ダンジョンの中のひと

登録日:2025/03/12 (水) 20:27:00
更新日:2025/03/14 Fri 02:45:22
所要時間:約 29 分で読めます




『ダンジョンの中のひと』は、WEBアクションにて2020年6月から連載されている双見酔の作品。
2025年3月現在、5巻まで刊行。

またTVアニメ全12話が2024年7月から9月にかけて放送されており、現在はAmazonPrimeなどで視聴可能。





あらすじ



アントムルグのダンジョンに消えた父を追い、
単独で挑み続けてきたシーフギルドに所属する少女・クレイ。
探索の末、ついに前人未踏の地下9階に到達。
そんな矢先にモンスターとの戦闘でダンジョンの壁が崩落!
崩れた壁の中から現れたのは---管理人!?

ダンジョンで働くものたちが織り成す、
迷宮お仕事ファンタジー。
(アニメ公式サイト「INTRODUCTION」より)



概要


ダンジョン探索を題材にした作品だが、ダンジョンに挑む探索者視点と、ダンジョンを運営する運営側視点を描いている。
例えば「ダンジョンの宝箱の中身は誰が用意しているのか?」とか「モンスターが無限に出現するのは何故か?」といったゲームの都合で出来ている部分を、ダンジョンを運営している存在がいる事にして説明している。
ゲームに詳しい方なら探索者視点はWizardlyなどの探索系RPG、運営側視点ではダンジョンキーパー等の運営系SLGのプレイ風景を思い浮かべるかもしれない。



登場人物


cvはTVアニメ版準拠

【主人公】

◆クレイ
CV:千本木彩花
シーフギルドに所属しているシーフの少女。
3年前にダンジョンで消息を絶った父を追ってダンジョンに挑み始め、非公式ながら地下9階に到達する。
その後遭遇したモンスターとの戦闘中にダンジョンの壁が壊れるハプニングがあり、そこで事態収拾にやってきたベルと出会う。
ベルから説明を受けている中でダンジョン運営の仕事の勧誘を受け、ベルと戦って自分が負けたら勧誘を受けるという条件で戦闘を行うが敗北。ダンジョンで働く事を承諾する。*1

以来、ダンジョン運営の仕事に関わりつつ、ダンジョンの探索も続ける事になった。
思ってもみなかった展開に困惑してもいたが、現実主義的な性格である事もあって事態を前向きに捉えている。

幼い頃から父について修行を重ね、一人になってからも鍛錬を続けた結果、戦闘能力は非常に高い。
装備は短剣4本を状況に応じて使い分け、防具に頼らず体術で相手の攻撃を回避するスタイルをとる。*2
物語開始時点で地下8階までの敵は相手にならず、地下9階のモンスターともほぼ互角に渡り合う程。

詠唱が必要な一般的な魔法は使えないが自身の魔力を利用する技術はあり、相手の魔力を感知して通路の先にいる存在を探知する、武器に魔力を纏わせて威力向上や相手の魔法を斬るなどをやってのける。
その後ベルから魔力の扱い方を誘導してもらい、魔力で全身を覆う魔力膜を形成する方法を習得。
それによって対魔法などの各種耐性を獲得すると共に、魔力膜を動作補助に利用する事で今までより高いレベルの戦闘をこなせるようになった。
その結果地下10階に到達。ただし、冒険者ギルドには所属していない為公式の記録とは扱われておらず、一般にも知られていない。

生活のほとんどを鍛錬と探索に当てており、性格は非常に真面目でストイックかつ現実主義的な考え方を持っている。
責任感も強く、早くダンジョン運営の仕事に慣れようとして度々ベルに仕事はないかと尋ねている。
ベルから「今日の仕事が終わりました」と言われた際に「もっと働くべきだ」と発言した事もあり、若干ワーカホリック気味。
そのせいでベルから真面目過ぎて困ると引かれる場面も。

探索についてはかなりシビアな考え方をしており、ダンジョン内で探索者が死ぬ事があるのは当然であり、他の探索者から襲われる事もあり得ると割り切っている。*3
その為、ダンジョン探索を再開しようとした際に模倣体による命の保障がある状態を解除しようともしていた。*4
またバトルマニアの気もあり、強敵との戦闘を振り返って改善点を探したり武器の扱いを説明したいする時はちょっと饒舌になったりもする。

