登録日:2025/07/18 Fri 14:04:30
更新日:2025/08/08 Fri 17:03:05
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E235系は、
JR東日本が保有する一般形電車である。
概要
2006年から量産されていた
E233系の後継として、旅客サービスの向上・環境性能の向上・さらなる安全性・安定性の向上の3点を目的に開発された。
製造メーカーは総合車両製作所で、デザイン担当は奥山清行。
2025年現在は
山手線に0番台、
横須賀・
総武快速線に1000番台が導入されている。
2017年鉄道友の会ローレル賞受賞。
車両解説
ここでは両番台の共通項目について解説する。
外観
ステンレス車体で、総合車両製作所の「Sustina」鋼体を採用しており、雨どいが外側に出ないすっきりとした外観になっている。また、鋼体にはJR東日本の車両では本格的にレーザー溶接を採用した。
前面形状は完全な切妻となり、正面窓上に方向幕・前照灯・尾灯を一式にまとめている。
「
お客さま、社会とコミュニケーションする車両」をデザインコンセプトにしており、窓下は黒とラインカラーのグラデーション塗装となっており、その前面形状からスマートウォッチや
スマートフォン、電子レンジと呼ばれることも少なくない。
正面の行先表示は後方になる場合、月毎に異なる植物の模様が表示される。
以下がその対照表である。
月 |
植物の種類 |
1月 |
ツバキ |
2月 |
梅 |
3月 |
タンポポ |
4月 |
桜 |
5月 |
菖蒲 |
6月 |
アジサイ |
7月 |
朝顔 |
8月 |
ヒマワリ |
9月 |
野菊 |
10月 |
ススキ |
11月 |
イチョウ |
12月 |
シクラメン |
車内
普通車はロングシートでデザインが一新され、袖仕切り部分が透明なものとなった。
各車両の車端部をすべて優先席としたほか、各車両に1区画フリースペースを設置している。
また、広告用のデジタルサイネージが大幅に増設され、従来の乗降部に加え連結部の貫通路上と荷棚の上に設置された。
当初はこれで紙媒体広告を全廃する予定であったが、需要の問題や広告会社からの反対もあり、両者を併用する形になった。
ちなみに貫通路上の広告は一時期
フジテレビの動画配信サービス「FOD」が独占契約を結んでいたことがあったが、2024年4月以降デジタルサイネージが原則としてTRAIN TVに変わったことから廃止された(これ以降もFODは普通の広告として出稿している)。
機器類
制御装置はVVVFインバータだが、により省エネ性の高くなったSiC(炭化ケイ素)モジュールが採用された。これは福井鉄道F1000形に次ぐもので、高速鉄道では初めての採用である。量産先行車では一部車両が、従前のSi(ケイ素)を使用したIGBT素子をトランジスタに使用するハイブリッド型であるが、それ以外の車両はトランジスタ部(MOSFET)もダイオード部もSiCを使用した素子が使われている。
+
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ところでSiCって何? |
炭化ケイ素(SiC)とは読んで字のごとく、炭素(C)とケイ素(Si)の化合物。
俗に「 ダイヤモンドの親戚」とも呼ばれ、ダイヤモンドに次ぐ硬度、高い耐熱性を持つ。
また半導体としてはバンドギャップエネルギーが大きく(簡単に言うと扱えるエネルギー量が大きい)、特にパワー半導体に用いた場合従来のシリコン系以上に高耐圧かつ小型のデバイスを製造することが可能となる。
同じく次世代半導体材料として注目されている窒化ガリウム(GaN)と比べると、高電圧耐性や放熱性ではSiCに分があり、動作速度ではGaNに分があると言われている。要はSiC= パワータイプ、GaN= スピードタイプという感じだ。
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伝送モニタ装置は長いこと使用されてきたTIMSから大容量通信に対応したINTEROSに変更された。
