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カミール・テュイ

登録日:2026/11/02 Mon 23:34:05
更新日:2026/11/03 Tue 00:20:22NEW!
所要時間:約 30 分で読めます


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これは天使みたいにお空を飛んでいて、雲の上から落っこちちゃったからなの……

こうやって、ね


  • カミール・テュイ(Carmille Tewy)は『ACE COMBAT 8: WINGS OF THEVE』の登場人物。

日本語版CV.能登麻美子



🌕️概要



ソトア空軍所属、TACネームはセレーネ(Celene)、戦術ナンバー(コールサイン)は月11。階級は少将。教育総監及び、ソトア空軍の最精鋭部隊たるルクス・ルーナエ隊の指揮官を務める。

見た目は年齢に比べて非常に若々しい顔つきで、短く刈り揃えられた黒髪に細い目と眉を持つ。
1988年生まれのため、本編(2029〜30年)時の年齢は40〜42歳と推定される。
ソトア共和国の中でも屈指の有力氏族*1の生まれであり、若い頃を知る人物は当時の彼女を指して『本物のお姫様』と評した。

現在は右腕を除く四肢の全ての自由を失っており、マジックアームを備えた白い大型の電動車椅子を用いての生活を余儀なくされている。

また、主人公レックスに残留思念として憑依したジャン・コープ中佐は過去に彼女と接点があり、劇中でも彼女や彼女に関わる物事に強い反応を行っている。


🌕️能力




かつてはソトア空軍のトップエースであり、極めて優れた戦闘機パイロットだった。隣国ユークトバニアとの間に起きたソトア・ユークトバニア紛争でも活躍していたが、その最中に敵のエースと相討ちになる形で撃墜され、上記のような重い障害を負ったために現在はパイロットとして再起不能となっている。

しかしそれでもかつてのトップエースとして絶大な名声を誇っており、教育総監という立場もあってかソトア空軍のパイロット達から受ける信頼は絶大。特に直接指揮を取るルクス・ルーナエ隊が彼女に寄せるそれは、ほぼ心酔と言っていいほど。
それに限らず空軍のパイロット候補生たちは全員が教育課程の修了にあたって彼女から鷲のメダル*2を手渡されるという通過儀礼を受けるのだが、これをして「最高の瞬間」と感じるらしい。
卓越した戦略眼を持つとされ、ソトア軍によるFCU侵攻においてもルクス・ルーナエ隊を指揮して幾度となく主人公たちジョーカー隊とその姉妹小隊たるクイーン隊を追い込んでいく。

……ここまで書くと、高い実力とカリスマ性を備えた優秀な軍人であるかの様に思える。

しかしそんな彼女自身や彼女に影響された者による実際の行動や言動は道義的にも常識的にも到底許容し難いものであり、主人公たちジョーカー隊やその仲間たち、特にコープの思念は強い反感を示すようになっていく。

その理由もふくめて、実のところ彼女の「(戦術レベルの)作戦指揮官」や「戦闘機乗り」、「偶像」としての能力はともかく、「軍人」特に「(戦略レベルの)司令官」としての能力には疑問符がつく(詳細は後述)。



🌕️劇中の活躍



以下、本編のネタバレを多数含みます。











シャドウズを指揮する謎の声

彼女が劇中で初めて登場するのは、FCUが発動した二度目の首都シーヴ奪還作戦のさなか。
進軍するFCUの陸上部隊を阻止するためにソトアは爆撃機を繰り出したが、その護衛についていたのがルクス・ルーナエの第150小隊だった。
だが、その戦場にはシーヴの翼こと主人公レックスがいた。護衛である150小隊を抜き去りながら爆撃機を撃墜していくレックス。そして、そんな光景に動揺する彼らを指揮するUnknown(正体不明)の声。それこそがカミール・テュイであった。

Unknown
<<<第150小隊に告ぐ
各自の責任を果たせ>>>

<<<勝利する諸君は月のように輝く>>>

その声に士気を取り戻すルクス・ルーナエ。護衛対象を失おうと、せめて名誉はと意気込み、レックスへと挑みかかっていく。
だがシーヴの翼の実力はなおも圧倒的であった。更に投入される追加戦力さえも蹴散らされ、ルクス・ルーナエは更に撃墜される。

