登録日:2025/07/20(金) 13:32:51
更新日:2025/07/20 Sun 17:49:32NEW!
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クロスボウとは、古代から使われてきた遠距離攻撃武器、
飛び道具の一種。
弓から派生した武器である。
生産、訓練、運用など多くの点で弓とは異なり、別物として発展してきた。
英名はcrossbow、中国では弩(ど)、日本では弩(いしゆみ、おおゆみ)、洋弓銃など。「ボウガン」については後述。
◆概要
英名のクロスボウの名の通り、弓と交差する形で木製の台座を取り付けている。
弦を引っ張ってラッチに引っ掛け、クォレルやボルトと呼ばれる矢羽のない短い矢を番え、引き金を引いてラッチを開放する事で矢が弾き出される。
この際、矢を装填せず弦だけを引っ張って保持できるため、全身(特に足や背筋のパワー)を使って弦を引く事が出来る。
そのため非常に張りの強い弓でも運用することができ、最高性能の物であれば大体100m/s程のアホみたいな速度が出せるので、逃亡の際に家族の写真を入れて遠くに届けるなんてのにも使える。
またラッチ構造のおかげで、後述のバリスタのように石などの矢ではない弾体も打ち出す事が出来る。「いしゆみ」の読みはここから来ている。
ちなみに石や弾も発射可能なものはストーンボウやバレット・クロスボウなどと呼ばれる。
また、一度ラッチに弦を番えてしまえば発射時に力がいらない。台座にサイトを取り付ければそれを目印に狙いがつけられる。なので狙いがつけやすく、有効射程内での命中率が高い。
一方構造上発射する矢が短く、矢羽もつけられない。なので矢が飛んでる途中で横を向きやすく、パワーと初速の割に狙った所に飛ぶと期待できる距離は弓と比べて短い。
長所と短所を箇条書きにまとめるとこうなる。いずれも「弓と比べて」という相対的な意味合いが多い。
:強い弓を張れる
:楽に狙いがつけられる
:なので使い手への筋力要求値が低い
:なので使い手の養成が早い
:矢ではないものも撃てる
:装填に時間がかかり連射速度が遅い
:高価(生産もだし、壊れやすい)
:実用射程が短い
特に連射速度の遅さは大問題。これを補うために、ハードウェアの改善から軍団運用レベルまで各国が試行錯誤を繰り返している。
◆中国の弩
世界でもっとも古いクロスボウの遺物は中国のもので、紀元前600年代というものが存在している。
古代~中世にかけての中国はクロスボウの運用に熱心で、少なくとも
春秋戦国時代には量産化・軍事運用されていたようだ(有名な秦の兵馬俑で大量に発掘されている)。農民兵で遊牧騎兵のパルティアンショットに対抗するためだろうか?
「クロスボウのボルトは奴らの弓に使えないから好都合」という文献が存在する。
矢を大量に撃つ「連弩」も存在し(連弩は紀元前の遺物が現存する)、三国志で有名な諸葛孔明が一度に10本打てる「元戎」なる連弩を作ったとも言われる。
さすがに一発のパワーでは劣るため、
毒矢化していたらしい。
火薬を用いた銃器が流れ込む時代にあっても使われ、日清戦争にも持ち込まれた。
◆ヨーロッパのクロスボウ
ヨーロッパでいつ頃クロスボウが実用化されたかははっきりしない。固定弓鉄砲のバリスタはともかく、手持ちクロスボウについては不明な点が多い。
12世紀辺りから、クロスボウが軍用として普及した資料が見られ始める。盛られているだろうが、数千人レベルだったという記述がある。
強力な矢を打ち出すために張力がどんどん強化され、それ等に対応するために工学技術が盛り込まれ、フックに引っ掛けて足の力で番える「ベルトアンドクロウ」、
でっかいレバーが取り付いていてテコの原理で張って番える道具「山羊の脚」(ここまでは比較的張力が低い方)、
ほぼ素の人力では扱えないクラスだと、台座の後端に取り付けられた自転車のペダルのようなハンドルで巻き上げる「ウィンドラス」、
14世紀後半にヨーロッパに伝わった歯車と歯竿噛み合わせ機構「クレインクイン」を使って弦を巻き上げ張った。
連射性と狙い撃ちの遠距離性能では弓に劣るのは前述通り。その為百年戦争初期では長弓を主力とする英軍が仏軍を圧倒していた。
が、弩は素人でも比較的扱い易いという特質を持つ為、戦況が長引くにつれて英軍は熟練の弓使いが戦死してゆき、こんどは仏軍の優位性が増していった。
また当時は甲冑すら楽々ぶち抜くその威力で生け捕り、恐喝といった少々ゲスなやり方も流行ってしまった。
もちろん暗殺沙汰にも持ってこい。1つにつき一射きりであっても、その場で引き絞る弓よりどれほど扱いやすいかは短銃を思えば容易に想像がつくだろう。
余りの威力にローマ法王がキリスト教徒に対しての使用を禁じたお触れを何度も発布した事もある。
…余談だが、当時の戦場は良く言えば冷静、悪く言えば銭ゲバ的風潮が強かった。
