登録日:2026/01/16 Fri 23:00:00
更新日:2026/07/09 Thu 00:09:55
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SCP財団日本支部の冬の重賞コンテスト「棍棒での殴り合いコンテスト2024」の金賞作品である。
概要
SCP-3982-JPは運転手が単独で長時間の自動車移動を行っている場合に発生する異常現象である。
財団による統計調査の結果、SCP-3982-JPが発生するには
- 出発地点から目的地まで1時間以上の移動距離がある
- 高速道路の走行時間が休憩含めて1時間経過している
- 日没後の運転手単独による長時間の自動車移動である
という条件のいずれかに合致し、なおかつこれら条件の合致数が多くなればなるほどSCP-3982-JPの発生確率が上昇すると考えられているようだ。
SCP-3982-JPが発生した場合、運転手は即座に後部座席に転送される。また、運転席と助手席には2種類の未知の存在が出現し、運転手の代わりに運転をしてくれる。もともとの運転手は、これらの存在を子供の頃の自分の両親だと解釈し、特にこの現象に疑問や不安感を抱くことはないようだ。
SCP-3982-JP発生中の車内は、もともとラジオや音楽をかけていた場合でも常に無音になるようだ。もともとの運転手は車窓の景色や未知の存在のシルエットに安心感を覚え、いつの間にか眠ってしまうようである。
もともとの運転手が目覚めたときにはもう目的地に到着しているようだ。この時運転席に座った状態で覚醒するようで、既に未知の存在たちは消えている。この間の移動時間は現実的な所要時間で到着していることから、テレポート的な現象ではなさそうだ。また、覚醒時車内には日本中どこかしらのレジャー施設のお土産が置かれているが、これらは異常性のない普通のお土産物であるようだ。
特別収容プロトコルは
- SCP-3982-JPの収容は不可能なので、財団は事後処理にのみ注力します。
- SCP-3982-JPに遭遇した人には記憶処理を行い、お土産は回収します。
といったものである。
補遺
以下は財団所属のエージェントがSCP-3982-JPに遭遇した際の記録である。この時エージェントは、偶然にも記憶補強剤を飲んでいたことからSCP-3982-JPを自分の両親であると誤認せず、録音機材を起動することができたようだ。
エージェント: [小声で]こちらサイト-████所属のエージェント████。収容インシデントを完遂し当該サイトへと帰宅する際に車内で異常現象と遭遇、支給されたスマホの録音モードを起動している状態です。
助手席側の未知の実体(以下SCP-3982-JP-1と呼称): あら、しゅーちゃん起きちゃった?
運転席側の未知の実体(以下SCP-3982-JP-2と呼称): まだ家まで時間あるぞ、こんな暗いのにスマホいじると目が悪くなるだろうし寝ていなさい。
エージェント: [数秒沈黙]20年ぶりくらいか。その声で、そうやって呼ばれたの。子供の頃、もっと言えばほんの一時期だけ、母親からそう呼ばれていた。確かにお前たちから懐かしさは感じるが私の記憶はそうじゃないと言っている。子供時代にスマホはなかった。
SCP-3982-JP-2: [若い男の声から老人の声に変化して]なるほどのう。お気を悪くしたのならばすまんかった。正常な認識をしている人は初めてじゃよ。
エージェント: 会話はできるんだな。…私が分かるのは「お前らが俺の両親じゃない」ってことだけだ。後部座席からチラッと見える姿は真っ黒だし、座席から乗り出して見ようとすると、何か…
SCP-3982-JP-2: とても疲れて眠たくなってしまう?
エージェント: …そうだ。正直今すぐ意識を手放しそうだから、このまま会話による情報と天秤にかけてそっちを取った。
[沈黙。SCP-3982-JP-1、-2からの返答は返ってこない。]
SCP-3982-JP-2 君たちのような子を乗せたことは何回かある。何やらワシらのようなものたちを見つけて保護する団体だということぐらいしか知らんがの。全員ちゃんと家に帰したし、君にもそうするつもりじゃ。
このようにSCP-3982-JPの声色が若い男の声から変わった。どうやら本来の姿は老人であるらしい。しかしながら、その姿を直接覗き込むことは難しいようである。
エージェント: お前らは誰だ。何か目的があってこうしているのか。
SCP-3982-JP-2: 失礼じゃが、小さい頃ご両親の車で遊園地や観光地に出かけたことはあるかの。
エージェント: 人並みにはあると思う。
SCP-3982-JP-2: その帰り道、車の中で寝た記憶は?
エージェント: 思い出として残っているほど印象深くはないが、多分あったんじゃないか。
SCP-3982-JP-2: 幼心に疑問に思ったことはないかの。パパもママも自分と同じように楽しんでいたのにどうして帰り道を運転できるのか。それはの、ミラー越しに後部座席の子供の寝顔を見ていると元気が湧いてくるからじゃ。
エージェント: 意外性のない回答だ。その癖して思想が強い。
SCP-3982-JP-2: かつて車内の揺れで微睡み、家に帰ってお土産を皆で食べるのを心待ちにしていた子供が大人となり自分でハンドルを握る時、ふとした孤独感に苛まれる。孤独感は心を疲労させ、疲労は事故を生む。そうならないように、あの日の幸せな微睡みを思い出してほしいためにワシはこういった活動をしているのじゃよ。
エージェント: こうやって話を聞いているとアレか、お前らは子供に対する「親としての役割の具現化」みたいな存在ってことか?
