登録日:2025/09/28 (日曜日) 9:20:00
更新日:2025/09/28 Sun 12:07:51NEW!
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『狐のお嫁ちゃん』およびその続編『狐のお嫁ちゃんと息子ちゃん』は、かつてイーブックス社が運営していたWEB漫画サイト"みんなのコミック"およびebookjapanにて2016年から2024年まで連載されていたBattaの作品。
『狐のお嫁ちゃん』は全7巻で1~4巻までは書籍版と電子書籍で、5巻~7巻と『狐のお嫁ちゃんと息子ちゃん』全6巻は電子書籍のみでの販売されており、ebookjapanのサイトで試し読みも可能。
なお本項では『狐のお嫁ちゃん』を本編、『狐のお嫁ちゃんと息子ちゃん』を続編と呼び、まとめて解説していく。
概要
本編では「お嫁ちゃん」こと人間に化ける狐娘と、彼女と結婚した民俗学青年「ぬしさま」の夫婦生活と、その周辺の人々との間で起こった様々な出来事を描いている。
お互いを強く想い合っているカップルなだけにかなり熱量の高い新婚生活だが、その合間にお嫁ちゃんが猟師として身を立てる話や周辺の人達との交流を通して縁を結んでゆく様子が描かれ、最終巻にて息子の懐妊と出産で一旦終了する。
そして続編では本編で誕生した息子ちゃんを加えた一家での子育ての風景と新たな隣人たちとの交流が描かれるが、最終話で一気に時間が(息子ちゃんが7歳頃から18歳頃まで)進み、後日談的に登場人物のその後を扱っている。
その為最終話だけ話数が飛んでしまっているが、これは最終話までの途中の年月が無かった訳ではない事を示したかったという作者の考えから。
もちろんR18作品ではないので直接的な描写はないが、よい大人の夫婦生活を描いている為、いわゆる「ゆうべはおたのしみでしたね」的な描写はちょいちょ入っている。
また、息子の懐妊後は妊婦姿がよく登場するようにもなるため、そういった描写が苦手という方はページを飛ばしながら読むのがよいかもしれない。
実はこの作品、当時を知らない項目作成者には理由は不明だが本編4巻以降、書籍版の発刊は行われず、電子書籍のみの販売となった。
その後作者を含めた有志によるクラウドファンディングによって本編5巻/6巻/7巻の書籍版およびドラマCDとショートアニメが制作され、それぞれのプロジェクト出資者へ返礼として贈られている。
現在はクラウドファンディングのプロジェクトも終了している為、本編5巻~7巻の書籍版は一般流通していない状態となっている。
主人公夫妻
◆ぬしさま
本作の主人公夫婦の夫の方。本名は高崎浩一。
民俗学を専攻しており、現在は口丹市の文化資料館で学芸員を勤めている。大学院時代に地域の古い伝承についての証言を得る為に「こんぴらさん」の元に通ううちに彼女と恋仲になり、短期間の同棲を経て結婚。
以来、「こんぴらさん」もといお嫁ちゃんと市内のマンションで暮らしつつ、彼女の生活を支えたり甘えられたり甘えたりな日々を過ごしている。
高校の頃から民俗学、特に狐の伝承に興味を持っており、民俗文化研究部の部長として図書室で本を読みふける学生生活を過ごしていた。
その影響かかなりなケモ好きでもあり、お嫁ちゃんが狐の状態(作中では全ケモ状態と呼ばれている)に戻っても「これはこれで」と納得してモフって癒される程。
気合を入れてコトに及ぼうとした矢先に全ケモ状態になられた時はさすがに抗議の叫び声を上げていたが。
それが原因でクラスメイトからは「人間と結婚するなんて想像もつかない」と思われていた。まぁその通りになったが。
その一方で自転車にキャンプ道具一式を積んで山に出かけるなど結構なアクティブな面もあった様子。
温厚かつ誠実な性格で、妻であるお嫁ちゃんは無論息子ちゃんに対しても丁寧な物腰で接している。
