JR東日本E235系電車

登録日:2025/07/18 Fri 14:04:30
更新日:2025/07/23 Wed 09:23:23
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E235系は、JR東日本が保有する一般形電車である。


概要

JR東日本が2015年から増備している一般型電車。2025年7月現在では、山手線横須賀総武線快速および総武線と直通する成田線などで運用されている。
2017年にローレル賞を受賞している。

開発経緯

2025年7月時点で、2006年から量産されていたE233系の後継車両として、昭和末期から平成初期に増備され、老朽化した205系やE217系の置き換えや、旅客サービスや環境面への配慮、安全性向上を目的に開発された。なお、前世代の一般型電車であるE233系やE531系、E129系(しなの鉄道SR1系含む)と同時に量産が進められている。

外観

車体はsustinaを採用しており、雨どいが外側に出ない、すっきりとした外観になっている。また、JR東日本の車両として初めて本格的にレーザー溶接が採用されている。
前面はE233系では若干の流線形であったが、本形式ではE231系やE531系に近いフラットな形状になっているほか、前面の窓は方向幕・前照灯・尾灯が含まれる範囲と運転台から見える範囲。これは前面窓ガラスの製造コスト低減と、破損時の修理の容易化を目指したものである。さらに、E233系まで無彩色であったこの個所もラインカラーが塗られ、0番台では窓直下周辺に近づくにつれて緑色と黒とのグラデーションが、1000番台では青とクリーム色のグラデーションが窓直下の黒い区画のすぐ下に施されている。この独特の前面形状はスマートウォッチやスマートフォン、電子レンジに例えられることも少なくはない。
なお、行先表示は進行方向後ろ側の場合、月毎に異なる植物の模様が表示される。なお、2019年から2020年にかけて、一部編成では花の模様の代わりに「SDGs」マークを表示するキャンペーンが実施されたこともあった。2025年7月時点で、この植物の模様は番台問わず共通のものが使用されている。
何月にどの植物が表示されるかの表を以下に記す。
植物の種類
1月 ツバキ
2月
3月 タンポポ
4月
5月 菖蒲
6月 アジサイ
7月 朝顔
8月 ヒマワリ
9月 野菊
10月 ススキ
11月 イチョウ
12月 シクラメン

車内

車内では、E231系500番台や3000番台を除くE233系では各乗降扉の上にあった広告用LCDモニターが、車端部の貫通扉直上や、窓上は荷棚の奥にも増設された。
当初は紙媒体広告を全廃する予定であったが、広告会社から反対の声が上がり、映像広告と紙媒体広告を併用する形になった。なお、209系の試作車(元901系)を含めた京浜東北線で運用されていた一部編成で2000年代に実験されていたため、この時期より紙媒体広告から映像広告への完全転換を構想していたことがうかがえる。
また、普通車ではバリアフリー対応として各車両の車端部をすべて優先席としたほか、各車両に1区画フリースペースを設置している。

機器類

電動車では、VVVF装置により省エネ性の高くなったSiC(炭化ケイ素)モジュールが採用され、JR東日本どころか普通鉄道では初めての採用となった。量産先行車では一部車両が、従前のSi(ケイ素)を使用したIGBT素子をトランジスタに使用するハイブリッド型であるが、それ以外の車両はトランジスタ部(MOSFET)もダイオード部もSiCを使用した素子が使われている。また、電動車各車両にVVVF装置が搭載され、ユニット方式ではなくなったために、故障時の応急措置や、転属時の組み換えが容易となっている。
+ ところでSiCって何?
炭化ケイ素(SiC)とは読んで字のごとく、炭素(C)とケイ素(Si)の化合物。
俗に「ダイヤモンドの親戚」とも呼ばれ、ダイヤモンドに次ぐ硬度、高い耐熱性を持つ。
また半導体としてはバンドギャップエネルギーが大きく(簡単に言うと扱えるエネルギー量が大きい)、特にパワー半導体に用いた場合従来のシリコン系以上に高耐圧かつ小型のデバイスを製造することが可能となる。
同じく次世代半導体材料として注目されている窒化ガリウム(GaN)と比べると、高電圧耐性や放熱性ではSiCに分があり、動作速度ではGaNに分があると言われている。要はSiC=パワータイプ、GaN=スピードタイプという感じだ。
モニタ装置(伝送系装置)は、1998年のE231系から長いこと使用されてきたTIMSが電車の高機能化への対応に限界があるため、伝送方式を変更し、大容量通信に対応したINTEROSに変更された。
INTEROSになったことでできるようになった機能の例とその恩恵を一つ挙げると、それまでは車上のVVVF制御装置で計算していたモーターへの必要なトルクの計算をINTEROSで行うようになったため、故障時のバックアップの自動化や転属時の編成組成変更の容易化ができ、柔軟性が高まっている。
このINTEROSは209系を使用した試験車両、「MUE-TRAIN」で2008年より試験されていた。