Unknown
<<<先遣部隊が墜とされた>>>

<<<この戦場にはルクス・ルーナエに匹敵する敵がいる >>>

その光景にテュイは送り込んだ第77小隊……ルクス・ルーナエの中でも更に別格の戦闘力を誇る「ダブルス」の機体へと警告を送った。
だがその警告も虚しく、77小隊は壊滅。これに随伴していた180小隊、先遣の150小隊も含め、ルクス・ルーナエは全機撃墜される。

その後には陸上戦艦1番艦がシーヴで撃破*3・鹵獲され、ソトアはその穴を埋めるために陸上戦艦の三番艦を空輸させるべく大型輸送機ポタルゲをユージア大陸へと飛ばす。だがこれを察知したFCUはポタルゲ撃墜作戦を展開。
機関砲だけしか武器がないクイーン隊と母艦たる空母エンデュランスを囮にして、残り少ないミサイルの全弾を積んだジョーカー隊でポタルゲを攻撃するという捨て身の攻撃に打って出る。
この際にも彼女はルクス・ルーナエの指揮官として無線を飛ばしており、55小隊の隊長影55に「空母の破壊を優先したい」という趣旨のオーダーを行う。
だがその時点で既にポタルゲは半数近くが撃墜されており、当然ながらその乗員である無数のソトア軍兵士も命を落としていた。
そして影55はソトア軍においては(珍しく)極めて良心的な人物であり、この犠牲を見過ごせなかった。彼は空母の破壊よりも、ジョーカー隊の空戦による直接打倒を選んだのだった。

しかし、55部隊は壊滅。ポタルゲも全機撃墜されるという結果になってしまう。

+ この際の戦略
一見すると影55が甘さで勝ちを拾いそこねたようにも見えるが、実のところどっちみち結果は変わらない。というのもこの作戦空域の近くにはフォートグレイス島があり、この島をソトアは攻略できていなかったのだ。つまりもしここでエンデュランスを沈めることが出来ていても、ジョーカー隊を燃料切れの墜落に追い込める訳ではないのである。
しかもこの時点ではエンデュランスを沈めるどころか護衛のクイーン隊さえ撃墜できていないので、ジョーカー隊がポタルゲを全滅させて戻ってきたら挟撃される羽目になる。

……もしもこの作戦で正解があるとすれば、レインバンドを突破されたことが判明した時点でポタルゲを帰還させて空輸を取りやめるか、後々でやるような大部隊やルクス・ルーナエの複数投入で強引にジョーカー隊を妨害し続けることだけであり、そのどちらもが出来ずレックスを相手にして55部隊だけで護衛する*4などという無茶苦茶を強行せざるを得なかった時点で負けは決まっていたのだ。

偽りの翼と堕ちた月の邂逅

そしてこの少し後。
紆余曲折あり、ジョーカー隊の1番機ことレックスと、2番機のバクスターは敵地であるリオ・バホ近郊でベイルアウト。FCUからの分離独立派勢力圏でありソトアの統治への不満から大量の市民たちが蜂起を行おうとしている地域に降り立ち、近くの村でレジ寸タンスの少女ロシータに匿われる。

そしてーー何の因果か、カミール・テュイもそこにいた。

ロシータは以前に彼女*5にミルクを贈っており、テュイはその返礼として腹心の影22ことギリッシュ・トプラク大佐の運転する車で発電機を持ってきたのだ。
かくしてこれまで音声のみの登場だった彼女はゲーム画面にはじめて現れ、レックスとの対面を果たすのだった。
ロシータの家で茶を飲み合うテュイとレックスたち。そんな中で自分の体について問われ、記事冒頭の言葉で返す。その後は駆けつけた影24ことイルハン・アレム中佐から、地面に転がるシーヴの翼が刻印されたヘルメットの写真を渡され、すぐに退出。
その後バクスターからは、彼女が月11と呼ばれたかつての大撃墜王*6であることがレックスに伝えられた。
ロシータは独立派の兵士によって殴打され目元に痣があり、これを見た際には「いずれ罰してあげる。誘導爆弾ででも……」と述べるなど(言動はやや物騒ながらも)ロシータには好意的に接しており、後の言動を見てもその好意は嘘ではなかったものと思われる*7。

