登録日:2025/06/08 (日) 08:15:57
更新日:2025/06/09 Mon 20:35:38NEW!
所要時間:約 ? 分で読めます
「僕は西暦2311年からやって来たんだ。この時代では……、タイムリープって呼ばれてるのかな」
『リライト』とは、早川書房より2012年に刊行された小説。
著者は法条遥。
1992年を舞台に、一人の女子中学生が
タイムスリップしてきた未来人を名乗る少年と恋に落ちる物語である。
出だしからして分かる人には分かるかもしれないが、筒井康隆の名作SF小説『
時をかける少女』へのリスペクトに満ちた作品であり、浮世離れした少年とヒロインの瑞々しい恋、彼女の献身がもたらした奇跡、そして「彼と彼女だけ」の夏の思い出が爽やかに描かれている。
ストーリー
1992年の7月、中学生の美雪のクラスに突然転校してきた美少年の保彦。
ある日美雪は、保彦が突然誰もいない旧校舎の教室に現れたところを目撃してしまう。
それを見られた保彦は、自分は2311年からやって来た未来人だと告白し、タイムリープの薬を彼女に見せる。
二人だけの秘密を共有し合い、惹かれ合う美雪と保彦。
ところが、終業式があった7月21日、二人が密会していた旧校舎が突然崩壊する事件が起こり……。
登場人物
1992年時点で、静岡県岡部町のN中学校に通う中学2年生の女子。
7月3日、転校生の保彦が旧校舎の2階の教室に現れた現場を目撃し、彼が未来人だと知ってしまう。
その後、彼と交流を深めるうちに想いを寄せ始めるも、7月21日に旧校舎が突然崩壊する事件に巻き込まれ、保彦に突き飛ばされる形で崩落から免れる。
咄嗟に、保彦が持っていたタイムリープの薬を使って10年後に飛び、目の前にあった謎の機械を持ち、1992年に帰還。
その機械を操作するうちに保彦の持っていた端末から着信音が流れ、結果保彦を助けられた。
その夜、「その携帯電話を10年後の7月21日までに持っておくこと」と保彦と約束を交わし、彼とキスをして別れた。
……そしてその10年後の2002年7月21日、過去の自分がいつ来てもいいように、実家にて携帯電話を用意して彼女が持ち去るのを待っていた、のだが……?
1992年7月1日にN中学校の2年4組に転入してきた謎の美少年。
どこか現代の常識に疎く、世間知らずな面がある風変わりな人物として周囲から浮いていた。
その正体は2311年からやって来たいわゆる「未来人」であり、タイムリープできる薬を開発した科学者。
2311年では成人扱いとなっているため、薬の開発も出来た模様。
7月3日、美雪にタイムリープの現場を見られ、彼女に秘密を話して、ある目的を遂行するために行動を共にして深い関係となる。
しかし7月21日、美雪との密会中に突然旧校舎が崩壊し、彼女を庇って建物の崩落に巻き込まれてしまう。
だが、美雪がタイムリープして携帯電話を10年後から取ってきたおかげで、端末に偶然着信があり、その着信音で救助隊に発見された。
その夜、突然美雪に別れを告げ、因果を守るために「携帯電話を大事に持っておく」と約束させ、キスをして元の時代へと帰っていった。
追記・修正は10年前の自分用に携帯電話を用意してからお願いします。
「嘘」
嘘だ。ありえない。
「『過去』が、変わってる……?」
SF史上最悪のパラドックス
その完璧にして無慈悲な収束
概要
『リライト』とは、2012年に早川書房から刊行されたSFサスペンス小説。
2013年には、ハヤカワ文庫JAより文庫版が刊行された。
著者は『バイロケーション』で日本ホラー小説大賞を受賞した法条遥。
物語プロローグこそ、項目冒頭のような『時をかける少女』をオマージュした青春SFラブストーリーの体をしているが、10年後の描写において、因果の関係上「来なければならないはず」の「過去の自分」が何故か来なかったという事態が発生し、主人公・美雪は混乱する。
そして、1992年7月の「実際の」保彦の描写と2002年の美雪が異変を調査する描写が交互に描かれ、次第に読者の間で違和感が生じていくこととなる。
やがてその違和感はある人物の異変に集約し、とんでもない真相が明らかになった挙句、物語の根幹すら揺るがす「パラドックス」が発生してしまう。
緻密なタイムスリップによる因果律の変化やそれらが明らかとなり、伏線が回収されていく爽快感。
そして、人間の悪意により生じた、あまりに無慈悲で後味の悪い結末。
これらSF作品のエッセンスを詰め込んだ、極めて完成度の高い物語により、前述した「SF史上最悪のパラドックス」というキャッチコピーと共に各方面から絶賛された。
