑑定がある。)
ロシアにおける比較研究では相違点も指摘されている。ツキノワグマはヒグマに比べて華奢であることやツキノワグマはカギ爪が短い、などである。
ツキノワグマの子熊はマレーグマに骨格が近いという指摘もある。

◇大きさ

日本にいる個体群は平均体長120cm〜140cm。体重70〜120kgほどとされ、一応はこれでも比較的小柄な部類。*1
それでも体長160cm、体重150kgクラスは日本でも普通に見られるとされており、大きい場合では、体長165cm、体重200kgに至ったという記録も存在する。
また、更に寒い*2ロシアでは体長180cm体重250kgにもなる巨大な個体が確認された事例もあるという。
4歳からが成熊のラインだが、オスは15才くらいまでは体が成長する。
十代後半辺りから急激に衰え、20歳手前辺りに寿命を迎えるというケースが多い。

《日本での一般的な大きさ》

ニュースなどで発表される国産ツキノワグマの大きさは体長1mとされ世界最小の熊であるマレーグマの平均体長120〜150cm程度と比較しても異様に小さい
例えば神奈川県の発表では体長1メートルとマレーグマの子熊並みなのに対し体重は60kg程度とマレーグマの成熊並みである。これはかなりのぽっちゃりであり「山に餌がなく出没」とは少々様子が異なるように思われる。
よく「立派なオスグマは100kg程度」と紹介されるがマレーグマでも体長160㎝体重120㎏の例がある。

国産ツキノワグマの場合、北海道のヒグマなどと違い体長は背中に這わせるのではなく鼻先から尾の付け根まで直線であるため体の凹凸分小さな数字になる計り方をしている。
また、学術調査や行政の計量では100kgが上限の体重計を用いているため、それ以上重い個体は100kg超として一括りとなる。

とはいえ、100kg以上の個体でも勿論具体的な記録はあり、駆除された個体の年齢などの詳しい記録も公表している場合がある。
例えば山形県富山県によれば、概ね成熊の平均は
性別 体長 体重 身長
オス 140cm 90kg 180㎝
メス 130cm 70kg 170㎝
ほどである模様。
オスの成熊であれば100㎏は中堅サイズである。
ちなみに山形県の記録は冬眠明けの痩せた時期、それも4〜5歳のやや年若い個体が多く、若干小さめな傾向となる。
両県ともに体長なら170cm体重なら180kgという記録もある。

こういった資料を見る限り、
性別 体長 体重 身長
オス 130〜160cm 70〜150kg 160cm〜2m
メス 120〜150cm 50〜100kg 150㎝~190㎝
ほどが「現実的に遭う可能性があるサイズ」と言えるようだ。

ちなみに、新しい資料ほどより小さいサイズに更新されており、かつては
  • 体長120〜160cm 体重60〜150kg
とマレーグマを一回り大きくしたようなサイズだったようだ。

《巨大個体の記録》

●日本記録級
1993年春、長野県秋山郷にて冬眠明け直後にして体長240cm体重210kgにもなる巨大な個体が捕獲された。
  • 狩猟
長野県と新潟県の県境に里を構えるマタギの春熊猟により捕獲された。
狩猟された当時、この熊は、人間の足がくるぶしまで埋まるほど大きく深い足跡を付けながら残雪の中を歩いていたとされる。周りは人払いならぬ「熊払い」をしたかのように他の熊がいなかった。
マタギによれば大熊には2タイプあり1つは10歳前後の壮年熊で、筋肉質で動きが早く頭がキレ、人間の裏をかくこともあるような個体である。今一つが10代後半の老人熊で肥満体型、ヨタヨタと歩き頭も鈍っている個体である。この熊は典型的な後者だったようである。
  • 計測
体長は鼻先から尻尾の付け根までで計測や狩猟には研究者が立ち会った。
恐らく日本最大のツキノワグマだろうと推測される。
体長が大きいことに加え、痩せた冬眠明けの時期での唯一の200kg級であるためである。
体重の測定値ならこれ以上の例はいくつかあるが、いずれも10月以降のメタボ期である。
  • 体重の推定
冬眠前には300kg級と推定され、ヒグマと比較しても巨大な部類になる。
近縁種のアメリカクロクマに体長2.4m体重推定470kg級の例があるが、ロシアやチベットの大型ツキノワグマもそのくらいのサイズになっていておかしくない。
国産ツキノワグマで300kg級は、十二分にあり得る数値である。動物園の冬眠実験では冬眠前から冬眠明けで3割体重が減少する。この熊の体重210kgを0.7で割ると確かに300kg級なのである。

●他の巨大クマ
産地 大きさ 捕獲時 備考
岩手県 200㎏超 2023年秋 有害駆除
岩手県 体長2m体重100㎏オス 2015年5月 有害駆除
秋田県 体長2m体重200㎏超、オス 1966年12月
秋田県 237㎏オス、180㎏メス 2020年代秋 マタギYouTuberが捕獲。測定値における日本最大個体と考えられる。オスグマで237kgは他の特大個体より少し大きいだけだがメス180kgは少々信じがたい数値である。
宮城県 220㎏、オス 1967年冬眠前
山形県 体長165cm体重200kg 2001年10月
群馬県 190kg 12月 狩猟
富山県 体長130㎝体重180㎏、メス 2006年10月 有害駆除。オスもしくは108㎏のタイポの可能性もある。
宮崎県 オス220kg、メス131kg 戦前、冬眠前 九州のツキノワグマは何故か巨大である。

200㎏超えの巨大個体がニュースになったこともある。

●各地の最大級
産地 大きさ 捕獲時 備考
岩手県 体長135cm体重100kg、メス 2002年6月 有害駆除
宮城県 120㎏ 2007年8月 有害駆除。肥育牛食害
山形県 体長140cm体重110kg、メス 令和10月 有害駆除
山形県 体長170cm体重170kgオス 2022年4月 有害駆除
山形県 体長150cm体重180kgオス 2023年4月 有害駆除
秋田県 体長137㎝体重87㎏メス 学術調査
秋田県 140㎏オス 2023年9月 有害駆除。9月で140㎏は巨大。体長も目測で170㎝ほどに見える。
山梨県 「身長」180㎝体重140㎏ 2018年11月 狩猟。体長は目測で140㎝ほど。
山梨県 120㎏オス 2000年5月 有害駆除。人食い熊
新潟県 体長150cm体重150kg 2005年10月 1日に同じ大きさの個体が2体同時に有害駆除される。
長野県 170kg、オス 2006年11月 有害駆除。コードネーム「ジゴロー」。軽井沢でNPO熊チームが調査した中では最大。
長野県 「身長」170㎝体重150kg超、オス 2010年11月 有害駆除。体長は目測で130〜140cm程度。
富山県 体長130cm体重130kg、オス 2010年10月 有害駆除。5歳と未熟なクマ
石川県 170㎏オス、110㎏メス 狩猟
岐阜県 体長142㎝体重130㎏ 2024年9月 有害駆除
栃木県 130kg級オス 学術調査
静岡県 体長162㎝体重92kgオス 2019年8月 保護。体重は軽いが体長162㎝は立つと2mになる。
東京都 体長140cm体重120kgオスと体長130cm体重80kgメス 2016年10月 有害駆除
東京都 120㎏超え、オス 2002年11月 学術調査
神奈川県 体長131㎝体重110㎏のオス 2010年11月 放獣。県最大だそうだが同サイズのオスグマが5例ほどあるので単に大熊を表しているのかもしれない。
神奈川県 体長146㎝体重76㎏メス 2020年10月 放獣
埼玉県 136㎏ 2023年冬 狩猟。目測で体長120㎝、身長160㎝。
兵庫県 131kg、オス 2021年11月 有害駆除
三重県 体長130㎝体重93㎏オス 2024年8月 有害駆除
愛知県 体長145㎝体重110㎏、オス 2012年5月 放獣
島根県 97㎏オス、75㎏メス、体長160㎝オス 2000~2014年までの春夏 いずれも放獣。
広島県 体長152cm体重135kgオスと体長139cm体重98kgメス 夏場 学術調査
徳島県 93kgオス 2008年夏 学術調査。コードネーム「テンク」
以上の記録から、本州のどの地域でも冬眠前のオスで150kg級、冬眠前のメス100kg級はコンスタントに存在すると考えられる。

東北や長野はほかにも体長160㎝体重150㎏くらいの例は多くある。

なお、国産ではないが最も巨大な亜種であるチベットツキノワグマだと体長2.5m体重318kgの例もある。

《体重の季節変動》

クマは冬眠中に痩せるため、冬眠直前から明けるまでに体重が3割減少すると言われている。
また、オスの場合は夏の繁殖期になると食事そっちのけでメス探しとオス同士での喧嘩に励むため更に痩せていく。
ちなみに冬に見かける個体は、何らかの理由で冬眠し損ねている場合が多い(通称:穴持たず)のでやはり痩せる(そして殆どは空腹や寝不足で機嫌が悪い)。
なので、冬眠直前が一番体が重く、真夏になると体重もその半分近くまで痩せることになる
そのため、ツキノワグマの体重については計測された時期もかなり重要である。
(例えば、上記のように冬眠前なら300kg前後の大台にも乗っていた可能性も推定されている。)

●季節変動の一例
あくまでも別個体ではあるが体長や性別(オス)が揃っている。
季節 体長 体重
4月 160㎝ 74㎏
6月 157㎝ 80㎏
8月 162㎝ 92㎏
9月 162㎝ 130㎏
10月 165㎝ 200㎏
同じ体長でも倍ほどの体重差があることがわかる。4月から9月は一般に痩せている。

《ヒグマとどの程度違うのか》

ヒグマはツキノワグマよりはるかに大きくなることが知られている。3m500㎏はさすがに大げさとしても*3ヒグマがツキノワグマとは比較にならないほど大きいことは紛れもない事実である。
学術調査や狩猟の結果である。
性別 体長 体重 備考
オス 153㎝ 150㎏ 狩猟で得られた平均
メス 137㎝ 110㎏ 狩猟で得られた平均
比較的小柄とされる道南のヒグマだがそれでもこのサイズである。猟期の平均であるため多少メタボと考えられるがエゾヒグマの平均がツキノワグマやゴビヒグマの大型に匹敵する
オスヒグマの平均が120~200㎏とするデータも存在する。ツキノワグマなら伝説級がモブ感覚でいるのは間違いないだろう。
平均的に見ると日本人とオランダ人のような感覚だろうか。
次に大型である。
性別 体長 体重 備考
オス 180㎏ 学術調査における最大級の一例。「オスの大熊」と称されていた。北海道の9月なのですでに太る時期である。
オス 195㎝ 405㎏ 冬眠明け。NPO法人の計測
オス 130㎝ 60㎏ NPO法人により放獣。6歳なのでまあまあ育ったオスグマ
メス 180㎝ 160㎏ 北海道最大記録
メス 140㎝ 97㎏ 有名なピザで餌付けされた個体。7~8歳とメスとしては育った個体
小型個体も入れた。放獣された6歳オスは平均的なメスのツキノワグマと比較してもちょっと情けないサイズである。個体個体で見るとこういった例もあるのだろう。
とは言えガリガリが多くかかる学術調査で180㎏のオスグマがあっさり捕まるのは圧巻である。ツキノワグマの学術調査における最大は130㎏級であるため50㎏程差があることになる。一般人とラグビー選手くらいには体格差があるだろう
伝説級同士を比較するとヒグマは冬眠明け405㎏であるため上記の冬眠明け210㎏のツキノワグマの二倍近い巨体である。ただしヒグマはがっちりした体系のようでツキノワグマのほうが体長は少々大きいようである。

◇豆知識

  • かつてはニホングマと呼ばれていた。
  • 金太郎と相撲を取った熊も分布地的にこの種だと言われているようだ。
  • 水戸黄門を助けた熊もやはり分布地的にツキノワグマとされている。
  • 青森県に移住した津軽アイヌと呼ばれる本土アイヌからは「キムンカムイ」と呼ばれイオマンテ(熊祭り)の対象だった。
  • かつてはニホンオオカミと共に日本の主要な猛獣として知られ、人畜に被害を与えた際は「熊荒れ」「狼荒れ」と呼ばれていた。
  • 長野県には「鬼熊」と呼ばれる熊の妖怪が伝承されている。年を取った熊が妖怪化したもので、夜な夜な家畜の馬などを食害するようだが、下記の家畜被害を見る限り妖怪化の前後で行動が変わっていないようである。単にツキノワグマの大型個体を鬼熊と呼称しただけかもしれない。

