学様(中国古典)

登録日:2010/09/20 Mon 22:42:02
更新日:2025/06/28 Sat 18:04:01
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明朝末期に、馮 夢竜(ふう むりゅう)によって編纂された『笑府(しょうふ)*1
『学様』は、その中に収録されている小咄の一つであり、巻八「刺俗部」に収められている。


ちなみに『学様』とは「人まね」と言う意味であり、
「友人の成功談を聞いた男が真似をしてヒドい目に遭う」
と言う古来より続く、テンプレ的笑い話の一種である。



【内容】

昔在るところに一人の農民が居た。
彼は遠方の街での所用を済ませ家路を急いでいたが、馬嵬坡を半ば進んだ辺りで一つの髑髏を目にした。
長年風雨に晒されたであろう髑髏を哀れんだ彼はこれをねんごろに葬ると、また家路を一人急いだ。

その晩、農民の家のドアを「コンコン」と叩く音がした。

農民A「どなたですか?」
???「フェイです」

全く身に覚えがない…
訝しげに扉を開とそこには






 
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 へ>∠二二二>、 丶
∠/    (\\ヘヘ
//  /|N丶 \`∩ソノ、
7 /|∧|| ノ\ \ )ヘ
| レひ)丶 イび>\ `<
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/ 人 丶⌒> / /ノ|L
レイ/ \ └′ / /  />
 レイ >ー-//彡イ//
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  /∥ |==|  ハ∥
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 \  \>-r|∠  く
  丶/⌒Lノリ丶_〉_ノ


なんと絶世の美女が

楊貴妃「私は楊貴妃(ヤングェイフェイ)
    馬隗で兵士に殺され野晒しにされていた私を弔ってくれてありがとうございます。
    御礼に一夜のお添寝を…


一夜あけて


「昨晩こんな事が有ったよ」
と農民Aは友人の農民Bにニヤニヤしながら話した。

これを聞いた農民Bは「早速俺も…」と街道を駆け出し、しばらく進んだところで野晒しになっている一つの髑髏を見つける。

彼は早速髑髏に酒をジャブジャブかけながら
「どうぞ今晩化けて出て下さい!化けて出て下さい!」
と訳の分からない念仏を唱えつつ丁重に葬るや、すっ飛んで家に帰っていった。

その晩農民Bは

    +
+  ∧_∧ +
 + (0゚・∀・)ワクワク
  (0゚∪ ∪ テカテカ
+/ヽと_)__)_/ヽ+
しながら待っていると、「ガンガン」とドアを叩く音が。

農民B「どなたですか?」
? ?「フェイです」

一人でキター!!
とか思いつつ、ドアを開けるとそこには










         ,. -‐-─-- 、
.      /             `ー、
    〃                 i,
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈
    !  :l      ,リ|}    |. }
.   {.   |          ′    | }
    レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<
    !∩|.}. '"旬゙`   ./''旬 ` f^|
   l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄  |l.|
.    ヽ.ヽ        {:.    lリ
.    }.iーi       ^ r'    ,' 
     !| ヽ.   ー===-   /
.   /}   \    ー‐   ,イ 
 __/ ∥  .  ヽ、_!__/:::|\
 /i   |!  i      :;::;:::::::ト、 ヽ
 │ .|  i l     ノ ,'    :i  i
 ノ   |- ⊥.」__     /_,. -‐ |  |

胸板の厚い、屈強ないい男が…

張飛「俺は張飛(チャオフェイ)
   部下に殺され野晒しにされていたこの俺を弔ってくれてありがとう。
   ま、昼間の御礼と言ってはなんだが…」
と言いつつ尻を突き出し一言。

や ら な い か




「張飛を勝手にホモにするとは何事か!」と思うかもしれないが、三国志当時の軍においては男色文化は存在したようなのでご容赦…。
なお、原文では張飛が「粗臀(そでん)(武骨な俺のケツ)を以って奉献(ほうけん)(夜伽を献上)し…」と、奥ゆかしいのかそうでないのかよく分からんことを言ってくれている。
まあ、攻めでなく受けな辺り、一応はお礼らしい。

そもそものツッコミどころとして「何で楊貴妃や張飛が野晒しの髑髏にされてるんだ。張飛はまだしも楊貴妃は歴史上埋葬されてるだろ。それに500年以上違う歴史上の人物の髑髏がそんな近所で見つかるわけないだろ。」という点もあるが、そこもご容赦…。


【余談】

この話は日本でも翻訳され、江戸落語の『野ざらし』および上方落語の『骨つり』の元ネタとして現在でも語り継がれている。

ちなみに上方落語の『骨釣り』はよりこちらの原話に近く、張飛の役は石川五右衛門になっている…。
最後は石川五右衛門が『釜』茹でにされたことから「あ〜俺ってカマに縁があるんだなあ…」とぼやくオチ。


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最終更新:2025年06月28日 18:04

*1 全13巻