水龍の祠


谷間の中央から地底へと続く長い
下り坂を降りると、そこは永久氷河に
よって地下に埋没した古い祠であった。

シェラ:
あ……聴こえる……

D・S:
どうした、シェラ?

シェラ:
この祠の奥に龍がいる……今までは
声が小さ過ぎて私には聴き取れなかっ
たのだが、オーロラが遮られたお陰で
交感できたようだ

D・S:
第三の龍か……いつものように歌は
ないのかよ?

シェラ:
それが……近いはずなのに、龍の叫び
は消え入りそうに小さい。翼龍ですら、
ここまで弱々しくはなかった――

D・S:
妙だな……よし、急ぎ確かめよう!










長い地下通路は、巨大な竪穴の壁面に
顔を出す形で終わっていた。この穴は
恐らく、空中に支えられた氷獄塔の
真下に位置していると思われる。

そこに、龍はいた。
水の、龍――身体を構成する物質自体
が液体であり、それが肉としての機能
を果たす膨大な水の塊の集合体――。
紛れもなくそれは、水龍と呼ぶべき
存在であった。

だが、水龍は竪穴の上方から浸食する
永久氷河に絡め取られ、その液状の
肉体を完全に凍結させられていた。
天を睨むが如くに直立し、水龍は巨大
な氷柱と化していたのである。

ヴァイ:
これが……龍の封印かよ!

シェラ:
……おかしいと思っていた。この地に
足を踏み入れてから、私の交感能力が
失われたのかと疑っていたのだが――

シェラ:
龍の生命活動が完全に凍結させられて
いたとは……魂の一部が浅く目覚めて
いるに過ぎない。これでは苦痛すらも
叫べない……。ひどい……

D・S:
カルの氷の魔力なら、このくらいの
ことはやってのけるだろうが――俺の
今の力じゃあ、解凍はできそうにねえ。
向こうの力が上回ってやがんのか……?

D・S:
シェラ! 何とか龍と交信できねえか?
この地についての情報を少しでも
知りてえ

シェラ:
やってみよう……

シェラは両手を耳に当て、極度に神経
を集中させ始めた。長い沈黙の後、
虚ろな瞳のシェラが言葉を紡ぐ――。
それは、水龍の言葉だった。

シェラ(水龍):
力を奪われし者よ。D・Sよ。
我を解放せよ。螺の道を開け――

D・S:
どうすりゃあいい? このだだっ広い
雪原で、テメエの封印を解く方法を
どこに求めりゃいいんだ?

シェラ(水龍):
答えは、隠蔽された世界、にある……
最後、に残された力、を用い、我の
封じる洞窟の結界を、解く……氷結湖
の、迷、宮へ、向……かえ……

龍の言葉は急速に遠くなっていく。
強大な凍結の魔力が、水龍の意識の
覚醒を妨げているようであった。

ブツン、と交信が途切れ、トランス
状態から放り出されたシェラはその場
に膝を突いた。
その瞬間、水龍の眼が微かに光った。

D・S:
シェラ! 大丈夫か!?

シェラ:
……く、大丈夫、だ。それより今、
水龍が結界を解いたようだ。それで
魔力を使い果たしたのか、もう交感
にも応答しない……

D・S:
奴の言う通り、氷結湖の洞窟とやらに
向かってみるか――

D・S:
言う通りなら、あの氷結湖の竪穴を
塞いでた水の結界が消えてるって
ことだな。水龍が眠っちまった以上、
そこを調べてみるしかねえな――










ヴァイ:
おわっ!アンガスが元に戻ったぞ!



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最終更新:2020年10月31日 21:20