また、この際にレックスに憑依していたコープもまた彼女の姿を目のあたりにし、あなたなのか あなたなのだな?と反応。この世に残っていた理由こそが、目の前のカミール・テュイ……月11だと悟る。
彼女が既に飛べない身体であると知ると俺がこの世ですべきことはすでに終わってしまっていたと嘆く。

コープの怒り

それから更に後。
ジョーカー隊とその姉妹小隊であるクィーン隊は、ソトアの衛星兵器トニトルスの槍*8に弾体を補充しようとするソトアを阻止すべくコモナ諸島へと向かっていた。
その最中、ある方法によってクィーン隊の行く手に先回りしたトプラク率いるルクス・ルーナエの22小隊と140小隊*9。
早々に4番機のエヴァーソンが撃墜されるクィーン隊。相手にしているのがシーヴの翼たるレックスの仲間であることを悟り、テュイはトプラクにあるお願いをする。それに得心するトプラク。
そして彼が実行したこととはーー。

Queen 3 Loc
<<敵はエヴァーソンのパラシュートを撃ってる! 野郎!>>

ベイルアウトして降下中のエヴァーソンを、機関砲で狙撃して撃ち殺すという蛮行だった。
疑う余地なく戦時国際法違反の戦争犯罪であるこの行為をテュイは「お願い」し、トプラクは躊躇なく実行したのだ*10。
それは、エヴァーソンを撃墜する囮として利用された3番機のロックを激昂させるための行為だった。その隙を突かれロックまでが撃墜されるクィーン隊。すかさずバクスターは、その行為が戦時国際法違反だと指摘するが……。

Shadow 22 Toprak
<<相容れない考え方をする>>

<<今墜ちた彼の死は>>

<<囮とした役立てることで
有益なものとなった>>

<<家畜を毛1本まで無駄にしない
遊牧民の考え方なのだ>>


返ってきたのは、もはや開き直りとさえ呼べるか怪しいそんな言葉だった。
その言葉にコープの残留思念は明確な苛立ちを見せる。
「違う」
「俺の中のどこかにやつの言葉にそう反応する何かがある」
と。

更にそれから後、ジョーカー隊とクィーン隊が宇宙船を輸送する中でまたしても襲撃を掛けてくるルクス・ルーナエ。そんな中でたった一機でこれを壊滅へと追い込んでいくレックスを見て、テュイは呟く。


Moon 11 Tewy
<<<1機でルクス・ルーナエ殲滅は不可能>>>
<<<でもたまに生まれるの こういう「はずれ値」が>>>

統計学かと問うトプラクに、テュイは「家畜の繁殖の経験」と返す。
そんな言葉に、またしてもコープは怒りを見せる。


Cope
そうだったか? 本当に
そんなことを信じているのか お前は

……このように、以降の彼女の言葉に対してはコープは明確な反発と怒りを示すようになる。
そしてそれは、単に仲間を撃たれたという理由からではなく、より明確な理由に基づいたものだった。

月の復権

彼女の率いるルクス・ルーナエによってクィーン隊は被害を受けたものの、シーヴの翼レックスは健在。彼の数々の戦果もあり、戦争はFCUの優勢で続いた。
ユージア大陸各地のソトア軍占領地は解放され、残すはソトア侵攻の橋頭堡たるロッキーアイランドのみ。
そのロッキーアイランドでの戦いが終盤に差し掛かり、ソトア軍司令部が陥落間際となった時、またしてもルクス・ルーナエは現れた。


Moon 11 Tewy
<<<33 44 〈翼〉に連携させるな>>>
<<<その隙に120は地上支援を行え>>>

三小隊の同時投入というこれまでにない規模での攻勢。ジョーカー隊を引き離し、地上部隊への攻撃を同時に行うという作戦だった。
……が、これでさえ「シーヴの翼」、そして今や友軍からは「希望の手」、ソトアからは「砕命の五指」と言われるまでに至ったレックスを止めるには足りなかった。
ルクス・ルーナエは全機撃墜。ロッキーアイランドはFCUに奪還されることが避けられなくなる。
その際、彼女はソトア軍に撤退を促した。
が、どうやらこれは越権行為であったらしく、ソトア軍を指揮する陸軍中将と戦闘機総監は反発。
教育飛行隊*11を前線に出すという悪あがきに及ぶ。これに彼女は強烈に反発。彼らは「草原の教えを忘れ、家畜のように肥える者ども」とまで痛罵する。
そしてその後、この戦闘機総監は死亡*12。
後任の戦闘機総監となったのはテュイだった。

