未熟DREAMER

登録日:2022/06/27 Mon 05:45:50
更新日:2022/06/28 Tue 00:15:45
所要時間:約 20 分で読めます




力をあわせて夢の海を泳いで行こうよ
今日の海を



TVアニメラブライブ!サンシャイン!!1stシーズン第9話のサブタイトル、及び同話挿入歌として披露されたAqoursの楽曲。
ここでは同話及び前話にて展開されたエピソードを主軸に解説しつつ、それを踏まえて制作された同楽曲についても触れていく。








※以下、この項目はラブライブ!サンシャイン!!第1期中盤までの核心に関わるネタバレを多数含みます。未視聴の方はブラウザバック推奨。※








前回のラブライブ!サンシャイン !!

東京のイベントにて得票数0、ぶっちぎりの最下位という大惨敗を喫してしまい、強い挫折感に苛まれながら沼津へ帰ってきたAqoursの6人。
それでも涙は流すまいと気を保っていたのだが、沼津駅で出迎えに来た母校・浦の星女学院の仲間たちの中に黒澤ダイヤの姿を見た妹・ルビィが遂に耐えきれなくなり彼女に泣きついたのを皮切りに、一同は再び沈痛な面持ちに。

事情を聞いたダイヤは、「やっぱりそういう事になってしまったのですね」と今回の結果をまるで予想していたかのように話す。
しかしそれは決してAqoursが駄目だったのではなく、ラブライブ!全国大会の開催により爆発的な人気を得たスクールアイドルはその数も飽和状態になり、結果として全体のレベルが向上したことが原因であると付け加え、「貴女達が誰にも支持されなかったのも、わたくし達が歌えなかったのも。仕方ないことなのです」と励ました。


……そう、浦の星女学院にはかつて、Aqoursより前にもスクールアイドルが存在していた。
そのメンバーは、ダイヤ、果南、鞠莉。
2年前、ちょうど今と同じように廃校の話が持ち上がった浦の星を救うべく彼女たちは立ち上がったのだった。

3人の活動は至って順調だった。
そんなある日、3人は東京のイベントに招かれる。
東京で知名度を上げれば廃校阻止へ一気に近づくと意気揚々と参加した彼女たちだったが、いざ舞台に立つとその会場の広さ、そして他のグループとのレベルの違いに気圧され、全く歌うことが出来なかったという。

ダイヤが千歌達の活動に反対していたのは、いつかこうなると予期していたから。
「スクールアイドルでは、学校は救えない」
それは、かつて挫折を味わった3人の共通認識だった。……鞠莉ただ1人を除いては。


厳しい現実をその目で、その耳で痛感した千歌。
しかしそれでも、その心は完全には折れていなかった。
「0なんだよ。あれだけみんなで練習して、みんなで歌を作って、衣装も作ってPVも作って。
頑張って頑張って、みんなにいい歌聴いてほしいって。スクールアイドルとして輝きたいって。
……なのに0だったんだよ!?悔しいじゃん!!

梨子の前で、私が持ちかけて集まってくれたのに、と隠していた本音を涙ながらに吐露する。

しかし、5人は何も千歌のためだけにスクールアイドルをやってきたわけではなかった。
それぞれの思いがあって、それぞれが自ら頑張ってきたのだ。
そして、梨子は「みんなで一緒に歩こう」と持ちかける。
千歌が泣き止んだ後には、6人の心にあった曇り空はすっかり晴れていた。


…時は遡って、かつての部室。
「……私、スクールアイドル辞めようと思う」
果南はホワイトボードに歌詞を書いていた手を止め、ふと鞠莉に話す。
どうして、と詰め寄った鞠莉に果南は続けた。
「鞠莉、留学の話が来てるんでしょ?行くべきだよ」
「ダイヤも同じ意見だよ。もう続けても意味がない」