相手を叱る際にもこの辺りは変わらず、怒りをにじませながらであっても口調を荒げたり手を挙げたりするような事は無い。
ただ強い感動を覚えたりした際のコマの背景では宇宙が広がっていたり富士山が出てきたりと、内心では結構感情の起伏が激しい様子。
基本的にはお嫁ちゃんラブな愛妻家、応用的にはお嫁ちゃん+息子ちゃんラブな良き家庭人であり、その辺りを隠そうともしない。
なおお嫁ちゃんが狐である事は一応伏せている。これは余計なトラブルを避ける事と、お嫁ちゃんが自身の存在をあまり公にしたくないという意向を汲んだが故。実際結婚直後にはメディアからの取材依頼などもあった様子。
家事や育児についても、お嫁ちゃんの負担を減らすべく家事を代行したり時短勤務に出来ないか職場に掛け合ったり、育休を取って息子ちゃんと遊んだりと積極的。
お嫁ちゃんが人間の世界で過ごす際に起こりかねないトラブルへのフォローも普段から色々想定しているようで、そういった事態に備えて狐の救命講習を受講していたり犬のいない散歩コースを調べ上げたりと怠りない。
更にはお嫁ちゃんに色目を使うような不埒な男がいれば牽制を飛ばし、体ごと視線を塞ぐなど妻を守る為に体を張る気概も併せ持っている。
総じて人の世でお嫁ちゃんを喜ばせたい、楽しませたいという気持ちが強く、お嫁ちゃんの尻に敷かれているという自覚はあるが、惚れた妻の笑顔の為、喜んで尻に敷かれる漢でもある。
お嫁ちゃんと結婚したからには色々人外な状況に巻き込まれる事もあるだろうと覚悟していたが、当初はどうしても理解が追い付かず動揺していた。
が、元々楽観的な性格である事と、民俗学の知識およびお嫁ちゃんへの信頼を元にそういった状況を乗り越えていった。
その結果、続編では自宅が狐狸の溜まり場になっても寧ろ研究のチャンスと意気込む程になり、この辺りはお嫁ちゃんからも少々呆れられている。
ちなみに結構な酒豪。曰く「民俗学をやってると酒に強くなる」とか。
自身の結婚生活および育児でのあれこれを文章に纏めているようで、後にきつねぐらし、きつね子育て、きつねファミリー等の著書を刊行している様子。
シリーズの途中から共著者としてお嫁ちゃんの名前も加わっているので、おそらく子育てエッセイ等の種類の本なのだろう。参考に出来る人は少なそうだが。
◆お嫁ちゃん
本作の主人公夫婦の妻の方。
伝承に語られる「妖狐小女郎狐」の末娘であり、人間への憧れと母親からの干渉への反発から狐の隠れ里を出奔。
各地を放浪して色々あった末に口丹市にある石松山の社に住むようになり、「こんぴらさん」と呼ばれ親しまれながら、人の暮らしを見守りながら過ごしていたが、自分のもとに通ってくる若者を慕うようになり、そのまま結婚。
以降若者の事をぬしさまと呼んで甘えつつ人に混じって暮らし始める。
本名は「和葉」だが、妖怪にとっての本名は呪術的な意味での弱点に相当するためごく近親者にしか教えない・呼ばせないようにしており、作中では基本「お嫁ちゃん」呼び。家族との会話ですら名前がほとんど登場しない。
本性は数百年を生きる狐であり、人化の術によって美女に化けている。
姿や年齢は割と自在なようで、人の形で耳だけ狐耳にしたりや幼女化等もお手の物。どことは言わないが体の一部を増量したりもできる。
が、一部であっても狐の状態になっている方が楽なようで、自宅やぬしさまの実家など気の休まる場所では耳や尻尾を出しっぱなしにしている(作中では半ケモ状態と呼ばれている)事が多い。
ただ極端に驚いたり疲弊した状態では姿を維持できず、狐の状態に戻ってしまう事もある。その為息子ちゃんを授かってから出産するまでの間かなりの試練を受ける事になった。
人化の術以外の術はあまり得意でないが、神通力の萌芽があり、それを用いて銃弾の軌道を変化させたりは可能な様子。
少なくとも元禄の頃から生きている為わりと古風な言葉遣いをするが、現代的な言葉や常識も習得しており、パソコンやスマホの操作に自転車や車の運転も問題なくこなす。