そして、ソトア軍との戦いに決着を付けるべくメガフロート・ファトシアへと進軍するFCU軍は、攻略の前線基地としてソトア領内のシーマ島を強襲。この駐留戦力を壊滅させるが……。


Cope
風に気をつけろ 吹き下ろしてくる


そこに、一機の戦闘機が飛来した。
4機のUAVを遠隔操作しながらレールガンを乱射し、FCUの軍艦を立て続けに撃沈する異形の戦闘機。その速度と火力は圧倒的であり、艦隊はまともな反撃さえままらなかったが、突如として戦線を離脱していくのだった。
それに前後し、2つの情報がジョーカー隊のもとに入ってきた。

一つは、月11が「復権」した、といういくつもの無線の情報。
そしてもう一つは、D.D.のもとに舞い込んだメッセージ。「神経接続によって操縦される機体」がエンソー・オーダーから送られてきたという、テュイの声。

先の機体……X-40ナイトメアは、テュイが神経接続によって操縦していたものだったのだ。
離脱の理由も十分な戦果が得られたことに加え、この操縦方法がパイロットの神経組織に並ならぬダメージを与えてしまうものなせいでテュイが限界に達した*13というのが理由だった。

かくして戦闘機乗りとして戦場に舞い戻ったカミール・テュイこと月11。その暴威は圧倒的なものであり、ジョーカー隊にまで打撃を与えたのであった。

狂える月影

……が、結論を言えば、この帰還は戦争そのものの趨勢を変えるにはあまりにも遅すぎた。
FCU軍は残存戦力によって、メガフロート・ファトシア攻略作戦を決行。*14FCUの作戦は成功し、ソトア最後の戦略拠点たるファトシアが陥落してしまう。
もはやこの時点で、ソトアの敗戦は事実上決まったと言っていい。ファトシアは戦略兵器であるトニトルスの槍のコントロールシステムと、陸上戦艦の建造プラントの双方を兼ねていた。
これが失われるということはつまり、戦争を続けようと思えば陸上戦艦もトニトルスの槍もなしで戦うことになるということ。そして、既にユージア大陸全土で敗戦を重ねたソトアにそんな真似をするまでの戦力は残されていない。
……だがそれでも、ジョーカー隊の前にソトア軍はやってきた。

FCUのAWACS機ディーラーのレーダーには、千の機影が映っていた。
そう、千機。空を埋め尽くさんばかりの、ソトア軍の飛行機が。
これは、FCU侵攻のためのものだけではなかった。本土防衛様の機体に、東側*15の防衛を担当していた機体までを引っ張り出したもの、つまりソトア空軍が所持している機体の全て、戦略的だとか常識的だとかいう意味ではなく物理的な意味で稼働可能な全機体を、ジョーカー隊殲滅のためだけに引っ張り出してきたのである。
この戦略的には暴挙としか言いようがない作戦に動員された部隊へと、テュイは檄を飛ばす。


Moon 11 Tewy
<<<こちらは戦闘機総監 戦術ナンバー月11
ソトア空軍の全機に告ぐ>>>

<<<ソトアを名乗る国はもはや敗北寸前であるという>>>
<<<だが 国家など持たなかった民族ではなかったか>>>

<<<いくつもの部族が
それぞれの暮らしを営んできた>>>
<<<あの遊牧の草原に戻るなら自由意志しかない>>>

<<<全軍各部隊から集った諸君>>>
<<<ここで 敵航空勢力を撃滅すれば
われわれの勝利だ>>>

……ある意味国家というものの全否定とさえ呼べるこの演説に、しかしソトア空軍は発奮。シーマ島へと攻勢をかける。
そして別働隊の奇襲もあり、一度はジョーカー隊が絶望に陥りかけるほどまでに彼らを追い詰める。
だが、以前に撃墜されたはずのジョーカー隊の一人がサヴィア傭兵を引き連れて舞い戻ってきた。
これもあり、ソトア空軍の総力を動員しての空戦はあろうことか敗北。少なくとも爆撃機は全機が撃墜され、戦闘機も大半が撃ち落とされるという結末に終わってしまう。

