登録日:2026/09/26 Sat 02:28:06
更新日:2026/09/26 Sat 14:35:12NEW!
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完全数とは自然数の一種である。
英語では、文字通り“perfect number”。
概要
小学校や中学校ではあまり聞くことの無い言葉である。
そのため、知らない人も多いかもしれないが、数学に関する雑学の本などでは知名度の高いトピックである為、「授業以外で少し数学をかじったことがある」と言う人なら知っている人も多いかもしれない。
定義としては「(自身を除く)正の約数全ての和が、その数自身と一致する」自然数を指す。
別のパターンとして「(自分自身を含む)正の約数全ての和が、その数の2倍と一致する」と定義する事もあるが、こちらも意味としては全く同じ。
1は当然、その数自身以外に正の約数を持たない(=自身を除く正の約数の和は0)ので完全数ではない。
また、1とその数自身しか約数を持たない(=自身を除く正の約数が1しかない)
素数も必然的に完全数ではなくなるため、完全数の候補は1でも素数でもない数、即ち「合成数」に限られる。
最小の完全数は「6」である。
確認してみると、6の自分自身以外の正の約数は1, 2, 3であり、これらを足し合わせると1+2+3 = 6となり、元の数に一致する。
続く完全数は「28」。
同じ様に自身以外の正の約数を調べると1, 2, 4, 7, 14になり、足し合わせると1+2+4+7+14 = 28となる。
その後、
- 496 … 1, 2, 4, 8, 16, 31, 62, 124, 248
- 8128 … 1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 127, 254, 508, 1016, 2032, 4064
- 335542208 … 1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256, 512, 1024, 2048, 4096, 8191, 16382, 32764, 65528, 131056, 262112, 524224, 1048448, 2096896, 4193792, 8387584, 16775168
……と続いていき、現在では52個の完全数が見つかっている。
条件に合う数がいかに少ないかがよく分かる。
なお、現在発見されている最大の完全数(52番目の完全数)は約8204万8640桁にも及ぶ長大な数字である。
また、実はこの個数にもある秘密があるのだがそれについては後述する。
正の約数の和
本題から少しそれるのだが、「そもそもの話、正の約数の和って出し方あるの?」と思った人もいるかもしれない。
もちろん一番単純な方法として「地道に正の約数を見つけて足し合わせていく」を行えば答えは求められるが、拾い損ねる可能性がある。
そこで利用されるのが「素因数分解」を使ってその整数がどの素数を何個含んでいるかを調べる方法になる。
まずは具体例として「12の正の約数の和」を考える。
12の正の約数は小さい順に並べると1,2,3,4,6,12の6つで、足し合わせると…
1+2+3+4+6+12 = 28となる。
ここで、12を素因数分解してみると、12 = 22 × 31となる。
ここで一旦約数の和に戻り、次の通りに式変形する。
1+2+3+4+6+12
= (1+2+4) + (3+6+12)
= (1+2+4)×1 + (1+2+4) ×3
= (1+2+4)×(1+3)
= (20 + 21 + 22) × (30 + 31)
と、この様に、2の累乗を指数=0から(12の素因数分解時に出た)2までスライドさせて出た値の合計と、同じく3の累乗を指数=0から(12の素因数分解時に出た)1までスライドさせて出た値の合計の積に書き換えることが出来た。
今回「12」ではこの様にできたが、これはたまたまではなく、他の自然数でも同じ様に考えられる。
「素因数分解の一意性」から全ての自然数は(積の順序変更以外で)素因数分解の形を2つ以上持つことは無い。
言い換えると全ての自然数の正の約数は素因数分解したときに出てきた素数それぞれの右肩の指数は元の数の指数以上になる事は無く、また素因数分解の際に出てこなかった素数が含まれることも無い。
