登録日:2025/07/18 Fri 14:50:00
更新日:2025/07/18 Fri 15:05:59
所要時間:約 14 分で読めるぷて
【概要】
亜電は
Steamで配信されているインディーゲームである。制作、開発は鷹館氏。
ゲームジャンルは一人用のベルトスクロールアクションだが、リズムに合わせてキャラクターを動かすリズムアクションゲームとしての側面もある。
【あらすじ】
空を割って落ちてきた記憶喪失の少女とあかは、落下地点のステージ上にいた少女こばこに教えられたダンスの魅力に憑りつかれる
直後現れた人々を襲う存在暴との対峙で、とあかは世界を救うという自らの使命を思い出す
世界を救うため、とあかはダンスで戦うが人々の思惑は衝突し事態は混迷を極めていく
【特徴】
ドットで描かれたどこか懐かしさを感じるビジュアルと、可愛らしく魅力的なキャラクターたち、そして、そこから展開されるガッツリとしたSFストーリーが本作の大きな特徴である。
また、冒頭でも触れた通り「ダンス」がこのゲームにおいて重要な要素となっている。戦闘では攻撃でボスをひるませた後、リズムに合わせて一緒にダンスを踊る。そしてボルテージが最大まで高まるとなぜか相手は爆発し、上空に吹っ飛ぶという非常に特徴的な演出がなされている。
戦闘操作は移動用の矢印キー、ダッシュと投げフィニッシュを行うZボタン、そして体力回復と投げ中断を行うXボタンの3種類と非常にシンプルであり、難易度Normalなら体力が尽きてもその場で復活できるので、ゲーム初心者にも優しい設計になっている。
【登場人物】
とあか
第一時節の主人公。作中の登場人物の中で最も背が高い。
空から落ちてきたところをこばこに発見され、そのままの流れでダンスを教わる。以降はダンスの魅力に惹かれ、暴から人々を守るという使命を胸に、各地で暴との戦いを繰り広げるようになる。
アウターアートは位亜螺(いあら)
位置を操る能力で、空間を開けて瞬間移動したり、室外機を飛ばして攻撃したりできる。かなり強力な能力だが、ダンスの方が良いという理由で使いたがらなかったので活躍する場面は少ない。
世界の外に出たことで、自分が亜電を守るために作られた存在であることを知り、亜電全体の利益のために雲一九二を放棄しようとする。だが、そこにこばこが現れ、ダンスを交えた全力の説得を受けたことで、その考えを改める。その後はこばこと協力し、世界を守るために腸を倒すべく行動する。
分岐ルートではラスボスとして登場する。腸の圧倒的な力に絶望していたむい-2の前に、空間を割って突然現れ、腸の核を一撃で消し飛ばす。その後、むい-2に上記の言葉を投げかけてダンスの大切さを説くが、”ダンス”を知らないむい-2はとあかの無神経な発言に激怒し、そのまま戦闘に突入する。
ラスボスなだけあって非常に手強く、第三時節のすずめに並ぶ強敵。全キャラ中最多の形態数を持ち、多彩な攻撃パターンでプレイヤーを翻弄する。特に最終形態の「ライイ」ではこれまでに使用してきた技を組み合わせた怒涛の連撃を仕掛けてくる。
何度攻撃を受けてもダンスをやめないとあかの姿に、むい-2は最初こそ困惑するが、全力のぶつかり合いを経て、最終的には二人でダンスするにまで至った。戦闘後、とあかはむい-2に何かを渡すと、そのまま姿を消してしまった。
こばこ
ダンスっていうのはお互いが本気でぶつからないと始まらない!