そういった事から他の探索者と考えが合わず、現在は1人で行動しているが、それを苦にはしていない様子。*5
ただ他人と一緒に行動できない訳ではなく、相手を気遣って言葉を選んだり相手からの忠告を受け入れて自分の行動を変えたりする事も出来ている。

上記のような人生を過ごしていたせいか、戦闘および探索に直接関係ない事柄や一般的な常識について欠けているきらいがある。*6
また魔力に関する技術や理論については、ベル達から説明を受けても理解しきれなかったり、理解を諦めたような顔をしたりする事が多い。
それでも「わずかな知識でも生死を分ける場合もある」という思いから新しい知識を得る事には積極的で、何とか理解しようと努めている。

実は出自不明。
リンヒレンジから、両親はシーフギルドの関係者で仕事上の事故で亡くなり、シーフギルドに預けられていた所ブランスに懐いたと聞かされているが、本当の事とは思っていない。
ただブランスを育ての親として尊敬しており、それに追いつく事を目標としている為、自身の出自は気にしていない。



【運営側】

◆ベル
CV:鈴代紗弓
本作の舞台「アントムルグのダンジョン」の2代目管理人兼ラスボスを務める少女で本名はベイルヘイラ・ラングダス。
常識外れの魔力と技術を持っており、日々ダンジョンの運営と改善を行っている。

以前からクレイの事は知っていたようで、あるトラブルをきっかけにクレイを勧誘。
その後クレイにダンジョン運営の実状と実務を説明してクレイを驚かせたり、クレイから突っ込みを喰らったりしている。

性格的には結構適当なようで、特にものの整理等は苦手の様子。
低層用の低品質なアイテムの作成に飽きて妙なアイテムを作り出し、それらを「いつか何かに使えるかも」といって貯め込んだり、ポーション作成用資材やらを部屋に散らかしても一向に気にしていない。*7
アイテム作成のセンスも微妙なようで、ランガドから「宝箱はオモシログッズ入れじゃあない」と叱られている。

食事についても関心が低く、クレイ共々、食材に食べる部分と捨てる部分がある事も知らず、人参に皮がある事も気付いていなかった。*8
ただ美味しいものは食べたいようで、フーリンから料理の指導を受けてレシピを貰い、その通りに調理した時は美味しいものが出来たと喜んでいた。

ダンジョン運営に関しては基本的には先代の仕組みを踏襲しているが、運営コスト低減を兼ねてかなりの省力化を進めている様子。
ただダンジョン内での探索者同士の戦闘は認めない方針のようで、目に余る行動を取る探索者に制裁を加えている。

見た目からして魔法使いタイプのように見え、実際行使する魔法は通常探索者が使うような魔法からかけ離れた威力と速度を持っているが、近接戦闘での戦闘力も桁外れ。
クレイの要望でクレイと戦闘を行った際には、クレイの連撃を杖1本で事もなく捌き、悪質な探索者へ制裁を下した時には杖の投擲だけで倒している。
基本的には戦闘を行う事を望んでいる訳ではないがトラブルを力で解決する事についても忌避感はなく、特に力ずくで挑まれた場合反撃するのに躊躇いはない様子。

以前から友人という存在に憧れがあったようで、クレイに対しては友人として接しようとして色々世話を焼いたり、クレイが街へ買い出しに行くのに同行して「お姉ちゃん」呼びしてみたりしている。
またモンスター達にクレイを紹介しつつ、「クレイに対して粗相があった場合容赦しない」旨申し渡し、モンスター達を引かせている。
その一方、なかば勢いでクレイを雇用してしまった為クレイに任せられる業務がなく、扱いに悩んでいる。*9


◆先代
CV:飛田展男
本作の舞台「アントムルグのダンジョン」の製作者兼初代管理人。
ランガド曰く「ダンジョンの為なら何でもするが他はどうでもいいという変態」。
かなりのこだわりを持ってダンジョンを製作していたようで、装備だけを溶かすスライムの開発、露出の高い女性用防具の製作も指示していた様子が語られている。

