※この先残酷な描写が含まれます。
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これはレクト=ギルノーツが神聖イルニクス帝国のとある街に一時期立ち寄った時の話だ。そこはそこそこに栄えており活気にあふれていた。そしてレクト=ギルノーツが立ち寄った時、収穫祭が開催されていた。そんな時だった。ホルンナルンと呼ばれる太った直立二足歩行爬虫類のような胴体と幼い顔立ちの人面が付いた魔物が大群で襲撃してきたのだ。突然の事態に人々は恐慌状態となって逃げ惑い、その街にいた冒険者達は人々を守るために果敢にホルンナルンに立ち向かった。そして数時間もの戦闘の末、小規模な群れ程度の数になるまで討伐し見事ホルンナルンを撃退したのだ。そこで終わっていればめでたしめでたしで済んだのだろう。しかし現実はそうはならなかった。
まだ15にも満たない子供達が十数名ほどホルンナルンに連れ去られたのだ。当然、すぐさまホルンナルンを追うべきだという声が街の人々の中から上がった。冒険者たちもそれに同意した。しかし、激しい戦闘の直後で消耗している者がほとんどだった。とてもすぐに追跡できる状況ではなかった。そんな時だ。レクト=ギルノーツとジョンがホルンナルンの追跡を申し出たのだ。二人とも消耗が少なくすぐに動ける状態であったため反対する者はいなかった。そして、現在レクトとジョンはホルンナルンが通ったと思われる痕跡を辿り彼らの住処と思わしき場所まで移動していた。
まだ15にも満たない子供達が十数名ほどホルンナルンに連れ去られたのだ。当然、すぐさまホルンナルンを追うべきだという声が街の人々の中から上がった。冒険者たちもそれに同意した。しかし、激しい戦闘の直後で消耗している者がほとんどだった。とてもすぐに追跡できる状況ではなかった。そんな時だ。レクト=ギルノーツとジョンがホルンナルンの追跡を申し出たのだ。二人とも消耗が少なくすぐに動ける状態であったため反対する者はいなかった。そして、現在レクトとジョンはホルンナルンが通ったと思われる痕跡を辿り彼らの住処と思わしき場所まで移動していた。
「また痕跡が見つかったな。分かりやすすぎるぜあいつら」
「そのおかげで俺たちはあいつらを追える。願ってもない状況だ」
「そのおかげで俺たちはあいつらを追える。願ってもない状況だ」
ジョンとレクトは急いでいた。連れ去られた子供達がどうなっているか分からないからだ。ジョンとレクトは最悪の光景が脳裏によぎって仕方がなかった。きっともうホルンナルンに殺されているのではないかと。
「子供達は無事だよな? きっと」
「……そうであることを祈るしかない」
「……そうであることを祈るしかない」
レクトとジョンが口々に言い合っている内に洞窟を見つけた。ホルンナルンが残したと思われる痕跡もある。二人ともこの洞窟がホルンナルンの住処だと確信した。
「早速見つけたぜ! 待ってろよ子供たち! 直ぐに助け出して……」
「待ってくれ」
「待ってくれ」
いざ子供達を救出戦と息巻くジョンをレクトは制止する。出鼻をくじかれたジョンは不満げにレクトの方へ向く。
「何だよ? 急がないと……」
「洞窟を発見したことを街まで報告しに言って欲しい。多分ここが住処だ。中に何十匹潜んでるか分からない。オレは中の様子を探手見るからアンタは街へ報告してきてくれ。そして応援を呼んできて欲しい」
「……俺が役立たずだと思ってるのか?」
「そうじゃない。二人だけで戦うのは得策じゃないって言ってるんだ。数は多い方が良い。それにアンタはまだ走れそうだから言ってるんだ。急いでほしい。頼まれてくれ」
「洞窟を発見したことを街まで報告しに言って欲しい。多分ここが住処だ。中に何十匹潜んでるか分からない。オレは中の様子を探手見るからアンタは街へ報告してきてくれ。そして応援を呼んできて欲しい」