ステージカーでアートを披露していた少女。ピンクのリュックがトレードマーク。
空から落ちてきたとあかにダンスを教え、その場を乗り切ろうとした。この世界に来たばかりの頃、なのに助けられた経験があり、それ以来「先輩」と呼んで慕っている。物語では、とあかと協力して暴に襲われる人々を救おうと奮闘する。
アウターアートは分界縮岐(ぶんかいしゅくぎ)
シャッターを下ろす能力で、一度に複数個のシャッターを出すこともできる。耐久力は高めで、すずめの攻撃にもある程度耐えることができる。
商店街での会話で、実は最初からむいの姿が見えていたことが明かされる。自分以外の誰にも見えていなかったため、「そういうもの」として接してきたが、暴に襲われるむい達を見殺しにしてきたという罪悪感は拭えなかった。とあかが現れてからは、その想いを抱えながら、とあかと共に暴からむい達を助けようと行動している。
ちなみに、分岐ルートのラストでも少しだけ登場する。出番は一瞬だけだが、むい-2に姿が見えていたと告白する重要なシーンになっている。
いのい
常にビデオカメラを携帯しているお姉さん。なのとは元同僚の関係にある。
もともとは亜電を破壊するために、2256年の現実世界からこの雲に侵入してきた人物であり、無力化された仲間たちを復活させるべく、各地で調査を続けている。
すずめを倒すため球場へ向かおうとする場面では、とあかを呼び止め、亜電や透名化、器といった重要な概念について丁寧に説明してくれた。
第一時節終盤、田園でたがねから変わり果てた現実世界の現状を聞かされ、ショックを受けた様子でその場を去ってしまう。
アウターアートは近影図無(きんえいずむ)
カメラで撮影した対象を映像で再現する能力で、撮影した人のアウターアートを再現することも可能。強くない?
第三時節の終盤で再登場。県営ホールで亜電破壊のために動いていたいのい。そこへ、彼女を探してやってきたなのとこばこが現れる。なのは亜電を守る立場として協力を求めるが、いのいはそれを拒否。さらに会話の中で、なのが自分を裏切った真意を知ったことで激怒し、戦いが始まる。
この戦闘では、プレイヤーキャラとしてなのを操作できる。基本的な性能はこばこと同じだが、BGM「グランドリバースコントラディクション」のサビに合わせて背景演出が変化する
という特徴的な演出がある。どこか切なさを感じさせる曲調と、かつての仲間との戦いという熱いシチュエーションが重なり、演出面・物語面ともに非常に評価の高い戦闘となっている。
たがね
海岸で釣りをしていた少女(?)。うさ耳のような長いリボンが特徴的。いのいのいた時代よりもさらに未来、2408年の世界から亜電を守るためにこの世界へやってきた。いのいやとあかが現れる前からこの世界におり、かつてここで起きた抗争やその結末についても知っている。
アウターアートは遊波遊打(ゆうはゆうだ)
衝撃を操る能力。地面から衝撃波を発生させたり、衝撃波によって高くジャンプしたりする。
あぷて
商店街にあるメイド理髪店で働いているメイドさん。~ぷてという語尾が特徴。
“ご主人様”には丁寧に接する一方、それ以外の相手には割と辛辣な態度をとる。
あぷて撃破後は自機のアップグレードが可能になり、体力やスタミナ、攻撃力などを強化できるようになる。これらの強化は時節をまたいで引き継がれる。
アウターアートはレアノ
水を操る能力で、戦闘ではバケツからレーザーのように水を発射したり、追尾性能のある水(?)をまき散らしたりして攻撃する。
世界をリセットする方法を教えてもらうため、むい-2が彼女の店を訪れる。しかし、あぷては「なんのことか分からないぷて!」としらばっくれてこれを拒否し、戦闘に突入。戦闘後は一転して協力的になり、世界をリセットする方法をむい-2にだけ教える。
言動からも察せられるように、あぷては雷這に接続している“プレイヤー”の存在を認識しており、その人物のことを「ご主人様」と呼んでいる。アップグレードが時節をまたいで引き継がれるのも、操作対象のキャラではなく雷這システムそのものを強化しているためである。
なの