そう言って、果南はペンを放り投げた。
ダイヤも部室の入口に立っているが、目を伏せて黙している。

それでも納得できない、とライブ衣装を持ち出して訴える鞠莉。
しかし2人は答えない。そのまま踵を返し、部室を去ってしまった……

主要人物

当エピソード以外における彼女たちについてはそれぞれの個別項目、あるいはAqours(ラブライブ!)を参照のこと。

帰ってきたフリーダムな3年生兼浦の星理事長。このエピソードにおける実質的な主役その1。
この時点ではAqours未参加。
いついかなる時も決して諦めないチャレンジャー魂の持ち主なのだが、今回ばかりはそれが悪い方面にも出てしまう。

果南とダイヤにスクールアイドルの話を持ちかけられた当初はあまり興味を示していなかったものの、最終的には誰よりも打ち込むように。
しかし東京での挫折を経てグループは解散。そうして失意のまま留学に出た筈だったのだが、第1話にて突然帰国。
そのうえ学生でありながら理事長にも就任しているというイレギュラー中のイレギュラーな立場についている。
それもこれも全てはあの日諦めたスクールアイドルの夢を再び追いかける為であり、それもあって千歌達を学校の誰よりも強く信じ、応援していた。

どうやら留学を無理矢理打ち切って浦の星に帰ってきたらしいことが示唆されており、そのため特に彼女の留学を応援していた果南からは強い怒りを顕にされている。
一方の鞠莉も果南に対しては「逃げた」と捉え、同じように怒りを抱いていたようである。
それでも「私の知っている果南は、どんな失敗をしても笑顔で次に向かって走り出していた。成功するまで諦めなかった」と果南の性格を信じ、今なお果南を勧誘するがすげなく断られる。

この浦の星のため、そしてそれ以上にかつて追いかけた青春を取り戻すために留学を蹴ってまで帰国してきた事実は、その後も度々鞠莉のエピソードに影を落とす事になるのだが、それはまた別のお話。

復学したハグ魔3年生。このエピソードの実質的な主役その2。
この時点ではAqours未(ry
かつて東京で歌えなかった挫折が響いてか、鞠莉に留学へ行くよう勧めて引き留める声も聞かずに部室を去った。

怪我をした父を看病しつつ一時的に家業を代わらなければならなくなったため休学していたのだが、父が復帰したためこのエピソードより本格的に復学する。

先述の通り鞠莉に対してはもはや怒りとも言えるほど強い感情を表に出しており、「戻ってきてほしくなかった」「もう、あなたの顔……見たくないの」とまで言い放つ。
しかし過去含め一連の言動は(事情を知るダイヤ以外の)彼女を知る人物からは一様に「信じられない」と評され、疑問符が付けられている。
また、スクールアイドルを辞めて久しい今なお練習は欠かしていないらしく、毎日朝早くに起きては自己練に励んでいるようだが……?

お馴染み浦の星のポンコツお姉ちゃん3年生で生徒会長。
この時点では(ry
元々千歌達やスクールアイドルに対して厳しい態度を取りつつも実はスクールアイドルが大好きだったり彼女たちが困った時は陰ながら力を貸す、そんな敵のようで味方のような、よくわからない人物だったのだが、前話にてその真意が明らかに。

かつて果南と共にグループ解散を決めた「共犯者」。
一連の事態について全てを把握した上であえて何も語らず静観しているが、彼女も果南寄りの立場。
一方で彼女も2人を思いやるがゆえに真相は鞠莉にも明かせず、それが災いして事態がここまで拗れる要因の一つにもなってしまうのだが……こればかりは致し方ない所も大きい。
おそらくは「2人にしか解決できない問題」と考えて彼女らに委ねたのが裏目に出てしまった形だろう。

お馴染み我らが主人公の2年生。
μ'sの輝きに魅せられて、前途多難を経ながらスクールアイドルグループ・Aqoursを結成したのだが、果南達がかつてアイドル活動をしていた過去については(千歌がスクールアイドルに興味を持つ前だったこともあってか)初耳だった。
しかし東京で挫折したから辞めた、というダイヤから聞かされた過去が果南の性格からは信じられず、怪訝に思っていた。

