登録日:2026/08/11(Tue) 14:32:45
更新日:2026/08/13 Thu 20:45:23
所要時間:フガーフガー!(約12分で読めます)
MAY THE FARTH BE WITH YOU
『ハードウェア・ウォーズ』とは、1978年10月16日に公開された、アメリカのSF短編映画である。
配給はピラミッド・フィルムズ。監督はアーニー・フォッセリウス。
日本ではプレシディオが権利を保持している。
なお、本作における「ハードウェア」というのは金物のことであり、ゲーム機のことではありません。あしからず。
●概要
「架空のSF映画の予告編」という体で制作された、約12分の短編映画……だが、その内容は、最早知らぬ人はいないSF映画の金字塔であり、後に付いた副題「エピソードⅣ 新たなる希望」でも知られる『
STAR WARS』を要約したもの。
そう、本作はパロディ映画であり、
現在確認されている限りでは史上初の、『STAR WARS』パロディ映像作品なのだ。
故に本作は、観客が『STAR WARS』を既に観ていることを前提とし、パロネタ、内輪ネタがふんだんに盛り込まれている。
制作費は僅か8000ドルであり、スぺオペには欠かせないスーパーメカニックが、そのタイトル通り金物や家電製品で表現されているのも特徴。
勿論、こうした安っぽさは全て意図的なもの。決して技術不足や手抜きで安っぽいのではなく、しっかりとした技術のあるスタッフが全力で安っぽく作ったバカ映画なのである。
BGMはリヒャルト・ワーグナーの『ワルキューレの騎行』。
そのくだらないながらも元ネタへのリスペクトを感じさせる内容や、笑いを誘うチープさ、それでいて要所要所に垣間見えるこだわりなどから大人気を獲得し、後に世界中で履いて捨てるほど制作されることとなる『STAR WARS』パロディ作品の先駆けとなった。
字幕だけだが日本語版もあり、DVD発売や、U-NEXTなどでのオンライン配信も行われているため、現在でも視聴は簡単。
2026年6月30日からは、プレシディオのYouTube公式チャンネルにて、『
STAR WARS/マンダロリアン・アンド・グローグー』の公開に便乗して無料配信も実施された。
とにかく、『STAR WARS』ファンの方には是非一度見ていただきたい。サクッと観れて、サクッと笑える。そんな映画である。
なお、作中のメカの名前は一切設定されていないため、本項目では「アイロン宇宙船」「ワッフルメーカー要塞」など、便宜上の呼び名を用いることをご容赦頂きたい。
●あらすじ
その日の遅めの時間
銀河系の別の場所で…
スイカ星で暮らすフルーク・スターバッカーの元に、2体のドロイドがやってきた。
彼らは邪悪な帝国軍のトースター戦艦に追われており、脱出カセットテープで逃げ延びてきたのだ。バスケットボール星のアン・ドロイド姫からのメッセージを携え、宇宙の悪党ダーフ・ネイダーを倒すため、レッドアイ騎士団のオギー・"ベン"・ドギーを探しているという。
オギーと知り合いだったフルークは早速彼の元に向かうと、ネイダーからアン姫を助けるための旅に同行することになった。
腕利きパイロットのハム・サラダとチューチラを雇い、アイロン宇宙船に乗って姫の元に急行するフルーク一行だが、帝国が誇るワッフルメーカー要塞の耕運機ビームにより、船ごと捕らわれの身になってしまう。
フルークとハムはアン姫を救うために、オギーはトラクタービームを解除するため、それぞれ行動を開始する……
果たして、フルーク達は姫を救い、ネイダーを倒すことが出来るのか!?
ロマンスとバトルと家電が目白押しのSF超大作が映画館にやってくる!
笑いと涙、そして「金返せ」の怒号が劇場にあふれること間違いなし!
『ハードウェア・ウォーズ』、近日公開!
