「やあ、ファルーク。今回もご苦労だった。おかげで先日の商談は上手く事が運んだよ」
「それは何よりだ。私も手を尽くした買いがあった」
「それは何よりだ。私も手を尽くした買いがあった」
エスヴィア冒険者街の一等地にあるエスヴィア家の屋敷にてこの街の統治者オライオ=ジル=エスヴィアはエルフの冒険者ファルーク=アランザを呼び出していた。以前ファルークがオライオから承った依頼について労うためだ。
「この調子で次もまた頼むよファルーク。腕が良くて信頼できる冒険者というのも限られてるんだ」
「次も期待に答えてみせよう。だから報酬の方は頼むよ」
「次も期待に答えてみせよう。だから報酬の方は頼むよ」
「分かってる」と一言返し指を鳴らす。すると、近くで控えていた使用人がグラスとワインを用意し、テーブルにグラスを置きワインを注ぎ始める。
「ほう、分かってるじゃないか。これも報酬の一部かな?」
「いいワインが買えたのでね。せっかくだし君と飲み交わしたくなったんだ」
「いいワインが買えたのでね。せっかくだし君と飲み交わしたくなったんだ」
ファルークとオライオにそれぞれグラスが差し出される。それを二人は受け取り互いに近づける。
「依頼達成の祝いに」
「商談の成功に」
「「乾杯」」
「商談の成功に」
「「乾杯」」
グラスを軽く打ち付け合い、ワインの香りを確かめそれぞれ口にする。独特の酸味と風味、アルコール特有の苦みが調和を伴い口内に広がっていく。とてもいい物だとファルークは思う。このような美味しいワインを味わえるとは、やはりワインはいい物だと。
「いいワインだろ? 小さい蔵で造られたものだがなかなかに出来が良い。思わず投資をしてしまったよ」
「またか。そうやってあちこち手を出そうとするのは君の悪い癖だと思ってるのだけどね」
「どんな小さなものでも商機と有れば手を出さねばね。他に取られるのもおもしろくない」
「ガスペリの深層のご令嬢に粉をかけてるのも商機を見出したからかい?」
「いや? そちらは私情だよ。私だって彼らの怒りを買いたくはない」
「良い趣味だとは言えないな。相手は十四だぞ?」
「恋と言う物に年齢など関係ないということさ」
「またか。そうやってあちこち手を出そうとするのは君の悪い癖だと思ってるのだけどね」
「どんな小さなものでも商機と有れば手を出さねばね。他に取られるのもおもしろくない」
「ガスペリの深層のご令嬢に粉をかけてるのも商機を見出したからかい?」
「いや? そちらは私情だよ。私だって彼らの怒りを買いたくはない」
「良い趣味だとは言えないな。相手は十四だぞ?」
「恋と言う物に年齢など関係ないということさ」
オライオには恋慕の情を向けている者がいる。アメーリア・ディ・ガスペリ。カルロ・ディ・ガスペリの娘、大人にも劣らぬ美貌と身長、そして年齢に見合わぬプロポーションの持主である十四歳の少女。そんな彼女に代の大人であるオライオは一目惚れをしたのだという。目の前のお得意様の趣味にファルークは呆れていた。
「キミはもう少し趣味を引き上げた方が良いと思うのだけどね」
「別に少女趣味というわけではないさ。ただ、彼女の美しさに私の心が掴まれてしまっただけさ」
「……それで? 成果は出てるのかい?」
「……百戦連敗というやつさ。まるで歯牙にもかけられていない」
「別に少女趣味というわけではないさ。ただ、彼女の美しさに私の心が掴まれてしまっただけさ」
「……それで? 成果は出てるのかい?」
「……百戦連敗というやつさ。まるで歯牙にもかけられていない」
どこか遠い目をするオライオに呆れるように視線を向けながら再びワインを口にする。やはり美味い物だと再確認する。できれば毎日飲み明かしたいと望んでしまう程度には気に入る。
「諦めたらどうかね? 良い出会いというのは案外いろんな場所にあるのだから」
「彼女の口から返答を聞かない限り諦めはつかないね。それに諦めて他の男に取られるのをただ眺めているのもおもしろくない。やれるだけやってみるさ。ところでそういう君は所帯を持ったりしないのかい? 君が本気を出せばどんな女性でもころりと堕ちるだろうに」
「あいにく今は自由を満喫しておきたくてね。それにどうにも所帯と言うのは苦手なんだ」
「彼女の口から返答を聞かない限り諦めはつかないね。それに諦めて他の男に取られるのをただ眺めているのもおもしろくない。やれるだけやってみるさ。ところでそういう君は所帯を持ったりしないのかい? 君が本気を出せばどんな女性でもころりと堕ちるだろうに」
「あいにく今は自由を満喫しておきたくてね。それにどうにも所帯と言うのは苦手なんだ」
「遊び人の君らしいね」と返しながらオライオもワインを味わう。もはや二人の間で何度も交わされているやり取り、お約束ともいえる話題だった。その後、互いの近況や最近の相場、情勢、政局について語り合い、一通り終える頃にはすっかり夜も更けてしまった。
これも二人にとってはいつもの事であった。その頃になるとワインの数本は飲み干してしまっている。ワインを好む二人にとってこれもいつもの事である。
これも二人にとってはいつもの事であった。その頃になるとワインの数本は飲み干してしまっている。ワインを好む二人にとってこれもいつもの事である。
「もうこんなに暗い。泊っていくと良い。部屋をすぐに用意させよう」
「それはありがたい。すっかり酔いが回ってしまったからね。こんな状態で外を出歩くのは億劫だ」
「それはありがたい。すっかり酔いが回ってしまったからね。こんな状態で外を出歩くのは億劫だ」
エスヴィア家の使用人がオライオに何事か報告している。どうやら部屋の準備ができたようだ。
「ああ、部屋に案内する前に一ついいかな?」
「何かな? 手短に頼むよ」
「近々魔晶柱の平原に人を送り込もうと思う。できれば君のお眼鏡にかなう冒険者を何人か用意して欲しい。前回の依頼で一人引退してしまったんだ」
「何かな? 手短に頼むよ」
「近々魔晶柱の平原に人を送り込もうと思う。できれば君のお眼鏡にかなう冒険者を何人か用意して欲しい。前回の依頼で一人引退してしまったんだ」
魔晶柱の平原は常に炭鉱夫が張り付いて採掘作業を行っているわけではない。魔物が未だに出没する危険地帯のため、人員に危険が及ぶ可能性があるのだ。定期的に掃除を依頼しているのだがなかなか掃討されてくれいないのが魔物と言う物だった。そのため、魔晶石の採掘にはエスヴィアの手の物と炭鉱夫、護衛となる冒険者を送り込み一定量を回収したら撤退という形を取っていた。効率がいいとは言えないが無暗に人手を減らすよりはいいと考えこのような手段を取っているというのが実情だった。
「分かった。何人か声をかけてみよう。一人は確約できないかもしれないが……」
「何か事情でもあるのかい?」
「……放浪癖があるんだ。一年くらい返ってこないこともあるくらいには」
「……その人物に関しては期待しないでおくよ」
「何か事情でもあるのかい?」
「……放浪癖があるんだ。一年くらい返ってこないこともあるくらいには」
「……その人物に関しては期待しないでおくよ」
「助かる」とだけ言い残し使用人に宿泊用の部屋まで案内されるファルーク。オライオは一人部屋に残される。そしてファルークが確約できないと言った人物がどんな人間なのか想像をめぐらすのであった。