シリーズにおける主人公ではあるが今回は話の焦点が3年生に当たっているため脇に回り、事態解決のMVPとして活躍する。
上階で大喧嘩していた3年生達を堂々とタメ口で怒鳴りちらし仲裁して一旦話し合いのテーブルにつかせつつ、3人の過去とそれぞれの思惑を聞いた上で第三者として自分なりの意見を伝える。
鞠莉と似た価値観を持っていることに加えて果南の思惑を知らなかったのもあって鞠莉側につく。

お馴染み千歌の幼なじみでクラスメート、Aqoursメンバー第2号にして全速前進ヨーソロー!な制服フェチ衣装担当その1。
彼女も果南の幼なじみであり、例によってスクールアイドルのことは初耳だったもののやはり彼女がそんな理由で辞めるとは思えず、「何か裏がありそう」と感じていた。
その後も事態の真相について気にはなるものの深くは踏み込まず、それぞれの話を聞くのみに徹している。

学校で3年生達について話していた折、ベランダから千歌達と上の様子を気にしていた所に空から降ってきた衣装を匂いで察知。
制服と勘違いして思わず飛びつくが、友達がいなかったら危うく死んでいた。彼女は後にも全く同じ過ちを繰り返すことになるのだが、それはまた別のお話。

お馴染み巻き込まれた転入生で千歌のクラスメートにして作曲担当。

今回はほぼ空気。まぁ沼津に来たばかりの彼女に過去の人間関係について首を突っ込める余地などないだろう……。

お馴染みがんばルビィなみんなの妹で衣装担当その2。
当事者のうち1人にもっとも近い人間であることから、事情を知りたいとAqoursの5人に真っ先に詰め寄られる。
しかし姉から聞いたのは「東京のライブが失敗した」ということだけで、それ以降家ではそもそもスクールアイドルの話をほとんどしなくなってしまったという。
ただ、ダイヤが「逃げてるわけじゃありませんわ。だから、果南さんのことを『逃げた』なんて言わないで」と鞠莉に言っていたのを小耳に挟んでいた。

実姉とその友人、そして自分も大好きなスクールアイドルに関わる事柄ゆえに今回の一件は彼女も気にしていた様子。

お馴染み食いしん坊で未来ずら〜な1年生。

梨子と同じく今回は身内へのツッコミに徹するのみでほぼ空気。
例によって当事者達とほぼ何も関わりがなかったので仕方ない。

お馴染み自称堕天使で不憫枠の1年生。

今回はもっぱら逃げ出した姉妹を関節技を極めて引っ捕らえる役回り。
ちなみに他の話で「瞬間移動を使います」と言うシーンがあるのだが、今回の一瞬でダイヤを捕らえるシーンにより本当に使っている疑惑が浮上した。
この堕天使、侮れない…!

本編のあらすじ(ネタバレ注意!)

Aqoursが母校に戻った後、町は夏祭りを目前に控えAqoursにもライブのオファーが来ていた。
当然参加を決める千歌だったが、それはそれとしてダイヤの話していたことが気になっていた6人。
千歌の知る果南は、一度挫折したくらいで簡単に諦めるような人物ではないはずなのだが……。

考えるだけでは答えが出るはずもなく、当事者に一番近いルビィを問い詰めるも彼女もことの詳細は知らないという。

6人は何か掴めないかと早朝にどこかへ走ってゆく果南を尾行することを決めるが、そこで見たのは弁天島で華麗に踊る果南の姿。
脇でそれを見ていた鞠莉が再びスクールアイドルをやろうと誘うも、果南は「千歌達に任せればいい」と一蹴し、その果てに「もう、あなたの顔……見たくないの」とまで言い放つ。
ただの拒絶と流すにはあんまり過ぎる暴言に、「ひどい……」と呟く一同。

時は流れて、ある日の休み時間。果南が今日から学校に来るらしい、と曜は千歌と梨子に話す。先日の鞠莉との一幕を影で聞いていた3人は、不安げに3年生の教室がある上の階を見上げる。
すると、空から何かが降ってきた。
匂いに釣られた曜が「制服ーっ!」とベランダから身を乗り出して投身自殺しかけながらキャッチしたそれは、スクールアイドルのライブ衣装……?