正体やベルとの関係、交代に至った経緯等は不明。


◆ランガド
CV: 楠見尚己
ドワーフ族の男性で、ダンジョン居住区にある専用の鍛冶場で武具の作成と、1~4階までのダンジョン管理を行っている。
ベルの事を「嬢ちゃん」と呼んでおり、元々先代に雇われて運営に携わるようになったようだが、管理人が交代した後も引き続きベルに協力している。

ランガドが本気で作成した武具は国宝級あるいはそれ以上の価値があるものらしく、地下10階でないと手に入らない。
5階~9階用の武具も作成しているが、ランガドからすればそれらは手抜き、出来損ない、ゴーレムが作成したものと変わりない程度のものという評価になる。
ただそれらの武具がクレイや他の探索者の主力武器になっている事から、上記の評価はただの謙遜か基準が高すぎる故の発言と思われる。

またドワーフの例によって酒好きであり、酒の事を「水」、通常の水の事を「未満」と呼んでいる。*10
ダンジョン管理の一部を行っている都合上、ゴーレムの教育管理もランガドの担当。
その為ゴーレムたちの事を「チビども」と呼んでおり、個別の名前や特徴なども覚えている様子。

新しく入ったクレイも身内として扱っており、武具の調整を行ったり、助言を与えたりしている。
以前からベルが1人で管理業務を行っている事を心配していたが、クレイがベルと友人のような関係になった事を陰ながら喜んでいる。


◆精霊たち
ダンジョン居住区にある初期区画で会う事の出来るこの世界の精霊たち。
水/土/光/闇の精霊が姿を現しており、主にダンジョンフロアの入れ替えの時に、土の精霊にダンジョンのフロアの祖型の作成を依頼している。
他に光/闇の精霊に通路の明るさ調整を行ってもらっていたりする。

出来たダンジョンフロアはベルが調整したのちに水晶室でフロアの付け替え行い、その後ランガドが内装作業を行う。
その際にランガドのダンジョンイメージを実際のダンジョンに反映させていくのだが、そのイメージのセンスを巡ってランガドと精霊で喧嘩になるらしい。


◆ゴーレム
ダンジョン運営において実際の作業の多くを担当している岩石で出来た魔法生物。*11
全高は大体クレイの腰位までの高さで、ランガドからはチビども等と呼ばれている。
人間の言葉は話せないが理解しているようで、身振り手振りあるいは何かしらの手段でベルやランガドと意思疎通を行っている。

結構な数がいてクレイからは見分けがつかないが、個別に名前と性格や好み等もあるようで、ランガドからの教育と指示を受けて担当業務を受け持っている。
業務内容は荷物の運搬から武具やポーション瓶の作成にスケルトンの作成など多岐に渡り、現状に不備があるとランガド達の所にやってきて報告してくれる。

非常に頑丈で力も強いのだが戦闘技術等はなく、そもそも一部例外を除いて戦いたがらない。*12
ただ、クレイから剣の扱いについて学ぼうとする個体がいたり、クレイが移動用の吹き抜けを駆け上がっていくのを見て自分たちもやってみたいと言い出したりと、結構やんちゃな性格の個体が多い様子。*13



【ギルド関係者】

◆リンヒレンジ
CV:大塚芳忠
「アントムルグのシーフギルド」のギルドマスターを務める老齢の男性。
元々「シーフギルド」でも一番の暗殺者だったが、先代管理人の勧誘を受けて「アントムルグのシーフギルド」に移籍。
勝てぬ勝負はしない主義である事と、こちらの方が面白そうだとの理由からベルのダンジョン運営に協力している。

結構な老齢のようだが戦闘力は衰えておらず、クレイの見立てではダンジョンの地下8階のモンスターとも戦えそうだとか。
実際シーフギルドにちょっかいを掛けてきた悪徳貴族や、活動の邪魔となる冒険者ギルド幹部をさらっと暗殺したりしている。