つまり一般の自然数Nの場合でも素因数分解時にある素数Pによって最大n回割り切れる、すなわちPと言う素因数の組がある場合、元の自然数の正の約数はPと互いに素な自然数Qによって、
1 (= P0) ×Q, P1 ×Q, …… , Pn - 1 ×Q, Pn ×Q
と言う形の約数が浮かび上がる。
今回の事例で考えた場合、12の正の約数を全て列挙すると、
1 = 20 × 30
2 = 21 × 30
3 = 20 × 31
4 = 22 × 30
6 = 21 × 31
12 = 22 × 31 (その数自身)
となり、この内、注目する素因数を2とすると、12 = 22 × 31から、
上述した(P,n)は(2,2)となり、Qは1(=30)もしくは3(=31)のどちらかになる。
Q = 1の場合
1 = 20 × 30
2 = 21 × 30
4 = 22 × 30
Q = 3の場合
3 = 20 × 31
6 = 21 × 31
12 = 22 × 31
よって、正の約数の和の計算をする際に
(1 + P + P2 + … + Pn)
と言う式をくくり出してくることが出来る。
更に言えば高校数学での知識になるが、
1 , P , P2 , … , Pnは、「初項1、公比P(≠1)、項数(n+1)の等比数列になっているため、「等比数列の和の公式」を用いることで、
(1 + P + P2 + … + Pn) = (Pn + 1 - 1) / (P - 1)
と、わざわざ長い足し算をせずとも簡単な計算で値を求めることが出来る。
後は、残った元の自然数が持つ他の(P,n)全てで同じ操作をして、出来上がった合計の式をかけると、求めたい「正の約数の和」が完成する。
他の例として12以外で考えると、次のような結果になる。
→100 = 22 × 52なので、
100の正の約数の和:
(22 + 1 - 1) / (2 - 1) × (52 + 1 - 1) / (5 - 1)
= (8 - 1) / (2 - 1) × (125 - 1) / (5 - 1)
=7 / 1 × 124 / 4
=7 × 31 = 217
→14553 = 33 × 72 × 111なので、
14553の正の約数の和:
(33 + 1 - 1) / (3 - 1) × (72 + 1 - 1) / (7 - 1) × (111 + 1 - 1) / (11 - 1)
= (81 - 1) / (3 - 1) × (343 - 1) / (7 - 1) × (121 - 1) / (11 - 1)
=80 / 2 × 342 / 6 × 120 / 10
=40 × 57 ×12 = 27360
余談だが、このような「ある自然数Nに対する正の約数のM乗の和」を算出する
関数を「約数関数」と言い、「σ
M(N)」によって表現し、特にM = 1の場合「σ (N)」と省略表記する。
(ちなみにM=0の場合、「Nの持つ正の約数の総数」になる。)
そして完全数は「その数の(自分自身を含む)正の約数全ての和がその数の2倍と一致する」ため、上記の計算結果がその数自身の2倍になる事が完全数になる事の条件になる。
メルセンヌ素数との関係
素数pの中にはある自然数nによってp = 2n – 1と表現できるものが存在し、その数の事を「メルセンヌ素数」と呼ぶ。(余談だがこの時指数nは必ず素数になる事が知られている。)
一見すると完全数とは特に関係がなさそうに見える数だが、
- Nがメルセンヌ素数で、N = 2n – 1と表現できる場合、偶数の完全数はN×2n - 1と言う形で表現できる数に限られる。
と言う性質がある。
確認として「N×2n - 1は完全数である事」「偶数の完全数はN×2n - 1のみである事」を見る必要がある。
前者については実際に上述した自然数の正の約数の和の約数の和の計算方法で確認すると、Nは素数であり、N×2はこれ以上の素因数分解は出来ない形であり、
N×2の約数の和:
(N2 – 1) / (N – 1) × (2(n - 1)+1 – 1) / (2 – 1)
= (N + 1) × (2n – 1)
となり、N = 2n – 1なので、
= {(2n – 1) + 1} × N