……果たして、その予感は的中していた。
3年生の教室では、いつかのように鞠莉が衣装を掲げて果南を勧誘していた。
しかし果南の返答は変わるはずもなく。結果として果南の手で衣装は宙を舞い、そうして下階にいた曜の手に渡ったのだった。

千歌達が3年生のクラスに駆けつけると、現場は壮絶なキャットファイトと化していた。

「強情も大概にしておきなさい!たった一度失敗したくらいでいつまでもネガティブに……」
「うるさい!いつまでもはどっち!?もう2年前の話だよ!
だいたい今更スクールアイドルなんて……私達、もう3年生なんだよ!?」

「2人ともおやめなさい!みんな見てますわよ!?」というダイヤの制止ももはや届かず、鞠莉は諦めない。
そんな2人を見た千歌は、つかつかと教室に立ち入り、人混みを強引に掻き分けおいその人ら3年生だぞそして……


「いい加減に……しろぉーーーーっ!!!!」


怒れる千歌、廊下の窓ガラスまでびりびりと震える程の一喝。

「もう!なんかよくわからない話を、いつまでもずーっとずーーっとずーーーっと…!!
隠してないで、ちゃんと話しなさい!」

「千歌には関係な…「あるよ!」

「ダイヤさんも。鞠莉さんも。
3人揃って放課後、部室に来てください」

「いや、でも…」
「いいですね?」
「は…」


「千歌ちゃん、すごい…」
「3年生に向かって…」
「あ……」

そうして千歌の呼び出しの元3人は部室に場所を移すも、果南の態度は変わらない。
「何か事情があるんだよね?」と一歩踏み込むも、やはり「そんなもの、ないよ。私が歌えなかっただけ」の一点張り。
「でもこの前、弁天島で踊ってたような……」とうっかり口を滑らせたルビィに思いっきり赤面しながらも
「うるさい!未練なんてない!
とにかく私は、もう嫌になったの!」

と鞠莉の誘いには絶対に応じないことを突き付けて部室を出てしまう。

そんな様子を見届けた千歌がふとホワイトボードに目を向けると、そこに何かを書いて消した跡が……?

ともあれ果南が口を割らないとなると、次はダイヤ。
「何か知ってますよね……?」と梨子が疑いの眼差しを向けるもダイヤはなんと逃げ出した
しかし善子により一瞬にして捉えられたダイヤは観念して、自身の自宅に場所を移し果南の一連の所業が「わざと」であったことを明かした。

「そう、東京のイベントで果南さんは『歌えなかった』んじゃない。
『わざと歌わなかった』んですの」

「どうして…?」と尋ねる鞠莉に、ダイヤは「貴女のためですわ」と返す。そうして、ついに全てを打ち明けるのだった。


…あの日、鞠莉は足を負傷していた。しかし鞠莉は持ち前の負けん気で、怪我を押してステージに出ようとしていたのだった。

「…ッ……!」
「大丈夫ですの?」
「全然!…ッ。
…果南、やるわよ!」

心配するダイヤにそう勝気に答え、先頭に立つ果南へ呼びかけるも、鞠莉は痛みを辛うじて堪えている状態なのは誰の目にも明らかだった。
当然、とてもライブに出られる状態ではない。
ゆえにその呼び掛けに、果南は答えなかった。その時既に、彼女の中で決意は固まっていたのだろう。


「そんな……。私は、そんな事してほしいなんて一言も……!」
「あのまま進めていたら、どうなっていたと思うんですの?
怪我だけでなく、事故になってもおかしくなかった」