🌙戦闘力

◇概要

クマとしては確かに小柄の種類*4とはいえ、日本の本州においては事実上生態系の頂点に立つ肉食獣である。
ククク…奴は日本のクマの中でも最弱」というのも嘘ではないが、日本国内では比較対象がヒグマしかいないため数値上はあちらに劣るというだけに過ぎない。
そもそも分布域は綺麗に分かれているので、本州以南ではヒグマと比べてもあまり意味はない…。
尚、小柄なだけあってか非常に敏捷性が高いという長所もあり、移動力もある。寧ろ、活動範囲の広さ故に脅威となるケースも挙がっている。

2024年12月の秋田県のスーパーでは、ツキノワグマが立て籠もった際特注クマスーツをはじめ完全武装の機動隊が対応に当たったが、突入してクマを取り押さえるなどはできなかった。
これはクマスーツで鋭い牙や爪を防げるとしても、膂力による衝撃は受けてしまうため。例えば下記のような大きな運動エネルギーでタックルなどされては防具を着込んでも厳しい。また、ヘルメット越しでも頭部に大きなダメージを受けて亡くなったというケースも存在する。そんな訳で一人一人が武道の有段者など腕利きの格闘家である機動隊員であっても、クマの傍に突入して素手で叩きのめすのは困難であるとされる

石川県でもツキノワグマの立て籠もりが起きているが、やはり機動隊などが突入することはできず、最終的に猟友会によって駆除されている。
また、同県では自衛官が襲われて重症を負ったケースも有る。

《攻撃力・生命力》

  • 体長1メートルほどのメスグマでも成人男性のふともくらいの生木をへし折ったり猪用の檻の鉄格子を引きちぎるのは余裕であるため、小柄な分むしろ捕まえ辛く厄介という考え方もできる。
  • ジャンプはやや苦手なようだが2.5メートルの高さに届くため、体長50cm程度の小熊に跳びつかれて大人が失明させられた事例も複数存在する。
  • 牙で1cm弱程度の鉄の棒は切断することが可能。
  • 熊爪はただ付いているだけではなく、神経が通っているため、人間がウルヴァリンの爪を装備した時よりは遥かに器用に動くだろう。

  • 頭に20発の散弾銃の弾が入っていても元気に暴れていた事がある他。
  • 子連れの母熊の場合胸に2発猟銃を打ち込まれても数日生きて走っていた事がある。

  • トンカチ、金属バット、ピッケルなどでたたかれていても元気に走れる。
  • 二階くらいの高さの木から落ちるくらいは日常茶飯事であり気にも留めない。

《余談》

熊爪や牙による筋肉や血管の断裂はマッチョな人ほどハイリスクである。
マッチョな人ほど断裂する筋肉量が多く血管が太く、血流も多いためである。
また、筋肉が断裂すると物理的に動けなくなる上、傷完治後も運動能力低下などの後遺症のリスクがある。
同様に血管が太く、血流の良い人ほど出血が多くなる。出血が多くなると当然死亡リスクも高くなる。
格闘家やアスリートなどは普段から大きな衝撃を受けているため疲労骨折もしやすいなど筋肉が発達しているが故の弱点も多い。

◇パンチ力

日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏によれば、ツキノワグマのパンチ力は

80kg以上のオスと100kg以上のメスは人間の頭部を破壊して一撃必殺可能

であるとのことである。
十和利山熊襲撃事件におけるスーパーKは84kgとギリギリでありながらヘルメットごと被害者の頭部を破壊していた。また、このサイズのオスのツキノワグマには体重200〜400kg級になる成豚の食害例も複数あるため、人間の力の及ぶところではないだろう。

乗鞍岳のケースにおいても、腕でガードした上で被害者は頭蓋骨を剥ぎ取られ、衝撃で目玉が飛び出していた。犯人熊が60kg級の小型、超高齢、殺意のない攻撃であることを加味すれば、50kg級のメスグマでも一撃必殺の可能性が出てくる
このサイズのメスでもサフォーク種という千代の富士並の体格の羊を捕食した事がある。

ツキノワグマのパンチ力はせいぜいボクサー並みというデータも存在する。
ただし、こういった測定値は大抵動物園の個体に餌か何かを与えてやらせたケースが多い。
動物園の動物は基本どんなに怠けていても、餌は十分もらえるためこういった測定には本気を出さない場合がほとんどである。
例えば本来は時速120㎞のチーターでも動物園の計測だと時速65km程度という記録も存在する。
ただ、これを鵜呑みにしたのでは時速90Kmのインパラは捕まえられないことになり明らかにおかしい。
ちなみに野生個体だとボツワナでチーターに加速度計を付けて測定した実験では、最低でも時速96kmの最高速度と120W/㎏の出力質量比を叩き出した。*5

また餌をもらうためのパンチと敵意が明確にある時のパンチでもまた異なってくるだろう。
そもそも、格闘技の試合やサッカー選手の乱闘が証明しているが、ホモ・サピエンス最高出力の顔面ハイキックですら対人で打撲止まりである。熊爪を仮に足につけてもこうはならないだろう
また、当該データによればオスのヒグマのパンチ力はわずか1t、ボクサーのキック力のわずか半分である。

◇運動エネルギー

ツキノワグマ、大谷翔平、大の里の全力疾走の運動エネルギーを計算してみよう。
  • ツキノワグマ(体重50kg/時速50km)⇒81×10⁴J
  • 大谷翔平(体重95kg/時速33km)⇒67×10⁴J
  • 大の里(体重190kg/時速22.5km)⇒63×10⁴J

50kgと小型もしくは亜成獣熊を想定したがそれでも大谷選手より運動エネルギーが大分大きいことがわかる。体重の大きな大の里が以外にも運動エネルギーが比較的小さいが、これは体重は1乗に対し速度は2乗されるためである。
さらに、ただ運動エネルギーが大きいだけでなく1点に集中してくる。大谷選手の全力疾走を優に超えるエネルギーが顔や胸腰膝などに集中するため、タックルの一撃でも人間には重大な一撃になることは間違いない。
一般的にスポーツ選手の記録は整備されたフィールドで装備とコンディションを整えた上でのものなのに対し野生のツキノワグマの記録は山道を全裸で雑に走ったときのものなのでそのあたりも違いが出るだろう。

また、ツキノワグマの体重は上記の通り50kgがボトムであり、新潟では車と並走した例もあるため実際には上記より幾分大きな運動エネルギーになることが予想される。例えば80㎏のツキノワグマが時速60㎞で走れば運動エネルギーは187×10⁴Jと大谷選手の3倍近くなる。

🌙食性

◇野生下において

《概要》

どんぐり食のイメージがあるがこれはどんぐりの実がなる秋だけである。
基本的に食性については個体ごとの「好み」による部分も多く一概には言えない。
…とはいえ一応一般論のようなものは研究されている。それによると
季節 食性 備考
ブナの新芽や去年の秋に落ちた堅果類(どんぐり)の残り、木の芽、凍死した鹿やカモシカなど有蹄類を食べる。
初夏には鹿の新生児狩りやアリ・ハチなど昆虫類を多く食べる。他にヤマグワの実もよく食べる。 シカのほかに猪なども獲物にしているようである。
ご存知どんぐり(堅果類)他に栗もよく食べる。 下記のカモシカ狩りは秋であるためこの時期でも堅果類が全てではないようだ。
が主な食性であり、季節ごとに得られる物を食べている。
…が魚が安定して捕れる池などがある場合魚しか食べない個体もいるなど実は好き嫌いが激しい生き物でもある。
最近ではここに罠に掛かった鹿やイノシシを襲うパターンが加わっているため、肉が好きな個体は肉食率が高くなっていることが予想される。

ツキノワグマは堅果類の種子散布の役割を担っていることが最近判明した。
これはクマの生態系ニッチを明らかにした画期的な研究で北欧でヒグマを研究しているクマ研究者も興味を持ったそうだ。

この他にツキノワグマに限った話ではなくクマ全般の生態であるがツキノワグマ同士で共食いをする。
特にオスは自分より年下の若いオスを食べたり既に子のいるメスと交尾する為に子を殺し食べてしまうケースも珍しくない。

《カモシカの捕食者としてのツキノワグマ》

草食寄りとされる場合が多いが、勿論肉も食べる時にはきっちり食べる。一般的に冬眠明け〜初夏にかけては腐肉食もしくは子鹿狩りで肉食性が高い傾向にある。
鹿やカモシカ、猪といった草食獣の捕食に加えて牛や豚など大型家畜の食害例も存在する。実際に岐阜県などを調査した海外の研究者もカモシカの捕食が複数回確認されていて、「カモシカの唯一の捕食者」とされている。
  • 滋賀県で野生のツキノワグマがカモシカ狩りをする映像がyoutubeで公開されているが、ツキノワグマの食肉目としての1面を垣間見ることができる。
  • 兵庫県では罠にかかった鹿を襲って食べるケースが頻発している。
  • 鉄の檻を引き裂いて中にいる鹿を取り出したそうだ。
  • ニホンジカの新生児が産まれる初夏にはオスグマを中心に積極的に捕食するという調査もある。これはニホンジカをエゾシカに変えればヒグマ同様の生態である。
  • 炭素同位体の研究ではオスの大熊に肉食性の高い個体がいることが分かっている。

  • 海外では水牛を捕食した事例が知られている。
  • 他にも海外では猿や大型カモシカ、マレーバクやイノシシなど様々な動物の捕食例が知られている。

以上のツキノワグマの生態を踏まえると、種子散布と有蹄類の機会捕食者の「両刀使い」が生態系におけるニッチとなるだろう。
機会捕食者で有蹄類の個体数調整に役立つのか?という疑念もあるだろうが、ツキノワグマはヒョウやオオカミなどに比べると体が大きく、食べる量も多い。
そのため、鹿の新生児やウリ坊を狩るのみといった程度の捕食者であっても、単体のニホンオオカミやオオヤマネコ程度には捕食者として機能する可能性がある。

《ハチの捕食者としてのツキノワグマ》

動物の肉以外には上の説明通りハチ(ミツバチ、スズメバチ)も食べ、自然下では地面のスズメバチの巣を掘り返したり自然のニホンミツバチの巣、養蜂場の巣箱を襲撃したりする。
毒に耐性を持つわけではないが、厚く頑丈な毛でハチの毒針を通さない為に毒に対しては大丈夫なものの流石に無数のハチに襲われるのはクマにとっても大変なようで狩りの場面ではハチの攻撃で悶えるシーンが撮影されている。
それでも草食動物を追い掛け回すより少ない消耗で大量のタンパク源やカロリー(ハチの幼虫や蛹、ハチミツ)を手に入れられる為にめげずにパワーで押し切って巣を破壊する。
特に蜂蜜に関しては、複数のツキノワグマが蜜の残り香から既にミツバチのいない自然の木の古巣を見つけ蜂蜜を求めて頭を突っ込み続けた結果大穴を空ける程でクマのイメージ通り大好物。

巣ごと蜂を食べる天敵はそうそう存在しない(他は人間やハチクマ程度)為か遺伝子レベルで敵として刻まれているようでスズメバチの「黒色に興奮する」という生態もこうした天敵関係が原因となっていると考えられている。

《ツキノワグマはどの程度捕食者として機能するのか》

ツキノワグマとニホンオオカミやオオヤマネコの間には約5.3倍の体重差がある。また、食べる量も体重比通りと仮定しよう。
ロシアでの調査ではツキノワグマは85%草食とされている。つまり15%が肉食である。これが国産ツキノワグマにも当てはまると仮定する。
一方ツキノワグマが食べる量の5.3分の1(ニホンオオカミやオオヤマネコが食べる量)は18.9%である。
かなり雑な推定だが、概ねツキノワグマの肉食量は単体のニホンオオカミやオオヤマネコと同等程度と言えるだろう。
ネックになるのは肉食に計上される昆虫、魚、スカベンジャーの比率がツキノワグマの場合かなり大きいだろうということである。無論ニホンオオカミやオオヤマネコも昆虫食やスカベンジャーはするのだがその割合は大きくは無いだろう…
いずれにせよ、体格差を考えればツキノワグマでも中型捕食者程度には機能する可能性が示された。
下記のように、ツキノワグマの場合体格が大きいため大猪狩りなども可能と考えられるため、こういったニホンオオカミには多分難しい捕食者ニッチも考えると死神代行「ニホンオオカミ代行」くらいにはなる可能性がある。