その一方、規則を破ったり警告を無視するような探索者等も容赦なく処断している。
曰く「生きる嗅覚の鈍いシーフはいずれパーティーを巻き込んで死ぬ」との事。

ちなみに料理の腕も一流。


◆フーリン
CV: M・A・O
「アントムルグのシーフギルド」のギルドマスター補佐を務める女性。
基本的にはギルドに詰めており、ベルとはギルドで対面あるいは事務用スライムを通してのやり取りがメインだが、
クレイとベルへの料理指導の為ダンジョンに入った事もある。


◆ギルドマスター
CV:てらそままさき
アントムルグにある冒険者ギルドのギルドマスター。名前は不詳。
「程々に頼むわ」が口癖。優秀なギルドマスターではあるが腐敗した上層部に目を付けられており、やりにくさを感じている。
結構な腕前で鍛錬も欠かしていないがリンヒレンジにはあっさり抑えられる程度。



【探索者】

◆氷狼の牙
「アントムルグのダンジョン」に挑んでいる探索者パーティー。
アントムルグの冒険者ギルドの中では最上位のパーティーで、地下7階まで到達している。
ただ7階のモンスターと1,2度交戦すると戦力を使い果たしてしまう程度の実力の為、探索は足踏み状態の様子。


◆仲間殺し
それなりに腕は立つが、ダンジョン内で他の探索者を襲撃したり仲間を見殺しにする等やりたい放題している悪質な探索者パーティー。
他の地域のダンジョンでかなり悪名高くなっているが、当人達が尻尾をつかませず、冒険者ギルド上層部の腐敗もあって放置状態。
とはいえやりにくくなったのか、新たにアントムルグのダンジョンにやってきた。



◆ブランス
クレイの育ての親。
以前から単身ダンジョン探索を進めており、交戦したダンジョンのモンスター達からは「風切り」の異名を奉られている。
3年前にダンジョンへ入ってから戻っておらず、生死不明。


両手足に魔力を纏わせての徒手空拳と短剣による攻撃と、ナイフの投擲を絡める戦闘スタイルをとる。
その実力とセンスはクレイ以上で、動きの始点を見切りにくい動作と、魔力膜による動作補助を行っているクレイにも対応できる速度を組み合わせてクレイを追い詰めている。
クレイと交戦後、クレイが見せた魔力を利用した体の移動を見覚えて再現して見せてもいる。*17

探索者としての覚悟も強いプロだが、いささか脳筋気味な所があるようで、クレイが微妙にずれているのはこの人の教育が原因の一つと思われる。
教育の一例
  • まばたき1つの油断で死ぬぞ
  • 目に頼るな、気配で肌で感じ取れ、見えた時には手遅れだ
  • モンスターが倒れるまで避け続けろ、倒れるまで攻撃しろ
  • 探索中の食事は肉と水だけで済ませろ、調味料を使うような料理はプロに任せろ

この教えを愚直に守っているクレイが常識外れの戦闘力を持つのも頷ける。
その一方、この脳筋思考によって魔力を纏わせて魔法を斬る技術を習得するに至ってもいる。*18



【主要モンスター】

◆スライム
この世界の一般的なスライムは武器も鎧も溶かす、魔法を伴った攻撃しか受け付けない危険な魔法生物。
ただこのダンジョンに出現するのはサイズも小さく、動きも鈍いため、ほとんどの探索者は相手にしない。

実際は戦闘用ではなく、モンスターの死骸や探索者の死体を魔力で分解し清掃を行うためのモンスター。
先代管理人が魔力を貯め込む実験で作成したものを流用しており、巨大なスライムから一部を切り出して小分けにしたものをダンジョンに配置している。
配置されたスライムは体内の魔力を利用してダンジョン内の死体や戦闘跡を溶かして吸収する事で清掃し、魔力が尽きて小さくなったものはゴーレムが回収して元の巨大なスライムに吸収させている。



◆事務用スライム
2体が対になっている小さめのスライムで、一方が消化したものをもう一方が吐き出す性質を持っている。
それを利用して、ダンジョン内居住区にある制御室と、地上にある「アントムルグのシーフギルド」の間で書類のやり取りを行っている。
つまり生体FAX。


◆クライッツェ
地下7階配属のリッチ。
眷属であるスケルトンを伴っている。
実力的にもう少し下層を担当できると思っていたが、眷属のスケルトンに入り込んで戦闘を行ったクレイの実力を見て7階が相当と思い直した模様。


