ハチロク(AE86)

登録日:2009/10/12(月) 17:23:52
更新日:2025/02/20 Thu 15:01:09
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ハチロク(AE86)とは、1983年にデビューした、トヨタ自動車の乗用車・カローラ/スプリンターの派生車種であるカローラレビン/スプリンタートレノの四代目を指す言葉。
本項では、派生グレードのAE85についても解説する。

解説

当時小型車には本格的に前輪駆動が採用されるようになり、基幹車種であるカローラ、スプリンターのセダンが前輪駆動になったが、生産設備の更新にコストがかかるという問題から、スポーティーモデルのレビン・トレノは先代であるTE71のシャーシを流用し、後輪駆動のままで登場した。
古くも簡素な設計と車重の軽さや、先代TE71と足回りが同じという改造のしやすさがうけ、走り屋に人気が出るようになり、発売から1週間でラリー仕様車が完成したとか。
当時人気を博した全日本ツーリングカー選手権でもライバルのホンダ・シビックや上位車種相手に健闘を見せた。

モデルは前期(83年5月~85年4月)・後期(85年5月~87年)に大別され、その間に小変更も二回行っている。
そのため、製造年/月が
83/5~84/2までのモデルが1型
84/3~85/4までのモデルが2型
85/5~9までのモデルが2.5型
85/10~87までのモデルが3型
というように分類される。

またグレードも、
3ドアには、
1600が GT-APEX、GTV、1500が SR
2ドアには、
1600が GT-APEX、GT、1500が SE、ライム/リセ
が存在する。

ちなみに、GTの後輪ブレーキはドラム式で、ブレーキ系のサードパーツは無きに等しい。

また、エンジンをシングルカムにし、価格を下げた廉価版グレードとして、AE85(ハチゴー)がある。
頭文字Dのイメージからあまり良いイメージは持たれにくいが、当時は女性でも乗りやすい小型車として一定の支持を得ていた。
タレントの堀ちえみが免許を取って最初に買った車はこれだったそうで、前述したグレードにライム・リセといかにも女性向けな名称があったのもその証左と言えよう。

モデルの性格上、ハチロクより程度が抜群に良い為4A-Gを搭載してレース仕様やストリート仕様のベースにすることもある。

ちなみに、トレノはレビンよりも車重が重いため峠の走り屋的には人気がなく、レースで実績を出していたレビンの方に人気が集中していた。
1987年に登場したAE92レビン/トレノが前輪駆動に移行したことから「手軽に走りが楽しめるFR車」として、絶版後S13シルビアとともにそれなりの人気を獲得していた。

そして90年代に入ると漫画『頭文字D』の主人公・藤原拓海の乗る車として脚光を浴びた。これによってAE86の現役時代を知らない世代からも人気を集めている。
ちなみに作者のしげの秀一先生の愛車でもある。フォグランプが無いなど細かい違いこそあるが、藤原拓海仕様(トレノ・3ドア・ハイテックツートーン・GT-APEXグレード)の個体でありしげの先生いわく「金にものを言わせて作った」グループAのパーツを組み込んだシルバーヘッドの4A-Gを搭載している。実際のレースで使用されたエンジンではなく「仕様」である為、レブは11000までキッチリ…ではなく9000回転程度。

ちなみにテレビアニメで拓海を演じた三木さんもこの仕様のハチロクを保有している。氏はもともと前期型のトレノGTVを所有していたのだが、このトレノはフレームの状態が悪かったため拓海仕様制作を企画した『レビン&トレノマガジン』の編集長が所有していた後期レビンGTVのフレームを元に制作されたという。

以上の人気から、パンダカラー(正式名:ハイテックツートーン)のトレノは中古車市場で高値で取引されている。無事故車なら200超えも珍しくない。


現在のAE86をとりまく環境

最終モデルである87年生産の個体でも、30年以上経過した立派な『旧車』であり、中古車の平均価額も、新車当時の価額を上回る400万〜500万円以上する事もある。

まず、エンジンについては
「採用車種が多く、現在でも新品・中古を含め部品入手が比較的容易な『4A-GEU』である」ことと、
その人気と設計的な信頼性の高さゆえに「チューニングはもちろんだが、トラブルや故障に関するノウハウが熟成されきっている」ことが大きなアドヴァンテージとなっているため、現状も機関的な意味でのバイタリティがある個体は一定数存在する。
同時に・費用はある程度かかるものの修理・補修は容易な部類にある。

次に、ミッション。
AE86のマニュアルトランスミッション車両は、KP型スターレットやセリカファストバック等の頃から採用されている「T50」ミッションを採用している。
ミッションに関しては本車両以降にアンダー150馬力(及び近似値、または2,000cc以下)のFR車両をトヨタが生産していないため「設計が非常に古いT50ミッションであること」から来る「シンクロナイザーリングの耐久性の低さ(どのような変速操作が行われてきたかに依るところもあるが、概ね走行距離10万kmを越えた車両は2~3速が入りづらくなる)」や「ギア自体の耐久性があまり高くないこと(ターボチューンやエンジンスワップされた個体等は要注意)」といった点を注意すべきである。
T50ミッションはアイシン製で、補修部品のシンクロナイザーリングやスリーブが生産終了している(バックオーダーを抱えれば生産再開する様子もある)。

しかしその人気と個体・オーナーの多さゆえか、費用と加工の問題はあるものの、アルテッツァや86/BRZ等のミッションを移植することも可能である。

最後にボディ。
ドリフトはもちろん、スポーツ走行に用いられた車両が非常に多いため、疲弊したボディの個体が非常に多い。
当時の同車格スポーツ車両の中では比較的ボディ剛性の高いほうではあるが、生産年度と設計の古さや、走行等による疲弊は隠しきれるものではない。
ボディの歪み・サビによる雨漏りや腐りには十分注意すべきである。

