登録日:2025/10/05 (日) 10:37:53
更新日:2025/10/19 Sun 15:39:56
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ルノー「俺たち、手を組んでそろそろ10年かー」
マトラ「せやなー。エスパス作った頃からだよな」
ルノー「そうそう。つーわけで今度のパリでさ、エスパスでなんかデカいことやりたいのよ」
マトラ「おお、ええやん!何やるん?」
ルノー「とりあえずさ、ここにF1で使ったエンジンあるんだが」
マトラ「は?」
……実際にそんなやりとりがあったのかはさておき。
エスパスF1とは、フランスの自動車メーカー・ルノーが1994年に発表したショーモデルである。
そして、ルノー社一世一代とも言えるレベルの大暴走による産物でもある。
前置き:「ルノー・エスパス」について
本題に入る前に、まずはルノー・エスパスという車について解説せねばなるまい。
エスパスは、ルノー社が1984年より販売している乗用車。同じくフランスのマトラ社との共同開発で誕生した欧州初のミニバンという自動車史に残る一台である。
初代エスパスはその斬新なコンセプトによって大ヒットを遂げ、その後も6代に渡るモデルテェンジを経ながら2025年現在も販売中。
純粋なミニバンとして開発されたのは4代目までで、5代目以降はSUV路線へと方針転換、6代目(現行モデル)は完全なクロスオーバーSUVとなっている。
なお、日本への正規輸入は一代たりとも実現しておらず、日本で乗るには並行輸入しか手段がない。
エスパスF1
というわけでここから本題。
ルノーがマトラとの提携10周年、兼エスパス誕生10年を祝して、翌95年に来るパリモーターショーに向けたショーモデルとして制作したのが、このエスパスF1である。
ベースとなったのは、当時の現行モデルであった2代目エスパス。
……ただしベースとはいっても、同車からそのまま使用したのは骨格程度。ボディはアルミ+カーボンで1から作り直され、ワイドボディ化とエアロパーツで武装。内部のシートもフルバケットシートに変更された。
こうして、シルエットこそ2代目エスパスの要素を辛うじて残しているものの、実際には似ても似つかない、まるで横綱のような超ワイドフォルムへと変貌。
「羊の皮を被った狼」ならぬ、「羊っぽく見えなくもないナニカを被った狼」である。この時点でもう何かがおかしい
しかしこれはほんの序の口。
既にバケモノの気配を漂わせ始めていたその車内にブチ込まれたのは、ルノーがエンジンサプライヤーとして制作に携わっていたウィリアムズ・FW14Bの心臓部……正真正銘、F1マシンのエンジンである。
だがエスパスは元々、FFのミニバン。ファミリーカーとしての用途しか想定していないこのクルマのエンジンルームに、そんな超高出力エンジンが入る余地などどこにもない。
なので、エンジンの搭載位置を変えた。
この車内画像はコラでもなんでもない。
マジで車内中央に、F1エンジンが 剥 き 出 し の ま ま 鎮座しているのである。バカじゃねぇの?
なお、この改造を施すにあたって本来存在していた3列目シートは跡形もなく撤去されている。
かくして、エスパスだったはずのナニカと化したこのマシンは車重わずか1,100kg、最高出力818psという正真正銘の化け物マシンとして無修正V10サウンドの産声を上げた。
そのスペックは決して飾りではなく、最高速度約320km/h、時速100kmにはわずか3秒で到達という代物である。
なにより恐ろしいのは、これを制作したのが決して個人チューナーなどではなく、ベース車の制作元自身による、バリバリの公式であることであろう。
流石に開発当初より量産などは考慮しない完全なショー・カーとして設計されたため市販はされず、2台のみが制作されている。量産されてたまるか。
ちなみに、ルノー社は1945年から現在に至るまで、フランス政府が筆頭株主の国営企業である。
その後
95年のパリショーに展示されたのち、本車両はマトラ自動車博物館に動態保存されている。
そのためグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードなどのイベントにも時折出展されており、走る姿を今でも拝むことが可能。
プラモデル等の立体化は少ないものの、とにかくユニークすぎる車両であるため全くないわけではなく、ホットウィールやスケールミニカーが販売されている。
ゲームにはベース車を差し置いて『グランツーリスモ2』に収録。
GTシリーズに登場したのはこの一作だけであるが、2023年にマトラ博物館にポリフォニーのスタッフが取材に来ていたとか。
ひょっとすると、今後GT7のアップデートやGT8などに登場するかもしれない。
なお、『グランツーリスモ7』には本車はいないが、同じルノーのミニバン(
を名乗る3ドアクーペとかいう変態仕様)のアヴァンタイムが収録され、
本車に似たリアウイングが装着できる。
しかもフォルクスワーゲンのレース用エンジンに換装してタービンを交換すれば800馬力の怪物ミニバンの完成だ。それもエスパスと違って
FFのままで。
無茶である
…
駆動方式(自動車)項でちょっと言及しているが、アヴァンタイムにせよ、同じくFFで800馬力オーバーを(エンジンスワップ+追加チューンを行えば)実現できるスイスポやデミオにせよ、これをやると挙動がそれはもう
著しくアンバランスな上に加速だけは感度3000倍の扱いづらいクルマに仕上がってしまう。
『GT7』が初のドライブシミュならば、ある程度ゲームに慣れてきてからやってみたほうがいいかも。
追記・修正は車内にF1エンジンをブチ込んでからお願いします。
- ルノーってクリオとかでも後部座席を取っ払ってそこにデカいエンジンをぶち込んだぶっ飛びモデルを出してるんだよね。記事の車といい、ミニバン型のクーペ「アヴァンタイム」といい、ルノーって相当フリーダムだよな -- 名無しさん (2025-10-05 12:41:40)
- バカだ…これを作ったやつは相当の大馬鹿者だ! -- 名無しさん (2025-10-05 13:00:08)
- HWが出たんだけど、正規カラーは少数しか入ってなくて一般売り(来月発売)が反転カラーなのがめっちゃ不満 -- 名無しさん (2025-10-05 13:27:16)
- リアルで大企業が馬鹿と冗談を総動員するとこうなるという良い見本。いいぞもっとやれ -- 名無しさん (2025-10-05 21:15:04)
- エンジンブローした時の後部座席乗員の安全性って…全く考慮されていないよね? -- 名無しさん (2025-10-05 21:30:11)
- ↑むしろ2列目2人でリアルタイムエンジンメンテナンスすればいい。 -- 名無しさん (2025-10-06 17:53:39)
- レーシングラグーンを思い出す魔改造 -- 名無しさん (2025-10-06 18:18:32)
- ↑2レオポンさんチームかな? -- 名無しさん (2025-10-06 19:21:14)
- 2台のみが制作されているってことはもう一台作ったのかよこれを -- 名無しさん (2025-10-06 20:19:58)
- 車興味ないけど、こういうアホみたいな発想のやつは見てて面白い -- 名無しさん (2025-10-07 13:06:04)
最終更新:2025年10月19日 15:39