北斎の富嶽二十四景

登録日:2025/09/28 Sun 05:21:23
更新日:2025/09/28 Sun 05:22:15NEW!
所要時間:約 3 分で読めます





北斎の富嶽二十四景』(原題:24 Views of Mt. Fuji, by Hokusai)は、米国の作家ロジャー・ゼラズニイのSF小説。

原作はSF文芸誌『Issac Asimov's Science Fiction Magazine』1985年7月号初出。
『Cthulhu 2000: A Lovecraftian Anthology』などクトゥルフ神話小説アンソロジーにも再録されており、日本でも葛飾北斎が登場するクトゥルフ神話作品として話題に挙がることがあるが、本作のクトゥルフ神話の要素は物語の本筋とは無関係なフレーバー程度。

日本では早川書房が出版した『80年代SF傑作選』の上巻に、中村融による翻訳のものが収録されている。


富士が描かれた地点が章題となっている。元となった北斎の版画を見ながら読むとより楽しめるかもしれない。
かなり無理のある順路で巡礼している。


■あらすじ

アメリカから来日したマリは、葛飾北斎の富嶽三十六景のうち二十四景が描かれた地点を巡礼する旅に出る。
マリは不自然なまでに電子機器を遠ざけて行動していたが、ホテルの代金の精算のためレジに近付く必要があり、その瞬間レジから電気の塊の怪物が出現する。

マリは電脳ストーカーと化した元夫・木戸に執着されており、電気の怪物・模倣体(エピゴン)はその手先。
模倣体を瞬時に撃退し木戸本人に居場所を察知される事態は未然に防いだが、模倣体の出現=木戸が近隣を注視している印でもあり、マリはより一層電子機器への警戒を強めながら旅を続ける。


■登場人物

  • マリ(Mari)
本作の主人公の女性。ボリスとの会話の内容からアメリカの政府関連の元エージェントだと思われる。
仕事で知り合ったプログラマーの木戸と結婚し日本で数年暮らしていたが、彼が亡くなった後に帰国して田舎で暮らし娘を産む。生前の夫から北斎の「富嶽三十六景」のうち24枚の複製画が掲載された本をプレゼントされた。
現在は、死期が迫り定期的に薬を飲む必要がある体となっており、偽装した書類で来日し思い入れのある「富嶽二十四景」を実際に見て回る巡礼の旅に出た。
深きものども系のおとぎ話を想像したり、野良猫にルルイエと名付けるなどクトゥルフ神話が好みのようだ。クトゥルフ以外にも様々な文芸や伝承、哲学者などに思いを馳せており想像力が豊かな様子。

  • 木戸(Kit)
マリの元夫*1。記録上は死亡したことになっているが、抜け殻の肉体を残して精神は電脳化しており、世界中のインターネットに接続された電子機器をハッキングできる電脳世界の神とも言うべき存在と化している。
しかし、電脳化の副作用で感情が変質してしまっており、現在はマリを電脳世界に取り込もうと付け狙っている。

現実世界には、ハッキングした電子機器から動物の姿を模した電気エネルギーの怪物・模倣体(エピゴン)(epigon)を発生させて干渉する他、人間の協力者も抱え込んでいる。

  • 北斎(Hokusai)
「富嶽三十六景」の作者。マリのイマジナリーフレンドとして度々彼女の前に姿を見せる。

  • ボリス(Boris)
大阪で開催される国際的な石油会議に関わるエージェント
偽名で来日したマリをスパイと疑い追跡していた。実はマリとは旧知の仲だが、ボリスは整形して見た目が若返っており、マリも変装していたことから、直接顔を合わせるまでは互いに気付かずにいた。


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最終更新:2025年09月28日 05:22

*1 離婚はしていないが、死亡扱いのため公的記録では関係が断たれている