◆ベッコモ
2足歩行する牛型のモンスター。いわゆるミノタウロス。
地下9階に到達したクレイと戦闘し、ダンジョンの壁を壊してしまった事でクレイとベルが会うきっかけを作ってしまった。
その後なにかとクレイと会う事があり、緩く交流している。


◆シールドムルグ兄弟
地下9階配属のハイゴブリンの兄弟で、魔術師タイプの長兄シールドムルグ(CV:)と戦士タイプの弟バンデグ(CV:山根雅史)、ボンドグ(CV:中山祥徳)の三人兄弟。*19
クレイが地下9階にて最初に交戦したモンスターで、ほぼ奇襲に近い形であった事もあり、一方的に倒されてしまった。
その後モンスター宿舎の闘技場で再戦するも敵わず、再度一方的に倒されてしまった。


◆レイルモンド
CV:稲田徹
地下10階配属のドラゴン。
クレイとシールドムルグ兄弟が闘技場で戦っているのを見て、鍛錬の為にクレイと戦闘を望む。
クレイの全力戦闘で重傷を負うも、ブレスの一撃でクレイをほぼ戦闘不能に追い込む。
鍛錬であるためと、「痛いのは嫌」という性格であったためそこで戦闘終了となり、クレイによい刺激を与える事になった。*20


◆テルル
CV:乃村健次
地下10階配属の巨人。
クレイが雇われてから新たに雇用された眼が縦に2つある巨人。ベルやクレイに対しても丁寧な口調で対応する等温厚な性格の様子。
モンスターの間では研究者として知られているようで、調理室を利用して貴重な薬草を調理していた。


◆バラヤムン
ダンジョン内を徘徊している蝙蝠を担当している吸血鬼。
ダンジョンには出ず、自分の一部を蝙蝠として飛ばし、ダンジョン内の監視を行っている、と思われる。


◆ピンキー
CV:新井里美
地下5階を担当しているケット・シー。
非常にテンションが高く、うるさいほどのおしゃべりで忘れっぽい。本来の名前はもっと長いらしい。
初顔合わせの際に「風切りの娘でしょ」と言った事により行方不明になった父のその後を知るきっかけとなった。


◆シブレク
地下7階を担当している人型モンスター。
クレイにあっさり負けた事と、探索者が運営側で働いている事に不満を持ち、仲間を誘って闘技場でクレイに挑む。
が、既に地下10階に到達していたクレイに敵わず敗北。ただクレイが自分を覚えていた事が分かった事で気は晴れた様子。


◆ギゲン&サンマルハチ
共に地下9階を担当するモンスターで、ギゲンがオーガ、サンマルハチが丸顔のゴーレムのような種族。
シブレクの提案に乗って*21闘技場でクレイに挑むも敗北。クレイが特に条件を付けずに挑戦を受けた事をいい気概と評した。



アントムルグのダンジョン


【表向き】

本作の舞台で王国の地方にあるダンジョン。
当初は人も住んでいない辺境だったが、ダンジョンに挑む探索者やその関係者等などが集まり、1つの街を形成する様になった所。

ダンジョンの特長としては通路や扉に罠がなく、倒したモンスターが宝石に変わる事がある事。
また松明等が不要なほど明るく、視界が確保できているのに数ブロック先が見通せないような状態である事がある。
その為浅い階層では割合安全に戦闘経験を積む事ができる事と、宝石に変わるモンスターを安定して倒せるようになれば一定の収入が得られるようになる事から探索者からそれなりに人気のあるダンジョン。

各階層から下層へ向かうには階段を利用するが、その前にフロアガーディアンと呼ばれている特別なモンスターが出現する部屋を通る必要がある。
このフロアガーディアンのいる部屋には1度に1パーティーしか入る事が出来ず、内部の戦闘が終わるか、入ったパーティーが退出するまで別のパーティーが入る事は出来ない。

また、不定期に古くなった階層が更新され、地形やモンスターの配置などが変わる事がある。
ダンジョンの難易度上昇の割合などから地下10階まであるのではないかと想定されており、現在は冒険者ギルド所属のパーティー「氷狼の牙」が地下7階まで到達している。

