デュアディナムトンネル
一面、鉱物質の壁に覆われたトンネル
であった。滲み出してくる液体が、
淡く光る壁にぬめりを与えている。
ガラ:
まぁた薄っ気味悪いトコロだな
マカパイン:
溶解雨よりはいい。あんな雨を浴びて
いては、私の妖斬糸まで錆びついて
しまう。結構手入れが大変なのだぞ
ロス:
今の湿地に比べればマシでしょーが。
アゴの割れ目までびしょ濡れだわよ、
マッタク!
薄暗がりに、白く蠢く小さなものが
見えた。それは人型に切られた紙片で
あり、壁の水気に張り付いて、微かな
風に煽られている。
ラン:
これは……シーンの呪符!
ネイ:
うむ。水を吸ってサインが消え、魔力
が霧散してしまっているが、間違い
なくシーンの放った式神だろう
カイ:
すると、この近くにシーンが――?
ネイ:
呪符自体はさして傷んでおらん。
そう考えていいだろう――
ラン:
シーン……すぐに見つけだしてやるぞ!
シーン:
みんな! 兄さんも――!
ラン:
シーン! やはりこの洞窟にいたか!
シーン:
式神を使ってみんなを探していたんだ
けど……でも、代わりにいいものを
見つけたわ。ほら――
ラン:
それは――!
シーンが差し出したのは、細い鋼を
幾条も編み込んで作られた長い鞭で
あった。決して切断されず、革の如く
弾性に富んだその鞭は、内側に熱を
宿しているかに淡く輝いていた。
ラン:
俺の……炎の鞭!
シーン:
これがなくちゃ、兄さんの実戦剣法も
威力半減でしょ?
ラン:
ありがたい! これでやっと奥義が
完成する……恩に着るぞ、シーン!
シーン:
わたしも自分の棍が見つかったしね。
でもほんと、合流できて良かった……
ラン:
シーン……どこにいるのだ? 俺には
もう、会えぬような気がしてならん
D・S:
後戻りしてる時間はねえ
最終更新:2020年10月31日 21:26