●登場人物
・フルーク・スターバッカー
「銀河系の生んだ天才少年」
スイカ星で暮らす家電オタクで、リアクションが大仰。
愛車は赤いメイヤーズ・マンクス。
4Q2とRTデコを偶然手に入れたことをきっかけに、ネイダーとの戦いに身を投じることになる。
武器はレーザーが出るダンベルと、オギーから託された懐中電灯ライトセーバー。
元ネタは
ルーク・スカイウォーカー。
・オギー・"ベン"・ドギー
「レッドアイ騎士団の一員」
スイカ星で暮らす老人。
頭痛持ち。
フルークに懐中電灯ライトセーバーを授け、彼と共にネイダーとの戦いに赴く。
元ネタは
オビ=ワン・ケノービ。
・アン・ドロイド
「悩み多きある星の王女」
バスケットボール星のお姫様。本作のヒロイン。
髪型の比喩ではなく本当に頭にシナモンロールが付いている。
ネイダーに監禁されてもめげず、彼のフガフガ声をダシにして顔芸と共に煽りまくっていたが、やり過ぎてキレられ、母星を吹っ飛ばされた。
元ネタはレイア・オーガナ。
・ハム・サラダ
「銀河系を自在に飛び回る雇われ飛行士」
「♪オビ=ワン・ケノービ役でよかった~」という謎の歌が流れているカンティーナで、フルークとオギーに雇われたパイロット。
アイロン宇宙船を乗りこなす。
借金しているかは不明。
愛銃は電動ドライバー。
元ネタはハン・ソロ。日本語だと分かりにくいが、英語での発音は本当に元ネタそっくり。
・チューチラ
ハムの相棒。
ウーキーモンスターなる毛むくじゃらの茶色い生き物…というかクッキーモンスターの人形を茶色く染めただけ。まだ色々と大らかな時代だったのだ。
パンが好きらしく、アンの頭のシナモンロールにかぶりついていた。
元ネタはチューバッカ。
・4Q2
アン姫のカセットプレーヤー宇宙船に乗っていた銀色のドロイド。
見た目はまんま、オズの魔法使いに出てくるブリキのかかし。
RTデコと共に脱出カセットテープに乗ってスイカ星に辿り着いたが、フルークに解体された。
一応そのあとまた組み立ててもらったらしく、旅にも同行している。
元ネタはC-3PO。
・RTデコ
4Q2の相棒であるドロイド。掃除機。
アンからのメッセージを携え、4Q2と共にオギーの元に赴いた。
地味に操演がよく出来ており、本作のチープさが確かな技術に裏打ちされた意図的なものであることがここからも窺い知れる。
元ネタはR2-D2。
・指揮官
帝国と戦っているらしい組織の指揮官。
それっぽい専門用語を羅列した滅茶苦茶分かりにくいブリーフィングを通して、ワッフルメーカー要塞の弱点を解説した。
ブリーフィングで用いたスライドの中にはトップレスの美女の絵も1枚混ざっていたが、誰も突っ込まず、本人もスルー。
元ネタはジャン・ドドンナ。
・ダーフ・ネイダー
「悪党」
帝国が誇るワッフルメーカー要塞の指揮官と思われる黒ずくめの男。
常に溶接マスクを被り、首から電卓をぶら下げている。
オギーと同じ技に通じているようで、やはり懐中電灯ライトセーバーを所持する。
非常に短気かつ残忍な人物らしく、アンの挑発に激怒したのかバスケットボール星を破壊した。
勝つためなら手段を択ばない模様で、懐中電灯ライトセーバーの光による目くらましという卑怯な戦法でオギーを苦しめた。
……なんでこんなに推測だらけのフワフワした解説なのかというと、
マスクのせいで声が滅茶苦茶こもっており、視聴者にも作中のキャラにも全くセリフが理解できないため。なんならよく聞くと
セリフ自体もひたすらフガフガ言ってるだけ。
おかげで冒頭人物紹介の以外に人となりを伺う材料がなく、本当に推測するしかないのである。
短気なのは間違いないと思われるが…
元ネタは
ダース・ヴェイダー。また、名前はアメリカの有名弁護士ラルフ・ネイダーともかかっている。
なお、本作はEP5より前に公開されたため、残念ながらかの有名な「I'm your father」のパロディはなし。
まあ、どうせ言ったところでフガフガ声になって、フルークには理解できなかったろうけど
・スチームトルーパー
帝国の兵士。業務用の蒸し器。
ドライバー銃の光線を跳ね返せる防御力を誇るが、蹴りには弱い。
元ネタは
ストームトルーパー。
・ナレーター
「手に汗握る冒険活劇」だの「まるで宇宙空間に放り出されたかのような体験」だの、誇大広告も甚だしい宣伝文句を連呼するナレーター。