= 2n × N = 2 ×(2n - 1 × N)
となり、元々の数の2倍となる為、完全数になっていることが確認できた。
後者側についてはやや煩雑な計算があるため、証明を折りたたみで表示する。
偶数の完全数Mを考え、Mは2で最大n回割れるとした場合、ある正の奇数Kによって、
M = 2n×Kと書けることになる。
この時正の約数の和を考えると、Mは完全数なので、
Mの正の約数の和:
(2n + 1 – 1) / (2 – 1) × (Kの正の約数の和)
=(2n + 1 – 1) × (Kの正の約数の和) …①
=2 × M
= 2 × 2n×K
= 2n + 1×K …②
①と②の式を見比べる事から、次の式が導ける。
(Kの正の約数の和) = (2n + 1×K) / (2n + 1 – 1) …③
左辺は整数Kの正の約数の和であり整数なので、右辺も整数になり、分母側の数で分子側の数を割り切れなければならない。
ところがこの時右辺側の分母(2n + 1 – 1)はその形から自動的に3以上の奇数になるので、
分子側の(2n + 1×K)の内、偶数かつ1以外の奇数で割れない2n + 1とは共通の素因数を持たない。
つまり、分子側の数の中で(2n + 1 – 1)で割り切れる数なのはKのみとなるため、
K = (2n + 1 – 1) × A
となる正の奇数Aが存在することになる。(Aが偶数だとKが奇数という仮定と矛盾してしまう。)
この時、③の式から
(Kの正の約数の和) = 2n + 1×A
と整理できるが、もしもAが1より大きい場合、Kの相異なる正の約数として
1 , A , (2n + 1 – 1) × A(K自身)
の3つが見つかる。つまり、
(Kの正の約数の和) ≧ 1 + A + (2n + 1 – 1) × A = 1 + 2n + 1 A
となり、導出した式「(Kの正の約数の和) = 2n + 1×A」と矛盾してしまう。
これは1とAが異なる数であったために起こったもので、A = 1であれば上記の矛盾は生じない。
よって、A=1に限定されることとなり、
K = 2n + 1 – 1
(Kの正の約数の和) = 2n + 1 = 1 + K
と言う2つの式が導ける。
この時、正の約数の和が1とその数自身の和と一致するのは素数の場合のみの為、
Kは2n + 1 – 1と言う形をした素数、即ちメルセンヌ素数になる。
故にM = 2n×K = 2n×(2n + 1 – 1)
となり、後者側の事実も正しい事が確認できた。
これにより、メルセンヌ素数と偶数の完全数は1対1に対応している事が分かった。
先ほど現在見つかっている完全数は52個と言ったが、これは上記の1対1の対応からメルセンヌ素数が1つ見つかるたびに対応する完全数も1つ見つかる、と言う形で導出され、メルセンヌ素数が現時点で52個見つかっていることから導かれた結果になっている。
また偶数の完全数は具体的な素因数分解の形が決定している関係から、特徴的な性質がいくつか見つかっている。
数学の世界では「三角数」という、点を正三角形状に並べた時の点の総数を示す数があり、1辺の長さをn個とした場合の三角数の値は
n(n + 1) / 2
で表現できることが知られている。
偶数の完全数はメルセンヌ素数N = 2n – 1によって、
N×2n - 1
= N×2n / 2
= N×(2n – 1 + 1) / 2
= N×(N + 1) / 2
と変形できる関係からN番目の三角数になる。
また、三角形を六角形に置き換えた「六角数」も存在し、こちらは1辺の長さをn個とした場合の六角数の値は
n(2n - 1)
で表現できることが知られている。
同じ様に偶数の完全数を変形すると、
N×2
=(2n – 1) ×2n - 1
=(2×2n - 1 – 1) ×2n - 1
となり、2n - 1番目の六角数になる。
この様に、様々な特性が明らかになっているが、ここから派生する問題として次の様な物があり、いずれも未解決の問題になっている。
→偶数の完全数とメルセンヌ素数が1対1対応する事から、どちらか片方が無限に存在することを示せればもう片方も無限に存在することを示せる。
→これまで見つかってきた完全数はもれなく偶数で、奇数の完全数は今日に至るまで見つかっていない。