番台区分

0番台(山手線)

2015年に試作車が、2017年から2019年に量産車が導入された。2025年7月時点で、総勢50編成が山手線用に配置されている。
全車両が普通車、オールロングシート。
ラインカラーは従来のステンレス製の通勤・近郊・一般型電車でおなじみであった側面窓の上下に1本ずつ配置するものではなく、客扉とその直上だけに配置したものとなっている。これは、2015年時点で山手線の大半の駅にホームドアが設置済みであり、従前の配置ではラインカラーが見えなくなってしまうために、配置を見直した。
ヤテ4・5編成を除き、10号車には元E231系のサハE230形4600番台を改造した、サハE235形4600番台を組み込んでいる。ホームドア整備に伴う6扉車廃止に伴う代替の4扉車で、2010年から2011年にかけて増備された車両であり、内装に関してはE231・E233系の名残が随所にみられる。E231系の中でも群を抜いて新しいグループでもあるほか、田端~田町間で並走する京浜東北線のE233系のドア位置に合わせるための措置を行った車両であるため、新造するメリットが薄かった。なお、2編成だけE235系の新造車を10号車にあてがっているが、これは製造・改造スケジュール上の観点から新造することになった。
量産先行車は先頭車と優先席を除き、荷棚の高さが若干量産車より高い。
2015年11月30日に先行車は営業運転を開始したが、停止位置の不整合やドア、ブレーキの故障などが当日相次ぎ、早々と運用を離脱した。
この初期不良の原因は、試運転時に実際の環境に近い状況(主に荷重)でのシミュレートが行われておらず、INTEROSが対応しきれずに不具合を起こしたものと考えられた。
INTEROSの改修及び再度の試運転を経て2016年3月7日より営業運転に復帰、同年6月に量産化が発表され、2017年4月から2019年末まで量産が行われた。
E235系0番台の増備によって山手線を引退したE231系500番台は、中央・総武線各駅停車へと転出し、そこに在籍していた209系500番台、E231系0・900番台のほとんどを武蔵野線川越八高線へと押し出し、各線の205系を引退させた。なお、武蔵野線の205系の一部はジャカルタへ譲渡されたため、3段階の玉突き転属が発生したことになる。

1000番台(横須賀・総武線快速系統)

2020年から2024年にかけて、11両編成49本、4両編成44本が増備された。
ラインカラーは山手線の0番台と異なり、従前の配置に近い。しかし、E217系とはパターンが異なり窓下は上半分がクリーム色、下半分が青色である。
209系の流れをくむE217系では11両編成のMT比は4:7となっていたが、E235系では異常時の冗長性確保や今後の性能向上を見据えて6:5に変更されている。
本番台はそれまで近郊型電車、あるいはそれに値する仕様の一般型電車が充当されていた路線への導入が行われたが、従来の近郊型に設置されていたクロスシートが設置されずに、オールロングシートとなっている。中距離電車に相当する路線ではあるが、大船~千葉間はほとんどの停車駅で乗り換えができるために旅客の流動が激しいため、通路を広く取れるロングシートが採用された*1
0番台との相違点としてトイレが設置されていたり、E531系やE233系でも採用された二等辺三角形型のつり革から、正三角形に近い形のつり革に変更されていたりする。
首都圏の中距離電車ではおなじみとなった、2階建てのグリーン車2両を連結している。グリーン車では初めて電源コンセントや無料Wi-Fiが設置された。
横須賀・総武線快速系統の車両では初めて半自動ドアが採用され、各乗降扉横に開閉ボタンが設置されている。
走行用蓄電池を搭載しており、停電時に近くの駅まで走れるようにしている。
初期に製造された編成は横須賀線内で湘南新宿ラインと車両編成に差があるため、その差を極力なくすための付属編成の連結位置変更も視野に入れて、電気連結器が通常使用しないほうにも取り付けられたが、結局この計画がなくなったのか通常使用しない電気連結器が取り外されている。
また、2022年製造の編成以降は、信号炎管の省略のほか、内装が一部変更され、ドア及びドア横の柱への化粧板省略、半自動ドアボタンが柱への埋め込み型ではなく突出した形になっている、荷棚がパイプ状になっているなど、E231系に近い仕様に先祖返りしている箇所が目立つ。2023年4月以降製造の編成では、グリーン車の内装の簡素化も実施された。社会的情勢により、車両製造コストを見直す必要に迫られた結果の産物であり、過去に国鉄が量産した201系電車よろしく「軽装車」と趣味者の間で呼ばれることが多い。