また、上記の通りオスの大熊に肉食性が強い個体が多いことがわかっている。ここから考えてみよう。
「オスの大熊」と言っても100kg級から240kg級まで幅広い記録がある。ピラミッド型の分布と考え130kg級を平均としよう。
肉食率は上記の15%の倍30%ほどとする。
130kg級の30%は40kg級になり、これはヒョウやピューマ、チーターなどに匹敵するサイズである。
次にオスの大熊の数を推定しよう。2万匹と推計されるツキノワグマのうち半分がオス、8割が成熊と仮定する。
栃木県での調査ではオス成熊47匹中11匹(23.4%)が100kg級以上だった。学術調査には小物やガリガリばかりかかることや痩せる春夏の調査であることを加味してオス成熊の35%ほどが100kg級以上としよう。
2万×80%×50%×35%=2800匹
以上をまとめるとツキノワグマのオス大熊は肉食獣としてはヒョウやチーターなどに匹敵し、その数は2800匹である。言い換えるとヒョウやチーターが日本には2800匹ほど生息しているという事でもある。
オス大熊は体格が肉食動物としては規格外サイズのため、肉食率3割と控えめな予想でもメジャー級肉食獣に匹敵する結果となった。また、100kg級以上はさほど珍しいサイズではないため、オス大熊のみに捕食者としての役割を求めても十分な個体数が確保できる。
アジアのチーターは生息数80匹、アフリカまで合わせた総数も7000匹程度である。近縁種のヒョウも各国で数十〜数百匹である。

1匹1匹の肉食率は小さくとも、ツキノワグマの場合、生息数が最低でも1万匹と推計されるため、数で挽回できる可能性がある。日本の本州にヒョウが100匹いたとしよう。これはアムールヒョウの生息数と同等である。一方ツキノワグマは推計の下限である1万匹とする。
ツキノワグマが月1匹の鹿を狩るとする。ヒョウは狩りの名人であるが、獲物に恵まれない日やウサギを狩る日もあるため3日に1匹鹿を狩るとする。月にすると10匹。
ツキノワグマもヒョウも8割が成獣(成熊、成猫)とする。
1月に狩る鹿の数はツキノワグマが1万×80%=8000匹に対しヒョウは100×80%×10=800匹となりツキノワグマの方が10倍多いことになる。
これは、生息数と肉食量以外は条件を揃えたため、生息数100倍を肉食量だけで跳ね返す必要があるためである。例えばヒョウ1匹が月に200匹鹿を狩るなら合計で月に16000匹鹿を狩ることになり、生息数を跳ね返すことができる。
また、この計算法なら肉食の比率は事実上無視できる。ともかく鹿を狩る実績をある程度コンスタントに出しさえすれば、後は数の力である。逆に言えば、絶滅危惧種の大型ネコに並ぶためには1/100の数の鹿を狩るだけでよいわけである。

ツキノワグマはあくまでも草食主体の雑食であるが、食肉目として、「狩りのための体」で産まれる。体が大きく生息数が多いことを活かして「捕食者の側面」を切り取ると中大型捕食者に匹敵することが示唆される。

◇家畜の食害

体格差も考えてか主に幼獣を襲うケースが多い。
だが、1999年栃木県で体重90kgのツキノワグマが種豚(体重300kg級)始め複数の成豚を捕食した例もある
その他
  • 2022年長野県で豚3匹が食害される。
この個体が犯人熊とすると牙の色や牙が1本欠けていることから、かなりの年寄り熊と考えられる。
かなり痩せて毛艶も悪く、体長140cm体重85kgはこの時期のオスグマとしては平均的である。体長が大きくないが高齢と夏場でやせ衰えて平均ならば、かつては大熊だった可能性もある。好物の鹿肉を確保できなくなり豚を襲ったのかもしれない。
ちなみにニュース映像は子豚だが、食われたのが子豚とは明言されていないため200㎏超えの成豚の可能性が高い。(子豚なら子豚という可能性が強い)
  • 2017年以降秋田県でも子牛の食害事件が頻発している。
  • 秋田では牛豚を食われて廃農するケースも複数出ている
  • 2007年には宮城県仙台市で子牛が食害される。
  • 1997年には東京都でジンギスカン用の大型羊7匹が食害される。
  • 鶏の食害と廃農は全国で例がある。
  • ↑島根県では体長60cm体重20kgの子熊が金網を破って侵入し鶏を食害した例もある。
以上の事例などから自重の2倍から3倍程度の獲物は問題なく狩れると思われる。

体重200kg級以上の豚や肥育牛を仕留めた事例から、オスの大猪や角の生えた雄鹿も捕食できる可能性が高く、ニホンオオカミとは違った捕食者ニッチを占めていると思われる。

🌙人食い

十和利山熊襲撃事件

◇三毛別超えの熊害『八甲田山熊襲撃事件』

《概要》

日本最悪の獣害事件と言えば誰もが伝説の三毛別ヒグマ事件を思い出すだろう。
実は(江戸時代なのでランク外だが)八甲田山で三毛別ヒグマ事件の7人食害を大きく超える熊害事件が発生している
事件の詳細は「弘前藩庁護国日記」という行政記録に記されている。
1695年(元禄8年)7/11から1720年(享保5年)9/14までの25年に渡り、野良仕事や山菜採りなどで山に入った男性6人子供1人(性別不明)6〜22才の女性4人の計11人がツキノワグマにより食害された*6

被害の詳細には主に以下のものがある。
  • 元禄11年3/21 宮崎村の48歳男性が薪取りの最中に熊に食われた。内臓と足は残らず食われていた。
  • 元禄11年6/11 深浦吉屋町の50代男性がやはり薪取りの最中にクマに食われた。熊は遺体から離れずにいたため足軽2人と町民40人で脅かして遺体を回収した。腹、頭、腕が食われていた。
  • 元禄12年4/29 山菜採りの18歳女性が食害された。腹が食い破られ、首から頭まで皮が剥がされていた。
  • 元禄12年6/5 12歳の女の子が食害される。肩から肘までと足の肉が食われていた。
ほかに少なくとも5人の重軽傷ものが出ているため負傷者・行方不明者を合わせると被害規模は17人になる。*7

加害熊の有害駆除は地元のマタギ13人に加え津軽アイヌと呼ばれる本土アイヌ4人まで動員した大規模なものだった。

《犯人熊》

討ち取られたツキノワグマは体長160cm程度の超高齢の雄熊だった。立った時の身長は2m程度。
体重は記載が無いが、全盛期には150kg級だったと推定される。超高齢であることなど加味すれば100kgを割り込んでいる可能性も高く、オス成熊の平均である80〜120kg程だろう。

ほかにスーパーkほどのサイズの人食い熊も確認されている。

1連の人食い事件が25年に渡っていることから十和利山熊襲撃事件のように複数の人食い熊が関与している可能性が高い。もっとも、上述の雄熊が駆除された当時の人食いは当該熊の単独犯だったようなので母熊から人食いを教わったツキノワグマなのかもしれない。
十和利山でも人食いを覚えた子熊が未駆除であることが指摘されているが十和利山でももしかしたら…。

◇戸沢村の人食い熊

1988年戸沢村で男女3人がツキノワグマに食害される事件が発生している。
明治以降では最初と思われるツキノワグマによる大規模人食い事件である。
以下は事件の概要である。

《被害》

  • 5/25 タケノコ採りの男性(61)が深夜に遺体で発見されたが熊が遺体を保護していたため収容は翌日になった。尻から足を食害され失血死と見られる。
  • 10/6 クルミ採りの女性(59)が朝、遺体で発見される。胸と手足が大きく損傷するほど食われていた。第1現場から500m先の地点である。
  • 10/9 家族で栗を拾っている最中に熊と遭遇。女性(61)が襲われた。尻から足を広く食害されていた。第2現場からさらに5km先の地点である。

被害者全員が下半身を切り裂かれ絶命していた。これは母熊から卒業したかどうかの子熊による犯行の特徴である。

《犯人熊》

第3事故の直後、猟友会員が現場付近で彷徨いている熊を発見して駆除した。
胃が栗でいっぱいにも関わらず胃の上部には人肉が詰まっていた。つまり満腹にも関わらず人間を襲って食害していたことになる。

  • 犯人熊は単独犯で体長140cm体重84kgと10月にしてはげっそりとした4歳ほどの若いオスグマである。
  • 体格や年齢それから3人を食害したことなど、スーパーkのコピーのような犯人熊である。
  • 一方でスーパーkが頭部を一撃して被害者を絶命させていた(成熊の攻撃パターン)のに対し戸沢村犯人熊はまるで子熊のような攻撃であるという違いも見られる。
  • 上記のような行動パターンや秋にも関わらず痩せていることや頭蓋骨に損傷があることなどから精神疾患をはじめとした疾病説が専門家から出ている。

《余談》

本事件を調査した米田一彦氏は犯人熊が移動するという教訓を得て警鐘を鳴らしていたが行政が本事件をそもそも知らなかったため、同様の移動が発生した十和利山で教訓が生かされなかった。
ツキノワグマの重大事件はとにかくタブー視されるがその弊害が出たのが十和利山事件と言えるだろう。
ヒグマだったらいささかの誇張も含めて大きく報道されていたであろう事件である。

◇小規模事件

ヒグマの人食い事件が大きく報じられるのは有名だが、ツキノワグマの場合、人食い事件は婉曲表現だったりそもそも報じられない場合もあるなど対応に大きな差が見られる
上記以外の単発の人食い事件に以下の事例がある。
以上、タブーとされるケースが多いと思われるツキノワグマによる人食い被害だが、漏れ聞こえる例だけで9例もある
これらが「氷山の一角」というのは当然として事件のあった地域や年代から、決して東北の一部の話でも「近年の異常行動」でもない。*8

2013年福島県の事例は捜索隊の警官二人を含む男性4人に重軽傷被害を出すなど二次被害も大きかった。
1979年の秋田県、30代男性のケースは「腹をえぐられた」という表現で記事になった。これは内臓などを食害された際の婉曲表現である。一方、この青年は「重態」つまり当時の医療では長く保たないが一応息はあったとのことである。近縁種のアメリカクロクマには被害者が意識のある状況で食害に及んだケースがあるものの、「可能性あり」という表現にした。
1983年秋田県の40代女性のケースは体重わずか40kgの母熊である。熊研究者からも「母熊にしては小さすぎる」と言われているため栄養失調に耐えかねて犯行に及んだと考えられる。
2006年長野県の50代男性のケースも子連れ母熊の犯行である。長野であればメスでも100kg級の可能性も十分あるが、50kg級の小物だった可能性の方が高い。
上記2例は小型でガリガリのメスグマでも肉体労働に従事する壮年の男女を熊餌にできることを示している。

ちなみに2000年の山梨県の事例は海外の研究者により詳細が調査され、論文も発表されている。Angeli,C.B.2000.Death by Asiatic black bear in Japan :a predator attack ? International Bear News 9(3):10-11

🌙人的被害

◇大規模被害

人食いを除いた大規模な人的被害に以下のものがある。
  • 1953年、富山県で男女13人が重体、重軽傷を負う大規模被害が出た。重体のものは事件後すぐ死亡したとされる。この被害者数は三毛別ヒグマ事件を大きく超える日本最大級の事件である。
  • 1951年、山梨県で男女10人が重軽傷。こちらも被害者数だけなら三毛別並みである。
  • 2009年、岐阜県で発生した乗鞍岳熊襲撃事件。こちらも三毛別に匹敵する熊害事件である。下記で改めて解説する。

三毛別級がいっぱいだ

◇個別被害

人食い同様、若年・壮年男性の重症死亡事例もツキノワグマの場合大きく報じられないが実際は毎年多数の事例がある。
青森や岩手で80代女性が亡くなった場合、英語の記事にもなるなどツキノワグマにしては大きな扱いだったが若年・壮年男性の死亡被害の場合、国内でもほとんど知名度が無い。
高齢化で山間部にお年寄りが多く居住していることと、お年寄りの人的被害が多すぎて比率が低くなっているだけである。
  • 2023年40代男性死亡奈良県
  • 2024年40代男性重症山口県
  • 2024年40代男性死亡福島県
  • 2024年20代と40代の男性重症(いずれも警官)秋田県
  • 2025年46歳男性(現場作業員)死亡長野県
  • 2025年29歳男性、39歳男性(いずれも自衛官)重症岩手県
のようにざっと挙げただけでも近年だけでも全国で例がある。
残念ながら亡くなってしまわれた方には背後から頭や首に強烈な一撃を加えた形跡が無かったため、あくまで熊側からすればだが、うっかり命を奪ってしまった事例であと推測される。

昔は若い人の被害が多かった。

幸いなことにツキノワグマに女性や子供が襲われるケースはほとんど無い。また、稀に女性が襲われた場合40代以上の女性が軽症というケースが大部分を占める。
ツキノワグマはフェミニストだった…!?