「……俺が役立たずだと思ってるのか?」
「そうじゃない。二人だけで戦うのは得策じゃないって言ってるんだ。数は多い方が良い。それにアンタはまだ走れそうだから言ってるんだ。急いでほしい。頼まれてくれ」
レクトの言葉にジョンはどこか納得しがたい様子であったがしばらくして首を縦に振って了承した。どうやら頼みを聞いてくれるらしい。
「先走って手柄を独り占めすんなよ」
「分かってる」
「分かってる」
軽口を叩き合った後、ジョンは街まで全力で戻っていった。そして一人残ったレクトは洞窟内へ歩を進める。少しでも内部の様子を知りたかったからだ。場合によっては時間稼ぎのために中で暴れなければならない。子供たちの安全を少しでも確保するために。暴れた分だけ子供達が生き残る確率が増えることを期待して、そしていともたやすくその期待は裏切られることとなった。
音がする方へ進んでいると予想通りホルンナルンの群れがいた。数十匹もいる。だがそれはレクトにとって重要なことではなかった。それ以上に衝撃的で受け入れがたい光景がレクトの眼前に広がっていた。
「楽しいよ! 楽しいよ! ニンゲンのコドモをなぶるの楽しいよ!」
「ニンゲンのコドモ好き! 凄く大好き! だから動けなくして飾っておくんだ!」
「ニンゲンのコドモはおいしいね! どこを食べても柔らかくてみずみずしい!」
「ニンゲンのコドモを殴ると良い悲鳴がするから好き好き!」
「でもうるさいのは嫌だね! だからうるさい口と喉はもいじゃえ!」
「気持ちいいよ! 気持ちいいよ!」
「ニンゲンのコドモ好き! 凄く大好き! だから動けなくして飾っておくんだ!」
「ニンゲンのコドモはおいしいね! どこを食べても柔らかくてみずみずしい!」
「ニンゲンのコドモを殴ると良い悲鳴がするから好き好き!」
「でもうるさいのは嫌だね! だからうるさい口と喉はもいじゃえ!」
「気持ちいいよ! 気持ちいいよ!」
ホルンナルンが束になって連れ去った子供たちを嬲っていたのだ。ある子どもは足と腕をもがれ壁に飾られて鑑賞され、ある子どもはホルンナルンに殴られ瀕死に。ある子どもはあちこちが欠けていた。そしてある子どもは言葉にするのも憚られるほどほど凄惨な仕打ちを受けていた。レクトは絶句していた。とても受け入れられる光景ではなかった。酸っぱいものが込み上げてくる。幼き日のトラウマが蘇る。立っていられない。今にも膝が折れてしまいそうだ。
「「「ニンゲンのコドモでいっぱい気持ちよくなろう!!!」」」
「「「コドモでお腹を満たすのもいいね! 毎日食べたいくらいだよ!!!」」」
「「「明日もニンゲンのコドモをつれて来よう!!! そして楽しいことをしよう!!!」」」
「「「ニンゲンノコドモスキスキスキスキ!!! だからもっと悲鳴を聞かせて!!!!」」」
「「「コドモでお腹を満たすのもいいね! 毎日食べたいくらいだよ!!!」」」
「「「明日もニンゲンのコドモをつれて来よう!!! そして楽しいことをしよう!!!」」」
「「「ニンゲンノコドモスキスキスキスキ!!! だからもっと悲鳴を聞かせて!!!!」」」
ホルンナルンの叫びを、聞くに堪えない叫びを、言動をレクトは聞いた。聞いてしまった。そして、それが彼の怒りに火をつけてしまった。もはや何も聞いていたくなかった。今すぐ黙らせてやりたいとレクトは思った。そしてホルンナルンの群れの前に姿を見せた。
「新しいニンゲンのコドモだ!!!」
「きっと迷い込んできたんだよ! 良かったよかった!!」
「もうこっちの子は反応しなくなったからね! 今度はその子で遊ぼう!」
「いっぱい可愛がってあげるからね! 楽しみにしててよ!」