その他、このダンジョン前の街には、このダンジョン専門に活動している「アントムルグのシーフギルド」が存在している。
所属しているシーフへの教育訓練とダンジョン内の情報提供、更に荷物を多く収容するための拡張バッグと帰還用スクロールを支給する等、探索者の活動を支援している。
通常の冒険者ギルドもある為、ダンジョンに向かう探索者たちは冒険者ギルドへの登録と「アントムルグのシーフギルド」に所属しているシーフをパーティに加えるのが一般的となっている。





モンスター


【探索者視点】

この世界でのモンスターとはダンジョンの魔力から生み出されている魔物の事であり、基本的に人間とコミュニケーションをとる事は無い。
ただ知能はあり、魔法を駆使したり複数個体が連携したりする事はある。

ダンジョン内で探索者を探知すると排除に掛かり、一度探知すると部屋の扉を閉めていても扉を開けて侵入してくる。
そしてモンスターを倒しても死体はダンジョンに吸収され、ダンジョンの魔力で再度生成されるため、基本的には数が尽きる事は無い。
原因は不明ながら、「アントムルグのダンジョン」に存在するモンスターの一部は倒すと宝石に変化する。


【運営側視点】

アントムルグのダンジョンにはダンジョンコアが存在しない為、魔物が生成されない。
その為、このダンジョンに出現するモンスターは、ベルがダンジョン内で生産しているモンスターとベルに雇用されたモンスターとの2つに分けられる。


ダンジョン内で生産しているモンスターは主に低層階で出現するゾンビやスケルトンやゴブリンなどの「命の軽い」モンスター達。
「命の軽い」モンスターの内、ゾンビ、スケルトン、ゴブリンについては現在、それっぽく生産したものを配置している。
いずれも元々は本物の骨や倒れた探索者の死体、自然繁殖させたゴブリンを利用していたのだが、ダンジョンの探索者が増えた事で原料供給が追いつかなくなってしまった。
そこで人工的にスケルトン*22とゾンビ*23を生産し、ゴブリンも栽培*24したものを配置するように変更した。
その上で色々工夫を凝らしてクオリティを上げようとしていたが、供給が追いつかない為、やむを得ず簡略化したものを配置したところ特に問題もなく、探索者達も気にしなかったため、それでいく事にしたという経緯がある。
ゴブリンについては先代管理人が、ゴブリンに植物としての性質がある事を利用して品種改良を行った結果、らしい。

また、倒されたモンスターや探索者の死体は、暫くするとスライムが溶かして清掃する為、長期に渡って残る事は無い。
ただ魔晶石目当てに侵攻してきたモンスターや、元探索者の死体を再利用して配置したりする事もある。


雇用されたモンスターは、ベルが出している求人に応募してきた魔界のモンスター達。
応募してきたモンスターを、提出された書類による選考と面談を通して採否を決定している。
採用の基準としては、会話が出来て書類というものが存在する事を理解している程度の知能があれば良いようで、最悪口頭でやり取りができる程度でもOKらしい。
就業規則も決まっており、その中に「探索者と会話をしない」という項目がある。
ちなみにモンスターへの報酬は魔晶石で支払われているようだが、探索者との戦闘や鍛錬目的で応募するものもいる模様。

雇用された後、モンスターはベルとの面談で配属する階層と担当を決め、ベルが作成した模倣体にモンスター本来の体を封じた宝石を埋め込み、ダンジョンに配置している。*25
この模倣体がダンジョン内で死ぬと、宝石に封じられた本来の体が居住区にある魔方陣で開放されて元に戻り、宝石はダンジョンに残る仕組み。
その為一々再雇用あるいは蘇生を行う必要がなく、雇用されたモンスターも安全にダンジョンで業務に当たる事が出来ている。
この仕組みを利用してダンジョン居住区にある闘技場で鍛錬を行っているモンスターもいる。