こばこの先輩にあたる人物。背が低いため、見た目ではあまり先輩らしく見えない。この世界に来たばかりのこばこをいろいろと手助けしており、そのこともあって彼女からは慕われている。
いのいと同様に、本来は2256年の現実世界から亜電を破壊するためにこの世界へやってきた。しかし、何らかの理由から現在は亜電を守るような行動を取っており、そのためいのいからは裏切り者と見なされている。
とあかとの戦闘で敗北した際には、いのいから「手を抜いていたのではないか」と疑われたり、とあかがすずめのもとに現れた際には「なのの差し金か?」と関与を疑われたりするなど、実力を隠しているかのような、どこか不可解な行動も見受けられる。
アウターアートはフロン
花を咲かせる能力で、咲いた花からさらに弾を飛ばすこともできる。戦闘では、リーチの長い斧と、時間差で飛んでくる花の弾幕が合わさって、かなり手強い。
球場から逃げ出してきたこばこと合流し、その後の会話で、亜電を守ろうと思った理由や、腸の目的について語る。こばことむいのやりとりから、とあかの能力が必要だと知ると、いのいの協力を得るべく県営ホールへ向かう。いのいを説得するため、雷這の接続先を無理やり切り替え、説得を試みるも、自分が裏切った理由を知ったいのいの怒りを買い、そのまま戦闘に突入。戦闘後は力を使い果たし、こばこにすべてを託して倒れてしまう。
分岐ルートでは終盤に敵として立ちはだかる。その瞳からは光が失われており、かつて第一時節で戦った時よりも遥かに強化されている。圧倒的な物量の弾幕で、むい-2の行く手を阻む。
BGMは第三時節のいのい戦と同じ「グランドリバースコントラディクション」。曲の盛り上がりに合わせて背景が変化し、やがて一面が大量の花で埋め尽くされる演出が印象的。
すずめ
ツインテールのオレンジ髪が印象的な、ギャル風の風貌を持つ人物。
性格は見た目とは対照的にクールかつ真面目で、責任感が強い。この世界で生まれた存在であり、この世界を守ることを最優先に行動している。
「眼」の器をその身に取り込んでおり、戦闘能力が非常に高い。住民たちに暴との接触を避けさせていた結果、周囲からは恐れられる存在となっている。
アウターアートは魔護羅眼(まごらがん)
視線を操る能力。作中では、地面から黒いトゲを生やす、影を使って瞬間移動する、目を合わせた相手を拘束するといった多彩な使い方を見せた。トゲの威力は非常に高く、一般的な人間であれば直撃すれば即死するほど。
臓器の干渉によって異形の姿に変身したり、腸に殺されかけた挙句、腸に操られて世界の破壊に加担したりと散々な目にあっている。こばことの戦闘によって意識を取り戻した後は、自らの力で腸の動きを封じ、こばこに世界を託し、腸と共に世界の外へ消えていった。
人
[人]←コレ。いわゆるモブであり、作画コスト軽減のために長方形の枠線に人という文字が描かれているだけという、非常に簡素な見た目をしている。雲の内部に大量に存在するが、暴への対抗手段を持っていないのでよく殺される。また、死ぬと表記が[人]から[死]に変わる。
作画コスト軽減のために簡素な見た目になっている…というのは半分事実である。作中において[人]という表記になっている人間は「透名化」という状態にある人間を表している。透名化された人間は、雲内部において個として認識されなくなり、周囲からは「ただ人がいる」としか認識されなくなる。
むい
[人]の大半を占める人物。捻食の影響で自身が増殖し続けており、さらに透名化によって他者から認識されなくなっている。見た目はどれも同じだが、それぞれ微妙に性格が異なる。全体的に口が悪い
むい-2
病院で診察を受けていたむい。第二時節の主人公であり、赤いむいを生み出した個体である。赤むいと行動するにつれて友情が芽生え、共に透名化と捻食の問題を解決しようと約束する。
むい-2が生存している状態ですずめを倒すとルートが分岐し、むい-2のまま物語が進行する。こちらのルートではすずめに殺された赤むいの遺志を継ぎ、世界の崩壊を回避する方法を探して各地を巡ることになる。仲間割れ、腸からの勧誘、想定外の人物の襲撃…
数々の困難を乗り越えた先に待ち受ける結末とは…
むい
わたしだけが持ってる、この力には何か意味があるはず