また現代的な家電を使った家事等も問題なく、猟が軌道に乗ってからは狩った鳥の肉に山菜、駆除のお礼に貰った野菜などで無料鍋を仕立てる程料理の腕も上等。
ただ病気で寝込んだ際などに狐の流儀を押し通そうとしたり肉とスイーツを所望したりと折々野性が顔を出す事はある。
基本的には現代社会でも問題なく暮らしていける程だが、唯一犬だけは苦手。
犬の姿が見えただけで怯えて人化の術も解け、匂いを嗅がれた時には絶望のあまり魂が抜けかける有様。
後にぬしさまの協力で訓練を行い、犬に触れても術が完全には解けない程度までは耐えられるようになったが、息子ちゃんを生んだ後もまだ苦手意識はある様子。
ぬしさまの事は長い人生で始めて出会えた相手、とあってぬしさまへの甘えっぷり&独占っぷりはなかなかのもの。
例えば、ぬしさまが仕事で数日家を空けた時には寂しさに耐えきれず悪夢を見てしまってぬしさまへ泣きついたり、ぬしさまが同窓会に出ると聞いて「嫁は間に合っている事を主張するように」と釘を刺したり。
特に結婚当初は狐の感覚ですぐに子供が欲しいと考えていた事もあっていろいろな手でぬしさまに迫ってみたり、半ケモになって疲れたアピールをしつつホテルへ誘導したりと奮闘し、更には自分には魅力がないのかと泣き落し等も試みていた。
他にも幼女形態に変化しなおしておねだりしたりと全開で甘えまくっている。また、全ケモになってモフられてみたり、狐耳付きのパーカーを着てケモみを提供してみたりとぬしさまの嗜好に合わせる努力も欠かさない。
息子ちゃんを出産してからもその辺りは変わらず、一時家に迎え入れていた笹音にもちょっと対抗心を持ったほど。
さほど交際期間をおかずに結婚したため、実はいわゆる恋人らしい事にちょっと憧れがある。
そんな訳でぬしさまとイチャつきつつ過ごしていたが、人間の子供を養育するにはお金がかかる事を知り、自身でも稼ぐべく猟師を志す。
諸々の規制や試験を受けるという事自体に戸惑いつつ、晴れて猟師免許を取得して活動を開始。
さほど稼げているわけではないが、元々山の社に住んでいた頃に田の神として豊作を祈られていた時期もあった事もあり、その際に行っていた害獣退治のノリで害鳥退治の仕事などもこなしている。
その恩恵か、食費の節約と様々な人との縁を繋ぐ事になった。
続編ではぬしさまと協力して息子ちゃんの子育てを進めるも、人と狐の両面を持つ息子ちゃんの養育は育児初心者である夫妻にはなかなかの負担。
それを見兼ねた母親から女中として推薦されたトウメを受け入れ、ようやく育児も安定し出す。
以降は新たに交流が出来た笹音やナズナを受け入れたり、自身が親になった事でかつての母親の心境を思いやったりと母親としての成長を見せる事になる。
最終話で息子の旅立ちを見送り、自宅のリビングでぬしさまと過ごす姿が描かれている。
ちなみに、作中で彼女の存在自体は公式に認知されており、市民票もあれば婚姻届けも提出済み。
何かのイベントに呼ばれて見聞きしていた歴史を語ったり小学校で昔の遊びを実演しつつ小学生相手に無双したりもしているので、地元生まれの人にとってはなじみ深い人だったりする。
◆息子ちゃん
ぬしさまとお嫁ちゃんの間に生まれた長男。本名は高崎直。
本編7巻にて生誕し、続編にてその成長過程が綴られる。
人として生まれているが、生まれた当初から狐へ変身する能力と本能を持っており、特に幼い頃は無意識的に狐への変化を行っていてぬしさまとお嫁ちゃんの育児難度を上げていた。
その様子を見た小女郎狐からは人の世で生きていけるのか危ぶまれたが、良き理解者に恵まれた事もあって概ね騒ぎを起こすことなく過ごしているようである。
とはいえなにか問題があったのか、最終話では高卒認定試験を受けて合格している事が示されている。
家庭的に高校へ進学できなかったとは思えないが、あるいは飛び級のようなものなのだろうか?