「きっと迷い込んできたんだよ! 良かったよかった!!」
「もうこっちの子は反応しなくなったからね! 今度はその子で遊ぼう!」
「いっぱい可愛がってあげるからね! 楽しみにしててよ!」
こいつらは一匹たりとて生かしてはならないとレクトは思った。身体に青白いラインが走る――――――フルーレを発動させたのだ――――――。そして大剣を、呪字武器の呪字を発動させてホルンナルンの群れに斬りかかった。
洞窟内はホルンナルンの血で汚れ、彼らの叫び声がこだましている。一匹ずつ、レクトに斬り殺されているのだ。ある個体は煩かったから首を一撃で斬り落とした。ある個体は爪で攻撃してきたから手ごと斬り落としてから胴体を斬り裂いてやった。ある個体は火を吐いて来たから生きていた群れの仲間を盾にして防ぎ、それから口に大剣を突っ込んで内部をズタズタにしてから殺した。ある個体は頭を隠しているくせに下半身が隠れていなかったから、下半身を叩き潰して殺した。ある個体は子供を盾にしてきたから問答無用で背後からとにかく斬り刻んでやった。とにかく一匹たりとも生き残らないよう確実に仕留めていった。普段なら体力が尽きていただろうがフルーレを発動しているから無理をすることができた。おかげで残り一匹になるまでホルンナルンを殺すことができたのだ。
最後の一匹は逃げるために走りだそうとしていたからまずは足を潰してやった。ホルンナルンの醜い叫びが洞窟内に響く。余りの痛さに耐えきれず泣きだしていたがレクトには関係なかった。むしろさっさと黙らせたかった。確実に殺すために近づいてから、ホルンナルンが命乞いをしてきた。
最後の一匹は逃げるために走りだそうとしていたからまずは足を潰してやった。ホルンナルンの醜い叫びが洞窟内に響く。余りの痛さに耐えきれず泣きだしていたがレクトには関係なかった。むしろさっさと黙らせたかった。確実に殺すために近づいてから、ホルンナルンが命乞いをしてきた。
「お願い……殺さないで……。子供たちあげるから……、好きなだけ嬲っていいから……だから助けて……」
レクトの目にはそれが醜く映った。その命乞いが聞くに堪えなかった。だからとにかくあちこち斬り刻んでやった。鋭い爪が生えた手を、やけに太いその足を、やたらデカい尻尾を、ずんぐりとした胴体を。とにかく斬って、斬って、斬って――――――――――――気が付けばホルンナルンの叫び声が止んでいた。どうやら滅多切りにしている内に死んでしまったようだった。ジョンが冒険者の一団を連れて駆けつけてきたのはその直後だった。
その後ジョンを含めた冒険者達に手伝ってもらいながら連れ去られた子供たちを洞窟の外へ運び出した。しかし、生存者はいなかった。皆ホルンナルンに嬲られ尽くされた後だった。誰も彼も助けられなかったことを悔やみ、子供たちに黙祷を捧げた。それしかできなかったからせめてそれだけはやってあげたかったのだ。レクトも同じようにした。助けられなかったせめてもの償いとして。
「お疲れさん。大変だったな」
ジョンが声をかけてきた。どうやらレクトを心配しているようだ。
「オレがもっと早くアイツ等を殺していれば助けられたかもしれないのに……。オレが早くアイツらを追っていれば……」
「お前さんは十分にやってくれたさ。あのデブの業魔共を討伐した事、子供たちもきっと納得してくれるはずだ」
「お前さんは十分にやってくれたさ。あのデブの業魔共を討伐した事、子供たちもきっと納得してくれるはずだ」
レクトの後悔をジョンは慰める。それでもレクトから後悔の色が消えることはなかった。
楽しく終わるはずだった収穫祭は悲劇によって台無しにされることとなり、それは街にいた者たちの心に深い悲しみと後悔、魔物への怒り、誰にとっても忘れることのできない過去として刻まれることとなったのだった。