そしてその戦闘が終わりゆく中、テュイの駆るX-40がまたしても乱入。だが今度は数機を撃墜したのみで、すぐさま戦域を離脱してしまう。
事後を影22トプラクに託し、彼女が向かった先とは……。

炎に消えるアネモネ

彼女の行先、それはFCUの首都シーヴだった。
そのシーヴには、陸上戦艦の1番艦が擱座したままになっていたのだ。
ファトシアの陥落に加え空軍の壊滅もあり、もはやソトアは完全に敗北を免れなくなった。それによってソトアを陰で煽っていたエンソーは戦争からの離脱を決定。ユージア大陸だけでなく世界各地にある自分たちのラボを尽くトニトルスの槍の遠隔操作で破壊し尽くすというダイナミック証拠隠滅に移っていた。

そして、彼女はそれが許せなかった。ソトアを利用したエンソーがそのまま逃れるのを。
それを阻止するために、彼女は。

シーヴにある陸上戦艦の動力炉をトニトルスの槍で破壊し、周囲一帯を放射能汚染しようとしていた。

もう一度言う。FCUの首都シーヴの一帯を放射能汚染しようとした。

何故そうなるのか? と胃うと、シーヴの近郊にはエンソーのラボがあり、このままではそこにトニトルスの槍が堕ちてエンソーが戦争に関与した証拠が隠滅されることがわかりきっていたからである。
彼女はそれを阻止するために、X-40に搭載されていたトニトルスの槍の誘導機能を用いて弾体の標的をラボから動力炉へと変えることで、ラボを破壊から免れさせると同時に動力炉を破壊。周囲一帯を放射能汚染して誰も立ち入れなくすることで工作員などによる証拠隠滅も不可能にするつもりだったのだ。

当然ながら、そのために自国首都を生贄にしろなどとはFCU軍には受け入れられるはずもない。
「自分もエンソーも同じ」と弾劾するジョーカー隊*16と、ソトア軍最後のパイロットになった彼女は最後の空戦に臨むこととなる。


Cope
俺はこの世のことからは手を引く

あんな風になったあいつを
早く墜としてやってくれ

もはや彼女を撃墜してやる他ないと悟ったコープの声を受けながらも戦うレックス。
この際に、次々とジョーカー隊と舌戦を繰り広げるテュイ。


ーー多くを墜としてきた〈翼〉ならば、己の気持ちが分かるのではないかと問うた。


Joker 3 Tasha
<<それは誰かを守るためだった!>>

Moon 11 Tewy
<<ソトアだって 生きる大地を求めて戦ったのよ>>
<<ほかにどんな手段があったのかしらね>>

ーー復讐を一人で為すつもりかと問われた。


Moon 11 Tewy
<<あいにく1人しかいなくなっちゃって>>

Joker 4 Kate
<<何もかも全部背負うことはできないのよ>>

Moon 11 Tewy
<<あらそうかしら?>>

ーー伴う犠牲を否定された。


Joker 2 Coster
<<正義のために 家畜を潰す遊牧民はいない>>

Moon 11 Tewy
<<従順じゃない雄羊は
間引くか去勢するかしてきたのよ>>

かわされる言葉は尽く、どこまでも平行線。



猛烈なスピード、圧倒的な火力、何よりパイロット本人の操縦技術によってジョーカー隊を翻弄するテュイ。
レックスの動きを先読みする*17という超絶技巧をも披露しながら、彼女は首都シーヴの空を駆け抜ける。
だがーーしかし、やはりこの神経接続による操縦のリスクは大きく、何より希望の手の力は彼女をも完全に超えていた。

斯くして一度パイロット生命を絶たれてなお復活したソトアの大撃墜王はその命を燃やし尽くした果て、ついに空戦で敗北。
機体を撃墜され、なおもX-40のコクピット部のみで槍の誘導を続行するが、それさえレックスに捉えられ被弾。
キャノピーが剥がれたことによりX-40のコクピットから投げ出されながら、機体の爆炎の中に消えるのだった。


砕命の五指
いや希望の手にこの際託そう

約束の地「ホルトゥス・レギス・アルティ」へ
彼らの魂を……


ーーそんな彼女の姿を見つめながら、コープの残留思念はどこか無念さえ滲ませながら呟く。


遊牧民の合理性とか言っていたが
本当に羊たちとともに生きていたのは俺たちなんだ

お姫様のあんたはろくに知りもしなかっただろう


今の彼女の在り方を、言動を、コープは認めることなど出来なかった。
真の遊牧民であるコープには分かっていたのだ、彼女が「遊牧民」について繰り返し述べた言動、その全てが間違いであると。
或いは、コープが生きて彼女の傍にいることができれば、彼女の結末は何か違っていたのだろうか……。