もし奇数の完全数が存在する場合、メルセンヌ素数を用いた式とは別の表現が必要になり、別の考えで研究がなされていく事になる。
→1つ目の問題の拡大版で、偶数・奇数を問わず完全数が無数に存在するかどうか、という問題である。
偶数の完全数が無限にある事を示せればこの問題の結果も正しい事になるが、仮に偶数の完全数が有限個しかない事が分かった場合は2つ目の問題で該当する奇数の完全数が無数に存在するかどうかを確認する必要が生じる。
関係する数
「その数自身を除く正の約数の和が、その数よりも小さくなる」数のこと。
1や素数はもれなくこの数に該当する。
その他の数の例としては4や10, 21などもこの数に当てはまる。
特に「自身を除く正の約数の和が、その数よりも1だけ小さい」数は「概完全数」と呼ばれる。
条件に合う数としては現在1, 2, 4, 8…と言った2の冪乗の数だけが該当している。
逆に、「その数自身を除く正の約数の和が、その数よりも大きくなる」数のこと。
該当例は12,20などが挙がる。
「その数自身を除く正の約数の中で、和がその数と一致する(重複を含まない)組み合わせがある」過剰数は「擬似完全数」、そうでない過剰数は「不思議数」と呼ばれる。
擬似完全数の該当例は12で、自身以外の正の約数の内、1,2,3,6を選ぶとその和は12となる。(他にも2,4,6でも条件を満たせる。)
不思議数の該当例は70で、自身以外の正の約数は1,2,5,7,10,14,35だが、これらをどう選んで足し合わせても元の数70と一致しない。
また、「自身を除く正の約数の和がその数よりも1大きい」数は「準完全数」と呼ばれる。
1と自身以外の正の約数の和がその数と一致することになるので、準完全数は擬似完全数になるが、準完全数に当たる数は現在見つかっていない。
一方の(自身を除く)正の約数の和がもう一方の数と一致する様な、2個の(異なる)自然数の組のこと。
有名な例としては(220, 284)が存在し、
220の(自身以外の)正の約数の和:
1 + 2 + 4 + 5 + 10 + 11 + 20 + 22 + 44 + 55 + 110 = 284
284の(自身以外の)正の約数の和:
1 + 2 + 4 + 71 + 142 = 220
となって、もう一方の数が出る。
その性質上、小さい数の方は過剰数で、もう片方の大きい数は不足数になっている。
また、これを3個以上に一般化した概念として社交数というものがある。
3個の場合で例えると、相異なる自然数A,B,Cが
Aの(自身以外の)正の約数の和→B
Bの(自身以外の)正の約数の和→C
Cの(自身以外の)正の約数の和→A
となる場合、(A, B, C)は(3個の)社交数になる。
「(自身を含む)正の約数全ての和」がその数自身の倍数になっている数。
1倍(=その数自身と一致する)なら1倍完全数、2倍なら2倍完全数、3倍ならば3倍完全数…となっていく。
完全数は「(自身を含む)正の約数全ての和」がその数自身の2倍になるので、2倍完全数になる。
つまり、1倍完全数は不足数で、3倍完全数以降の倍積完全数は過剰数になる。
なお、1倍完全数に該当するのは1のみである。
余談
- 完全数の内、6は1×2×3 = 6 ( = 3! )となり、和だけでなく自身を除く正の約数の積もまたその数自身と一致する。
- 6以外の完全数は1から連続する奇数の3乗の和で記載が出来ることが知られている。
例えば28 = 1 + 27 = 13 + 33、496 = 1 + 27 + 125 + 343 = 13 + 33 + 53 + 73となっている。
- 日本のプロ野球で初めて完全試合が達成されたのは1950年6月28日の巨人vs西日本で藤元英雄氏によるものであり、奇しくも月と日がどちらも完全数になっている。
- 日本では6月28日は「パフェの日」とされているが、これは月・日が完全数である事と、パフェの語源であるフランス語Parfaitが「完全」を意味するところから設定されたものである。
追記・修正は自然数の正の約数の和の特性を調べながらお願いいたします。
- サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』でこれ知ったな。 -- 名無しさん (2026-09-26 14:02:57)
最終更新:2026年09月26日 14:35