スバルBRZ/トヨタ86

登録日:2012/05/26(土) 01:41:04
更新日:2025/03/01 Sat 22:07:48
所要時間:約 9 分で読めます





思い出して欲しい

男の子であれば一度は思った

クルマってかっこいい

その想いを



きょうは、どの道で笑う?

スポーツカーは、カルチャーです。



SUBARU BRZ


TOYOTA 86

スバル BRZ(ZC6) / トヨタ 86(ZN6)は富士重工業/トヨタ自動車が販売する2ドアクーペタイプのライトウェイト・スポーツカー。
若干違いがあるが基本は同じ姉妹車。企画・デザインはトヨタ、設計・生産は富士重工業が担当する。
B(Boxer engine=水平対向エンジン)R(Rear drive=後輪駆動)Z(Zenith=究極の)の略。
「86」は頭文字Dの豆腐屋のクルマで有名なAE86レビン/トレノのコンセプトを受け継ぐ=ハチロクのようにユーザーそれぞれが育てていく車になって欲しいという意味。

乗車定員:4人(2ドア)
エンジン:FA20型(4U-GSE) 水平対向4気筒DOHC
 排気量:1998cc
最高出力/最大トルク:200ps/20.7kg
 駆動方式:後輪駆動
 変速機:6MT/6AT
 車重:1200kg
 販売:2012年3月28日~



◆開発

バブル景気のころは街中にスポーツカーがあふれていた。どのメーカーもこぞって開発・販売し、若者のステータスの一つにもなっていた。
だが時代は流れ、気がついたらスポーツカーなんていなくなっていた。若者の車離れを理由に、メーカーもスポーツカーをつくらなくなった。

ぶっちゃけスポーツカーはメーカーにとっても儲からない。俺達だってバカじゃない。形だけの粗悪品なんかに乗りたくない。
そうなるとメーカーは真面目に開発しないといけない。つまり開発費がかさむ。

でもバブルがはじけた今、俺達に高い車を買う余裕なんてない。←値段を下げるしかない。だから儲からない。こうしてカタログからスポーツカーが次々消えていった。


富士重工業=スバルはスポーツモデルにこだわった。インプレッサ、レガシィ。
インプレッサには免許が何枚あっても足りないスポーツグレード・STIシリーズもある。
モータースポーツにも派手に投資する、だもんだから儲からない。会社の経営も火の車だ。
…そんな訳でスバルは、提携先の業績が悪化すると真っ先に売りに出されてしまう
一種の不良債権のような物だった。
実際、2000年には長年パートナーシップを結んでいた日産自動車が、業績不振による経営再建の一環として保有している株式を米国のゼネラルモータース(GM)に売却した。
しかし、そのGMも業績悪化に伴い2005年には保有株式を全て放出してしまう。

そんな提携先を失ったスバルに手を差し伸べたのが、もう一人の主役トヨタ自動車である。
実はトヨタ内部では、スポーツカー開発計画が毎年のように提案されてはいるものの採算がとれないという理由から経営会議で毎年却下されていた。

しかし、スバルとトヨタの提携が決定するとプロジェクトチームはスポーツカー開発計画をスバルとの共同開発という形で再度提出する。
長年その強いスポーツ色をウリにしてきたスバルも、新天地にて新型スポーツカーの開発に関われることもあり計画への参加を承認、
若者の車離れに悩むトヨタの重役たちを説得し見事採用まで漕ぎ着ける。


こうして、トヨタにとってはMR-S以来5年ぶりの、スバルにとっては初代インプレッサ以来実に12年ぶりの2ドアスポーツカーの開発がスタートした。

まず両社は、現代の高性能スポーツカーの構成要素でもあるターボ・4WD・ハイグリップタイヤの否定から入った。
これは、パッケージング及び販売経路の提供を担うトヨタがなるべくローコストでの開発を命じた結果であるが、
その一方で、こうした走行性能を向上させるデバイスをあえて排除することで、
後輪駆動による直感的なドライビングを純粋に楽しんでもらいたいというエンジニアたちのメッセージの現れでもある。