これは下記の様に防御姿勢のおかげでもある。

◇ヒグマとの比較

人的被害の約95%死亡事例についても80%ほどがツキノワグマによるものである。実はヒグマの人的被害が全くなかった年すら存在する。

この被害者数の違いは熊の生息頭数では説明がつかない
ツキノワグマの生息数は2万匹、ヒグマが1万匹と推計*9されているため、熊口比通りならツキノワグマ65%、ヒグマ35%ほどが適正となる。
ヒグマの方が死亡率が高いとされている死亡事故でさえツキノワグマが80%を占めている。
本州と北海道の面積比も概ね3:1のため、熊口密度はむしろ北海道のほうが高い。

人口密度については本州452人/平方kmに対して北海道65人/平方km。これだけ見ると人口密度に大きな差があり、それが遭遇率に影響しているように見える。
北海道と、特に人的被害の多い秋田県と岩手県を比較してみたい。*10
この2県だけで例年北海道の10倍を超える人的被害を叩き出している。
各指標を比べてみると…
地域 人口 人口密度 熊口 熊口密度
北海道 520万人 65人/平方km 1.2万匹 0.16匹/平方km
秋田&岩手 200万人 75人/平方km 8000匹 0.29匹/平方km
人口と熊口は北海道が圧倒的に多く、密度は秋田と岩手がやや高いものの、僅差である。
人口密度についても被害の特に多い2県なら北海道と大差ない数値が出るのである。

また、仮に被害者数が熊口比通りだった場合、両熊種で凶暴性が変わらないことになる。
ヒグマの方が凶暴と言うなら、特に上記脚注のように、生息数が変わらなかった場合ヒグマが被害者数でほとんどを占めている必要がある。

本州では知名度は無いものの、ヒグマでも以下の事例などもあり、よく言われるほど凶暴とは言えないかもしれない。
  • 2023年6月占冠村。向かってきた体長1mのヒグマを釣りをしていた60代男性が釣り竿で叩くなどして撃退。
  • 2023年6月八雲町。北海道新幹線の延長工事中の男性がクワを振り回してヒグマを追い立て、無傷で撃退。
  • 2008年羅臼町。キャンプ場でテントに寄ってきた大型のヒグマをJCがキックで撃退
他にも2023年頃農作業中の高齢男性がヒグマを投げ飛ばすなどして撃退した例がある。

◇乗鞍岳熊襲撃事件

2009年9月、岐阜県の乗鞍岳・畳平バスターミナルにて1頭のツキノワグマが暴走し、10人に重軽傷が出る大規模な被害が出た。
死者こそいないものの、被害者10人というのはあの三毛別羆事件に匹敵する規模である。

《事件の概要》

遊歩道にて熊に襲われている女性を男性A(登山客66歳)が発見。女性を助けるため、Aが熊を登山用ステッキで殴りつけたところ、熊がAに襲いかかった。
Aを助けるため、男性B(山小屋オーナー59歳)が10mほど離れた地点から大声を出す、手を叩くなどして熊の気を引いた。熊はAから離れBの方に向かってきたがBではなく別の男性従業員を押し倒し、攻撃を加えた(1ヶ月入院のケガ)。Bはさらに熊の気を引くためまた大声を出した。熊はBに向かって突進し、Bは逃げ切れず、押し倒され攻撃を受けた。
Bの長男(年齢不詳だがおそらく30代以下)がBを助けるため熊の腹を思い切り蹴飛ばしたところ熊はBの長男に向かって飛びかかっていったが間一髪軽トラックが割り込んだ。
その後、バスターミナル内の建物にバリケードを貼ったが熊はバリケードを突破従業員たち(主に男性)ががモップやイスなどで抵抗したが逆に怪我をおった。
消化器を熊目がけて噴射したところ熊は売店に逃げ込んだ。従業員がシャッターを閉めて熊を閉じ込めた(シャッターで閉じ込められるとは思えないため、熊側としては籠城のつもりだろうか)。
駆けつけた猟友会員にシャッターの隙間から撃たれた。

《被害状況》

特に重症だったのはAとBである。

  • Aの被害 殴られたショックで片目が飛び出しもう片方の目も視力が半分に低下。頭蓋骨が剥ぎ取られ脳が露出していた。左腕は骨折し筋肉も断裂したほか、左膝の皿が割れた。歩行困難や失明残った目も視力大幅低下という後遺症を追った。*11

  • Bの被害 口周りの肉がめくれ上がり、頸動脈の手前まで爪が到達。左腕の骨折。会話に若干の不自由が生じるようになった。

  • A,Bほどではないが、50代以下の男性従業員が頭の皮をはがされるなど1ヶ月入院の重傷。
他にも逃げようとした際に足を折ったものがいるなど多くの怪我人がいた。
Bについては不幸中の幸いか観光客の中に看護師がいたため簡単な治療を受けたられたのも良かったとされる。

他に、死者が出なかったことについて、Aは頭の傷はコンマ1ミリで死んでいたと診察した医師の証言がある他、腕に噛みつかれ振り回された際に筋肉と骨は切り裂かれたが運良く動脈は傷つかなかった。つまり、2度死線をくぐっている
Bについても、頸動脈の手前で熊爪が止まっていたため運良く生き延びたが、A同様にコンマ1ミリだった

A、Bの被害からわかるだろうが、死者無しで済んだのは、周辺の人達が連携プレーで被害者を助けたからで、こういった行為が無ければ死者は間違いなく出ていただろう。

《犯人熊について》

犯行に及んだ熊は体長136cm体重67kgの(9月という季節もあるだろうが)げっそりした21歳という超高齢のオスのツキノワグマである。
事件前に観光バスと接触事故を起こした際に興奮して犯行に至ったとされる。また、超高齢であることからアルツハイマーなどの疾病の可能性が疑われる。
上述したA、Bの被害状況からも殺意があったのではなくパニックになって襲ったものと思われる。(首に噛みついていない。)
立った時の身長については被害者から160cm程度という証言がある他、被害者との比較から平均的な成人男性程度の身長はあると考えられる。
オスのツキノワグマとしては少し小柄な体格や超高齢*12であることやパニック状態であったことなどから、成熊になったツキノワグマが人が多い場所で暴れた際、恐らく本件は被害状況の「最低基準」つまり最も楽観的な被害予想として機能するだろう。

◇襲われたらどうするか

最も重要な問題と考えられるテーマである。まず、ツキノワグマによる攻撃パターンには主に以下のものがある。
  • 攻撃の意思そのものが希薄…「熊の囁き」と呼ばれることもある。顔や首を狙わず腕や足などを甘噛する。背後から抱きつくこともある。小型なら間違いなく軽症。
  • 攻撃の意思が弱い(警告攻撃)…子連れの母熊が良く行う。顔や首等を狙うが、本気の攻撃でなく、真正面から来る。軽症が基本だが重症死亡に繋がる場合もある。
  • 人狩り熊…人間を獲物と見なしている場合である。背後から強烈な一撃を頭に食らわせる。

ニュースなどにしばしば顔を出す「ツキノワグマと素手で格闘して撃退」などというのはそもそも攻撃の意図が弱いか、無かったパターンと考えられる。
こういった場合特に格闘などせずとも「攻撃」は2〜30秒で終わり、軽症で済む可能性が高い。

上記の人狩り熊のパターンからも、格闘になる辺り熊は本気ではないこともわかる。

では、どうしたらよいか?本気の攻撃でなくとも顔や腹に当たればただでは済まない。熊研究者により以下の傾向が知られている。
  • 武器の有無に関わらず戦うと重症化しやすい。
  • 男性より女性のほうが軽症率が高い。
女性の場合、本能的に熊爪や牙を防ぐ姿勢を取るため、重症率が圧倒的に低いことがわかっている。防御姿勢と呼ばれる姿勢である。地面にうつ伏せになり首を手でガードする姿勢である。リュックやヘルメットがあればなお良い。立ったまま顔を腕で覆うだけで意味がある。

こう書くと、「でも戦って熊を怯ませたから助かったケースも有るんじゃないの?」という声もあるだろう。
しかし、眼の前に熊が現れて「お前を食わせろ」と言ってきた時に「どうぞ召し上がれ」となる人が富士の樹海を除いて果たしているだろうか?大抵の人は蹴飛ばすくらいの抵抗はするだろう。重症死亡事例も大抵は戦った結果である
例えば上記の長野県における死亡被害の46歳男性の場合熊ととっ組み合いながら転がっていたため相当に激しい格闘になっていたと考えられる。

また、武器を使って戦ったが押し切られ重症になったケースも有る。
  • 2014年東京、30代男性が登山用ステッキで戦うも重症
  • 2019年長野、30代男性が登山用厚底靴で蹴飛ばすも重症
有名な乗鞍岳のケースも被害者から「(覆いかぶさってきた熊に)登山用ステッキで必死で戦った」と証言があり、YouTubeの映像でも確認できる。

また、ナタで戦っても重症化しやすいことが知られている。プロのマタギが槍で袋叩きにしても人間が逆に狩られるケースがある。
秋田などは「ナガサ」と呼ばれる殺傷力の高い対熊用ナタを持って入山するケースが多い。殺傷力の高い自作武器も多く、鉄パイプを加工した自作の槍なんて例もある。
武器を持っていても勝てない場合が多い。
  • 2016年5月秋田県。あの十和利山熊襲撃事件の一幕である。母親(70代)を守るため息子(50代)がナガサで袈裟切りにするも熊は森から畑まで母子を追跡。18人の捜索隊に追い払われる。ナガサで思いきり切りつけたものの脂肪の層が割れただけだった。スーパーKではなく胃から人肉が出た体長130㎝の未成熟なメス熊である。

戦うと顔がガラ空きになる。
  • 1959年新潟、20代男性が素手で格闘するも顔と手に重症
当時の医療技術ならブラックジャックのような容貌になっていただろう。現代ならサラッと治せる怪我でも一昔前は重大な負傷だった。現代においても失明と表情筋などの断裂は治せない
20代30代の登山家なら「自衛官くずれ」くらいのことは言えそうである。行軍訓練を自発的に行っているようなものである。
大抵の場合蹴飛ばすくらいの格闘はしていると思われるため、こういったケースがむしろスタンダードと考えられる登山や山仕事ができるあたり高齢であっても相当なフィジカルがあるだろう。

「格闘して撃退」などとされる事例についても、新聞記事などは簡潔な表現になるため、映像記録があった場合や、同行者などの客観を含めて詳細なインタビューがある場合とは大分印象が違う。
  • 2023年岩手、50代男性が襲いかかってきた母熊を先を尖らせた木の棒で格闘して撃退。
このケースはYouTubeに一部始終が公開されニュースにもなった。このケースは「撃退」とされているが、実際にはツキノワグマが男性を押し倒し、甘噛したあと勝手に逃げていったのである。
実際、被害男性自身が解説動画で「熊のスピードに負けた」としている。
「格闘して撃退」となる事例でもほとんどの場合、蹴り飛ばすなどしているにも関わらず1度は押し倒されている。下記の空手家のケースも「ふっ飛ばされた」などの証言があり、一度は押し倒されていると思われる。
軽症で住んでいるのも、熊側に攻撃意図が低いか全く無かったからである。例えば、上記の岩手県50代男性の場合も押し倒されノーガードになった際、噛みつかれ*13、爪を刺されたが、首顔腹等は狙われず、甘噛、刺した爪で切り裂くこともなかった。
押し倒した瞬間に殺そうと思えば殺せたのである。
「格闘して撃退」とされる事例のほとんどは戦った意味が薄いばかりか、顔をさらして重症死亡のリスクを上げているのである。*14