両親から楽観的な性格と利発さを受け継いでいて、一人っ子ながらあまり甘えた様な所はなく、また年頃の子供であれば母親などの世話焼きをうるさく感じそうなものだが、そういった事もなく、素直に受け取ると共に感謝している。
ただ、隣の家のリン君や姉的存在である笹音、ナズナと共に育ったためか、なんとなく一家の末っ子的な感じはある。
叔母の影響か幼い頃から鳥の観察を趣味とするようになっており、リン君と組んで双眼鏡やライフリスト片手に公園や埋立地に鳥を見に行ったり写真を撮ったりしてていた。
最終話では姉的な2人が結婚し、リン君も彼女と過ごすためにアメリカへ行くと聞いて少々へこんでいたが、大学受験準備の傍ら全国鳥類観察の旅に出た所で終了している。
◆トウメ
元々小女郎狐の下で奉公を続けていた古手の女中狐。娘夫婦の子育て支援の為、小女郎狐の推薦でぬしさま夫妻の所にやってきた。
長く主家で奉公を続けていた事もあってお嫁ちゃんの事は和葉姫様、あるいは単に姫様と呼んでおり、小女郎狐の母親としての嘆きもよく理解している。
それもあり、いままでお世話できなかった姫様の為にと妥協なく職務を遂行し、ぬしさま&お嫁ちゃんからも信頼されている。お陰で諸々の経費が掛かってしまい、お嫁ちゃんを困惑させてしまった。
人間の世界での暮らしも大きな問題はなく、当初は使えなかった人化の術も何時しか問題なく利用できるようになっていた。
息子ちゃんにもよく懐かれており、その流れで息子ちゃんの養育係となった事からそれに合わせて自身も知識を身に付けなければと努力を重ねている。
その過程で、かつて話だけ聞いて憧れた人の世界のお店などをよく訪れている様である。
何気に戦闘の心得もあり、竹切狸達との騒動の際には「姫様に仇なす輩」を退治せんと張り切っており、お嫁ちゃんから殺気が出てるぞと注意されてもいる。
また笹音の祖母が力づくで笹音を連れ戻そうとした時には祖母の前に立ち塞がり、小女郎狐が来るまでの時間を稼いでいる。
身内
◆高崎家
ぬしさまの実家で、口丹市郊外に一軒家を構える、特に何か謂れがあるような訳でもない普通の一般家庭。
ただ父親が鷹匠をしていた関係でハヤブサやフクロウを飼っていたりその訓練を行ったりもしている。
ちなみに一家全員メガネ。
ぬしさまの父親。
鷹匠をしていたらしく生粋のとりすき&ケモ好きで、お嫁ちゃんが狐耳だけ出した姿をみて息子にサムズアップでGJを伝える程。
とりすきの嗜好と鷹匠としての技および微妙なネーミングセンスは娘に受け継がれたらしい。
ぬしさまの母親。
息子の嫁が狐である事を受け入れるどころか義理の娘として歓迎しており、出産の際には自宅を提供しようとして嫁家側とちょっと揉めた事も。
お嫁ちゃんからもお義母上様と尊敬されており、息子夫婦に子育てのコツ等を教授していた。
ぬしさまの妹。子供の頃から鳥好きで、高校生にして既に鷹匠としてカラス退治もこなすほど。
なかなか整った顔立ちでクラスの男子からも人気があるのだが、鳥好きのあまり周りの男にもファッションにも興味はなく、普段の服装はユリさんから「芋」と断じられる程。
そしてやっぱりネーミングセンスが微妙。フクロウにガッちゃんと名付けるのはまだしも、ハヤブサにカラアゲとか…。
ちなみに前者は餌やりの時に「ガッ」とくるから、後者は体色が唐揚げみたいだからというのが由来。後者をバードショーで紹介した時には観客席にどよめきが広がった。そらそうだ。
続編でも引き続き登場し、最終的には大学で鳥類の研究室を構える程にまでになった。
兄夫婦との仲は良好で、特に甥っ子を可愛がりつつ鳥趣味を伝授した様子。
◆桑下羽白家
お嫁ちゃんの実家。
現世とは隔離された狐の隠れ里にある家で、日本各地に多くの親戚/分家筋が存在している。
お嫁ちゃんの実母。
若い頃は日本各地を旅しており、現在まで「小女郎狐」としてその名前と伝承が伝わっているほどの大物妖怪。
現在は狐の隠れ里に夫ともども籠って気ままに過ごしているが、現世の文化に妙な触れ方をしたのか、何故か幼女形態に巫女服風るーむうぇあがデフォになっている。