なお、活動する為に特殊な環境が必要なモンスターの場合、配置の段階で専用のエリアが用意されるらしい。



魔力


◆魔力
この世界で魔法の元になる魔力は大なり小なり、すべての生物が持っている。
魔力は魔法を使う為のもので物理的な力は持たず、使うには魔法に関する技術を習得する必要があると思われているが、実は自分自身の体を動かす事にも利用できる。*26

クレイは武器に魔力を込める技術の延長とベルの誘導で、体に魔力をまとわせる魔力膜を形成する技術を習得。
更に、魔力膜を利用して体を動かす技術を習得しつつあり、それによってブランスや地下10階のモンスターと渡り合えるようになっている。


◆魔力付与武具
ダンジョン産の武具である程度以上の質のものには魔力が付与されている。
通常は切れ味の向上や追加効果の付与等であり、これらは装備者が魔法を利用できる・出来ないに関わらず常に効果を発揮する。
その他、稀に何らかの条件を満たす事で特殊な効果を発揮するものもある。

また、地下10階で手に入る武具にはさらに強力な効果を発揮するような付与がされているが、これは地下10階に到達したものでないと効果を発揮させる事ができない。
クレイが所有している短剣のうちの1本は父から譲られたもので地下10階産のものだったが、クレイが地下10階に到達していなかった為真価を発揮させる事が出来ていなかった。

ちなみに武具にどのような魔力が付与されていてどのような効果であるかを知るには、鑑定が必要。
鑑定自体は地上に戻って冒険者ギルドに持ち込み、有料で鑑定してもらうか、鑑定用のスクロールを使用する必要がある。
クレイは鑑定用スクロールを常時持ち歩いており、その場で鑑定するタイプ。



用語


◆冒険者ギルド
この世界各地で発生するモンスターの討伐や護衛任務等を、所属している冒険者に斡旋するギルド。
ほとんどの街に支部があり、本作に登場するギルドではダンジョンに入る探索者パーティーの管理も行っている様子。


◆シーフギルド
この世界にある王国各地に支部を持つギルド。
あらゆる情報を扱う機関で、裏では暗殺も請け負っているといった噂も絶えない。
本来ダンジョン探索等とは関係がないのだが、アントムルグのダンジョンを手中に収めたい王国の意向も受けて「アントムルグのシーフギルド」を傘下に収めようと抗争を仕掛けた。
が、「フライレルヴァントの消滅事件」*27以降は手を引いている様子。


◆アントムルグのシーフギルド
アントムルグのダンジョンで罠による死亡率が高すぎるため、探索と罠の発見・解除技術の教育機関として有志が立ち上げた冒険者ギルドの補助機関。
というのが表向きの説明。実際には先代管理人が、初期にダンジョンの探索に挑んでいる探索者の8割が罠で死んでいる事にブチ切れ、「教育が必要だ」として立ち上げた組織。
2代目管理人であるベルもその仕組みを継承し、拡張バッグと帰還用スクロールの提供と代わりにダンジョン運営への協力および外部の情報を提供してもらっている。

ここに所属するシーフはギルドを通じて探索と罠の発見解除技術+最低限の読み書きの教育と、探索用に拡張バッグと帰還用スクロールの貸与を受けられる。
その為探索者パーティにはアントムルグのシーフギルド所属のシーフを加えるのが定石とされている。

そういった表立った探索者支援の他に、ダンジョンやギルドの活動に横やりを入れようとする勢力への牽制や、規約違反を行う探索者への制裁等も行っている。
ちなみにギルド本部の地下にはダンジョン居住区と繋がっている転移用魔方陣があり、納品や打ち合わせの為に利用されている。


◆王国
ダンジョンがあるアントムルグを領有している王国。
元々アントムルグ自体だれも住んでいない僻地だったが、ダンジョンの存在によって人が集まり、街が出来た事で税の取り立ておよびダンジョン管理の為に乗り出してきた。
ダンジョン産の武具や宝石の獲得、街からの徴税が目的だったが、先代管理人が従わなかった為シーフギルドを嗾けるも反撃を受けて失敗。
街の自治の保証とダンジョンへの非干渉、ダンジョン産の宝石と武具の扱いについて管理人側優位の契約を結ばされる事となった。

