エレベーター

登録日:2025/07/24 Thu 12:58:04
更新日:2025/07/25 Fri 22:16:33NEW!
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エレベーターとは、人や荷物を載せて高さ方向の移動を行う機械である。日本語では「昇降機」と呼ばれる。
JIS規格では「エレベータ」と表記される。



概要

エレベーターは、昇降路(シャフト)に沿って、人や荷物が乗る「かご」が上下することで移動ができる原理を持つ機械である。

乗客が乗り場にある上下方向どちらかのボタンを押してかごを呼び、かごに入ったら行きたい階をボタンを押して選び、その階に移動する。

構造

現代では電力を用いて駆動させる方式が主流であり、駆動方式はロープ式と、油圧式の2種類に大分できる。

ロープ式

モーターを使用し、ロープを巻いてエレベーターを動かす。トラクション式と巻胴式に分けられる。

  • トラクション式
エレベーター上部に巻き上げ機を設置し、ロープの両端にかごと釣合重りを装備した方式。構成がエレベーターとしては簡単な方で、建物の高さを問わず採用されることが多い。かつては昇降路の上に機械室が必要であったが、技術の進歩により、今日では巻き上げ機を昇降路内に設置した機械室を省略したタイプも存在する。

  • リニアモーター式
トラクション式の亜種。釣合重りにリニアモーターを搭載し、巻き上げ機を使わずに動かす。リニアモーターをかご自体に採用し、ロープ駆動をやめたうえで、エレベーターの昇降路を自由に設計できる方式が研究されている。

  • 巻胴式
釣合重りを装備しないロープ式エレベーター。巻き上げ機にロープを巻いて動かす。釣合重りがないため、構造こそ簡単であるが、動力が大きくなってしまい、高層建築物には向かない。

油圧式

ポンプを使用し、油圧によってシリンダーを制御して、かごを上下させる方式。もちろんエレベーターの高さに合わせて、必要とされるシリンダーの長さも長くなるため、高層建築には向かない。
大きい出力をとれるため、荷物用のエレベーターで採用されることがある。動力を下部に置き、機械室を設置しなくても済むという点で、乗用でも90年代後期までは使われるケースが多かったが、モーターの技術発展に伴い、上述のトラクション式で機械室を省略できるようになった2000年代以降の採用例は少ない。

  • 直接式
油圧シリンダーの可動する部分である、プランジャーとかごが直結した方式。原理的には水鉄砲や注射器のそれに近いものであり、プランジャーが押し出されれば押し出されるほど上に行く。

  • 間接式
上述のロープ式と合体したような方式。プランジャーの動きをロープに伝え、かごを昇降させる。

  • パンタグラフ式
アームと油圧ジャッキによって、直接かごの昇降を行う。自動車のジャッキ上げの車を、そのままエレベーターのかごに置き換えたようなものである。

  • 水圧式
油圧式の亜種、というより実はこちらのほうが先に開発されている。しかし、2025年時点では油圧式のほうが幅広く実用化されている。圧力を制御する液体が、油ではなく水を使っているもの。油圧式に比べて、設置時のコンパクトさや、環境負荷の小ささが特徴。ほかにも、空気圧を使用したタイプのエレベーターも採用されている。

その他機構

  • パーテルノステル
観覧車のように複数のかごが止まることなく循環し続ける。
各かごにドアは無く、止まることもないので空いたかごが来たら飛び乗り、降りたい階で飛び降りる。最上階と最下層に来ると反対側に移り上下転換する。特に意味は無いがその区間を乗り続けることも可能。
当然タイミングを見誤ると挟まれ危険なので新設されることは無いがヨーロッパの一部で今も使用されている。

歴史


  • 古代ギリシャ時代
アルキメデスがロープと滑車を使用し、エレベーターを開発する。当時は電気なんて実用されているはずもなく、動力源は人力で引っ張っていた。

  • 中世ヨーロッパ
巻き上げ機が開発される。

  • 19世紀初期
水圧式エレベーターの発明、1835年に蒸気機関動力のエレベーターが発明される。なお、この当時は現在のような安全装置がなく、もっぱら荷物用の利用であった。