その後娘との縁が戻った事+孫が喜ぶからとコスプレ趣味が進んでいったが、夫からやり過ぎと嗜められている。
お嫁ちゃんが「末娘」であることからわかるように過去に何十匹もの息子・娘を産み育て、世に送り出しているビッグマザー。
何度も出産を繰り返す中で身体が弱ってきており、お嫁ちゃんを産んだ際には本来多胎で生まれるはずのところが1匹しか生まれず、それをきっかけに子供を作らなくなったという経緯があり、お嫁ちゃんには過保護にも近い執着を見せている。
自分に反発して里を出た末娘の事はずっと気にかけていたが、一族の長という立場上表だって態度には出さずに過ごしていた。
その末娘が人と結婚すると聞いてやっていけるのか心配し、たまらず様子を見せに来るよう知らせを送った事で縁が戻った。
再会した当初はまだ確執もあったが、その中でお互いの考えや気持ちを知った事で親子間の険も緩和されていったようで、娘に贈ったチョーカーを通じて危難を救ったり出産時には自宅を提供し、出産時のあれこれの采配を取った。
その後も娘夫婦と孫を気にかけており、竹切狸との騒動が発生した際には事態の収拾に動き、笹音とその祖母との和解の仲介も務めている。
もっとも、そのいざこざの原因を遡れば自分が発端だったという事が分かり、それによって娘との完全な和解がまた遠のいた事にさすがに落ち込んでいたが。
お嫁ちゃんの実父。
人の倍以上の体格を誇る巨大狐。左目に刀傷を持つ厳つい表情かつ寡黙な性格のようで、結局作中で一度も喋らなかった。
人化の術も使えるが得意ではないようで、人前に出る時は虚無僧のような姿を取ることが多い。
ただ性格は若干気弱なようで、妻と娘が鋭く対立した時には心配げにあたりをウロウロしたり、妻の行き過ぎたコスプレ趣味を諫める際にも強い態度は取らなかった程。
「末娘が里を継がないならもう一人つくるかの」としな垂れかかってくる妻を受け入れたり、凹んだ妻を慰めたりと、妻との仲は長い時を経ても変わりない様子。
◆岩松山
お嫁ちゃんが狐の隠れ里を出奔して各地を放浪していた頃に出会った流民達。
勿論すでにこの世の人ではないが、お嫁ちゃんにとっては忘れがたい友人。
口丹市近郊にある岩松山の麓、穂津の村の外れに住んでいた流民の夫婦。
定住せず山に入って狩猟や採取を行い、その合間に作った竹細工を持って近隣の村へ行き、必要な物と交換する暮らしをしていた。
その暮らしぶりから、村人からは人扱いされておらず、自分達も狐みたいなものだと語りつつ、人の世界に馴染めず行き倒れていたお嫁ちゃんを受け入れて一時期共に暮らしていた。
周りの村から外れた子供や捨てられた赤子なども良く面倒を見て育てていたが、そこで一緒に生活した経験が現在のお嫁ちゃんの性格に強く影響している。
同僚
◆文化資料館
ぬしさまが勤務する資料館。
口丹市の歴史的な資料や伝承についての展示の他に、市周辺の自然環境の調査や情報発信に努めている。
ぬしさまの勤務先の同僚。初登場時は42歳。
やや無愛想だが結構世話好きなようで、なかなかオタク気質な方。ぬしさまとお嫁ちゃんの関係についても「エンタメ性あるよ」と、どこぞのオタが推しについて語るような事をボソッと多分早口でつぶやくほど。
お嫁ちゃんが体毛から作った狐フィギュアを販売しようとした際にノリノリで販売用ディスプレイなどを作ってくれていた。
バイクでの旅が好きなようで、田端さんとダムを見に行ったり、各地を旅行した記録をコミケで頒布したりしている。ちなみに固定客から先生呼びされるほど長くやっている様子。
田端さんから「仕事と趣味に生きる、あえて結婚しない女」的な尊敬を向けられて少々困惑していたが、悪い気はせず、よく面倒を見ている。
結婚について話を向けられても「眺めている方が楽しいので」と言う程結婚願望は薄いが、若い頃に付き合っていたと思しき男性を今も想っているような節もある。
人化の術で姿形をある程度自由に姿を変えられるお嫁ちゃんが、対ぬしさま用に増量したモノよりも大きなモノをお持ち。
田端さんから「何食べたらそうなるんですか」と引き気味に突っ込まれていた。