また、湊かなえに代表される、人間の悪意を押し出したミステリージャンル「イヤミス」にちなんで、本作を「理不尽SF」と定義づけられることもあった。
しかし、作中で矢継ぎ早に明かされる新情報や複雑極まりないトリックなど、一度読んだだけでは全て理解しにくい程度には難解であり、二回読んで理解しようとすることは間違いない。
ストーリー
2002年7月21日。
小説家の石田美雪は、10年前の1992年7月21日から「飛んでくる」14歳の自分を、用意した携帯電話と共に待っていた。
全ては、未来人・園田保彦を助けるという約束のために。
しかし、予定の時間になっても10年前の自分は来なかった。
不安に襲われた美雪は、他にも「現在」に影響は出ていないのか、元クラスメイトの現状を調査し始める。
そこで、クラスメイトの何人かが不審な死を遂げていることが発覚。
同時に、自分のファンを名乗るストーカーも美雪の周囲にうろつき始める。
不安と混乱の中、中学の同窓会が開催されることとなり、そこで美雪は、衝撃の真実を目の当たりにする。
登場人物
本作の主人公。職業は小説家。
結婚しているため、1992年時点での旧姓は「大槻(おおつき)」。
1992年の7月に保彦とかけがえのない日々を過ごし、彼を助けるための約束を交わしたという「自分だけ」の思い出を大切にしている。
それまで文章はほとんど書かないタイプだったが、大学時代に暇潰しのために保彦との思い出を基にした小説を書き、それが応募された新人賞で編集者の目に留まり、オリジナル作品を書いて「高峰文子(たかみね あやこ)」としてデビューした。
そして2002年、10年前からタイムリープして携帯電話を取りに来るはずの過去の自分が現れず、不審に思って他の影響を調べるうちに、クラスメイトの間で奇妙な出来事や死者が続発している状況に混乱。
そうこうするうちに、小説のネタに困った彼女は、処女作である『時を翔る少女』を手直しして出版することになるが……。
2311年からやって来たという未来人。
ある小説を大切にしており、それに書かれている時代が1990年代初めだと突き止め、小説のオリジナルを探すことと、小説と同じ学生としての体験をするためにタイムリープして来たと言う。
本を探している間は本屋や図書館を巡ったり、蔵で遊んだり、縁日を楽しんだりと、あまり本業に熱は入っていないようだった。
一方で、都合の悪い事態が発生すると洗脳器具をクラスメイトに躊躇なく使うなど、不穏な動きもしていた。
美雪の記憶が正しければ、7月21日の夜に未来に帰り、その後の2年4組には存在しないはず、だが……。
2年4組のクラス委員長の女子生徒。
真面目で融通が利かないタイプだが、端正な顔立ちをしていた。
ジャーナリスト志望であり、高校卒業後、新聞社でアルバイトをしていたが、自宅への帰り道に何者かに石で撲殺されてしまう。
第2章「1992年①」の「私」。
保彦に繰り返し未来のことを聞きたがった。
2年4組の女子生徒。
桜井唯が亡くなったので、彼女が同窓会の幹事を代行することになった。
同窓会の呼びかけの際、美雪にクラスメイトの異変を知らせる。
第8章「1992年④」の「私」。
当時は学校の先生になるのが夢だった。
1992年7月21日、タイムリープして携帯電話を持ち帰り、保彦を救出。その夜、彼とキスをして別れた。
2年4組の副委員長の男子生徒。
明るく社交的な性格であり、風変わりな保彦とは一番仲が良かった。
2002年においてはライターをしており、同窓会の幹事としてクラスメイト達に招集をかける。
そんな中、偶然美雪と再会した際に、彼女が小説家になったと知るとそれを奇妙に思う。
2年4組の女子生徒。
クラス一の美少女として人気者だが、性格は悪く、地味な雨宮友恵を嫌い、率先していじめていた。
しかし、芸能事務所に所属後、整形手術に失敗してタレントへの道を断たれ、脚本家に転換。
その矢先に自宅への帰り道の途中で撲殺された。
第4章「1992年②」の「私」。
保彦と小説探しをしたが、急に入ってきた友恵の誘いで彼女の家の蔵に探しに行くことになり、彼女の邪魔に内心苛立ちを覚える。
2年4組の女子生徒。
地味で陰気な少女であり、大の読書家でクラスでも一人で本を読むことが多い。
反面、クラスの大半にいじめられており、唯一の友達は美雪だったが、美雪が友恵の部屋である小説を読もうとしたことがきっかけで喧嘩となり、そのまま疎遠となってしまった。
そして2002年8月31日の同窓会、現れた彼女は学生時代から一変して美人になっていたが……?