派生形式

本形式も209系以来、JR東日本の新系列通勤電車の慣例となっている自社・他社を問わない派生形式が登場している。

E131系

E235系をベースにした、郊外向け一般型車両。閑散線区への投資を目的に開発されており、モニタリング装置がINTEROSではなくMON*2であったり、乗降扉上モニターが広告のものはなく、案内用のものは千鳥配置になっていたりなど、コストカットがなされている。外房・内房線、成田・鹿島線、宇都宮線小金井~黒磯間、日光線、相模線、鶴見線及び仙石線への導入が行われている。ワンマン運転の実施や房総各線を除いて在籍していた205系の置き換えが目的である。

東急2020系・6020系・3020系

E235系をベースに増備された東急電鉄の電車。通称2020系列。
2020系は田園都市線、6020系は大井町線、3020系は目黒線向けに導入。
車内LCDは2020系がE235系同様、車端部の貫通扉直上や窓上荷棚の奥にも増設されたのに対し、6020系と3020系は従来車と同じく乗降扉の上のみ設置されている。
なお、既存の3000系や東横線の5050系もこの2020系列に合わせたラッピングに変更される予定である。

都営地下鉄5500形

都営浅草線及び直通する京急、京成、北総線内で運用される電車。SUSTINAによる車体やモニタ装置へのINTEROS採用、方向幕と一体化した尾灯、内装のいくつかなどE235系との共通項がみられる。

関連作品

2016年に長編成仕様で0番台が発売。2020年にはE231系500番台に代わって単品発売が始まり、E231系が持っていたドアの開閉ギミックを引き継いでいる。単品の方は後尾車用のイラスト幕ステッカーが全種付属し、好きなものが選べるのが嬉しいところ。
1000番台も2020年8月に早速製品化されている。さりげなくダブルデッカー中間車が新規金型になっている*3

0番台がモチーフの品川めぐるが登場。手に持ったスマホにはよく見ると「235」と書かれている。
後述のように実際の運行開始日と公式が定める運行開始日に差異があるが、誕生日は実際の初運行開始日準拠で11月30日*4

E5はやぶさ専用ザイライナーとしてE235ヤマノテが登場。腕部を強化するパーツにあたる。
玩具のZギアオリジナルで1000番台も登場する。

2017年アーケード版の山手線で運転可能であり、はしろう山手線でプレステ(とSwitch)にも登場。

余談

  • E235系は上野東京ラインや湘南新宿ライン系統、京浜東北線や横浜線への新製導入が2020年頃には計画されていた。特に京浜東北線への導入は2024年度以降と明確な時期を計画していたが、2025年7月現在も山手線と横須賀・総武線の2系統のみにしか導入されていない。車両動向を追うファンの間では、2020年代初頭はパンデミックの影響があり、旅客需要・供給の大幅縮小などに伴い計画が立ち消えになったと見る向きが強い。
    • また、広告用デジタルサイネージなどの新要素の採用事例が少なく、令和になってもE233系ベースの車両が製造され続けているのも含め、JR東日本的には失敗作ではないかという声も。ぶっちゃけE217系の後継はE233系にした方が良かったのでは…

  • 2025年1月、JR東日本輸送サービス労働組合の資料により、中央・総武線へのE235系導入が計画されていることが発覚した。しかし、導入時期などの詳細は不明である。

  • 2015年営業開始ではあるが、上述の通り初日に運行休止となったため、2016年の運行再開を正式な営業運転開始とJR東日本はみなしている。そのため、ローレル賞は2017年に受賞することになった。

  • 急行型電車の153系の食堂車に向けて、マイクロ波を使用する調理器具を搭載することが決まり、電子レンジという名前が採用され、その後国内で定着した。鉄道車両に搭載する機器の名称が時代を置いて電車のデザインの例えに使われる、不思議な縁ができてしまった。

追記・修正はE235系のすべての植物の表示を確認できた人にお願いします。

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最終更新:2025年07月23日 09:23

*1 複々線化前の総武線では、同じく4扉ロングシートの101系が快速運用についていたこともあった。

*2 TIMSを使っているE231・E531・E233系と同時期に量産された、地方向け3扉車のE721系やE129系もMONを採用していた。

*3 E531系など既存車両は近郊電車の流用で無意味な帯モールドが存在している。

*4 -同様に実際の運行開始日と公式が定める運行開始日に差異があるが、後者が誕生日に設定された前例とは真逆。実装年が2019年なので公式が定める運行開始日に統一出来たはずだがそうならなかった理由は不明。