以上の理由により、今から所有するのはいばらの道。
しかし、トヨタ自ら「GRヘリテージパーツ」としてAE86を含む旧車の純正パーツの復刻生産を行うのみならずサードパーティ製純正互換パーツの情報集積*1を行っており、2025年現在は金さえかければかなりのリフレッシュが可能な環境が整っている。
一番恩恵を受けているのはAE86や70スープラと多くの部品を共有する初代ソアラだともっぱらの評判だが


2009年にスバルとトヨタの共同開発で、リメイク(と呼べるかは微妙だが)版「FT86」が発表された。
面影はほとんど無いが、多くの人によってそれぞれの色に育てられていった86のスピリットを踏襲したコンパクトFRとなっている。おかげでメーカーの方がチューニングに積極的。
そして2012年に「86」として発売され、2021年には2代目へのモデルチェンジも果たした。

頭文字Dでの活躍


4A-GEU(改)データ

すべて不明
(じゃ書くなよ)

主人公機という事もあり、劇中で常に最強ランクの車として描かれる*2

主人公の父親・藤原文太が長年かけて熟成させた詳細不明のエンジンと、その軽量な車体を武器にして下り坂限定で様々な敵を撃破。"秋名のハチロク"として連勝を重ねたが、赤城山でエンペラーのリーダー・須藤京一とのバトルでエンジンブローを起こし、初黒星を付けられる。
が、その後グループA規格のレース(91~93年頃の全日本ツーリングカー選手権か?)で使われていたAE101/111用20バルブエンジンを搭載。
ストリート用の車としては破格の出力、低い重心を得てハチロクは連勝を再開。

その後もより高い次元へ進化する為にカーボンボンネットへの換装、ロールケージの装備やコースごとの調整等微調整を受け、連勝を続けている。
最終的にはゴール手前でレブリミットを2000回転もオーバーして*3ふたたびエンジンブローを起こすものの、後ろ向きにゴールへ飛び込むというびっくりの終幕を見せた。

余談だが、頭文字Dのコミックの表紙にはなぜかフォグランプのないハチロクが写っている巻がある(例として7巻、24巻)が、これは前述したフォグランプのない作者のしげの秀一先生の愛車を資料としたことに起因する作画ミスと思われる。同じ原因と思われる作画ミスは拓海VS乾シンジの対決の終盤においても存在し、それまでウェーバー製キャブレターという設定であった拓海のハチロクのグループA仕様エンジンがしげの先生の愛車と同じインジェクションの4連スロットル(見た目が大きく異なる)で作画されている。

プラモデルでのAE86

フジミとアオシマから、レビン、トレノ両方発売されている。
フジミ製は新車当時に3ドアが発売された。
後に、実車のマイナーチェンジを受けて後期型に金型が改修されたが、無理な改修のせいで完全な後期型ではない(特にレビン)。

バリエーションには峠シリーズやエアダムチューン仕様や頭文字D仕様などがある。

トレノは頭文字D仕様の発売に当たって前期型に再改修された。
後に2ドアも発売されたが、やはり再現が不完全。レビンなのにボンネットのプレスラインがトレノと同じになってしまっている、前期トレノはフロントバンパーのタイヤハウスの形がおかしい、トランクの内装パーツは3ドア用のままなどぶっちゃけひどい
レビン2ドア後期型は珍しく純正のイントラホイール付き。

最近、アオシマに影響されたのか、つよきす2学期の痛車仕様のレビン3ドアが発売された。

ちなみに、フジミ製はどのキットにも初期に出たラリーバージョンのキットに付属していたパーツ群がそのまんま残っている。リア用のロールケージやドンガラ内装まであるため改造車を作るには(再現度はともかく)結構嬉しいところ。ボンネットに固定する(=開けられなくなる)アニマルガードはツッコミどころだが…

アオシマ製は最新のプラモなので、かなり出来が良い、
レビン、トレノ各々に前期後期があり、
エンジン付き
と、
エンジン無しがある。
(レビン後期はエンジン付きのみ)

ちなみにデカールの中には、GT-APEXの他にGTVのロゴが入っている。

また金型使い回…バリエーションとしては、
トレノ前期には頭文字D仕様と、ToHeart2痛車仕様とカーブティッククラブのエアロ仕様があり後期にはブラックリミデット仕様とエアロパッケージ、純正イントラホイール仕様がある。

ちなみにトレノ後期のブラックリミデット/エアロパッケージの純正エアロパーツは非売品な為部品請求が利かない。
またレビンにはフジミはオリジナルのエアダム仕様だけ出して作らなかったグループN2のレーシングカー仕様がある。

ちなみにアオシマの頭文字D仕様には連載後期仕様の通常品の他に、連載初期仕様の上新電機限定版がある。




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最終更新:2025年02月20日 15:01

*1 トヨタとして公認しているわけではなく、あくまでトヨタは責任を負わないけど好きに作ってよいしユーザーのために情報もまとめますよと宣言しただけである。それでも過去には旧車向け互換パーツの販売差し止めどころか金型を破棄までさせたメーカーもあるだけに異例の対応。

*2 とはいえ絶対的な性能が低いことは度々強調されている。むしろドライバーの峠への適応度が異常というべき

*3 土屋圭市曰く、モデルになっているレース用4A-Gはデリケートでちょっとでもオーバーレブしようものなら即ブローしたとか。