そう、ダイヤの言う通りだった。
怪我に気を取られて満足なパフォーマンスができないだけならまだしも、立ち上がるだけで痛みに顔を歪ませるような状態の人間がダンスをするなど何が起こるか分かったものではない。
ましてや彼女たちがやろうとしていたのはグループパフォーマンス。何が起こるか予想できない状態の人間とステージに立つのは、一緒に踊るメンバーをも危険に晒してしまいかねない。
しかし、鞠莉は「やめよう」と言って聞くような人間ではないのも、また仲間だからこそ知っていた。
だから、果南はわざと歌わなかったのだ。
ライブが失敗したのは自分が緊張してしまったせいだとして、鞠莉に責任を感じさせないために。

「……でも、その後は?」
「そうだよ。怪我が治ったら、続けてもよかったのに……」
「……そうよ、花火大会に向けて、新しい曲も作って。
ダンスも衣装も、完璧にして。なのに……」

その事実を知ってもなお、突然に夢の終わりを告げられた鞠莉の無念は深まるばかり。
そんな彼女にダイヤは語る。

「心配していたのですわ。
貴女、留学や転校の話があるたびに、全部断っていたでしょう?」
「果南さんは思っていたのですわ。
このままでは自分たちのせいで、鞠莉さんから未来のいろんな可能性が奪われてしまうのではないか、って。そんな時…」

…鞠莉はいち生徒としても優秀だったのだろう。
ある日担任教師が推薦した留学先は、決して悪い条件ではなかった。
むしろ閉ざされるかもしれないほど小さな地方の高校に通い続けるよりもずっと広く明るい未来が、その道の先に広がっていたはず。そう予感させる程には魅力的な道だった。
…しかし、それでも彼女は断る。スクールアイドルを始めたからと。スクールアイドルとして、この学校を救うのだと。
彼女は自分の将来と母校の未来を秤にかけるまでもなく母校を取る。それ程に強い使命感に燃えていたのだ。

裏でそれを聞いていた果南の心は、穏やかではなかっただろう。
なにしろ自分達が引き込んだ道だ。自分が誘った道が鞠莉の未来を奪うようでは、彼女も素直な気持ちで鞠莉と活動を続けることなどできまい。

だから、果南はその夢を鞠莉から取り上げたのだ。
親友のため、心を鬼にして。
鞠莉の進むべき道はここじゃない、自分自身のために羽ばたいてほしい。
そう願ったからこそ、果南はあえて鞠莉を突き放したのだった。


そのことを、ようやく鞠莉も悟る。
「まさか、それで……?」
呟き、口元を引き結んだ鞠莉の顔色は知れない。
咄嗟に駆け出す鞠莉。

「どこへ行くんですの!?」
「ぶん殴る…!そんなこと、一言も相談せずに…!!」
「おやめなさい。
果南さんも、ずっと貴女の事を見てきたのですよ。貴女の立場も、貴女の気持ちも。
そして…貴女の将来も。誰よりも考えている」

ダイヤに呼び止められた鞠莉の脳裏に過ぎるのは、かつての日々。

幼い頃、この街に転校してきた時のこと。
果南とダイヤが、夜中にこっそり鞠莉の家を訪ねてきた時のこと。
そして、島を発つ鞠莉を乗せたヘリが飛び立つのを、2人が見送ってくれたこと。


土砂降りの中、鞠莉は黒澤家を飛び出す。
「そんなのわからないよ…どうして言ってくれなかったの?」
「ちゃんと伝えていましたわよ。貴女が気づかなかっただけ」
無我夢中で走り、転んでふと思い出した。

(離れ離れになってもさ……私は鞠莉のこと、忘れないから)

そうだ、果南は伝えていたのだ。
鞠莉を信じていることを。遠くへ行っても、私達は友達だと。
立ち上がり、再び駆け出した鞠莉の叫びは届かない。

そうして鞠莉が辿り着いたのは、先程の部室。
先刻、千歌が見つけたホワイトボードの跡に彼女も気づく。

呼び出された果南が部室に着いた頃には、もう雨は上がっていた。
ふと果南が足元を見ると、床がびしょびしょに濡れていることに気づく。……そして、そこに立ち尽くす鞠莉も。