ぬしさまの勤務先の後輩で初登場時は28歳。
児童文化、特に遊びの歴史を専門としている研究者。その為学術的な解説などでは理路整然とした文章を書けるが、感情に訴えるような情緒的な文章は苦手な様子。
非常勤の身でもあった為将来を悲観していたが、笹山さんの勧めと励ましを受けて資料館の採用試験に挑戦、見事採用を勝ち取った。
コミケはコスプレしていわゆる薄い本を売るイベントと思っており、制服コスで笹山さんのサークルに売り子として参加。その後の打ち上げでいろいろはっちゃけた事で笹山さんとの距離が近付いた。
その後はほどほどに笹山さんの世話になりつつのんびり暮らしており、世間体を考えて婚活にも挑戦してみたが肌に合わず、最終的には笹山さんと一緒に暮らしているとか。
ちなみにショタ趣味を広言していたが「手を出すのは犯罪」とわきまえて居る人。
ぬしさまの勤務先である資料館の当初の館長。
どんなきっかけでも興味を持ってほしいという思いで運営を行っており、お嫁ちゃんと田端さんが講演そっちのけでベーゴマ対決に雪崩れ込んでも止めるどころか喝采を挙げる程。
定年を機に退職し、奥様と老後生活を楽しんでいるがその後もちょいちょい元職場に出入りしており、ぬしさまが育休を取っている間の代打ちを勤めたとか。
◆猟師関係
口丹市で狩猟免許を持って山野を歩く人達。
狩猟一本で喰っていける程の稼ぎはないが、自然豊かな口丹市周辺では害獣/害鳥駆除などで仕事自体はそこそこある様子。
口丹市で猟師などを営む女性ハンター。
猟師だけでは喰っていけない為、ジビエレストランで働いたりケータリング等の仕事も兼業している苦労人。
地域の先輩ハンターとしてお嫁ちゃんの猟師免許取得手続きをサポートしたり、新芽の鷹狩に付き添ったりと何かと高崎家に縁のある人。
お嫁ちゃんの全ケモ状態をみてはしゃいだり、池に落ちたお嫁ちゃんを救助した礼としてモフらせてもらったりとかなりのケモノ好き。
また、幼馴染である銃砲店の若店主に圧を掛けて「勉強」させたり、新芽に男除けと称してペアリングを贈ったりとなかなか押しの強い性格のよう。
口丹市内の山に住んでいる狐。額に×字の傷跡がある事から、お嫁ちゃんからこの様に呼ばれるようになった。ちなみにお嫁ちゃんのような術は使えない、普通の狐である。
身重の妻の食事にと、お嫁ちゃんのお弁当からおにぎりを盗ったのをきっかけに、お嫁ちゃんの狩猟パートナーを務める事になった。まぁそのせいで妻から浮気を疑われてしまったが。
狐としては長寿で子や孫にも恵まれ、その経験からお嫁ちゃんに、息子ちゃんへの狐教育を助言し、息子ちゃんからも「バッテンのおじさん」と呼ばれる程信頼されていた。
単行本では話の合間のページで育児日記という形でその育児経験を披露している。
友人
◆サダ家
ぬしさま夫妻の隣に住んでいる一家。
元々の縁もあるがぬしさま夫妻よりも先に結婚し、出産もしているという夫婦生活や育児の先達にあたる事もあり、懇意にしている。
ぬしさま達の隣室に住む友人。ちょっと小柄な目隠れ人妻。
ぬしさまとは高校時代の同級生で、同じ民俗文化研究部に属していた。その頃からよくキツネや妖怪の絵を書いており、現在もイラスト集をコミケで頒布したり夫の著書の挿絵を書いたりしている。
夫の仕事の関係から結婚後しばらく別宅婚状態だったが、妊娠を機に一緒に住むようになり、偶々ぬしさま達の隣の部屋に引っ越してきた。
ぬしさまとの距離感の近さからお嫁ちゃんからは当初警戒されていたが、ふとした事で交流が出来て以降は、お嫁ちゃんに出産に関する心構えを語ったりと、貴重な母親友達となっている。
続編でも登場し、息子同士を遊ばせたり泊りに来た笹音をスケッチしたりと妖怪が近くに住んでいる環境を楽しんでいる。
サダさんの夫。
かなりの巨体と奇怪な仮面をつけた民俗学研究者兼カメラマンであり、世界各地を奇祭の取材のために飛び回っている。
その巨体と仮面、更に仮面のせいで言葉が籠ってしまう事もあって不審者扱いされかねない風体だが、本人は仕事に打ち込み、妻を愛するいたって真面目な人物。