とはいえ、防御姿勢は万能ではない。ヘルメット無しで後頭部を叩かれでもすればうっかり両目失明だなんて可能性もある。
  • 2020年埼玉、クライミング中の男性を母熊が襲うも登山用厚底靴で蹴り落とすなどして撃退。手を脱臼の軽症。
戦ったのが功を奏した稀な事例と考えられる。YouTubeに公表され世界的にもバズった「Bear attack climber」である。
この事例は崖を登ってくる熊を蹴り落とせる、いわば地の利があったこと及び、防御姿勢が難しいだけではなく滑落の危険性があった。戦うしかなかった事例である。
ただし、攻撃パターンとしては小熊を逃がす時間稼ぎや威嚇のための警告攻撃であり、そもそも2〜30秒で撤退する予定だったと思われる。
この男性はクライマーで肉体的には格闘家顔負けであるが、登山用厚底靴で体重をかけて2回蹴り落としをかけたが多少怯ませたかどうかといったところである。逃げるのは上記の通り予定調和であるから、ツキノワグマを怒らせることすらできなかったと言うべきか。

最後に、ツキノワグマを目つきで撃退した空手家の事例を紹介しよう。
  • 山でトレーニング中の空手家63歳男性に体長190cmのツキノワグマが襲いかかるも格闘し目つきで撃退。空手家は足や頭に軽傷。
体長190cmが本当に体長なのかそれとも身長なのかで大分大きさが変わる、体長190cmならロシア産なみであるが、身長190cmなら体長は150cm程度になり、体重は80kg級の可能性もある。
いずれにせよスーパーK以上の体格はありそうである。
同じ格闘家であっても相撲やラグビーのような直接体をぶつけ合うレスリング系はツキノワグマには相性が悪いと考えられる。組み合った時点で切りつけ放題だからである。また、体重が重いと地面に倒された場合自重で相当にダメージを負うだろう。
比較的好相性と考えられるのが空手やキックボクシングのようなフットワーク・打撃系である。この空手家の場合もフットワークで攻撃を躱し、打撃を叩きこんだと考えられる。
このケースも格闘になっているあたり熊の囁きもしくは警告攻撃と思われる。また、繁殖期のオスのツキノワグマにはしばしば目を潰される個体がいることが知られている。目つきで怯む生き物ではない。
ただし、スーパーk以上の体格があるため、ヒグマ同様じゃれ付きでも重篤な攻撃になる可能性が高い。つまり、防御姿勢を突き破って深刻なダメージになりうるケースである。この場合も戦うしかなかった、そして戦って勝ったケースと言えるだろう
この空手家の場合世代的に野犬が多かったため、チュートリアルをこなしていたことも良かったと考えられる。

とはいえ、ツキノワグマの警告攻撃などの場合、ヒグマと違って防御姿勢で耐えることができる場合も多い。熊を殴れるなら、その拳で顔を覆ったほうが無難なのが現実である

少なくとも、体長120cm程度の大型犬サイズの母熊が真正面から向かってきた時は慌てず騒がず伏せたほうが良いだろう。

《熊スプレー》

防御姿勢の他に有効打になるのが熊スプレーである。国産のツキノワグマにおいても複数の熊研究者が熊の攻撃をこの熊スプレーで退けている
ただし、値段が高価なこと、またスプレーを組み立てて構える時間が必要なのがネックである。
熊研究者たちは自爆に近い形で熊スプレーを使うケースも有るため風向きはさほど重要ではないようだ。また、自爆した際の健康被害についても熊研究者の中には何回も自爆している人もいるため少なくとも直ちに健康に悪影響が出ることは無い模様。そもそも熊も人も傷つけないための熊スプレーだしね!
以下は熊スプレーによる撃退事例。自爆が多い。
  • クマの冬眠穴を調べに行った熊研究者が襲われた際に使用。自身も鼻や喉目などあらゆる粘膜が悲鳴を上げたそうなので、自爆に近い形と推測される。相手のクマは冬眠明け120kg級。
  • クマの冬眠穴を調べに行った熊研究者が襲われた際顔の手前まで迫ったツキノワグマに同行していた別の熊研究者が使用。襲われた研究者は自爆どころか実質自分に向けて撃たれたようなものであるが、健康には異常はないようだ。
  • やはり冬眠穴を調査していたアメリカ人の熊研究者が国産ツキノワグマに撃った例もある。

◇二次被害

奥日光ではツキノワグマ出没を受けて修学旅行がキャンセルになるなど、人的被害に対する二次被害として観光客のキャンセルも発生している。
こういった点も知床や三毛別事件跡地が観光名所になっているヒグマとの大きな違いと言える。
北海道という特別な場所が非日常感を演出してくれる効果があるのだろう。
他に、ヒグマの場合何m何百kgというサイズで解説されるがこういう巨獣に襲われる姿は少々想像し辛いのではないだろうか。
一方、ツキノワグマは普通サイズは大型犬程度、大型でもせいぜいヘビィ級の格闘家程度のサイズを解説されるため、襲われた際の痛みやダメージを想像し易いのではないだろうか。
実際、追記者はトラやライオンよりヒョウやオオヤマネコのほうが出会った時を想像すると怖い。

🌙遺伝的性質

国産のツキノワグマはツキノワグマの枠内にいながらも大陸産のツキノワグマより原始的でありやや特異な位置にいる。
そのため、日本固有種とまでは残念ながら言えないようだが遺伝的に個性があるためエゾヒグマが海外産と同じ遺伝子であるのとは対照的にニホンツキノワグマは日本にしかいないことになる
そもそもツキノワグマ自体が熊の原型に近い骨格とされるため国産のツキノワグマはいわゆる「生きた化石」に近いと言える。

遺伝的には東北から北陸までの東日本グループ紀伊半島・四国のグループ、中国・近畿などの西日本グループに分かれる。
最大記録はともかく平均的な大きさは地域ごとにほとんど格差はなくなんなら九州で220㎏の記録もある。

他の熊種との関係で言うと
  • 同種にしては距離がある…海外のツキノワグマ
  • 近縁種…アメリカクロクマ
  • 比較的近縁…マレーグマとナマケグマ
  • 比較的遠縁…ヒグマ、シロクマ
  • 遠縁…メガネグマ、ジャイアントパンダ
のようになる。

◇他の熊種とのハイブリッドについて

国外では他の熊種とハイブリッドを生じた事例があり、ナマケグマ・マレーグマとは野生下で交雑した例がある。
また、アメリカクロクマとは飼育下で交雑例があるが、遺伝的近縁性から野外でも会う機会があれば交雑すると予想される。
これらのハイブリッド熊はいずれも繁殖力の無い1代限りのものであると推定される。

国内では秋田県で熊牧場から脱走したヒグマとハイブリッドが生じていてそれが十和利山熊事件などを起こしたとする説がある。
ただ、これは週刊誌の記事が元ネタであり信憑性は高いものではない(十和利山熊襲撃事件を参照)。
また、国内ではヒグマとツキノワグマの体格の差を(いささか誇張しながら)強調して「別の生き物」とする解説がニュースや行政などほとんどを占めている。ハイブリッド熊は果たしてできるのだろうか?
例えば大型犬と小型犬では交尾行動から難しいことが知られており、また強いて言えば大型種のメスと小型種のオスの間にしかハイブリッドが生じないのが一般的である。*15
一般的に解説されるツキノワグマとヒグマの間の「非常に大きな体格差」*16を考えれば交尾行動からして不可能であることは想像に難くない。
現実的なサイズでもせいぜいオスのツキノワグマとメスのヒグマが動物園のような環境で交尾行動に至るかどうか、といったところだろう。

ちなみに、ロシアでもツキノワグマとヒグマのハイブリッドが噂され調査がされたことがあったがそんな個体はいなかったそうである。

🌙各地のツキノワグマ

◇青森県

上記の通り三毛別超えの人食い事件が発生している。

◇岩手県

人的被害が秋田と張るレベルで多く、ダントツ日本1位の年もあるほど。

  • 2023年9月にはツキノワグマによる羊の食害も発生している。

  • 2024年には罠にかかった鹿を捕食するツキノワグマの映像がニュースで報道された。

  • 2015年5月には体長2mのツキノワグマが住宅地に出没した。ニュースの画像を見てもらえばわかるが大きい。縮尺狂ってるレベルで大きい。アメリカクロクマやロシア産ツキノワグマを思わせる大きさである。ちなみにこの個体は体重は100kg程らしいので冬眠明けで痩せていたのだろうか。

  • 2010年11月体長140cm体重60kgのツキノワグマが電線を咥えたまま宙吊りで息絶えているという怪事件が発生した。電柱は15mどうやって登ったのだろう…
  • ↑実はよくある事件だそう。
捕獲日 体長 体重 備考
2007年5月 170㎝ 100㎏超え ロードキル
2020年8月 165㎝ 120㎏ 有害駆除
2021年7月 200kg級 有害駆除。詳細は不明だが、もし本当なら本項目冒頭の長野県の個体より更に大きい可能性がある。冬眠前には400kg級の可能性すらある大熊である。
2023年秋 140㎏ マタギ

◇秋田県

熊による人身被害が全国1位である。なんとあの北海道よりずっと多い。

  • 2024年12月に秋田市のスーパーに体長110cm体重70kgのメスのツキノワグマが立て籠もった事件が有名

  • その1月前にも横手市のデイサービス駐車場に体長130cm体重80kgのメスのツキノワグマが立て籠もりを起こしている。


  • 十和利山では、2024年にも死亡事故更には遺体を回収しにきた警官2名に重症被害が出ている。

  • 2007年鳥海山5合目で63歳の成人男性が人食い被害にあっている。

捕獲日 体長 体重 備考
2022年秋 「身長」190㎝ 150㎏ マタギyoutuber
2006年9月 162㎝ 130㎏ 有害駆除。夏毛でガリガリ。

◇宮城県

  • 2010年川崎町の繁華街に大きな熊が出没した。

  • 2007年に宮城県内の酪農家が子牛を食害される被害にあった。しかも仙台市。後日120kgのツキノワグマが捕獲された。
  • ↑OSO18が捕食していたのは体重の軽い乳牛だがこちらは巨大な肥育牛である。

  • 気仙沼大島に泳いで渡り海鳥を大量に捕食する個体が確認された。

  • 2023年にも養鶏場の鶏に執着する個体が現れた。

  • ただし、東北にしては人的被害は少なめ。比較対象の秋田、岩手が多すぎるだけかもしれないが。

◇山形県

《熊の大きさ》

ツキノワグマの大きさとして公的に発表されるものは体長1mなどやや大雑なものや、学術調査では体重100kg以上は測定不能など曖昧なものが多い中、山形県は有害駆除されたツキノワグマの詳細な資料を公開している。
それによれば、冬眠明けの痩せた時期、それも4〜5才の未成熟な成熊が多く含まれた上で
オスグマ平均 体長140cm体重90kg
メスグマ平均 体長130cm体重70kg
ほどになる。立った時の身長は170〜180cm程度だろうか。
最大級だとオスは体長170cm体重170kgや体長150cm体重180kgの記録がある。メスでも体長で160cm体重なら110kgの記録がある。
曖昧な情報が多い中行政がこのような情報を出してくれるのはありがたい。
捕獲日 体長 体重 備考
2021年4月 150cm 150kg この個体は力士の胴体くらいの太さの木の幹を何本も木っ端微塵に粉砕していた。
2022年4月 155㎝ 150㎏ 有害駆除
2022年4月 170㎝ 150㎏ 有害駆除
2023年4月 145㎝ 140㎏ 有害駆除
2023年4月 160㎝ 120㎏ 有害駆除
2023年4月 140㎝ 135㎏ 有害駆除。5歳と未成熟な個体。

◇福島県

  • 1969年には山菜採りの男性(35)が若いオスグマによって食害されている。犯人熊は遺体を獲物として保護していたため遺体は熊の毛だらけだった。前途ある青年が犠牲になった痛ましい事故である。

  • 2013年に70代男性死亡、様子を見に来た40代男性2人重症、更には警官(30代男性と50代男性)が軽症と1人死亡重軽傷4人の被害があった。
  • 亡くなった男性は遺体を食害されていた
  • ↑犯人熊は消息不明である。

  • 2016年訓練中の自衛官26歳男性が熊に襲われ負傷する。

  • 2024年にはキノコ採集の40代男性の死亡事故も発生している。
  • ↑直接の死因は低体温症であることや首などを噛まれていないことから、熊側としては「うっかり」だったと考えられる。

  • 熊による被害が多発しているため、ラジオ福島では「クマ目撃情報」が寄せられた際に随時放送で注意を呼びかけている。こうした対応は、全国的に見ても珍しい取り組みといえる。

