風神塔


塔の内側は、予想以上に機械的であり、
豊富な電力を利用するテクノロジーが
ふんだんに取り入れられているようで
あった。

D・S:
ふん、機械臭えな。俺はこの手の、
前時代的なカラクリは好きじゃねえ










扉は電気的にロックされているようで
あった。外部から取り入れられる電力
を遮断しない限り、どうしても扉は
開きそうになかった。










最上層になるこの部屋に、塔全体の
電力を束ねる送電設備があることは
間違いなさそうだった。低い動力音が、
扉を隔てて伝わってくる。

ヴァイ:
この扉はロックされてないみたいだ

D・S:
待て、ヴァイ。こんな時、自分が
鬼忍将だったらどうするか考えてみろ

ヴァイ:
? ま、簡単に動力が切られない
ようにするな。つまり――

D・S:
つまりこの部屋に番人をつけるって
こった。ロスも言ってたろ? 塔は
最重要警備地点らしいって

ヴァイ:
扉の向こうにゃ敵がいるか。気を
引き締めていかねえとな










扉を開いた瞬間、それが何であるのか
判別できた者はいなかった。やがて、
その巨大な仏像のようなものは関節を
軋ませてゆっくりと動き出した。
甲虫のように艶やかな体表と、機械を
思わせる無骨な四肢――それらが組み
合わされてできたこの部屋の守護者は、
伝え聞く風の鬼神の如くあった。

風機神の動きが止まり、関節部から
火が噴き出す。サーチライトの如き
光を放っていた双眸が急速に弱まり、
それが消えると同時に、守護者は半ば
分解しながら崩れ落ちていった。

風機神は守護者であるとともに、送電
を司る制御装置でもあるようだった。
背中から伸びたケーブルが室内の動力
機関群に繋がり、それらは風機神の
破壊に伴って全ての機能を停止した。
風神塔の照明が消え、やがて薄暗い
非常灯に切り替わる。

D・S:
これで全ての部屋のロックが解除
されたハズだぜ










電子ロックが解除されてから、一行が
到着するまでに、この室内にはすでに
侵入者があったらしかった。部屋は
物色された形跡があり、空になった
箱が床に転がっていた。

ヴァイ:
これは……一体誰が!?

D・S:
……ロスだ。クックック、アイツめ、
まんまと俺たちを利用しやがった。
ハハハハ……

ヴァイ:
あれ? 悔しがったり悪態ついたり
しないの?

D・S:
こうも見事に出し抜かれると、腹も
立たねえ。まあ、探してるものがある
ワケでもねえしな










この扉は、塔の外の送電線へと続いて
いるようだった。しかし今は電気的に
ロックされ、開ける術はない。

D・S:
あっちに電気が送られてるところから
見て、向こうの塔が重要施設になって
るようだな。だが、まずはこの塔の
動力を止めなきゃならねえ










ヴァイ:
なあD・S。ロスの奴のこと、気に
ならねーか?

D・S:
そういや、お宝がどうとか言って
やがったな……もうちょいこの塔を
調べてみるか

ヴァイ:
あれ? 塔の中を調べなくていいの?
動力が切れて、ドアのロックも外れて
るんだろ?

D・S:
おー、そうだったそうだった。ロスの
奴も何か探してやがったしな。もう
ちょいこの塔を調べてみるか



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最終更新:2020年10月31日 21:09