それが行き過ぎてか、妻が出産のために入院した時には病室に安産祈願の縁起物を病室一杯に揃え、助産師を驚かせてしまっている。
身に付けている仮面は、とある部族の宴に招かれた際に身に付けて以来顔から離れなくなっているもの。ただサダさんを始め周りの人は特に気にせず過ごしている。
本人は、初めて会う人ともこの仮面の事をきっかけに色々話が出来る為、生来口下手な自分には助かると語っている。
ちなみに以前はウェディングカメラマンも務めており、お嫁ちゃんのマタニティフォト等も撮っている。
サダさんの息子で息子ちゃんの一つ年上の男の子。
両親の影響か、妖怪やオバケ大好きに育ち、息子ちゃんの狐変化も「そういうもの」と受け止めている良い子。
幼い頃は母親同様目隠れな髪型で割と小柄だったが、成長してからは片目だけ出すスタイルになった。
身近に本物の妖怪がいる息子ちゃんの環境を羨ましがった事もあったが、そういったものとも友人として共に成長していった。
成長後は父親同様のカメラマンとしての道を行くようである。
◆竹切狸族
口丹市に住む狸の一族。
元々は全国屈指の繁栄を誇った化け狸一族だったが、さる事情から竹藪の中の里に長く引き籠っていた。
が、狩猟中のお嫁ちゃんがうっかり里の領域に入り込んでしまった事から一騒動に。
口丹の竹藪に住む竹切狸達の頭領の孫娘。正式には「八代目竹切狸 なよ竹の笹音」。
お嫁ちゃんと竹切狸達の間で騒動が発生した際、竹切狸達を代表してお嫁ちゃん側の事情を探る為にやってくる。
元々両親から影響を受けて人の世界に興味を持っていたが、祖母から人の世界へ行く事を禁じられていた。
お嫁ちゃんとの騒動をきっかけに「人の世界の事を知れば狸も人と共存できる」と考えるようになるが、人の世界との過度の接触を禁ずる祖母と意見が衝突した為、家出を敢行。
その事情を知って他人事と思えなくなったお嫁ちゃんの勧めで一時高崎家に身を寄せる事に。その際に息子ちゃんに気に入られ、以降「ねーね」、「笹ねーね」と呼ばれるように。
その後小女郎狐の仲介もあって祖母との関係も修復され、新たに現れたナズナとも友人となり、人の世界についての理解を深めたり里の狸への啓蒙なども進めている。
まだ幼いながら人化の術を使い、背負っているバッグに詰め込んだ手製の釣瓶落としやダイダラボッチ等の怪異を使役して小女郎狐と短時間ながら互角に渡り合うなどなかなかの実力者。
ただ極端に驚いた時に術が解けて擬死行動を取ってしまうのが難点。
狸が人と共存できるよう人の世界のルールを理解しようとしたり、おやつを買うお金を小学生相手の商売で稼ぐなど結構な聡明さを見せており、一族の次期頭領としての期待に応じようと努力する健気な子。
年不相応の責務を負っている事をお付きのじいやには心配されていたが、ぬしさま夫妻やその周囲の人々との交流を持つようになってからはそういった責務とも離れて楽し気に過ごす事も増えた。
◆三郷桑下家
お嫁ちゃんの実家に連なる親戚筋の一つ。
ただ世代交代を重ねて大分血が薄まり、力を失いつつある事もあって本家とはほぼ絶縁状態。
三郷桑下家の娘。力を失いつつある影響か体毛が黒くなっている。
本家(=お嫁ちゃんの実家)で開かれた宴席に紛れ込んだ際に息子ちゃんと知り合い、以来「アタルくんの許嫁」を称するようになる。
その後少し成長した息子ちゃんの前に現れ、約束を果たそうとするも息子ちゃんの姉的存在となっていた笹音と衝突。
そこで自身の勘違いやら里との関係やら色々あった末に息子ちゃん&笹音の友人として迎え入れられ、竹切狸の里近くに住む事となった。
人の世界についてはあまり詳しくなく、他人との付き合い経験も薄い為か割と調子のいい考え方をしている部分もあるが、自分の非を認めて反省するなど根は素直な性格。
人化の術も使えるがそれは一族の宝である髪飾りの力を借りての事であり、長く化け続ける事が出来ない。色々あって髪飾りを返却した後は笹音手製の髪飾りの力を借りるようになった。
最終話では小女郎狐の養子に迎えらた事と笹音と結婚した事が語られているが、となると系図的にはお嫁ちゃんの義妹、息子ちゃんからすると叔母になるのだろうか?