名のある貴族を人質にして身代金を得るのも、戦争ビジネスにおいて重要な要素だったのだ。
にも関わらず、この弩は無駄に威力がある為に人質を生け捕りにするのが難しく、そうしたビジネスが成立しなくなるから規制に乗り出した。
あるいは自分たちに使われる事が怖かった事もあるかもしれない。あんなのがビュンビュン飛び交う戦場になど出たくないという気持ちは想像すれば分かるだろう。
というのが実情である。戦場なんてそんなもんよ。また狩猟や
ムスリムなどの異教徒に対してはお構いなしに使われていた。ひでえ。
◆日本のおおゆみ
日本でも奈良時代に中国から輸入されたが、平安時代初期には廃れた。
これは発射までの時間や製作する手間があまりにも掛かり過ぎる上、高温多湿な日本ではすぐに傷んでしまうため。複合弓と似た理由である。ただ北海道のアイヌ民族の間では小型低威力の物が一応使われていたらしいが。
日本の城塞用語にも同じ「石弓」と呼ばれるものもあるが、石落としの罠であり弓でさえない。
◆現代のクロスボウ
さすがに銃器の急発展には追いつけず、戦場からは姿を消した。だが静音銃器が未熟だった頃には、特殊部隊向けの武器として研究されていたらしい。
Call of Duty:Black Opsシリーズは特殊作戦チームが主役という事もあってこのタイプのクロスボウがプレイアブル武器として登場し、
コンパウンドボウやライフルの技術が取り入れられ、偏心滑車に多重巻き弦、爆発ボルトと実にカオスな武器になっている。
ホビー・狩猟用としては現代でも一般的。日本では「人を簡単に殺める危険な道具」として認識されるのが遅れたため法規制が長らくなされず、規制が入ったのは2020年代に入ってからだった。
◆ボウガン
よくクロスボウの別名として用いられる「ボウガン」だが、実は「弓(bow)」+「銃(gun)」を組み合わせて作られた和製英語。
かつては日本の株式会社ボウガンによる登録商標だったが
すっかり一般名詞化したとして、21世紀初め頃には商標権を手放したようである。
商標が有効だったと思しき頃にも普通に使われており、仮面ライダーやスーパーロボット等のSFメカ・現代ヒーロー系は勿論の事、マンガ『
ベルセルク』などのファンタジー系でもよく使わていた。
商標が切れている現在では条例や公文書でもボウガン(ボーガン)の名が使われていたりする。
大体クロスボウ規制に関わるところであんまり良い意味ではないが…
◆バリスタ
Ballista。攻城兵器としての台座に乗せられた巨大クロスボウ。
槍や杭のような巨大な矢、石、金属弾、生き物の死体などを発射する。
古代ギリシアで発明され、古代ローマ軍が多用しその後十字軍など中世ヨーロッパまで使われた。
古代ローマ軍では、スコルピオなど何種類か作られた。おなじみ板バネ式の他、太い綱をねじってその復元力で弾体を弾き出すものなどもある。
共和制ローマの正規市民歩兵軍団「レギオン」は凄腕の工兵集団としても知られており、敵の城の眼の前で樹を切り倒してその場でバリスタを組み立てる事もやっていた。
なお同音異義語のイタリア語に「
コーヒーを淹れる職人(伊: barista)」が混じっているせいか、最近まで日本では馴染みが薄かった。
山や川の多い日本ではこうした大型兵器を活躍させる機会がなかった事も一因と思われる。
フィクションに登場する機会は少ないが、「北斗の拳」では天帝軍が近代化されたデザインの物を使用している。
映画では「マッドマックス2」で製油所の防衛に設置され、「ウォーターワールド」では海上都市・アトールの住人が使用。
「トレマーズ 地獄島」では大富豪のビル・デヴィッドソンらがグラボイズ狩りで麻酔薬入りの失を発射した。
ちなみにクロスボウ同様に“てこ”の原理で弦を引くのだが、大型なので人間では対応できないものも多い。
そういうものは馬に引かせて弦を引く。(一応投石器(カタパルトの方)の様に巻き上げ機構を使う場合も有る)
尚、バリスタで射出するような巨大な矢は「ボルト」と言われる事がある。エルデンリングに登場するボルトとはネジじゃなくてコレ。
FA百式改の謎兵器「炸裂ボルト」のボルトはこれのことを指して居たのでは?という説も一応ある。
◆有名なクロスボウとその使い手
神話・伝説レベルの使い手は少ない。
また、「ワンショット・ワンキル」型と乱射型に分かれる傾向がある。
自在剣・機刃の力で銀星獣に大転生した星獣が合体した、
ギンガイオーの武器。
背部となったギンガルコンの上半身が分離して形成、ギンガマンのアースを込めて放たれる流星弾が必殺技。
超装光ギンガイオーとなった際には、最終章に至るまで使われなかった。
息子の頭上の林檎を射貫く話はよく真似される。たまに間違っている人がいるが、その時に使ったのはクロスボウである。