  • 1842年
水戸の偕楽園に飲食物運搬用の人力エレベーターが採用される。

  • 1853年
米国のエリシャ・オーチスがかご落下防止装置を開発。また、この時期よりエレベーターの名称がエレベーターと決まった。

  • 1880年
ドイツのジーメンスが電動式エレベーターを開発。

  • 1890年11月10日
浅草の凌雲閣にて、日本で初めて電動式エレベーターが採用される。なお、このエレベーターはロープで2つのかごが接続され、1階と8階の間を直行するという、ケーブルカーに近い運行方式であった。しかし、故障が多く、安全性にも問題があり、設置後半年で運行停止になってしまった。なお、このエレベーターの開発者の一人は、東芝創業者の藤岡市助。なお、現在ではこの11月10日がエレベーターの日として制定されている。

  • 1913年
東松孝時が通天閣にエレベーターを設置した。その2年後には押しボタン式の全自動エレベーターを国内で初採用。

  • 1993年
横浜ランドマークタワーが開業し、上下ともに時速45km/hで走行するエレベーターが設置された。下り方向では2025年7月現在でも世界最速である。メーカーは三菱。

  • 2016年
中国広州のCTF金融センターにて、時速75km/hで上り方向に走行するエレベーターが設置された。2025年7月時点での上り方向の世界最速記録であり、このエレベーターのメーカーは日立製作所である。

エレベーターガール/エレベーターボーイ

かつてのエレベーターは完全に自動で運転しているわけではなく、運転・案内するスタッフを必要としていた。それがエレベーターガール、エレベーターボーイである。
昭和期には各地のデパートなどで見られたが、技術の進歩によりエレベータの完全自動運転化、群管理化*1、ほかには人件費削減を理由に、平成期にエレベーターガール(ボーイ)の乗車を取りやめるケースが増えていき、2025年現在ではほぼ見かけることがなくなってしまった。
しかし、現在でもエレベーターガール(ボーイ)の存在した名残はエレベーターに残されている。1970年代末期製造の機種以降は自動アナウンス機能が搭載されている場合があるが、そのアナウンスの文面は「上(下)へまいります」など、エレベーターガール(ボーイ)のものを踏襲している。また、ごく一部のエレベーターに限るが、そのエレベーターが何階で呼ばれているか、ほかのエレベーターが何階にいるかをライトの点灯で確認できる機能がついているエレベーターも存在し、これらはかつてエレベーターガール(ボーイ)が乗務していた証拠であったりする。
声優の三石琴乃も学生時代にサンシャイン60のエレベーターガールとして働いていたことがある。その縁か、彼女は三菱で製造されたエレベーターの自動アナウンスの声優であったりする。
コメディアンのビートたけしも、芸能界入りする直前にはフランス座にてエレベーターボーイとして雇われていた。

日本国内の主なエレベーターメーカー

  • 三菱電機

  • 日立ビルシステム

  • 東芝

  • フジテック

  • オーチス

余談

  • 原則として垂直方向への高さ移動のために使用される機械であるが、一部は斜面に沿って斜め方向に移動する斜行エレベーターや、水平方向に移動する水平エレベーターも存在する。極めつけには、水平方向移動のルートと垂直方向のルートが同一のエレベーター内に共存しているものまで存在する。これに関しては、水平方向移動では鉄道のようなレールが使われている。

  • 日本一速いエレベーターは横浜ランドマークタワーであるが、日本一人が多く乗れるエレベーターは、東京の科学技術館にある人荷用エレベーターで、定員は124名。

  • エレベーターを筆頭に、デパートといった商業施設などで流れるような、聞き心地のいい…あえていうと毒にも薬にもならない音楽のことを「エレベーター・ミュージック」と呼ぶ。実際のところエレベーター内でこうした環境音楽を流していたのは1970年代後半から1980年代あたりで、90年代からはすっかり下火となっている。

  • 単位を取れないなどの問題さえなければ自動で上がれるということで、中高一貫校や大学付属高で進学することをエレベーター式と呼ぶことがある。

  • 「エ」で始まり「ター」で終わる昇降装置という事で、特に幼少児は「エスカレーター」とごっちゃになる事がある。なんなら女子高生でも混合するとか。




追記・修正はエレベーターに閉じ込められたことのある人にお願いします。

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最終更新:2025年07月25日 22:16

*1 コンピューターによって複数のエレベーターが効率的に動くように管理されているシステム