用語
お嫁ちゃんが人の姿になる為に利用している妖の術。
元々人界に混乱をもたらす恐れがあるとして狐の間ではあえて失伝させられていたのだが、お嫁ちゃんは自力で習得。
その後小女郎狐とトウメも習得している。狐の隠れ里に残っている女中狐達は習得できないか、半端に習得してしまっている様子。
昔話のように葉っぱを頭にのせてドロン、という訳ではなく、人の姿になるのにちょっと時間が掛かるらしい。
変化する姿は基本自在だが、服は変化に含まれていないので変化直後は素っ裸。
また疲労やらで一部だけ術が解けたり、完全に解けたりする事もある。
続編から登場する笹音も同様の術を使う。
こちらは服ごと人の姿に変化するが、これは「妖怪とは持ち物も含めて妖怪」という認識が強い為らしい。
また変化する対象についての知識がある程化ける際の労力が少なくて済むらしい。
現実の伝承でも、「狐七化け、狸は八化け」など変化については狐より狸の方が一枚上手とするものが多い。
人化の術が部分的に解けて顔だけあるいは耳/鼻/尻尾だけ狐に戻っている事があるが、そのような状態を指して作中では半ケモ状態、全部狐に戻ってしまっているのを全ケモ状態と呼んでいる。
人の姿から半ケモ状態になっただけなら気合を入れ直す事で戻れるようだが、全ケモに戻ってしまうと再度人の姿を取るのに時間が掛かる様子。
また全ケモになると着ていた服はその場に脱げ落ちてしまい、人語でのコミュニケーションも取れなくなるが意思疎通自体は可能なので、ジェスチャー、筆談、タブレットのフリック入力などで会話できなくもない。
息子ちゃんも同様に半ケモ/全ケモ状態になる事があるが、こちらは人化の術が解けているのではなく、狐に変化してしまっている状態。
幼い頃は母親に釣られて、あるいは驚いて変化してしまう事が多かったが、成長するに伴い自分の意思で変化するようになった。
お嫁ちゃんの両親である小女郎狐と三吉の住処であり、お嫁ちゃんの実家がある領域。
小女郎狐の妖術によって現世とは切り離されており、お嫁ちゃんであっても案内が無ければ辿り着くのは難しいほど。
お嫁ちゃんの両親とそれに仕える女中狐が住んでおり、人間の常識が通用しない場所ででもある。
が、電気なども通っており、配達なども届くらしい。その為、小女郎狐が何度かお嫁ちゃんやぬしさまにこちらに住む事を提案してもいる。
その一方、娘との縁が戻った事を機に観光地として人間たちに開放しようかとも考えているが、こちらは今一つ成果がない様子。
作中の舞台となっている地方都市。
狐や狸の伝承も残る長い歴史を持つ街で、現代的な街が広がる市街地から車あるいはお嫁ちゃんの駆る自転車で30分も行けば狩猟も行える程豊かな自然が残っている。
モデルは京都府亀岡市らしく、その縁で亀岡市文化資料館の企画展のイメージイラストに起用されている。
追記・修正は人化の術で人に化けている狐か狸と会話した事のある人にお願いします。
最終更新:2025年09月28日 12:07