担当声優は、数多くのTV番組や映画予告編で活躍してきた大御所のポール・フリーズ。恐らくこの映画で一番金がかかっている部分だろう
●反響
70年代後半のアメリカ映画界ではベトナム戦争の影響から、内省的で高尚なアメリカン・ニューシネマが主流であり、『STAR WARS』はそんな業界に「老若男女問わずに楽しめる、明朗快活な娯楽活劇」として殴り込み一大ヒットを記録。ハリウッドにSFブームを巻き起こした。
詳しくはあちらの個別項目を参照して頂きたいが、まさに映画史のターニングポイントと言える作品である。
今でこそ「緻密な世界観と物語を有し、熱狂的なカルトファンを多数抱える壮大なサーガの原典」として認知されているが、公開から間もない当時は「ついこの間メガヒットしたばかりのホットな映画」であり、多くの人にその内容が広く認知されていたのだ。
そんな時代において、その「ホットな映画」を真正面から堂々とおちょくり倒した本作は見事に観客の爆笑を誘い、高い人気を獲得。
当時はそもそも「パロディ映画」というジャンルそのものがあまり定着していなかったため、本作は原作とは違った意味で「新しい映画」としても受容されたのだ。
興行収入は100万ドルと、短編映画としては驚異的な数字を記録し、シカゴ映画祭短編映画賞を含む15の映画賞で最優秀賞に輝いた。超低予算な作品だけに「費用対効果では原作を超えた」とネタにされることもあった。
原作生みの親であるジョージ・ルーカスも、イギリスのバラエティ番組『The Big Breakfast』に出演した際に「『恋におちたジョージ・ルーカス』と並んでお気に入りのパロディ作品」と語っている。
そして、ルーカス・フィルムが開催した2003年度スター・ウォーズ・ファンフィルム・アワードでは本作がパイオニア賞を受賞し、現在では事実上の公認パロディとして認知されている。
…実際のところ、本作の企画は『STAR WARS』の公開ぎりぎり前に始動し、そこから超短期間で制作されたため、フォッセリウスは自分達が手掛けた作品が「ハリウッド映画史に残る傑作の元祖パロディ映画」になることも、後に獲得する凄まじい人気も、全く想定してなかったそうだが。
公開後しばらく経つと、本作は次第に忘れられていったが、90年代に『STAR WARS』旧三部作特別編が制作されることが発表されると、本作も便乗して特別編を制作し、VHSとして発売された。
オリジナルのチープな映像に、最新のCG技術を用いて新たな情景や特殊効果を加えた特別編は明らかに違和感のあるもので、フォッセリウスの不興を買った。そのため、彼の要請でパッケージには「フォッセリウスは関わっていません」という注意書きが記載されていた。
しかし、旧三部作特別編を御存じの方なら分かる通り、この「違和感」も勿論狙った仕様である。
後にオリジナル版を収録したDVDとBlu-rayも発売された。後者のパッケージには特別編のそれを踏まえて「フォッセリウス公認」と書かれている。
●余談
- 『STAR WARS 最後のジェダイ』では、スチームアイロンがまるで着陸する宇宙船のように妙にねっとりと映されるカットがあるが、ライアン・ジョンソン監督曰く、これは本作のパロディとのこと。本家がパロディ作品をパロディするという事態になった。
同作の評価的に、ファンからの反響はお察しください
- フルークを演じたスコット・マシューズは本職の俳優ではなく、当時すでにブレイク中だった作曲家兼音楽プロデューサー。
本作についてはよく覚えているらしく、後年には「あの映画の魅力は、演じている僕達自身もなにをしているのか全然分かっていなかったところにあると思う」と語っている。
- ルーカスからは好意的に受け止められた本作だったが、20世紀フォックスの上層部からは顰蹙を買ったらしく、当時の同社社長だったアラン・ラッドJr.がフォッセリウスを招待し、他数名の重役も交えて行った試写会は、フォッセリウス曰く「人生最悪の試写会だった」とのこと。
あんたらも最初は『STAR WARS』をボロクソ言ってたくせに…
追記・修正はダーフ・ネイダーが何を言っているのか完璧に理解出来る方にお願いします。
最終更新:2026年08月13日 20:45