◇栃木県

《豚食害》

1999年7月に藤原町の養豚場で6匹の豚が90kgのオスのツキノワグマにより食害される事件が起こった。
被害豚のうち年齢性別不明の2個体を除けば、種豚とメス成豚が1匹ずつ捕食されている。成豚は種豚が300〜400kg、メスでも200kgを越えてくる。例えば有名なOSO18など体重が300kg以上あるため子牛の捕食は体格からしても難しくは無いだろうが、このツキノワグマの場合自身の3〜4倍の豚を仕留めていることになる。

《栃木県奥日光におけるツキノワグマの学術調査》

オス成熊47個体とメス成熊49個体の体重が調査された。学術調査では珍しく100kg以上もデータ化されている。
体重の底である5〜8月のデータであるため、10月〜は1.3〜1.5倍になっている。

  • オスグマの平均は75kg級
  • 成熟したオスグマは平均85kg級で、34固体中11個体が100kg級以上である。
この結果から、成長し切ったオスのツキノワグマは春夏の痩せた時期で100kg級が標準サイズである事がわかる。冬眠前は130kg級以上になるだろう。

  • 最大のオスグマは130kg級
まだ10歳にもなっていないため、まだまだ伸び代がある。*17
この個体は冬眠前には180kg級、成長しきったら200kg級は確実な大熊である。
体長のデータは無いが、背中に這わせたら180cm程度になるのではないだろうか。

  • メスグマは50〜60kg級が平均で70kg級の個体も何個体か確認されている。
冬眠前には100kg級のメスも珍しくは無いだろう

学術調査で捕獲される個体は一般にガリガリか未成熟であるため、より栄養状態の良い成熟した個体の存在などを合わせてみると奥日光におけるツキノワグマの平均は以下のようになるだろう。
  • オスグマ 春夏80〜100kg 秋冬110〜130kg
  • メスグマ 春夏60〜70kg 秋冬70〜90kg

◇群馬県

  • 水上町で190kgのツキノワグマが狩猟で捕獲された。*18

  • 2010年頃にくくり罠にかかったツキノワグマを放獣する事例があった。くくり罠を仕掛けた木を消失*19させたり、屈強な肉体労働者たちが熊の復讐を恐れて自分の家の近くには放獣するなと言ったり、ツキノワグマの恐ろしさもわかる事例である。80kgとメスのツキノワグマにしては中々のサイズの個体だった。

◇埼玉県

  • 上記の通り「Bear attack climber」が撮影された土地であり、世界的にも「Japanese Black bear」を有名にした事件である。埼玉県のような東京近郊でも熊は生息しているのである。
とはいえ、海外でもバズった伝説の映像がまさか埼玉とは…秋田涙目

  • 2023年年明け頃、秩父市にて136kgのツキノワグマがマタギによって討ち取られた。猟師の目測では80kg級だったが実測はそれを軽く超えていた。通常は逆に見積もるため今回は珍しい事例と言える。
目測ではあるが体長120cm程度立たせた時の身長は160cm程度になる。体長は大きくないことも目測を小さめにしたのでは?

◇東京都

「熊」と聞くと大抵の人は長野や秋田などに住む「田舎の生き物」という印象があるだろう。だが東京は以外に広く、離島もあれば山もある。
そして山には「あの生き物」が生息している。
そう…みんな大好きツキノワグマだ。
本項ではそんな世界的に珍しい「熊のいる首都」で起きた熊事件を解説しよう。東京が意外にワイルドだとわかるだろう。

  • 2014年9月奥多摩・川苔山にて登山中の34歳男性がツキノワグマと遭遇、睨み合いの緊張に耐えられなくなった男性が熊を登山用ステッキで全力殴打したところ熊に反撃され重症を追った事件がおきた。幸いツキノワグマは男性の命を奪うことなく「気づいたらいなくなっていた」そうだ。それでも男性の傷は深く、入退院を繰り返し2度も手術が必要だった。治った後も目に(重くは無いものの)後遺症が残った。ちなみに当該のツキノワグマは被害男性と同じような背丈で単独、睨み合いから始まったそうなので、体長130cm程度の雄グマと推測される。

  • 2016年10月には青梅市の飲食店にツキノワグマが入り込み冷蔵庫などが食い荒らされる事件が起こっている。このツキノワグマは体長140cm体重120kgのオスとかなりの大熊。付近には体長130cm体重80kgとこれまた中々のサイズの雌熊もいた。

  • 1997年に奥多摩町で飼育されていたジンギスカン用の羊7頭がツキノワグマにより食害された例もある。犯人(熊)は63kgのオスと52kgのメスでいずれも12歳ほどとまあまあお年だったらしい。ちなみにこの羊達はそれなりに広い放牧場にいたところを襲われたようでツキノワグマのハンティング能力を垣間見ることができる事例である。*20

  • 1988年やはり奥多摩町で鶏7羽、ウサギ2羽が77kgのオスのツキノワグマに捕食された。

  • やはり奥多摩町にて学術調査で120kg以上と推定される大型のツキノワグマが捕獲された事がある。ブルーシートとの比較では体長160cm程度立った時の身長は2m程度になるだろう。小物が多く引っかかる(あからさまに怪しい餌トラップに引っかかるのはガリガリか未成熟)学術調査でこのような大熊が捕獲されることは東京の自然の豊かさの現れだろう。

  • 2023年10月に町田市でツキノワグマの目撃情報があり、その近くにあるネイチャーファクトリー東京町田が一時期休業した。目撃情報のあった場所は高尾山(八王子市)と旧城山町(現相模原市緑区)の境に近い山中であり、町田市の意外性を垣間見た人が多かったとみられる。

登山中熊に襲われ重症、家畜が熊に食われる、これらは秋田や長野の田舎(だけ)の話ではなく紛れもなく日本の首都東京でおきたことである。

◇神奈川県

都会のイメージが強いが丹沢などではツキノワグマが生息している。
長野県に並んで放獣例が多い地域である。

  • 2010年11月伊勢原市子安地区にてツキノワグマ捕獲用檻に大型のオスグマがかかる。丹沢山中の鳥獣保護区に放される。体長131cm体重110kgである。この110kgというのは100kgの体重計で測りきれなかったということである。YouTubeにニュース動画があるが周囲の人間との比較では体長150cm程度で二本足で立つと190cm程度になると見られる。

  • メスグマの方は伊勢原市子安地区で上記オスグマ同様丹沢山鳥獣保護区に放された体長146cm体重76kgのメスがいる。令和、10/27のことである。

  • 神奈川県というか丹沢のツキノワグマは小柄で知られるが下記個体などを見ていると、雌雄ともに体長150cm体重は冬眠前でオス130kg、メスでも95kgくらいはいるのではと思われる。

  • 2024年8月伊勢原市にて体長125cm体重70kgのツキノワグマが養鶏場を襲い鶏を捕食した。

捕獲日 体長 体重 備考
2014年11月 134cm 110kg 放獣。コードネーム「ファンキー」。ファンキーは20歳とのことで、野生のツキノワグマとしては非常に高齢である。人里に出てきたのも例えばアルツハイマーなどの疾病が疑われる。
2016年12月 100㎏超 放獣
2020年11月 137㎝ 109㎏ 有害駆除
2020年11月 128㎝ 111㎏ 有害駆除
2020年12月 130㎝ 110㎏ 放獣
2019年10月 120㎝ 74㎏ 有害駆除。メスグマ

◇新潟県

  • 三条市で1日のうちに体長150cm体重150kgのツキノワグマが2頭捕獲される。

  • 2015年春村上市の国道で自動車並みの速さで走るツキノワグマの姿が確認される。田舎の大きな道であることから時速60km以上だろうか。

  • 2019年10月には工場などにツキノワグマが出没し複数人が重症を追った。有害駆除されたツキノワグマの中には体長150cm程度の大型が2個体いた。

  • 令和のツキノワグマによる人的被害のデータを公表している。熊出没地域の平均年齢の高さからかほとんどの被害者は40代以上だが20代30代の男性にも顔や頭を噛みつかれるなどエグい被害が出ている。

  • 2025年5月には筋肉質な体系で有名な寺の住職45歳が体長160cm程度*21のツキノワグマに襲われ、転んで脱臼と靭帯断裂など肩にケガをした。連れていたビークル犬が吠えたため熊は撤退した。

  • 上記のマッチョ住職は「筋肉ムキムキでも熊には敵わない(意訳)」という証言をしていたが、実際鋼の筋肉は熊爪でスパスパ切れてしまう。それだけではなく筋肉質な体格だと脂肪が薄いため筋肉が引き裂かれる度合いが高くなってしまう。更に鍛える過程で腱や関節はかなり弱っている。*22このように筋肉質な分むしろ脆弱になる部分さえある。
捕獲日 体長 体重 備考
2010年10月 145cm 110kg 小学校近くの罠にかかる。このツキノワグマは周囲の人間との比較から立つと身長190cm程度だろうか。
2010年10月 132㎝ 120㎏ 有害駆除
2020年代9月 110㎏ 有害駆除

◇富山県

《熊事件》

  • 2010年10月に、魚津駅や魚津市役所などの付近の市街地に体長130cm体重130kgにもなる大型のツキノワグマが出没し、民家に立て籠もりを行った。怪我人などはいなかった。なお、このツキノワグマは5歳ほどの若いオスグマで駆除前はブルブルと震えたそうだ。未熟な個体がエサの匂いにつられて市街地に出てきたのだろうか。

  • 1953年10月やはり魚津市にて、上記の通り三毛別超えの熊害事件が起きる。

  • 2005年3月富山市にある富山ファミリーパークにて飼育されていた国産ツキノワグマに襲われ飼育員の50代男性が死亡する事故が発生している。犯人熊は22歳、体長130cm体重90kgのオスグマ。
  • ↑22歳と超高齢で飼育下にしては痩せていることからアルツハイマーなどの疾病が疑われる。

《熊の大きさ》

公的に発表されるツキノワグマの大きさは体長1mなどやや大雑なものや、学術調査では体重100kg以上は測定不能とされるなどやや曖昧な情報が多い中、富山県は行政が(山形ほど詳細ではないが)有害駆除の資料を公開している。それによると成熊は概ね

  • 平均体長130cm オス平均体重90kg メス平均体重70kg

ほどになる。立った時の身長だと170cmほどが平均だろうか。最大だと180kgの個体が記録されている。

◇石川県

金沢以南には*23ツキノワグマが生息しており小松、能美、加賀、白山など県南地域では出没が多いことで知られる。

  • 2020年10月には加賀市の商業施設にオスのツキノワグマが立て篭もり事件を起こした。この時にも秋田同様に機動隊が出動したが突入はできなかった。ツキノワグマの戦闘力の高さがうかがえる。機動隊員は一人ひとりが剣道など格闘技の有段者である。

  • 2024年11月には小松駅近くの住宅地にメスのツキノワグマが立て篭もりを起こした。体長1m体重40kgと異様に小さい*24。それでも警察や機動隊などが取り押さえるなどはできず猟友会が駆除に当たった。体長はともかく体重40kgはすでにエゾオオカミの平均サイズを超えているなどメジャー級猛獣のサイズである。

  • 2023年10月小松大谷高校の近くの住宅地にツキノワグマが出没し部活動中止。体長1mと報道される。*25翌年の2024年には小松商業高校の自転車小屋に体長120cm体重50kgの小型個体が出没し、猟友会が駆除した。

  • 上述の事件以外にも2024年には小松駅近くの市街地で熊の出没が複数回報告されている。
  • ↑中には小松商業高校の駐輪場に出没したケースもある。クマは体長120cm体重50kgの小物。

  • トレーニング中の自衛官が重症を負った事件がある。日々の訓練の他に10kmランニングの自主トレをするのが日課であり日課のランニングの最中に襲われた。
捕獲日 体長 体重 備考
2020年10月 130cm 100kg超 上記の商業施設立てこもりのオスグマ。人間や車などとの比較からは体長150cm程度。
140㎝ 98㎏ 学術調査

《人食い熊》

  • 戦後すぐの1949年には人食い事件も発生している。山中町で作業中の女性(36)が食害され、助けようとした長女(18)が頭の皮を剥がされた。若い女性2人が大きな被害を受けた悲惨な事例である。昔はこのように若い被害者が多かった。

◇福井県

  • 北陸新幹線の延長工事中に作業員の男性(49)が足を噛み折られ重症。社員の男性(56)が首に怪我をした。体長1m体重75kgの熊による犯行。

《人食い熊》

  • 1989年4月永平寺で高齢女性(78)が腹部、おそらくは内蔵を食害される。
このようなツキノワグマによる人食い事件は婉曲した表現で報じられるかあるいは報じられない場合もある。