「……なに?」
「いい加減、話をつけようと思って。
どうして言ってくれなかったの。思ってること、ちゃんと話して。
果南が私のこと想うように、私も果南のこと考えているんだから」

「将来なんか今はどうでもいいの。
留学?まったく興味無かった!当たり前じゃない!
だって、果南が歌えなかったんだよ?放っておけるはずない!」

涙声で、鞠莉は果南の方へ振り向いた。
そのまま、果南へ平手打ちをかます。

「私が…私が果南を想う気持ちを、甘く見ないで!!」

しかし、果南も当然黙っていない。
「だったら…だったら素直にそう言ってよ!
リベンジだとか負けられないとかじゃなく、ちゃんと言ってよ!!」

果南の涙ぐみながらの反論に、鞠莉は「だよね……」と返す。
だから、と鞠莉は左の頬を果南に向けた。私がやったように、そのまま返してと。
それを見た果南は意を決して、右手を振り上げ――

…それは幼い頃の記憶。
「み、見つかったら怒られますわ!」
「大丈夫だよ!」
声がした方に鞠莉が顔を覗かせると、そこには見知らぬ2人の少女がいた。背丈は鞠莉と同じくらいだ。
「あなたは……?」
そう尋ねる鞠莉に、少女の片方――後に彼女は、その名を「果南」と知る――は、
「はぐ……ハグ、しよ?」

そう答えた記憶の果南に、今の果南が重なる。
彼女が掲げた手を振るうことは無かった。両手を広げ、いつかのように鞠莉を迎え入れたのだ。
お互いを抱きしめ合う2人は、ともに声を上げて泣いていた。


校門を後ろ手に閉めた千歌は、ダイヤに笑いながら語りかける。
「ダイヤさんって、本当に2人が好きなんですね」
「それより、これから2人を頼みましたわよ?
ああ見えて、2人とも繊細ですから」

「じゃあ、ダイヤさんも居てくれないと!」
「えっ?わたくしは生徒会長ですわよ?とてもそんな時間は……」
「それなら大丈夫です!
鞠莉さんと果南ちゃんと、あと…6人もいるので!」

千歌が振り向いた先で2人を待っていたのは、既にAqoursに参加している5人。
そこに、ルビィが駆け寄る。
その両手に抱えた、新品の衣装を差し出して。

「親愛なるお姉ちゃん、ようこそAqoursへ!」

ダイヤの返答は、静かな、しかし確かな微笑みだった。

楽曲「未熟DREAMER」

どんな未来かは 誰もまだ知らない
でも楽しくなるはずだよ
みんなとなら 乗り越えられる
これからなんだね お互いがんばろうよ

作曲・編曲:渡辺和紀
歌:Aqours

大きな亀裂が入ってしまったまま離れ離れになってしまった3人が、それぞれを想いながら書き上げた曲。
果南がスクールアイドルを辞める間際に書いていた曲であり、花火大会に向けて作っていた曲であったが、当時は歌われないまま解散を迎えた。
その後紆余曲折を経て、かつての3人が最後に書いた曲にしてAqoursが9人体制になってから初めて披露した曲となるのだった。
それぞれが大きな挫折を経ていたこともあり、それぞれの心境に強く重なるバラードになっている。

曲構成としては、
Aメロ(1・2)→(間奏)→Aメロ(3)→Bメロ→サビ→Cメロ(ここまでがアニメ披露分)
→(間奏)→Bメロ→大サビ
というかなり変則的な構成を取っている。
3つのAメロでは、果南→鞠莉→ダイヤの順で離れ離れになった3人がそれぞれに抱えた後悔や葛藤を打ち明けるように歌い上げ、Bメロでその心を1つにしてサビへと繋いでゆく。
そうして、まだ見えない未来への不安を抱きながらも、それでも明るいはずだと一緒に先へ歩いてゆこうと決意を固める一曲に仕上がっている。