第6章「1992年③」と第10章「1992年⑤」の「私」。
亜由美と保彦の縁日デートを陰で尾行し、時折邪魔をするが、その顛末は彼女は「予め知っていた」ようだった。
そして、何度も保彦から記憶操作されていたようである。
彼女は、保彦を未来に帰らせないため、ある「秘策」を思いつこうとしていた……。
2年4組の女子生徒。
口では友恵の境遇に同情しているが、陰では彼女をいじめていた偽善的な性格。
小説家志望であり、2002年8月に「突然姿を現した」男性に身の危険を忠告された後、謎の人物に殺されかけ、腕を怪我した。
2年4組の男子生徒。野球部所属。
快活なスポーツ男児だったが、高校進学以降は荒んだ生活を送り、女性を3人も強姦するほどにまで落ちぶれた。
その後、大学で登山部に入ったが、登山中に遭難して死亡した。
なお、2002年7月21日に、彼の母親が庭で彼の「幽霊」を見たと言う。
2年4組の女子生徒。男勝りな性格。
園田保彦のことは知らぬ存ぜぬで通したが、二次会での真実では……。
2年4組の担任教師。教科担当は歴史。
2002年では教師を引退しており、郷土史の編纂作業を行っている。
美雪の担当編集。
『時を翔る少女』の改稿作業を手伝い、「説得力はないけどリアリティはある」と評価した。
美雪の周囲にストーカーがいると警告し、自分にもお手上げであると伝える。
作家・高峰文子(美雪)の周囲に現れる謎の男。
「高峰文子の本名や住所といったプロフィールを教えろ」と編集部に電話をかけ、時として出版社に押し寄せてきた。
静岡県警の刑事。
元2年4組の女子が次々と殺された事件の捜査をしており、ストーキング被害に遭った美雪にも事情を聴く。
美雪の夫。
建築士であり、美雪とは出版社のパーティーで知り合い、交際関係後結婚した。
しかし、結婚直後に単身赴任が決まり、南米に妻を残して旅立ってしまう。
その後は1週間に1回の電話を続けており、美雪も特に悪い感情を抱いていない。
キーワード
美雪が保彦の秘密を知り、二人の思い出となった場所。
木造で当時はだいぶガタが来ており、7月21日に突然崩壊した。
その崩壊に保彦は巻き込まれたが、救出されている。
取り壊しの後はクラブハウスに建て直された。
2311年で保彦が大切にしている、ボロボロの状態の紙の本。
最初と最後の部分しか読めず、「90年代の初めの中学校」が舞台であることしかわからなかったらしい。
そのため、保彦は300年前へとタイムリープして、オリジナル本を探すついでに学生生活を体験したくなったのだ。
保彦が開発した、タイムリープするための薬。ラベンダーの香りがする錠剤。
念じた時間に自在に時間旅行が可能。
保彦用に調整してあるため、彼以外の人間が使用すると、目標の時間に5秒間しか滞在できない。
保彦が欠かさず使用している防御機能。
これを張っていると、周囲からの衝撃から身を守るだけでなく、ウイルスの感染も防げる。
一定の強さを超えると、解除されてしまう危険性はある。
保彦の持つ未来の機械の一つ。
人間の記憶を自在に操作することが可能。
美雪が2002年7月21日から「持ってきた」通信機器。いわゆるガラケー。
これを適当に操作することで偶然保彦の携帯端末に受信し、着信音が鳴ったことで保彦は救出された。
因果を保つために美雪は10年間大切に保管していたが、指定の時間を過ぎても過去の自分は現れず、そのまま放置されている。
第2章において保彦が「私」にプレゼントした未来製の指輪。