ファイアーエムブレムのFC版初代作にはボウガンが登場する。また、シリーズおなじみの「ぎんのゆみ」も大型クロスボウ。このタイプが使われるのはここだけ。
また、暁の女神では弩系の武器が登場しており、近距離へも攻撃可能、使用者の力を無視して武器攻撃力でのみダメージ計算をするなど、従来の弓とは異なる使用感を持っている。
項目はアーチャーとしたが、ハンターやホースメンも使用可能。
犯罪組織
マッドギアの総帥。連発式のボウガンが武器。
連射可能なボウガンが武器。
ボウガンを武器に使う。アイテムを入手する事で矢は複数の機能が追加される。
- ”素晴らしいマーヴェラス”チェスター (DARKSOULS)
中世風ダークファンタジーの世界に突如現れたシルクハット紳士。
巨大なクロスボウを用いての狙撃が主戦術だが、敵に接近された際には華麗な体術を披露する。
空の勇者セイバーズの一人・ジャンボセイバーが巨大なボウガン「ジャンボアロー」を使う。
トリガーを弾くことで3000mの射程を誇る矢が放たれる。
悪の組織・北大阪の虎の戦闘バイク。フロントにクロスボウを搭載。
世紀末の悪党どもが斧に次いでボウガンを採用。しかし北斗神拳の前にはその矢など止まった棒に過ぎなかった。一方で罪もない幼い子供の命を奪ったりもしている。中盤ヒロインのひとりであるマミヤもボウガンを使って戦っている(北斗の拳では一貫して「ボウガン」呼称)。
通称ボウガンのガキ。
ジャギに弟を奪われ、その復讐のためケンシロウをジャギと間違えて襲ってきた。
可愛い顔に似合わず凄まじいほどの矢弾を備えて連射する気満々であった。
ボウガンを愛用。
黙示録の四騎士の一人で、ボウガンを使う。
巨大な連弩「牙弩連砲カトリング」を使う。
ジョセフVSワムウの決戦「戦車戦」第2周目で投入された武器。直径5.8cm、重さ5.5kgというとんでもない鉄球を弾き出す特製クロスボウ。当然弦はメチャクチャ固い。波紋法を修めたジョジョでも引けなかったので、100kgで済まないだろう。「矢以外のものを撃てる」「クロスボウの弦ってのは普通のものでも滑車使って引くほど固いもんだ」と、本編はかなり現実に沿った描写がされている。
左腕に連弩を装備し、牽制や小物散らしに多用する。人間よりはるかに頑丈なフリークスを相手取る彼にとって、大切なサブウェポン。
ペガサスフォームでは射ぬくイメージの物体から生成されるペガサスボウガンを使い、敵を狙撃する。
仮面ライダー初の弓使い…だが、システムはどう見ても大型拳銃だしリムが縦に付いているし発射するのは圧縮空気弾だし、ボウガンを名乗ってはいるがいずれにも該当しないグレーな存在である。
小津5兄弟の次男で、疾る雷のエレメントを司る黄色の魔法使い。
調合魔法とボクシングを得意とするが、基本的にはマジスティックボウガンから放つ雷の矢で戦う。
ちょり~っす!狙ったお宝は逃がさない、怪盗BN団兼反乱組織リベリオンのメカニック担当の究極の救世主どぇす!
ボクの使用するキューザウェポンはボウガン状のキュークロスボウ。
テンビンキュータマをセットする事で必殺の「リブラインパクト」を発射しちゃうよ!
飛び道具としてボウガンを使用。
左手に装着したボウガンを使う。
- ダリル・ディクソン(THE WALKING DEAD/ウォーキングデッド(ドラマ))
ボウガンを愛用。
共にスコープ付のクロスボウを使用。
潜入時の狙撃用にスコープ付の鐙が取り外されたクロスボウを使用。
複数回犯行に使用。
阿笠博士の尻を狙撃した他、アクアクリスタルのワインセラーに罠として設置し、沢木公平を暗殺しようとした。
追記・修正を是非お願いします。
- 項目を作成しました。記述・修正をお願いします m(_ _)m -- 名無しさん (2025-07-20 13:37:14)
- なかったんだ 武器項目も色々あったからてっきりあるとばかり -- 名無しさん (2025-07-20 13:45:35)
- 分割の相談あったかなって思ったけど、大元(弓)の項目で提案はされてたんだな。分割乙です -- 名無しさん (2025-07-20 14:09:28)
- 武器としてもだけど、ミステリーとかの罠としても使われてる印象が強い -- 名無しさん (2025-07-20 14:41:46)
- 時限装置的な使い方もできるしね。個人対象なら、弾丸や爆弾に比べて見た目が映えるというのもあるかも。一方で、武器としては魔法でも使わないと装填の手間や威力の向上が難しいこともあってサブウェポンどまりが多い印象。 -- 名無しさん (2025-07-20 16:19:47)
- ディスオナードっていうスチームパンクなステルスアクションゲームでは、時計型麻酔銃よろしく麻酔の入ったフラスコを射出できる -- 名無しさん (2025-07-20 17:49:32)
最終更新:2025年07月20日 17:49