アットウィキロゴ

SCP-3672-JP

登録日:2026/10/08 Thu 22:48:17
更新日:2026/10/08 Thu 23:26:37NEW!
所要時間:約 11 分で読めます




SCP-3672-JPとは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「柵の向こうには」。
オブジェクトクラスは Safe。

特別収容プロトコル

SCP-3672-JPの特別収容プロトコルは
SCP-3672-JPの発生を阻止するため、「入眠の補助を目的として羊を数える行為」に関する知識、記録は一般社会から抹消されました。
との文言で始まる。開幕からしてアンニュイ・プロトコル一歩手前の超スケールだがこの後には
  • 以上の行為が財団内でのみ共有されていること
  • 担当職員は毎日10分ほどSCP-3672-JPを調査すること
くらいしか情報はなく、複雑な前提知識が登場するわけでもないためそこは安心してほしい。

概要

SCP-3672-JPとは先程の『入眠の補助を目的として羊を数える行為』、要するに布団に入って「羊が一匹、羊が二匹、羊がetc…」と柵を跳び越えていく羊を数え続けるあの動作そのものである。

と言っても我々の世界とは前提からして違うようで財団世界ではその状況をイメージしようとすると
  • だだっ広い平原とそこを横断するように建てられた有刺鉄線つきコンクリート壁
  • その壁を跳び越えようとして壁にぶつかったり有刺鉄線に引っ掛かる羊
といった状況がその人の思考・経歴・知識に関係なく共通してイメージされるとのこと。新手のミーム汚染か?

なおしばらくその状況をイメージし続けていると今度は画面外から軍服を着用した2足歩行羊がやってきて先述の羊を拘束・連行していくらしい。有刺鉄線つきコンクリート壁の時点ではあるが世界観ブチ壊しである。
財団はこの二足歩行する羊をSCP-3672-JP-1に指定している。

またごく稀に壁を越えようとする羊が有刺鉄線を乗り越えて柵の向こう側へ行ける時もあるそうだが、その場合は画面外で銃声が鳴り響くそうで、この状況をイメージしている人間は「先程柵を乗り越えていった羊が射殺された」と認識するとのこと。「羊を数える夢」という元の牧歌的なイメージと比べると随分ハードな世界観である。

羊たちのデモ

そんなシュールなんだか剣呑なんだかよく分からないSCP-3672-JPだが数ヶ月から数年おきにデモが勃発しているらしい。

デモが勃発している間はイメージされる映像がいつもの「羊が脱走しようとして捕まる絵面」から「裸の二足歩行羊たちが壁の前でプラカードを掲げている絵面」に変わるようでプラカードにはSCP-3672-JPを行っている人物の第一言語で
「自由を」
「解放しろ」
「柵を戻せ」
などの文言が書いてある。
微生物がストライキを始めたり、夢の中で羊がデモ隊組んでたり財団世界の社会改革事情はどうなっているのだろう。

このデモイベントも通常時と同じく時間の流れがあり、3~24時間経つと今度は警棒、催涙弾、火器などで武装した軍服羊たちが現れデモ隊を鎮圧し始める。なおデモ隊羊は逃げる時に四足歩行を行うため「壁を越えようとする羊」とこの「デモ隊羊」は同一の存在と考えられているようだ。
財団はこのデモ隊羊と軍服羊をそれぞれ「市民集団」「武装集団」と呼んで区別している。

デモが鎮圧されデモ隊羊が全員画面外へ連行されていくと、SCP-3672-JPで浮かび上がるイメージはまたいつもの「有刺鉄線つきコンクリート壁とそれを飛び越えようとする羊」に戻るとのこと。

発見経緯

SCP-3672-JPで発生する異常事態の歴史は比較的浅く20██/08/13に発生が確認された。

当初確認されていたイメージは
『作業員のような姿をした二足歩行羊が平原の柵を撤去し、代わりにコンクリートの壁を作っている』
というものだったそうだが確認された時点から約10時間後には工事が完了し今のイメージとなったそうだ。

なお20██/08/13以前にもSCP-3672-JP由来と見られる異常現象は度々あったようで、『イメージの中に羊が現れない』だとか『柵に引っ掛かってコケる羊が勝手にイメージされた』といった情景を複数の人間が同時に報告してたりしている。
先程『SCP-3672-JPによる異常性が発生したのは20██/08/13から』といったが正確には「羊を数える行為が原因である」と結論付けられたのが20██/08/13からという認識の方が正しいかもしれない。

柵の向こうへ

20██/11/03に行われた調査の際、SCP-3672-JPでイメージされる状況が連続的かつ急速に変化しているとの報告がなされた。補遺1にて変化内容がまとめられているため早速追っていこう。

発生期間: 20██/11/03 15:00(調査開始時刻)~ 20██/11/09 14:06

内容: 大規模な「デモ」イベントが発生している。規模以外で特筆すべき点として、市民集団内に通常では武装集団に参加している軍服を着用したSCP-3672-JP-1が確認される。武装集団は鎮圧を試みるが、市民集団側も同様の武装を所持していたため鎮圧に失敗し、衝突が長期間継続する。

発生期間: 20██/11/09 14:06~ 20██/11/09 17:51

内容: 衝突が徐々に鎮静化する。武装集団に属するSCP-3672-JP-1は明らかに混乱している様子である。

どうやら軍服羊側にいた反抗勢力がデモ羊たちに武器提供をしたらしく一方的だったパワーバランスが拮抗しているようだ。



発生期間: 20██/11/09 17:51~ 20██/11/09 19:04

内容: 市民集団に属するSCP-3672-JP-1が雄叫びを上げる。観測範囲外から大量のSCP-3672-JP-1が押し寄せ、市民集団と共にハンマーなどを用いて壁の破壊を開始する。武装集団は慌てる素振りを見せながら観測範囲外へ退出する。