🌕️考察


・最後の作戦について

+ ネタバレ注意
彼女が最後に行った、ソトア空軍全機を投入してのシーマ島強襲作戦。

この作戦が戦略的に見てどれほどの問題があるものか、と言うよりあってはならない選択であるかは、軍事に造詣の深い者でなくても多少の常識と想像力があるならばすぐに分かることだろう。
何しろこの作戦は本土防衛用の機体も、東側(ユークトバニア)からの防備を担う機体も、そのほぼ全てを駆り出した作戦、

言い換えるならソトア本国の防備、つまり軍隊という公務員が果たすべき自国に住む一般市民の生命・財産や都市機能の守護という役割を完全放棄して実行する選択なのである。

これではFCUにソトア領内のどこを航空攻撃されたとしても誰も一般市民を守れない。虐殺されようと占領されようと手も足も出ない。まして、この直前にソトアはトニトルスの槍2号機でユージア大陸全土を無差別爆撃しようとしたばかりなのだ。FCU以外のユージア大陸各国はもちろん、オーシアやユークトバニアと言った別大陸の国がユージア大陸在住の自国民や軌道エレベーター等の施設・財産の保護のためにソトアを攻撃しようと文句は言えない……ていうかむしろ、やらないほうがおかしいレベルの状態である*18。

テュイは、そんな状態で自国の空を丸裸にするこの作戦を実行したのだ。
仮にこれがジョーカー隊を撃滅出来ないことを織り込んだただの足止めだったのだとしても、そのために払う代償はあまりにも大きすぎる。
誰か、止める人はいなかったのだろうか。

・彼女の語る「合理性」

+ ネタバレ注意
コープは劇中で再三指摘しているが、彼女の「遊牧民としての合理性」に関する言動の大半は実体験に基づかない偽り、つまり嘘である。
お姫様でしかない彼女は家畜との生き方など分かっていなかったし、それに対する向き合い方も到底合理的なものとは言えなかった。遊牧という生活様式は、従順ではないものや能力の劣る個体を次々と殺しておけばそれで回るような容易いものではない。

コスターの「正義のために家畜を潰す遊牧民などいない」という発言が全てであろう*19。翻って言うなら、そんな愚行を本気で実行する輩がいれば、そんなものはもはや家畜に生命を支えられた遊牧民ではない。
その正義という宗教のために己の生命を平気で投げ捨てる、ただの狂信者だ。

そして正義とは何も道徳の教科書の掲載内容として正しいことだけを指す言葉ではない。「己の選択・行動の基準」でもある。
その人が「それに従う限り迷わず行動できる」なら、何であってもそれはその人なりの正義なのだ。テュイは「正しいかどうかなんてどうでもいい、合理的かどうかなの」と嘯いていたが、そんな彼女もまた「ソトア人としての合理性」という正義に従っていたのだ。
それだけなら良かったのだろうが、問題なのはその正義(ごうりせい)の根幹にあるのが 言うことを聞かない&(ヒツジ){家畜}や騎馬(ウマ)は利用して皆殺しにすれば善し、これぞ合理性。そして我らにとっては他国民など家畜同然なりという、到底現実に即した合理性とは呼べないような思想であったということ。

つまりは事実上、嘘の塊でしかなかったということである。
そしてそうやって本当に合理的ではないものを合理的だと信じ込んでしまえば、実際に合理的であることからは掛け離れた行動選択になっていく。
実際に彼女の行動もまた、上述のとおりに本当に合理的とは呼べない様なことが多くあった。

ソトアの蛮行の大半の裏にあったであろう、この「他国民は家畜同然」「邪魔な家畜は殺せばいい」「そんな我らは合理的」というソトア人なりの”正義”が、一体どこから出た嘘だったのかは分からない。
エンソー・オーダーのエージェントが送り込まれてそういったプロパガンダを広めたのかもしれない。或いは、彼女自身が言い出した嘘だったのかもしれない。
または、ソトアという国の中*20にはこういう考えが本当にずっとあったのかもしれない。それだったら国家が成立しそうにないが。