生産はBRZ/86共にスバルの群馬製作所本工場で行われている。
この点から、86は「スバル製スポーツカーのマークと名前を替え、若干デザインを変更した後トヨタで販売されているだけのシロモノ」という誤解を受けやすいが、
実際には、開発技術は両社の持ち寄りで開発費も折半されている。

例として、搭載エンジンであるFA20型水平対向4気筒エンジンはスバル製のFB20型がベースになっているが、トヨタ謹製の直噴機構であるD-4Sが組み込まれている。
他にも、トランスミッションやブレーキにはトヨタ系列の、足回りにはスバルのパーツが使用されていて、まさに二社の混血児とも呼べるクルマに仕上がっている。

重心高は日本を代表するスポーツカー、日産・GT-Rどころか、
同じく水平対向エンジンを搭載するあの名門、ポルシェ・ケイマンより低い460mm。
コンパクトで平べったい水平対向なのをいいことに低重心で中心軸に近い位置に設置。
まだ値段が高い?なら遮音材もエアコンも取っ払って見た目安いグレード作って誤魔化しちまえ。(RA/RCグレード。レースむけ改造ベース車両だから問題なし。これはトヨタ・スバル以外のスポーツカーでも最盛期にはよくあった手法でもある)
こうして2012年3月より両社から販売開始された。

◆販売開始
BRZと86は若干デザインが違う。
86はフロントバンパー開口部が大きく張り出しアグレッシブな印象を与える一方、BRZはスムーズな曲線を描くデザインで落ち着いた雰囲気を纏っている。
自動車評論家の先生方によるとセッティングはBRZは安定志向でコーナーで粘り、86はドリフトしやすい。だそうだ。
でも違いがよくわからんというのが一般的な意見。ぶっちゃけポテンザはかせりゃ86も粘るよ。その程度。

ひと月あたりの目標販売台数はBRZが450台、86が700台。
結果はBRZが2ヶ月で3551台、86に至ってはひと月で7000台。つまり目標の4から7倍。大量のバックオーダーを抱え納車待ちの状態。
撤退によって使われなくなったスバルの軽自動車の製造ラインを利用する形で生産を開始したが、事前の予想を大きく上回る反響で生産が追い付かなくなってしまったのだ。

BRZ/86は決して速いクルマじゃない。ボディもライトウェイトスポーツにしてはデカいし車重だって軽くはない。
でも、BRZ/86にしかないものがある。それはクルマが好きで仕方がない、クルマを愛する、愛すべきバカ達の希望の結晶だということだ。

トヨタがスバルに徹底してコストカットを求めたことはよく批判の的になるが、価格を安くするには意味がある。

BRZ/86は売れなければ意味がないからだ。スポーツカーにはもう後がない。
これが売れなければもうスポーツカーなんて作らせてもらえないかもしれない。スポーツカーの火が消えてしまうかもしれないという危機感があったのだ。
実際にはびっくりするほど売れたので、吊るしで340PS出る上にスープラを襲名するクルマも作らせてもらえた。

◆後期型に施された更なる改良
後期型の発表と共に、トヨタはある新技術を発表しBRZ/86に搭載した。
重量に全く影響を及ぼさないほど軽量なのに、走行は不思議と安定するようになる。
しかも取り付けは誰でも簡単に可能で、前期型でもたやすく改造できてしまうという画期的な新技術である。

その名もアルミテープ
今の車は確かに軽量化されているが、FRPなど非金属の通電しないパーツが使われて放電能力が落ちたことで、空気や路面との摩擦で静電気が蓄積。走行能力が落ちてしまうのだという。
そこでこれをエアフローに沿ったりして貼り放電させることで、理想の走行能力が得られる。
実際に貼って走行テストしたところ、しっかりダウンフォースが得られるようになったという報告がなされている。