美雪が大学時代、急に沸いた創作意欲により書いた小説。
1992年7月の保彦との思い出を基に執筆した半自叙伝のようなものだが、周囲にはフィクションと思われている。
2002年7月、小説のネタに困った美雪はこれを出版することになるが、それは本来「ありえない」ものだった。
中学卒業時に卒業生に配布される冊子。
中学時の思い出の写真が載っており、1ヶ月も在籍しなかった園田保彦は載るはずがない。
しかし、美雪が確認したところ、彼が中学3年の時も在籍していた記録が残っており……。
酒井茂が開催を企画した、1992年2年4組(3年でクラス替えはしなかったためメンバーはそのまま)の同窓会。
開催日は2002年8月31日。
茂は必ず全員参加を呼びかけており、そこで美雪の小説『時を翔る少女』を紹介した。
「<人が><文などを>書き直す;<歴史>を(都合の)いいように改竄する。」
「〔比喩的に〕…を改める、…の焼き直しをする。」
という意味の英単語。本作では、「歴史の改竄」という意味で用いられる。
シリーズ化
本作の刊行後、全4部作のシリーズ化が決定し、本作の文庫版の刊行と共に第2作が刊行された。
続編は、
2013年刊行。未来を覗ける「鏡」を持つ女性、霞の物語。
2014年刊行。タイムパトロールの少女、ホタルの物語。
2015年刊行。輪廻転生を繰り返す少女、小霧の物語。
の順に発売された。
いずれも、『リライト』を前提とした作品となっており、『リビジョン』の時点でネタバレを大いに含んでいる。
また、全作共にタイムパラドックスをテーマにしたSF作品ではあるが、手を変え品を変えており、作中の時系列はシリーズを重ねるごとに複雑化の一途を辿っている。
しかし、あまりに複雑すぎたためシリーズ通して読んでいると脱落者も出ているようだが、最終巻『リライブ』まで読んだ後、もう一度『リライト』から読み直して伏線を読み解くとまた大きな感動が得られるだろう。
実写映画化
2025年6月13日に実写映画版が公開予定。
監督は『ちょっと思い出しただけ』『不死身ラヴァーズ』の松居大悟。
脚本は『ドロステのはてで僕ら』『リバー、流れないでよ』等、時間関係のSFを得意とする上田誠。
舞台は原作の静岡県岡部町から、広島県尾道市に変更されている。
なお尾道は本作のオマージュ元である『時をかける少女』の大林宣彦による実写映画版の舞台である。
同映画の出演者である尾美としのりが出演している点も影響が感じられる。
キャスト
- 石田美雪:池田エライザ
- 園田保彦:阿達慶
- 雨宮友恵:橋本愛
- 林鈴子:久保田紗裕
- 酒井茂:倉悠貴
- 桜井唯:森田想
- 長谷川敦子:山谷花純
- 増田亜由美:大関れいか
- 室井大介:前田旺志郎
- 細田:尾美としのり
- 大槻和美:石田ひかり
- 石田章介:篠原篤
「―――そうか」
「この項目は、Wikiになったのではなくて……」
「―――これから『Wiki』に追記・修正されるのね」
「さよなら」
待っ
- この作品の記事ができたか。リライトの一番の大ネタ、一種のバカミスにも分類できるからタチが悪いw -- 名無しさん (2025-06-08 10:41:54)
- keyの方とは全く関係無い -- 名無しさん (2025-06-08 11:48:50)
- 読んでてすごく混乱したのを憶えている。 -- 名無しさん (2025-06-09 01:47:16)
最終更新:2025年06月09日 20:35