花火大会に向けて作っていた曲ということもあってか、衣装は和服をベースとしている。
しかしそれはルビィ達が作った新しいもので、鞠莉達が作っていた衣装はセーラー服をベースとしたもの。本エピソードにて度々登場していた衣装である。
曲の前半では3年生の3人のみ旧衣装を身につけ、かつての蟠りを振り払ってAqoursに加わったことを示すかのように後半で新衣装に早着替えする。

ライブ映像では、サビに合わせて次々と打ち上がる花火の下、9人それぞれのメンバーカラーに染め上げられた垂れ幕をバックに踊るAqoursの演出が印象的。


アニメ版サンシャインにおけるひとつの転機であり、また9人体制初の楽曲という点でも非常に重要な位置付けにある本楽曲。
そのためラブライブのゲームシリーズである『スクフェス』シリーズにも必ずと言っていいほど収録されているのだが、やはりと言うべきかその独特な構成が尺を圧迫するらしく収録に難儀する様子が伺える一曲でもある…。そもそもアニメ版からして尻切れ感があるし。
スクフェス版はCメロ以降がカットされるのはまだしも、ダイヤパートにあたる3つめのAメロもカットされ鞠莉パートから間奏を経てそのままサビ前へと繋がれる憂き目に。ダイヤさんは犠牲になったのだ……音ゲーにとっては避けられない「曲の尺」、その犠牲にな……


CDへの収録は第6話挿入歌『夢で夜空を照らしたい』との両A面シングルとして初収録。
このシングルのジャケットは『夢で夜空を〜』のイラストをイメージした1年生組のもので、同じく当該曲のシングルではイメージイラストが描かれなかった『MIRAI TICKET』は第1期サウンドトラックのジャケットイラストとして採用されたため、長らくの間アニメ1期挿入歌で唯一CDジャケットイラストに反映されなかった曲だった。
しかし2020年に発売されたベストアルバム『ラブライブ!サンシャイン!! Aqours CHRONICLE(2015~2017)』にて堂々のメインパッケージイラストとして遂に採用。
同アルバムのCMでも筆頭曲として挿入される好待遇を受けた。

余談・小ネタ

  • 前作でも描かれた、「3年生の軋轢と生徒会長の主役グループ加入」にあたるエピソード。
    • ただし本作に関しては絵里にあたるポジションのダイヤ本人にはスクールアイドルを否定する理由がなくむしろ当人は全肯定の立場だったこともあり、軋轢の主要因は他の2人が大きく占める形となっている。
    • また「メンバーの1人が無理をした結果ライブ失敗の引き金を引いてしまい、結果グループを空中分解させてしまう」「仲間に留学の話が持ち上がり、それを巡って一悶着起きる」という点もオマージュしていると考えられ、解散一歩手前で踏みとどまった先輩に対し実際に解散まで行ってしまった点も「μ'sにもこんな未来が有り得た」ことも含めよく対比に挙がる。

  • 本エピソードの後、第11話『友情ヨーソロー』では同じように千歌とギクシャクしかかっていた曜に鞠莉が本件を踏まえたアドバイスを送るシーンがある。やはり先輩の言葉は重みが違う……











「……ふふっ、Aqours、か…」
「…?どうしたの?」
「私達のグループも、Aqoursって名前だったんだよ」
「えっ…そうなの?」
「そんな偶然が……」
「私も…そう思ってたんだけど」
「じゃあ……」
「ふふふっ。千歌達も、私と鞠莉も。
たぶん、まんまと乗せられたんだよ」

千歌達がグループを結成した当初、難航していたのがグループ名決め。
その決め手になった、いつの間にか砂浜に書かれていた「Aqours」の文字。

……それを書いたのは、ダイヤその人だった。


追記・修正はお互いを想うが故にすれ違ってしまった方にお願いします。

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最終更新:2022年06月28日 00:15