◇長野県

《熊事件》

  • 2012年には長野駅在来線ホームに熊が出没した事がある。しかも長野駅に出没したツキノワグマは体長130cm体重90kgと中々のサイズである。

  • 小諸市では以前より罠にかかった鹿を捕食する行動が知られていたが、2020年代に入り大きく増えている。

  • 避暑地として有名な軽井沢町ではあるがツキノワグマが多く出没する地域でもありNPOの専属熊チームもいる。
  • ↑ホテルの残飯や中には店内にある業務用ケーキを盗み出す熊もいる。盗賊熊の中には170kgの巨大なツキノワグマ「ジゴロー」もいた
  • ↑2019年には登山中の36歳男性が蹴りなどで抵抗するも骨折や耳を切り裂かれるなど重症を負う被害も出ている。犯人(熊)は大型犬サイズの母熊だった。

  • こちらも観光地で有名な麻績村で身長170㎝体重150㎏超の大型のツキノワグマが出没し民家の栗を食い荒らす被害も2010年11月に発生している。

  • 2024年6月信濃町で50代男性がツキノワグマに背中などを引っかかれ死亡する事故が起きている。

  • 2025年6月大町市で現場作業員の46歳男性がツキノワグマに顔などを攻撃され死亡。

  • 2023年夏には上高地・河童橋近くの遊歩道で39歳の観光に来ていた韓国人男性に重症被害が出ている。*26

捕獲日 体長 体重 備考
2005年12月 180㎝ 150㎏ 狩猟
2006年11月 140㎝ 120㎏ 有害駆除
2014年12月 160cm 150kg 安曇野市のわさび農園に乱入した。
2017年12月 160㎝ 150㎏ 列車と衝突。
2019年7月 100kg超 有害駆除。夏場でガリガリ。体長は目測160㎝。
猟期 140㎏

《人食い事件について》

  • 2006年には、山菜採りの52才男性がツキノワグマにより捕食される事件も起きている。
  • ↑被害男性は恐らく熊よけでラジオを携帯していた事から十和利山熊事件のように熊よけが逆効果となったケースと考えられる。

ここまでならよくあることただの人食い事件だが今回の犯人熊は子連れの母熊であるということだ。十和利山、乗鞍岳、戸沢村、そして知る人ぞ知る八甲田山。大きな人的被害を出すツキノワグマは一般にオスの成熊である。
子連れの母熊なら大型犬サイズの可能性も高い(それでも50kg弱くらいの体重はあるだろうが)。
被害男性は52歳と働き盛りで本業の余暇に山菜採りのような肉体労働ができるくらいにはフィジカルがある。
この事例は未成熟な熊や小柄な熊でも大きな人的被害を出す可能性を示唆している。

ヒョウ、オオカミ、ハイエナなどのメジャー級猛獣のほとんどが体長120cm体重30kg程度になれば概ね中堅サイズであるため亜成獣以上のツキノワグマであれば人間の捕食は難しくないと考えられる。

◇山梨県

  • 2024年春、登山中の30歳男性が頭と脇腹から血を流して下山。出血の割に幸い軽症だった。大型犬サイズの親子熊によるものだったという。

  • 1951年秋、朝神村の民家に熊侵入。男女10人が重軽傷。これは乗鞍岳に匹敵する大規模なもので被害者数なら三毛別ヒグマ事件に並ぶものである。

  • 北杜市では養鶏場の鶏の被害が複数回出ており、中には体長130cm体重100kgのオスグマもいた。

  • 養魚場が複数のツキノワグマに襲われ1月に200匹の被害が出る事件も最近起きている。

  • 山梨県ツキノワグマレスキューというNPOによりツキノワグマが放獣される事例が複数あり、中には成人男性の上腕ほどの枝をへし折り、地面に大穴を開けたオスグマや体長150cm(体重は63kgしかないが)のメスグマの事例がある。

《人食い熊》

  • 2000年5月には山菜採りの成人男性がツキノワグマに捕食される被害が発生した。この事件はツキノワグマの人食いに対し初めて科学的な調査が行われた事例である。犯人熊の胃の内容量15%が被害者の遺体で、被害者には土饅頭が作られていた。犯人熊は被害男性の背後から気づかれぬよう接近して攻撃を加えたと見られ、最初から人間を獲物として狙った事例とされる。

  • この事件は人食いの事実を伏せて報じられた可能性がある。当該記事がこの人食い事件を指しているのならば、被害男性は65歳、場所は市川大門町、犯人熊は120kg級でオスの大熊、8時間に渡り「獲物」を守っていた…などの事がわかる。

  • これは被害と言えるか微妙だが富士の樹海で自害した人の遺体がツキノワグマ(だけではなくキツネ、タヌキなどもだろうが)のエサになっていることを示唆する証拠もある。

◇岐阜県

上記の通り乗鞍岳熊襲撃事件が発生している。

  • 2017年4月高山市で体長120cm体重120kgの高齢のツキノワグマが40歳男性に重症を負わせるなど3人に重軽傷被害を出す。

◇静岡県

  • 富士宮市では2020年代、体長180cm程のツキノワグマが養鶏場に出没しウコッケイ30羽以上を食害する事件が起こっている。

  • 富士地域では行政の計測で体長162cm体重92kgの個体が2019年8月に保護されている。この個体は体重こそ100kgも無いが(あばら骨がはっきりわかるほどガリガリ)、体長が非常に大きく、立つと2mはある大型である。

◇愛知県

都会のイメージも強いが岐阜県や長野県に隣接する地域ではツキノワグマが生息している。
  • 2012年5月長野県に隣接する地域で出没していたツキノワグマが捕獲され、放獣された。15歳ほどのオスで体長145cm体重110kg体高73.5cm。周囲の人間と比較すると身長は190cm程度。

  • 1953年10月拳母市(現豊田市)にて幼児4人、大人3人の計7人が重軽傷を追う。

◇滋賀県

滋賀県は秋田など東北に比べると地味だがツキノワグマが生息していて、貴重な映像も撮影されている。

2023年11月YouTubeのニュースで野生のツキノワグマがカモシカを追跡し、捕食する映像が上記のように、公開された。
この映像はツキノワグマの生態を明らかにするという意味でも重要だが、もう1つ重要な点がある。この、熊がカモシカを走って追いかけて捕食するという現象は実は…

北海道では見られない。

もちろん北海道にカモシカが生息していないというのももちろんだが、北海道のヒグマはエゾシカを走って追いかけない。というよりエゾシカが本気で走り出したらとても追いつけない。
ではどうやってヒグマはエゾシカを捕食しているのか?
エゾシカに限らず鹿の新生児は外敵に襲われると硬直し動かなくなるという習性がある。この習性を利用すれば狩りに秀でていない動物でも鹿を捕食できる。
実際、ツキノワグマにおいても特にオスグマがニホンジカの新生児を積極的に捕食している。

このように、関わっている「種族」と「狩りの方法」の2つの面から北海道では見られない本土固有の生態映像として大変貴重なものである。

  • 2014年4月高島トレイルにて登山中の50代男性(消防士)が体長1mほどの亜成獣母熊に襲われ重傷を負った。ドクターヘリで救出された。右腕の筋肉が断裂したため若干動きが悪くなった。

◇兵庫県

神戸市を擁し、都会のイメージもある県だが山地も多くツキノワグマが生息している。

  • 近年ツキノワグマが罠にかかった鹿を襲う事例が多発していてる。
  • ↑中には重量80kgほどの箱罠を引きづって移動し、鉄格子を破壊して中の鹿を取り出しているものもある。

  • 2021年11月、市街地にて131kgのオスのツキノワグマが民家に立てこもる事例もある。
  • ↑このツキノワグマは立てこもる前に列車と接触事故を起こしたとされるが内出血はあったものの骨折や外傷は無かった。

◇奈良県

東北、北陸、甲信越地方に比べると地味ではあるが熊出没注意の地域である。
  • 2023年12月に登山中の40代男性の死亡事故が起こっている。

  • 学術調査で捕獲されたオス成熊はいずれも70kgを超えている他、95kgのオスグマも確認されている。

  • 2025年5月以降には、奈良市や天理市といずれも市の郊外ではあるものの、街中に出没報告が相次いでいる。

◇島根県

熊との共存が進んでいる地域である。

《2014年5月〜6月益田市匹見町における「その場放獣」事例。》

「その場放獣」とは文字通り捕まえた「その場」で放獣することから奥山放獣とは違い地域住民の理解がマストとなる。

当該事例はツキノワグマが牛舎にやってきて牛の餌を食べてしまうというもので、犯人熊は牛舎で寝ているケースまであった。住民の方々は「毎年のこと」と基本的には許容していたが、このような事例では流石に大きな人的被害が予想されるため行政の熊チームが出動した。
ちなみに犯人熊は猪用の檻を大破させて脱走していた
まずは80kgと標準サイズのオスグマが捕獲されたが体格の小ささから犯人熊ではないと判断された。この熊が1匹目のその場放獣個体である。
次に捕まったのは50kgの亜成獣オスグマで100kgの捕獲用檻を何回転もさせるほど元気のいい熊だった。自重と合わせると150kg級になる…。2匹目のその場放獣個体である。

最後の最後で犯人熊が捕まった。体重の底である6月にも関わらず97kgの「大将的な巨漢」熊だった
檻との比較から体長は180㎝ほど、立つと2m以上になるだろう。
3匹目のその場放獣個体である。

地域住民の方々としても「理解」と「被害」の狭間で悩んだ末の決断だというのは言うまでもない。
実際、島根県はツキノワグマの人的被害が比較的多い地域であり、後遺症のあるレベルの被害も珍しくないため、本件は「熊との共存」に対して希望の見える事例である。

ちなみにツキノワグマでも牛のエサだけでなく牛本体を食べてしまう場合があり、こういったケースではさすがに駆除される。

《イノシシを捕食した例》

2020年11月浜田市でイノシシのくくり罠を確認しにいった60代男性(猟友会員)がイノシシに覆いかぶさるツキノワグマを目撃した。
熊は男性にも襲いかかったが、リュックのおかげで軽症だった。
覆いかぶさる行為は獲物を横取りされないように守ろうとしている。
体長1mの子熊だった。

他に、島根県では体長60cm体重20kgの子熊が鶏を食害した例もある。

《余談》

上記の大将熊以外にも体長160cm(体重はわずか74kgだが)のオスグマや夏場で75kgのメスグマが確認されている。

◇広島県

  • 2025年6月には広島市で体長2mのツキノワグマが出没した。*27
大熊も比較的多く見られガリガリや小物しか引っかからないとされる学術調査(米田一彦氏)にて以下のような大型個体が記録されている。
  • 体長152cm体高56cm体重135kg♂ 立ったときの身長は180cm程度と予測される
  • 体長139cm体高55cm体重98kg♀ 身長170cm
オスグマ135kgはさほど珍しい数値ではないが、夏場のメスのツキノワグマで98kgは驚異的*28と言える。これは有名なピザで餌付けされたメスヒグマ(体長140cm体重97kg)に匹敵するサイズである。

◇山口県

九州のツキノワグマが絶滅してしまった今、山口県は日本の熊生息域の南限である。
熊と言えば、より北の種類ほど体格が大きくなるベルグマンの法則の好例とされるが、国産のツキノワグマに限って言えばこの法則はほとんど当てはまらない。
それどころか九州のツキノワグマの方が大きいだなんて話もある。
なので、山口県のツキノワグマは別に秋田などに比べて小さいという訳では無い。

  • 2024年周南市にて40代男性が大型犬サイズのツキノワグマに襲われ60針以上縫う大怪我を追う。

  • 2024年岩国市にてイノシシ猟中の50代男性がツキノワグマに襲われ顔と左腕に重傷。

  • 2024年9月には下関市の空き家に蜂を狙って体長120cm体重100kg超のツキノワグマが出没している。このツキノワグマは立つと身長2m程度らしいので実際は体長150cm程度はあると思われる。

のように熊事件や大熊の記録がある。

◇四国のツキノワグマ

徳島県のシンボルとも言える剣山には絶滅が時間の問題とされる四国のツキノワグマが生息している。

  • ツキノワグマが生息する島としては世界最小である

  • 生息頭数はわずか数十頭である。

  • 生態調査も行われており、本土のツキノワグマに比べて体格の良い個体が見られ冬眠明けのメスグマでも力士を思わせる風貌の個体がいる。生息頭数が少ないため、他のツキノワグマと熊餌で競合しないためだろうか。