だが一つだけはっきり言えるのは、本編時点の彼女はもはや、「自分は遊牧民として生きてきたし、家畜と遊牧の何たるかだって全部わかってる。そんな自分は合理的な遊牧民」「合理的な自分がやることなのだから、自分の行動もまた全て合理的」という妄想に取り憑かれ、それが事実に基づかない勝手な自認すなわち嘘だという自覚さえ持てなくなってしまっていたということ。

つまり彼女は、真実を見失い嘘に取り込まれたのだ。嘘だったはずの「撃墜王」を真実に変えたコープとレックス……二人のシーヴの翼(ジョーカー1)と行き違うかのように。
こんな嘘は本物の遊牧民からすれば噴飯もの、コスターのような遊牧に関係ない他国民から見てもすぐにその瑕疵に気付けるものでしかなかったのに。
ならばこそ、彼女がレックスに討たれることはもはや必然だったのだ。

そんな彼女が最後の最後、合理性の言い換え(ウソ)だと自ら認めていたはずの約束の地というものをレックスに託したのは、何の皮肉であろうか。
もしかしたら、彼女はかつては本当にそういうものがあると信じていたのかもしれない。だが、嘘に塗れていくうちにそれを信じる心をなくしてしまっていたのではないだろうか。そして、死の間際になってやっとその時の心を思い出したのかもしれない。

だがそうであっても、彼女はあまりにも多くの兵士を死なせすぎた。敵味方のどちらも。そして、その生き様は決して、高貴な身分に生まれついた者としての使命を果たし切ったとは呼べないものだった。
そして、約束の地とは使命を果たして生命を終えた者のための場所である。

ならば彼女の行き着く先は、腹心の部下と同じ場所以外ありえないだろう。


+ ならば彼女はどうすればよかったのか
端的に言えば、彼女自身にはどうすることも出来なかった。僅かなりとも自分の歪さへの自覚があるならともかく、彼女にはそんなものはなかったのだから。

だから、誰かが彼女の認識の歪さを指摘し、テュイを止めてあげるべきだったのだ。コープの様な考え方と、彼女への真摯な愛情を同時に持つことができる誰かが。

そうしていれば、少なくともファトシア陥落後の彼女の選択は変わっていたかもしれない。自国防衛を放棄してジョーカー隊を攻撃する作戦が非合理的だと気づけていれば、あの作戦さえ立てずシーヴに単機で突撃するなんて愚行さえ行わなければ、テュイは生き延びることが出来たかもしれない。
或いは生き延びても戦争犯罪者として裁かれたかもしれないが、それだって犯罪行為を実行せよというトプラクたちへの命令を誰かが止めていれば避けられた未来だったのだ。

だが、時代と環境はそれを許さなかった。ソトア人、特に空軍兵士の多くはテュイに心酔するばかりで彼女の行動に疑問を抱くことはなく、同等の権力を持つ者たちは彼女を邪魔者と疎み排除しようとするばかり。
本当の意味では、誰もカミール・テュイという一人の女を見つめてはいなかったのだ。「月11」しか見ていなかった。ジャン・コープ以外は、誰も。

だがそんなコープは、物語開始早々に死んでしまった。しかもそれを命じたのは彼女自身である。

彼女は無自覚に、自分を救ってくれるかもしれない唯一人の男を抹殺してしまっていたのだ。

……これほどの悲劇はないだろう。



🌕️関連人物



・ギリッシュ・トプラク
でも 彼は違うから*21

腹心の部下。彼と彼が率いるルクス・ルーナエに指令を下す形でFCU侵攻作戦に参加している。
トプラクからは半ば崇拝に近い感情を向けられており*22、リオ・バホ近郊でレックスやバクスターへとテュイが記事冒頭の言葉を聞かせた際には激昂し、二人を相手に同時に胸ぐらを掴んだ上で「彼女こそが正真正銘のエースであり、謙遜を真面目に受け止めるな」という趣旨の言葉を掛けている。

・ダニール・クルバノフ
リオ・バホにトニトルスの槍を落とすことを命じた陸軍中将はそのままで?