SCP-3982-JP-2: [声を出して笑う]随分と言語化が上手いじゃあないか。そう捉えてくれて構わない。お前さんが言う所の「親としての役割の具現化」であるワシからしてみれば全人類子供に見えるわい。
エージェント: なるほどな。
このようにSCP-3982-JPの目的は、運転手が孤独から疲れて事故を起こさないように、親の代わりとしてあの頃の思い出を再現しているという訳である。
[沈黙。エージェントの首が揺れる。]
SCP-3982-JP-2: もう眠いじゃろう。ワシは車に限らず乗り物の運転には一家言ある、事故など起こさんよ。さっきも言ったようにお前さんは無事に家に届ける。録音しているデータも消すことはないから安心して眠りなされ。
エージェント: [瞬間的に意識を取り戻す]一体、何のことだか。
SCP-3982-JP-2 誤魔化す必要はない。大人からしてみれば子供の隠し事なぞ一瞬で看破できるし、子供の寝ている間に取り上げるのではなく、プレゼントを届けるのが「親としての役割」じゃろ?
エージェント: プレゼント…?[数秒沈黙]待て、助手席のそいつ。そいつのシルエット、ツノが生えているのか?
SCP-3982-JP-2 なんじゃ、気づいとらんかったのかい。むしろ眠る数秒前でどうして気づけたもんじゃ。
エージェント: さ、[瞬間的に意識が喪失する]最後に教えろ。もし私の予想が正しければ、今は12月じゃないぞ。何でいるんだ。
SCP-3982-JP-2: なぜ今かじゃと。おかしなことを聞くもんじゃ。普通正体を明かされたくないのなら逆に12月に活動せん方が筋は通っておろうに。12月は12月で本物の子供たちへプレゼントを届ける準備でこんな事できる余裕もないしの。
SCP-3982-JP-2: 覚えておきなされ。クリスマス関係なく大人は子供に色々してあげたいものなのじゃ。正体を明かすことなく、寝ている間にな。
SCP-3982-JP-1: [小さないななきを上げる]
[エージェントの意識が完全に喪失し睡眠状態に移行する。ここから1時間48分間、自動車が目的地に到達するまで録音データに発言の痕跡は残っていない。聞こえるのは走行中の環境音だけである。]
音声記録は以上である。エージェントは記憶補強剤によりオブジェクトの誤認は防げたものの、眠気といったほかの異常性に関しては抗えなかったようである。この後、エージェントが購入した覚えのないお土産物が車内に置かれていたことから、これらの事象はSCP-3982-JPによる異常事象として登録された。
解説
さて、ここまで読んだ読者であれば予測はついているだろうが、SCP-3982-JPの正体は
サンタクロースとその相棒のトナカイである。クリスマスに子供たちにプレゼントを配って回るサンタクロースがそれ以外の時間何をしているのか?の答えは、大人たちにもささやかなプレゼントを贈っているということである。「親としての役割の具現化」であるサンタクロースにとっては、大人も子供もすべて守るべき”子”であることに変わりはないのだろう。
気になるアレの正体と、それはそれとして幼い頃の旅行の帰りに
両親の運転する車内で疲れ眠っていた事がどれほど幸福だったかについて。
余談
追記・修正は、あの頃の思い出と共にお願いします。
- 12月24日以外にサンタは何をしているのかの回答、聖ニックと双璧をなす優しいサンタクロース -- 名無しさん (2026-01-17 00:49:22)
- 1010JPと並ぶ優しいKeterかな? -- 名無しさん (2026-01-17 09:30:05)
- やさしいKeterも近頃増えていて珍しくなくなっている気はせんでもない -- 名無しさん (2026-01-17 09:39:47)
- まあ良いじゃない 殺戮殺戮より人情味があってさぁ -- 名無しさん (2026-01-17 19:14:59)
- 財団クリスマス界隈もなかなか層が厚いですなぁ -- 名無しさん (2026-01-17 21:16:51)
- なんで棍棒で殴り合い? -- 名無しさん (2026-01-17 23:48:20)
- ↑クロスリンクやフォーマットスクリュー,構文装飾とかの小細工を禁止した『棍棒記事』で殴り合うコンテストだから(詳細な定義はコンテストハブ参照) -- 名無しさん (2026-01-18 01:41:06)
- ↑確か元々は英語圏のスラングで、コンテストとしては「他のSCPや要注意団体に頼らずにシンプルな記事を書こうぜ」な趣旨だっけ… -- 名無しさん (2026-01-18 01:41:59)
- チャーリー・ブラウン: 「安心?安心ってのは車の後ろの座席で眠ることさ! 君は小さな子供で、お母さんやお父さんといっしょにどこかへ遠出したとする。あたりはもう夜だ。君たちは車でうちへ帰るところさ、その時君は後ろの座席で眠れる。君は何にも心配なくていい。お母さんとお父さんは前の座席にいる。そして心配ごとは全部引き受けてくれる。何もかも面倒をみてくれる。」 -- 名無しさん (2026-01-18 10:22:00)
- 見ると眠っちゃうからいいんだけど、助手席にトナカイ座ってるところ想像するとなかなかにシュール -- 名無しさん (2026-01-18 13:00:00)
- 「ツノが生えている」でえっ何?まさか如月工務店!?と狼狽えてしまった トナカイさんごめん -- 名無しさん (2026-01-18 14:43:52)
- 最後の大見出しが3982じゃなく一個ズレて3983になってたんで修正。ほっこり系がもっこり系になってしまうw -- 名無しさん (2026-01-19 22:43:52)
- 財団の理念からすると危険だが人類にとってはささやかで優しいketer -- 名無しさん (2026-04-02 12:24:31)
- 危険度がやばいketerばっかり見てきたせいで、keterの文字列だけで身構えてしまった自分が恥ずかしい… -- 名無しさん (2026-07-01 08:38:34)
最終更新:2026年07月09日 00:09