INTEROSになったことでできるようになった機能の例とその恩恵を一つ挙げると、それまでは車上のVVVF制御装置で計算していたモーターへの必要なトルクの計算をINTEROSで行うようになったため、故障時のバックアップの自動化や転属時の編成組成変更の容易化ができ、柔軟性が高まっている。
この装置は
209系改造の試験車両「MUE-Train」で試験が実施されていた。
電動車は2両ユニットで組まれているが、1両ごとに制御装置を搭載して自車のモーターを制御する独立方式としている。これは将来の転属や改造の際に組み替えが容易になるようにしたもの。
番台別解説
山手線の
E231系500番台置き換え用として量産先行車1編成、量産車49編成の計50編成が同にゅゆされた。
配置は全て東京総合車両センター。
本形式の導入に伴いE231系500番台は全車
中央・総武緩行線に転属し、そこから捻出されたE231系・209系は
武蔵野線・
八高線・
川越線に転出し205系を置き換えた。
量産先行車の外観はほとんど変わっていないが、先頭車と優先席を除き、荷棚の高さが高い点が違い。
カラーリングはかつての
横浜市営地下鉄ブルーライン車両や阪神1000系のような、客扉側引戸と側引戸上部の幕板部にラインカラーのウグイス帯を巻いたものとなった。これは山手線の大半の駅にホームドア設置が進んでおり、従来の窓下・幕板の横帯式ではラインカラーが見えなくなってしまう点を配慮したもの。
各編成の10号車にはサハE230形4600番台を改造したサハE235形4600番台を組み込んでいる。
元々はE231系500番台の6扉車置き換え用に導入されたもので、製造時期がE233系と並行していたせいか、内外装に同系の意匠が随所にみられる。
車端部の窓は小窓が二つ並ぶ独特の構造となっているが、田端~田町間で並走する京浜東北線のE233系のドア位置に合わせるための措置。
なお、トウ04・05編成は製造及び編入スケジュール上の観点から新造車が組み込まれたほか、導入計画の見直しでE235系に編入されなかったサハE230もあり、これはそのまま廃車解体された。
2015年に量産先行車が登場。各線での試運転を経て、同年11月30日に華々しく営業運転を開始!
…だったのだが、停止位置の不整合やドア、ブレーキの故障などが相次ぎ、その日の深夜に運用を離脱。
トラブルの原因は試運転時に実際の環境に近い状況(主に荷重)でのシミュレートが行われておらず、INTEROSが対応しきれずに不具合を起こしたものとされた。
INTEROSの改修など半年ほど運用を離脱し、2016年3月7日より営業運転に復帰した。
この経緯から、鉄道友の会のローレル賞は「2016年の営業運転」としてノミネートされている。
前述の通り50編成導入されたが、その後の首都圏における車両運用全般の見直しを受けて2025年現在は余剰車が7~8編成ほど生じているという。
転属の話もあるが果たして…
横須賀・
総武快速線のE217系置き換えを目的として、2020年から11両編成49本、4両編成44本が導入された。
配置は全て鎌倉車両センター。
カラーリングは沿線各駅にホームドアがほとんど設置されていないことから従来と同じ横帯となったが、配色はE217系とはパターンが異なり窓下は上半分がクリーム色、下半分が青となっている。
各乗降扉横には半自動対応の開閉ボタンが設置されている。
勿論グリーン車も連結されており、電源コンセントとWi-Fiが設置されている。
内装は前述したように、普通車が全てロングシートとなった。
前任のE217系は元々総武線側の混雑緩和を目的にロングシートが導入されたが、横須賀線側も武蔵小杉開業や鎌倉への観光客増加等混雑が悪化し、両側ともにロングシートの需要が大きくなったことも理由である。
また、側窓ピラーの処理が0番台と異なり、後述する東急車と同様の化粧板仕上げとなっている。
前述したようにデジタルサイネージが設置されているが、首都圏中距離電車での採用はこれが初となった。
基本編成のMT比は異常時の冗長性確保や今後の性能向上を見据え6:5に変更されている。
また、停電時などには最寄り駅まで走行可能な非常用の蓄電池を搭載しており、その関係で元空気タンクが屋根に移設されており0番台よりも屋根が賑やかとなっている。