発生期間: 20██/11/09 19:04~ 20██/11/09 22:45

内容: 壁が完全に破壊される。大量のSCP-3672-JP-1が壁の外部へとなだれ込み、観測範囲外へ移動する。実行者はこの間極めて強烈な眠気を体験したと報告する

発生期間: 20██/11/09 22:45~ 20██/11/10 05:02

内容: 破壊された壁と、大量の羊が通過したことで生じた足跡のみが観測される。

そしてとうとう軍服側が撤退、ついに長らく羊たちの行く手を阻んでいた壁の破壊が行われた。強烈な眠気については「羊が柵を飛び越える」という状況が擬似的に成立したからだろう。(数えなくても効果あったんだ…)



発生期間: 20██/11/10 05:02~ 20██/11/12 12:39

内容: 先述したSCP-3672-JP-1が移動した方向から重火器で武装した二足歩行の狼に類似した実体、現代的な戦車、自走砲、トラックで構成された部隊が連続して出現し、壁内部へと侵入する。最初に確認された部隊の様子からSCP-3672-JP-1の足跡を遡ってきたと思われる。

………………


  _____
  (____ノ|
  ||| ∥∥///|
  ||| ∥//-イ/|
  ||ヽノ/ u|/ヘ
  リu ~ ノ_|/リ|
`/|トevルイeラ レ人
/ | ̄|| 厂 / Kミ〉
/)ヽ ()/ u||V\
/ ∧ィニ⊃ / / /ヽ
二二フ_ ̄`/u/ / |
――-イ  ̄ / /⌒ヽ|
ノ ̄ ̄ / / /   |


『何を言っているのかわからねー』が実際にそうなってるんだから仕方ない。続きを追っていこう。



発生期間: 20██/11/12 12:39~ 20██/11/14 09:17

内容: 破壊された壁のみが観測される。

発生期間: 20██/11/14 09:17~ 20██/11/16 21:25

内容: 作業服を着た狼型実体が複数現れ、壁を完全に撤去すると同時に道路を建設する。

突然侵略してきたと思ったらノリノリで開発を進めるオオカミ達だが今度は壁ではなく道路を建設し始めている。壁の次は横断歩道でも跳び越させるつもりなのだろうか。



発生期間: 20██/11/16 21:25~

内容: 定期的に狼型実体が搭乗したジープ グラディエーターと思わしき車両が道路上を通過するようになる。荷台には拘束されたSCP-3672-JP-1が積み重なっており、実行者は車両を認識するたびに若干の眠気を感じると報告する。これ以降SCP-3672-JPに変化は確認されていない。

  ∧_∧
Σ ´・ω・)<出荷よー

ㅤㅤㅤ,〜⌒⌒⌒、
ㅤㅤ@・ω・`@<そんなー

現実は非情である。
有刺鉄線だの銃殺だのデモ隊だのが登場していた前までの内容と比べれば随分と安定した光景になったが、当人(当羊?)たちからすれば事態はむしろ悪化したと言えるだろう。

「これ以降SCP-3672-JPに変化は確認されていない。」と書かれている通り報告書はこの事例で締めくくられている。




余談

この作品にはディスカッション欄にて作者よりスポイラー*1が公開されている。著者本人も「あくまでも"解釈の一つ"だと思ってください。」と書いているためコレ以後の部分は「話のタネ」と割り切った上で読んでもらいたい。

まずSCP-3672-JPによって浮かぶイメージ図だがコレは薄々御察しの通り単なる空想ではなくれっきとした「別世界の映像」とスポイラーにて明言されている。
20██/08/13、壁の建設が始まるまでの羊たちの世界は我々が思い描く牧歌的な風景と遜色ないものだったのだろう。しかしその風景は有刺鉄線付きコンクリート壁という異物によって破壊された。

ここで気になるのが壁は突然現れたモノではなく、「作業員羊、ひいては軍服羊たちの手によって建設されたもの」という点である。羊たちが柵を乗り越えて行かないよう妨害していた軍服羊たちは同時に、柵を乗り越えた羊を処刑していた。
単純に見せしめという可能性もあるがデモ隊羊が壁を壊し羊たちが壁を乗り越えていったすぐ後にオオカミが攻め込んできたことを考えると軍服羊たちの目的は

「羊たちの移動を制限すること」

以前に

「外のオオカミたちに『壁の中には羊が大量にいる』という事実を悟られないこと」

だったのではないだろうか。

スポイラーには
そもそも国家のような組織はなぜ壁を作ったのでしょうか。壁が作られる前に外に出た羊たちは、その後どうなったのでしょうか。
という問いこそ立てられているモノのそれに対する答えはない。

かつて自由の象徴であり取り戻すべき権利でもあった「向こう側」。しかしそれは同時に羊たちへ悪夢をもたらす厄災でもあったようだ。



SCP-3672-JP

柵の向こうには


そこに何があったのか、今更言う必要は無いだろう。


余談その2

この作品の根幹である『眠るために羊を数える行為』だが実際のところは入眠のしやすさについてコレといった影響は無いとされており、『英語圏において「羊(sheep)」と「眠る(sleep)」が似た発音であることからの連想である』という説もあったりする。要はお節料理の「鯛はめで"たい"」だとか「昆布は喜"こんぶ"」的な語呂合せである。
ディスカッションの作者コメント曰くオオカミたちの乗り回す車が「ジープグラディエーター」な点も意図的なモノであり曰く「ジープ」と「シープ」の発音が似ているからとのこと。


追記・修正は布団に入り羊の数を数えながらお願いします。




この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2026年10月08日 23:26

*1 報告書内に載せない、載せられない裏設定などを書いたもの