わたしがこの力で、問題の原因を突き止めて、解決してみせる
むい-2から生まれた特異な個体。服の色は赤く、他のむいと違って眼鏡もかけていない。
暴に襲われた際に戦闘能力が開花し、暴を撃退できるようになる。当初は「暴を倒せても何も解決しない」と弱気な姿勢を見せていたが、むい-2との行動を通じて次第に覚悟を固めていく。
最終的には、透名化と捻食の問題を自らの手で解決することを決意し、運命に立ち向かう存在となっていった。
むい-6
捻食の原因を解明するために、家に引きこもっていた特異な個体。他のむいと異なり、帽子を被らず、眼鏡もかけていない。
一人で思索を重ねていたためか、部屋の中は散らかっており、謎のグラフが書かれたホワイトボードや、正体不明の物が詰まった黒い袋などが放置されている。
捻食の正体には他の誰よりも早く気づいており、赤むいを連れてきたむい-2に対して上記の言葉を投げかけ、彼女を追い返した。
むい-2との会話の後、腸からコンタクトを受け、世界を変えるために協力しようという提案を受け入れる。以降は腸の影響を受けたのか、目は赤と青の十字に輝き、言動もどこか異様なものになっていく。
第二時節終盤では、外の世界に出るか、世界をリセットするかで迷っていたむい-2に対し、腸との協力を提案。
その後は、腸と手を組むことの意義やメリット、世界の変革方法、人類の進化と亜電の本質などについて延々と語り続け、むい-2をドン引きさせる。
最終的にむい-2に拒絶されると、「逃げられないよ?」と不気味な笑みを浮かべて脅し、そのまま去っていった。
【用語】
亜電
未来の世界で発見された、意志を持つ「生きた電気」。生物の構造を模倣しており、四つの電造臓器が核となって動いている。その登場によって人類はさらなる発展を遂げたが、やがて亜電は人類のリソースを吸収しながら増殖・暴走し、文明を崩壊させた。
雲
亜電の内部に無数に存在する、それぞれが固有の構造を持つ世界群。
亜電のふるまいはこの雲によって大きく左右されるため、人類は亜電を破壊する手段として、雲へと侵入し、内部から亜電を崩壊させようとした。
暴
雲の中に点在する正体不明の存在。青い線で構成された幾何学的な図形の姿をしており、「人」を殺すことで雲の容量削減を行う。
アウターアート
亜電内部で使用可能な、個人ごとに異なる固有の特殊能力。戦闘時にはカットイン演出と共にアウターアート名および技名が表示される。能力の内容は人それぞれで、シャッターを下ろす、衝撃波を発生させる、視線を操るなど、人によって全く異なる。
透名化
雲の中で発生する特殊な現象。透名化された人間は思考を制限され、他者との関係性を築くことができなくなる。
もともとは、雲の容量を節約するためのシステム上の処理であり、本来は雲の内部で生まれた人間だけに発生する現象とされていた。
しかし「眼」の器を取り込んだすずめの能力により、外部から雲に侵入した人間のほとんどが透名化してしまう事態が引き起こされた。
捻食
腸の暴によって引き起こされる、消化器の機能が反転し自己が増殖する異常現象。この現象により、むいは無限に増殖し続ける存在になってしまった。嘔吐することによって増殖が行われるが、死体からも新たな個体が発生するので、放置すると増殖したむいの体で世界が崩壊してしまう。
腸
亜電を構成する四つの電造臓器のうちの一つで、「増やす」ことを目的として存在している。増殖のためのリソースを確保するためにむいに捻食を発現させ、雲一九二を襲撃した。
【余談】
- 開発者の鷹館氏の投稿により、過去作の『AISZplus』が本作と同じ世界観を共有していることが明かされている。『AISZplus』に登場した雑魚敵の一部が『亜電』にも登場しており、さらに『AISZplus』の1面ボスが本作ではラスボス格にまで昇格していることが確認できる。
- 一部シーンで過去作である夢核のBGMが流用されている。サウンドトラックにはそれらの楽曲も収録されているので少しお得。
追記しまし/
- 結核みたいな名前の前作あるよね -- 名無しさん (2025-07-18 14:59:25)
最終更新:2025年07月18日 15:05