初期の導入ロットには、通常分割運用に使用しない先頭車(基本編成の東京寄り・付属編成の逗子寄り)にも電気連結器が装備されていた。
これは横須賀線の長年の課題ともいえる編成の標準化(=他線区と同じ基本編成10両・付属編成の5両化)を見込んだものと言われていたが、結局断念したらしく後に取り外されている。
まあ逗子の配線がネックだからなぁ…
また、2022年以降の増備車では信号炎管の省略をはじめ、内装の一部化粧板省略、ドアスイッチ形状の変更、荷棚が板式→パイプ状になるなど全体的なコストダウンが図られている。
そのため、この増備車は同様の仕様変更が実施された国鉄の201系に倣ってか「令和の軽装車」なる通称もあったりする。
関連形式
JR東日本における直流電化路線のワンマン化および205系の置き換えを目的に導入された一般形車両。
E235系と新潟・長野地区に導入されたE129系を折衷したようなデザインとなっており、ホームドア対応線区への乗り入れを考慮し4扉車となった。
内装についてもE235系と共通の意匠が見られる。
房総地区の各線に0番台、
相撲線に500番台、
日光・
宇都宮地区に600番台、
鶴見線に1000番台、
仙石線に800番台が導入されている。
正面は連結運転を考慮して貫通扉を装備しているが、1000番台・800番台は非貫通となっている。
こちらはE235系をベースに開発された東急電鉄の車両。
2020系は
田園都市線の8500系置き換え、6020系は
大井町線の急行増発および9000系置き換え、3020系は
目黒線および
東急新横浜線開業時の輸送力増強を目的にそれぞれ導入された。
デザイン担当は各地の商業・文化・交通施設を手掛ける丹青社で、アニヲタ的には「角川武蔵野ミュージアム」のデザインが同社と言えばピンと来る人も多いだろう。
E235系と異なり、ロングシート部は同社5000系後期車で導入されたハイバック式となっている。
余談
0番台は山手線なのでラッピング車両も多数運行されているが、2022年には鉄道開業150周年を記念して全体を黒に覆った「黒い山手線」が登場して話題を呼んだ。これは鉄道開業150周年を記念し「1号機関車」をモチーフにしたものと公式では言われているが、実際には動画配信サービス最大手である「Netflix」の広告電車だった。同社のロゴと上手いこと組み合わせたラッピングは話題となり、評判もナイスですね~だった。
0番台ではATOの実証実験もされており、当該編成には正面窓に「ATO」のロゴが貼られた。
これ以外ではワンマン運転および保安装置ATACSの設置工事が行われているが、初期の編成はこの工事が除外されている。
前述した転出はこの初期編成になるのではないか、と言われているが果たして…
関連作品
2016年に長編成仕様で0番台が発売。2020年にはE231系500番台に代わって単品発売が始まり、E231系が持っていたドアの開閉ギミックを引き継いでいる。単品の方は後尾車用のイラスト幕ステッカーが全種付属し、好きなものが選べるのが嬉しいところ。
1000番台も2020年8月に早速製品化されている。さりげなくダブルデッカー中間車が新規金型になっている。
0番台がモチーフの品川めぐるが登場。手に持ったスマホにはよく見ると「235」と書かれている。広告モニターから連想したのか動画配信者キャラ。
後述のように実際の運行開始日と公式が定める運行開始日に差異があるが、誕生日は実際の初運行開始日準拠で11月30日。
E5はやぶさ専用ザイライナーとしてE235ヤマノテが登場。腕部を強化するパーツにあたる。
玩具のZギアオリジナルで1000番台も登場する。
2017年アーケード版の山手線で運転可能であり、はしろう山手線でプレステ(とSwitch)にも登場。
追記・修正はE235系のすべての植物の表示を確認できた人にお願いします。
- 時期によっては横須賀・総武快速線の後継はE233系になっていたのだろうか…? -- 名無しさん (2025-07-18 14:10:41)
- ↑番台はどうなってたのか。と言いたいがこれ233の方で議論したいよね。 -- 名無しさん (2025-07-21 07:53:20)
最終更新:2025年08月08日 17:03