発表から数年経っても未だ半信半疑でバカバカしいと思われたりもしているが、何せ天下のトヨタが根拠を出してやったことである。これも世界を変えていくことだろう。多分。

あと86の方は前ウインカーの位置がバンパーのサブライトポッドからヘッドライト内へと移動した(BRZは元々ヘッドライト内)。
理由は色々言われているが、決め手となったのは「カスタマイズ前提なのに2cm以上車高を落とすと車検に引っかかる」というのがあった模様。
これの対処のため「ウインカー下側を隠すパネル」がアフターメーカーから発売されてたほど。



◆そして二代目へ

新体験!ライド・エンタテイメント

THE FR. GR86

乗車定員:4人(2ドア)
エンジン:FA24型 水平対向4気筒DOHC
 排気量:2387cc
最高出力/最大トルク:235ps/25.5kg
 駆動方式:後輪駆動
 変速機:6MT/6AT
 車重:1260-1290kg
 販売:2021年7月29日~(BRZ)/2021年10月28日~(GR86)

2020年11月、二代目BRZの米国仕様が世界初公開され、遅れてGR86と名を変えた86も発表された。
ボディサイズと重量はほぼ据え置きのまま2.4Lへ排気量アップを果たし、初代のネックだったパワーを得た。
特筆すべきは最大トルク発生ポイントが3700rpmにまで引き下げられ、しかもそれが広い回転域で持続する点であろう。これによって先代で指摘されていた中速域のトルクの細さが改善されている。
特に重量は重要課題だったらしく、当初はかなりの重量増が見込まれたところをアルミルーフの標準装備などエンジニアの努力によって抑えたという。
ボディや足回りの剛性も大きな進化を遂げ、別物レベルに生まれ変わっている。しかもそうでありながら先代からキャリーオーバーされたパーツも多く、価格上昇は最小限に抑えられている(BRZのベースグレード(6MT)が308万円)。
また、これによって駆動系・足回り・内装はかなりの部分が先代と共用できる…すなわち、アフターパーツも既にあるものが使用できるというのも大きい*1
これはTE71のプラットフォームを流用したことでパーツが流用でき、早期に競技用車両が完成したAE86の状況を想起させる。
逆に新型のミッションやサスペンションを流用したりエンジンを載せ替える初代ユーザーも出てきている。

トヨタ・スバル両社開発陣の関係も初代開発当初からかなり良好になったらしく、「いい意味でのライバル関係が築けていた」とのことで、GR86とBRZのキャラクター性の差別化がかなり進んでいるのもトピックの一つ。GR86の発表・発売が遅れたのも、豊田章男が開発終盤に「俺たちは"86"じゃなくて"GR86"を作ってるんだ」と言ってGR86をさらに「GRブランドに相応しく」煮詰める時間をくれとスバル側に直談判したことが理由である。
さらにTRDとSTIのみならずHKSやBLITZ、TRUSTといった有名パーツメーカーのチューンドカーが発売前から開発され、公式のイベントやプロモーションビデオに登場している。

6ATの性能もプロレーサーが攻め込んでもMTとほぼ変わらないタイムが出せるほどに向上し、さらにAT仕様には先代で実現しなかったスバルが誇る先進安全装備・EyeSight(Ver.3)が搭載され、スポーツカーの間口がさらに広がることが期待できそうだ。



今の世の中楽しいことなんてたくさんある。
別にスポーツカーなんて乗らなくたっていいかもしれない。

でも、実用性一辺倒じゃないクルマがあっても良いのではないか?

だから、スポーツカーが無くならないように

クルマっていうものが、趣味のひとつから消えないように

BRZ/86には頑張ってもらいたい。



追記・修正はクルマを愛してからお願いします。




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最終更新:2025年03月01日 22:07

*1 例えばサスペンションキットやブレーキ、シートレールやステアリングボス、タワーバーなどのシャーシ補強は同じものが使える。タイヤホイールも純正サイズが変わっていないため基本的に使えるが、リアのトレッドが変更されたため幅やオフセットに制約あり。マフラーも構造上使えるが、事前認証があるためZN8/ZD8用に認証されていなければ車検に通らない。