契約は王の在位中有効で、代替わりの際に更新を行うが、内容は基本的に先代と同様の内容。
ただし、代替わり後に1度だけ管理人へ挑戦し、勝利する事で契約内容を変更できるという項目を含んでいる。
その為新王の代理人がベルと決闘を行うが一蹴され、クレイを人質にとる作戦も失敗したため、先代と同様の内容で契約を結ぶ事となった。


◆魔界
ベルが雇用しているモンスター達の出身地。
ただ、雇用されているモンスター達は、ベルやクレイがいるこちら側を魔界であると認識している。

どういう事かというと、まずモンスター達は魔力を利用する事は出来るが、ベルのような魔力を直接扱うような魔法技術は持っていない。
その為ベルの事を"魔法を扱うもの=魔物"と考えており、その魔物がいるこちら側を"魔物が住んでいる世界=魔界"と認識しているという訳になる。
話を聞いたクレイがツッコミを入れるものの、モンスターからすればベルがこの世界で唯一の接点である為、理解されないだろうとの事。

その影響か、宝石に魔力を込めた魔晶石は魔界で貴重品扱いされているようで、それ目当てにベルの求人に応募するモンスターも多い。
時には魔晶石を求めて"魔界へ侵攻"してくるモンスターもいるとか。



アニメ化


2024年7月から9月までMBS/TBSテレビで放送。全12話で概ね3巻までの内容で作成されている。
監督は山井紗也香、キャラデザは中山裕美、アニメーション制作はOLM。
現在はAmazonPrime等で視聴可能。



追記修正はアントムルグのダンジョンを踏破した方にお願い致します。



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最終更新:2025年03月14日 02:45

*1 ちなみに報酬は月あたり金貨5枚

*2 シーフというより忍者

*3 実際に他の探索者から暴行目的で狙われた事もあり、返り討ちにしている

*4 結局探索は保障がある状態で行い、死亡したら以後ダンジョン探索を禁止するという約束で再開した

*5 そのせいでダンジョン内のモンスターからは「友達が居ないさん」と呼ばれてしまっていた

*6 父であるブランスが脳筋気味の上、教え下手かつ内容が偏っていたせいもある

*7 クレイやランガドによって片付けられてもまた散乱させており、ランガドからは「場を汚さずには生きられない奴」と評されている

*8 その為野菜など調理が必要なものは食べていなかった

*9 クレイから仕事が無いかと問われて事情を説明し、「その時間を頂けると助かります」と返している

*10 酒=命の水、水=命の水になれない水未満、という認識らしい

*11 精霊によって作成されているようで、姿は土の精霊に似ている

*12 ベルが悪質な探索者の制裁を行う際に3体ほど同行していたが、これが例外の個体なのだろうか?

*13 実際にやってみて失敗している

*14 この時点でベルはリンヒレンジからの連絡を受けて準備を整えており、一行を監視していた

*15 それによってクレイの覚悟が固まり、更に強くなると思っての事

*16 その際にベルから就業規則違反を疑われた

*17 魔力の量の関係から連続使用は出来ず、自分にとって実用ではないと判断している

*18 魔力とは生き物が持つ気合みたいなものと理解しており、であれば魔力で出来ている魔法を気合で斬れるのではないかと考えるに至った

*19 初見のクレイはシールドムルグにヒョロゴブリン、弟二人にマッチョゴブリンと名前をつけて認識していた

*20 と同時にやる気を削がれたが

*21 シブレクのような不満は持っておらず、クレイと戦うのは面白そうだというのが理由

*22 鉱石の粉と粘土を混ぜたものを型枠に入れて乾燥させ、骨格として汲み上げたものに闇の精霊を憑依させる

*23 スケルトンを腐った果肉で肉付けし、適当なボロ布を着せる

*24 畑にゴブリンの種を植え、ある程度育ったものを収穫した後専用の居住区で暮らさせる

*25 ベルは「ダンジョン専用の仮の体を作るようなもの」と説明している

*26 先代管理人が発見したもので、ベルはこれを「魔力は魂を動かす事が出来る」と表現している

*27 王国首都フライレルヴァントにあったシーフギルド本部がある夜突然消滅し、その場には建物の形の深さ10m程度の穴が残されていた事件