第一章 第二章 第三章 第四章 黒斑洞黒の館気洞溶解雨の湿地デュアディナムトンネルランゲルハンス島スーゼミの神殿血路癌臓宮癌臓宮中枢部ダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミーダミー 第五章 クリア後

血路


火口から導かれたのは、葉脈めいた
紋様の浮き出た壁に囲まれた地中の
通路であった。

イングヴェイ:
ここは……溶岩は流れ込んでこない
のか?

D・S:
ここはな、血路だ。これまでとは違う
流れのルートになってるからな。空気
と食い物が別々に、肺と胃に収まるの
と似た理由だ……ちと違うがよ

イングヴェイ:
血路? D・S! この世界について
記憶でも蘇ったのか?

D・S:
記憶にあったワケじゃねえが、何と
なく成り立ちを掴んだ気がする。
俺の考えが正しければ、この道は
心臓の呪詛の源に行き着くハズだ

ネイ:
ダーシュの心臓は、もう良くなったん
じゃないの?

D・S:
ああ。だがそいつは、あの贋の龍を
斃して俺とのリンクを断ったに過ぎ
ねえ。黒い龍は、本来の龍の存在を
書き換えるためにいやがったんだ……

D・S:
今もヨーコさんを苦しめてる心臓の
呪詛はまだ健在だ。そいつが施されて
いるのは、文字通りこの世界の心臓部
――

ヴァイ:
さっぱり判らねえよう

D・S:
頭のワリいテメーらが理解できるよう
に説明するにゃあ、もう少し時間が
必要だ。とにかく今は急いで、
呪詛の源を潰さなきゃならねえ

突如、凄まじい殺気が接近してきた。
血路の先、からではない。それはここ
とは違う空間から、急速に迫りつつ
あった。

D・S:
この気配は――!

サイクス:
くうっ!

唐突に空間が破れ、サイクスが転がり
出てきた。即座に修復された次元の
壁の向こうから、魂を凍てつかせる
おぞましい咆哮が洞窟に響き渡る。

イングヴェイ:
サイクス!

サイクス:
駄目だ……もう振り切れない。奴は、
あの猟犬は、進化している――

サイクスが出現した、今はもうただの
虚空となった空間に、みしり、と何か
の圧力が生じた。見えない次元の壁が
じりじりと押し開かれ、こちら側に
飛び出してこようとするものの透明な
影が浮かび上がる。サイクスを追い
続けた獰猛な妖獣が、遂にこの世界
へと実体化しようとしていた。

サイクス:
済まない……巻き込むつもりはなかっ
たのだが、もはや亜空間に留まれる
能力の限界に来た……君たちだけでも
早くこの場を――そ、それは!?

サイクスの目はガラの腰にぶら下げら
れた、黒龍から入手したアクセサリー
に釘付けとなった。

サイクス:
それは私の次元刀ブースター! あれ
ほど探し回ったと言うのに……いや、
それどころではない! 早くそれを
私に! それさえあれば――

ガラ:
お? おう、これね

サイクスは受け取ったアクセサリーを、
両腕に手早く装着した。

サイクス:
まさか本当に見つけだしてくれるとは
――礼を言うぞ! これで奴と決着を
つけることができる! 力を、貸して
もらえるか?

D・S:
乗りかかった船だ。チョロチョロと
こうるさいワンコロとやらを、
蹴散らしてやろーじゃねえか!

ヴァイ:
あの透明な影……犬どころじゃないん
ですけど……

サイクス:
現れるぞ!

死を目前にした猟犬の、最期の咆哮が
大気を震わせる。風景が歪みそうな、
凄まじいまでの絶叫であった。

サイクス:
よし! 二度と再生できないように
次元断層に封じ込めてやる!

サイクスが装着したブースターの、
二対の羽根が肘を支点に開く。と、
そこから生じた波動がサイクスの掌を
包み、渦状の歪みを発生させる。

サイクス:
追跡する者よ、異次元の檻に還れ!

繰り出した手刀から、増幅された
歪空間が渦となって猟犬に放たれる。
猟犬の巨体は捻り上げられたように
ねじ切られ、迸る青黒い体液の一滴も
残さずに、そのまま亜空間へと続く
渦の中心に飲み込まれていった。

サイクス:
封殺完了。諸君の奮闘を感謝する

ヴァイ:
とんでもねえ化け物だったな

イングヴェイ:
あんなものに追われていたのか……
苦労したな、サイクス

サイクス:
フ……卿らに比べれば、私はただ逃げ
回っていただけさ。だがもう、異次元
に跳躍することはできん。ここからは
一緒に行動し、ともに闘うとしよう










D・S:
溶岩は閉じちまった。もう後戻りは
できねえぜ



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最終更新:2020年10月31日 21:27