ソトアの陸軍を指揮する中将。
彼女が親しくしていたロシータが住む村の近くのリオ・バホへとトニトルスの槍を落としたこともあってか、彼女からは強烈な敵意を向けられる。
彼の弟にして教育飛行隊を無駄死にさせた戦闘機総監にも似たような感情を向けており、政敵と表現するのが最もしっくり来る。

・レックス
久しぶりだわ 私と何度も交差してまだ飛んでいられるパイロット

彼女の指揮するルクス・ルーナエを含めた、ソトア軍の天敵たるシーヴの翼。
その戦闘能力をして「ただ一人自分の機略の外にいた」と評する相手であり、最終的には彼の手によって撃墜されることとなる。
最終決戦では彼に理解を求めようとする言動も多く、一パイロットとして共感を求めようという気持ちがあったのかもしれない。ただ、その際に口にする理屈はやはり何処までいっても侵略者のものでしかなかった。

・ジャン・コープ

かつての彼女を知る、少なくとも本編においては唯一の人間。
彼女の側がコープをどう思っていたかは定かではない。


🌕️余談


  • 声優の名前を由来とした「ソトまみこ」、色々な共通点からブルーアーカイブの明星ひまりになぞらえた「ソトアニアンデスヒマリ」の異名を持つ。



追記・修正は撃墜されて再起不能になったあと神経接続機体に搭乗してからお願いします。

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最終更新:2026年11月03日 00:20

*1 ソトア空軍を創設した一族。彼女の祖父は遊牧民同士の諍いの仲裁を依頼される等、他の遊牧民の生活を治めるような立場だった

*2 これが鷲であるのも、かつての彼女の愛機がSu-47 Berkut(意味はイヌ”ワシ”)であることに由来する

*3 大量の瓦礫によって擱座させられ、それを脱するためのブースターも破壊されて上下がひっくり返るような形で転倒した

*4 前述のとおり、レックスはこの時点で「77部隊と150部隊の二部隊同時編成」を相手にして勝利している。いくら55部隊(特に55と51)が腕利きでもたった一部隊で、それもポタルゲなどというデカい的を守りながら勝てというのは無理な話である。

*5 或いは彼女を含めたソトア軍の基地や部隊全体にだろうか

*6 どうやらこの情報は機密事項であったらしい

*7 後にリオ・バホにトニトルスの槍を落とす判断を下した者の処遇について言及しており、恐らくは彼女にも何らかの被害が出たために恨みを抱いた=そういう恨みを抱くほどロシータへの情は深かったのだろう

*8 現実で言う「神の杖」に似た兵器。金属塊を衛星から自由落下させ、その質量とスピードで大破壊を行う”クリーン”な戦略兵器

*9 本来ならジョーカー隊を狙っていたのだが、ある理由によって目標の予想位置が入れ替わってしまった

*10 この一連の行動をトプラクは“例の手”と表現しており、それで通じるほど慣習的に何度も繰り返された行動であることが暗示されている

*11 つまりはパイロットの教育過程を修了する前の学生

*12 主人公が撃墜するか、そうでなければ後で“事故死“することになる

*13 正確には、それを察したトプラクが帰還を促した

*14 そしてこの際の戦闘に、月11は参戦しなかった。この理由は不明だが、恐らく先の戦闘の負担によるダメージがまだ回復しきっておらず、再度飛べる状態ではなかったのだろう。

*15 つまりユークトバニア側

*16 正確には、彼女の「エンソーの技術が齎した大陸規模の破壊だった」という言動に対し、「エンソーが唆し、”ソトアが実行した”」とコスターが返した

*17 正確には、プレイヤーのボタン入力に反応している

*18 もしもソトア本国にシャトル打ち上げ施設とトニトルスの槍を製造可能な軍事拠点、または民間施設であってもそれらに転用可能なものがそれぞれ一つあれば、いつそれを打ち上げ、何処を雷爆してもおかしくはない。この段階ではFCUと停戦していない以上、今は無理でも時間が経てば同じことをする可能性は濃厚である

*19 従順ではない仔羊は間引くか去勢するかしてきたと言っているが、そんな暴君みたいなやり方をしていればすぐに群れが消えてしまう

*20 特に本当の遊牧生活を知らない層、つまりは都市部の上流階級

*21 自分が撃墜されたことと比較しての言動。つまり、彼は自分以上のパイロットだという称賛

*22 彼に限らず、ソトア空軍の大半が同様である