  • 学術調査で捕獲されたオスグマはいずれも夏場で70kgを超えている。夏場で93kgのオスグマや100kg級の個体も確認されている。
  • ↑学術調査の特性や夏場であることを加味すると冬眠前には200kg級の個体がいることは確実視される。

  • 愛媛県の最後のツキノワグマは1972年5月の体長150㎝体重85㎏のオスである。

◇九州のツキノワグマ

すでに絶滅してしまったツキノワグマの個体群。
九州産のツキノワグマは冬眠前のメタボとはいえ130㎏級の雌熊が確認されるなどベルグマンの法則に反して大型の個体が多いことやそもそもツキノワグマは九州から北上してきたことなどから大陸産大型亜種とのハイブリッドではないかといわれている。
大正時代に日本記録レベルの220kg級が討ち取られている。

《最後のツキノワグマ》

九州の個体は1987年に大分県で捕獲されたのを最後に確認できず、2012年に絶滅が宣言されている。
なおその個体はDNA鑑定の結果、ミトコンドリアDNAが福井県嶺北地方から岐阜県西部にかけて分布しているものと同一という結果が出ており琵琶湖以東から九州へ移入された個体、もしくはその子孫と考えられている。
確実な最後のツキノワグマは1941年12月宮崎県笠松山における133kgのオスグマである。やはりデカい。

《絶滅までの経緯》

時代ごとにツキノワグマの分布域を整理すると以下のようになる。
  • 縄文時代…九州全土に分布していた。北九州市からも分布の証拠が出土しているため、福岡市にも分布していたと考えられる。
  • 江戸時代…宮崎県、熊本県、大分県の一部にまで分布域が縮小。このときはまだ熊本県に熊がいた
  • 明治時代以降…祖母山系にほとんど分布が限定される。
少なくとも明治時代には九州ではツキノワグマは絶滅危惧種となっていたようだ。

九州のツキノワグマが早くから絶滅危惧であったことは熊塚という文化に見て取れる。これは熊一匹を捕殺する度にその遺骨の上に塚を建て慰霊を行う文化である。
鹿や猪は千匹事であったことを考えると相当に貴重な生物であったことが伺われる。
他に、乱獲を防ぐためか熊の祟なども伝承されていたようである。

上記のように縄文時代から減少が進んでいたことや保護に近い活動が古くからされていたため、絶滅の原因は人間の乱獲だけでは説明がつかない。九州では温暖な気候によって林業が発展し、クマの餌となるドングリの生る広葉樹林が伐採されてスギやヒノキなどの植林が進み、森の分断も進んだことで越冬が難しくなったためと考えられている。

また、九州は面積が小さく、大型食肉目であるツキノワグマの分布には適さないことも個体数減少に拍車をかけたとされる。

上記の事情は四国のツキノワグマにも全て当てはまる。九州のツキノワグマが祖母山系に追い詰められたように四国のツキノワグマも剣山系に追い詰められ、生息数はわずか20匹程度である。

《「熊」本の由来》

よりによって熊の名を冠する熊本県が九州にあることについては、九万の谷から水が流れこむ「九万川」と呼ばれた「球磨川」があることから
元々は特産の蓮根の良くとれる湿地を表す「隈」を用いた「隈本」と書いたが、隈という字は「阜」(おか)と「畏れる」が複合したものなので
大名の居城としては相応しくないとして強い「熊」に加藤清正が変えたとされる。
ただし、上記のようにこの時代はギリギリ熊本にツキノワグマは生息していた。

◇ロシアのツキノワグマ

ロシアのツキノワグマは国産のツキノワグマよりはるかに大きくなる。
10数個体の簡素な調査で体長190cm体重190kgの雄熊が含まれるなど日本なら伝説級の個体がゴロゴロいる
日本で同様の調査を行えば体長140㎝体重100㎏程の雄熊がいれば御の字だろう。
ロシアでは、
  • 体長150〜2m 身長180〜2.3m程度
  • オス 平均130~160㎏ 大型200~250㎏
  • メス 平均120~140㎏ 大型170㎏
という学術調査がある
学術調査は一般にガリガリや小物しかかからないため実際より過少に推定される(学術調査だと北海道のヒグマでも180kgで「オスの大熊」と評された事例がある。)がこれだけのサイズである。
日本での学術調査ではオスが70~80㎏、メス50~60㎏が平均的、オスの大熊でも100〜130㎏程度であるから倍ほどの体格差があることがわかる。

日本においては、ツキノワグマの方が人的被害が多く、ヒグマの方が死亡率が高いという傾向が古くから知られているが、ロシアでも全く同様の傾向が見られる。

日露共同調査においてはオス同士のツキノワグマとヒグマの間に互いに避けあう行動が観察された。

◇台湾のツキノワグマ

国産のツキノワグマは*29タイワンツキノワグマに次いで小兵の部類と言われている。
よってツキノワグマの中では最小の部類になる。
  • 体長 120〜180cm 身長は170〜200cm程度
  • 体重 60〜200kg

台湾では最大最強にして唯一の大型肉食獣であるためか軍隊の士気バッチに使われるなど国の象徴的野生動物である。実際に国獣に指定されている。
高雄の「雄」と「熊」が同音のため、2015年5月にマスコットキャラ「高熊」のデザインコンテストが行われ、優勝デザインは同年7月に「高雄熊」として着ぐるみ化され高雄観光大使の役職を果たしている。元デザインになかった瞳が付け足されたり月の輪の中の花柄が無くなったりした結果2011年から活動中の某熊本県のマスコットと似てしまったが、くまモンサイドから兄弟呼びされているらしいので大丈夫なようだ
日本同様カモシカの唯一の捕食者であり、台湾ウンピョウが健在だった時代は食べ残しを狙っていた。
2024年11月体重125㎏のオスのタイワンツキノワグマが養鶏場に乱入し鶏400羽が被害にあった。台湾では貴重動物のためか山に返された。
遺伝的には大陸産のツキノワグマと共通である。

🌙フィクションのツキノワグマ

真面目な話が続いたがアニヲタにとって重要なのはむしろこちらだろう。フィクションの猛獣にはありがちだが噛ませにされることが多い。
また、ツキノワグマはせいぜいチョイ役程度の役しか貰えないケースが多く、「シャトゥーン ヒグマの森」や「ヒグマグマ」のように主役を張れるケースはまずない。
  • グラップラー刃牙…範馬勇次郎の友人の安藤さんに素手で仕留められ生で食われていた。今作では噛ませの噛ませ的扱いである。シロクマやヒグマも噛ませだったけどね
  • 鬼滅の刃…奥多摩に身長2.7mの巨大な人食いツキノワグマが現れたが、ヒノカミ神楽の噛ませになる。ただし、ニュースや行政の資料ではマレーグマの子熊酷いときにはレッサーパンダ並みの大きさにされるツキノワグマにしては良い扱いと言える。ヒノカミ神楽=日の呼吸も打倒無惨の切り札であるためこの意味でもどちらかと言えば扱いは中ボスである。鬼でない一介の野生動物としては破格の待遇だろう
  • 鬼滅の刃外伝…冨岡さんとしのぶちゃんがマタギの里で活躍する過去編にも人食い熊として登場。ただし、今作で人食いだったのはゲストヒロインの鬼化した父親だったため出演したと言えるかはビミョーと言える。
  • まよチキ…主人公の妹が所属する手芸部の山ごもりで登場。作中では指折りの戦闘力を持つ妹が「熊さんに挑むのは早かった」と発言していることからどうやら噛ませでは無かった模様。
  • 「マタギ」矢口高雄…こちらも数少ないツキノワグマが噛ませじゃない作品。主人公はマタギの青年でツキノワグマが準主人公的扱いだが他の動物も出てくる。ニホンオオカミもいる。
  • 山賊ダイアリー…岡山県における狩猟漫画。モノローグなどでツキノワグマが出演している。
  • 生徒会にも穴はある…生徒会の面々が山に行った時にちらりと登場した。
  • くまみこ…出そうで出なかった作品その1。青森が舞台なのに何故かヒグマ。主人公がアシㇼパさんアイヌモチーフだししょうがないね。
  • ゆるキャン△…出そうで出なかった作品その2。人食い事件まで起きてる山梨県が舞台でキャンプ漫画なのに出演していない。

🌙まとめ

ここまで読んだ方の中には「これだけの危険生物なら、本格的に駆逐しないとマズいのでは?」と考える方もいるだろう。
熊害が深刻な地域を考えると殊更尤もな意見ではあるが、ツキノワグマの屈強さを考えると共存が難しいと同時に、積極的に排除しようにも極めて難しいと言える
もし、日本国内で有志の警察官や自衛隊員、ハンターを募って大規模駆除を決行した場合、その内少なくない人数がツキノワグマの反撃に遭い落命したり、重篤な怪我や後遺症を受けてしまう危険が高い。
念を押すようだが、日頃体を鍛えている彼らでもツキノワグマの襲撃に対処できなかった事例は数多いのだから。クマの習性を考えると、闇雲に人員が押し寄せると却って凶暴化させてしまう可能性もある。

また、数少ない大型の捕食者である彼らが、生態系の維持に貢献しているのも事実である。いくら猛獣が憎かろうとも根絶やしにして良いかはまた別の話なのだ。

また熊にしては小さいということで過度に甘く見る意見もあり、こういった意見も危険だが一方で恐れすぎると観光のキャンセルなどに片鱗が出ているが生活に必要以上の支障が出る恐れがある。

熊に限った話ではなく野生動物問題には正解が無い。

結局のところ、ツキノワグマに限らず野生の獣に対しては「過度に怯えても仕方ないが侮っては痛い目に遭う」という一言に尽きるのである。


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最終更新:2025年08月11日 01:19

*1 より小さい熊種にマレーグマと台湾ツキノワグマの2種類がいる。ゴビヒグマやシリアヒグマもオスの大熊で150~180㎏とあまり変わらない。

*2 寒い地域ほど大型の個体が増えやすい、ベルクマンの法則によるものという説が有力。

*3 コディアックヒグマより大きくなる

*4 他の猛獣との比較だとジャガーや小型の虎くらいのサイズである。

*5 研究者から、「藪が少ない地域だったらもっとスピードは出るだろう」と太鼓判を押される程である。

*6 行方不明者を含めると12人とマイソールに匹敵する

*7 三毛別の2倍近い規模である…

*8 3割程が秋田ではあるが…

*9 両者1.2万匹とする推計もある

*10 他に、長野県や福島県などが「大御所」と言える。

*11 これはとっさに腕でガードした上での被害である

*12 動物園の個体だと白内障や咀嚼困難、歩行困難などの症状が出る年齢である。もっと若い熊なら40~50㎏ほどでも本件並みの破壊力があるだろう。

*13 かなりの出血をしていた

*14 この小柄な母熊からはたっぷり猶予時間を与えてから飛びかかる、木の槍で鼻を真っ二つにされているにも関わらず甘噛で済ますなど人間への配慮が伺われる。警告の意味合いが強いため、無駄に相手を怒らせたく無いのだろうか。

*15 例えばオオコクワガタ

*16 丁度マレーグマの子熊と大型のシロクマくらいの体格差である

*17 富山県でも魚津市で5歳と未成熟ながら130kgの巨大なオスグマが捕獲されたことがある。

*18 100kg〜150kg級のツキノワグマの記録は九州含め各地にあるが200kg級は東北と長野以外だと群馬にしかない

*19 削りきったと思われる

*20 襲われた羊はサフォーク種という大型の羊で成羊は体重100kgほどになる

*21 これが身長160cmという意味なら体長120cm程度体重50kg級の亜成獣熊だが、体長160cmなら身長2m体重も130kg程の大熊になる。

*22 実際上記住職は転んだだけで脱臼や靭帯断裂に陥っている。

*23 2023年以降は生息していないとされていた奥能登でもツキノワグマが確認されている

*24 ニュースなどで報道されるツキノワグマの体格は体長1mなどマレーグマでも小熊のサイズが多いためやや違和感が残る。

*25 軽トラの車幅との比較からは体長150cm程度と見られる。

*26 観光客にこのような被害が出るのは観光にはマイナスだろう…

*27 体長2mのツキノワグマは他に岩手や長野で事例がある。

*28 東北では春夏で100㎏くらいの例はたまにある。

*29 大きな差は無いが