このページはバリアントBNの世界設定についてです。内容からして多大なネタバレを含んでいます。
アメリカの社会体制
未来のアメリカ政府は、過度な監視社会で抑圧的な体制下にある。
だが、一般市民の生活はおおむね良好である。軍事攻撃の脅威(あるいは脅威の存在を宣伝している)にさらされてはいるが、それ以外には大きな不安はない。脅威の源は中国やロシアといった外国勢力であるが、本当に大規模な軍事行動が計画されているかどうかは定かではない。
政府は、国民に対して災害への備えを促しており、武器の所持に関しても現在とは異なる厳格な規制が敷かれている。すべての人が銃を購入し所有できるわけではなく、その所有状況は厳密に監視されている。政府は国民に対して侵略者に対抗するための武装を積極的に奨励している。民間市場では、高威力の銃火器や
爆発物さえも入手可能であり、驚くべきことだ。
避難シェルター
避難所は、政府によるプログラムの一環として建設された。
その目的は、民衆の士気を高め「政府は国民に十分配慮している」と人々に思わせることと、同時に恐怖と危機感を煽ることだ。
つまり「避難所シェルターが必要な状況なんだ」と民衆に信じ込ませることだった。この二つの目的は、驚くほど効果的に達成されたと言えるだろう。
しかし避難シェルターに物資が満たされることはなかった。
軍は当初の目的が十分に果たされていることに気づくや否や、資金の投入を即座に打ち切った。
避難シェルターが実際に必要になったとしても、役立つ可能性は低い。大規模な軍事攻撃を受ければ、生存者はほとんどいないからだ。
街の郊外にひっそりと立っている避難シェルターは、物資もほとんど無くなく、無防備な建物として、ただ人々に「こんなことが起こるかもしれない」と警告を与えるだけの存在となった。それが期待されていた唯一の役割だった。
ネザー
ネセリウム(Nethereum)は、異なる世界の狭間に存在する、遷移的な平面であり、常に変動し続けている。
XE037を通じて接続された様々な世界を鏡のように映し出し、我々の現実世界の法則とはまるで異なる存在だ。ネセリウム内では、幻想と現実の間を揺れ動きながらも、調和を見出そうと試み、しかしその努力は常に空しく終わる。
その内部に棲む生物もまた、異なる世界の何らかの生物の写し鏡であり、未完成な歪みを持ち、どこか不気味な存在である。
ほとんどは知性も持たず動物的で、不完全な存在に過ぎない。しかし、ネセリウム内にも、より高次な知的生命体は存在している。
その姿は虚無を越えて世界に広がり、我々に対して、まるで幼子が新しいものを見つけたかのような異質な好奇心を抱いている。
残念ながら、この存在との接触は、我々を狂気に陥れることになるだろう。彼らは、我々の世界には決して存在しない概念に基づいており、論理的に解釈することができないからだ。
幸いなことに、彼らの世界は我々の世界と同様にアクセスが難しく、彼らにはそれを成し遂げるための集中力や技術が根本的に欠けているため、決して我々のの世界に到達することはないだろう。
ネセリウムの生物は、完全に異質な存在であり、ネセリウムから流入するエネルギーによって、不完全ながらも形を保っている。
もしこのポータルが閉じられたならば、ネセリウムの生物は、たちまち命を失うことになるだろう。
ネセリウム自体には、知性を持つ生命体の無意識の心と奇妙な繋がりがある。
夢の中、そしてより深淵の狂気の渦に、ネセリウムの混沌とした平面の一端を垣間見ることができる。
そのような洞察は、数え切れないほどの文明に、普遍的な恐怖や、現実の垣根をこえて 忌まわしきもの達についての書物を生み出してきた。
ネセリウムとの接触は、ポータル外ではほとんどが精神的なものである。現実の壁が揺らいだとしても、接触は精神的な領域で行われることがほとんどだ。
ときに、我々の領域を超えた存在からの情報が、空間の裂け目を通じて浸透し、役に立つかどうかはともかく解読できる者に届くことがある。
ポケット次元は、ネセリウム内で絶え間なく形成され、我々の知覚を超えた世界の反響や反射である。
ポータル嵐とは、これらのポケット次元が我々の世界に漏れ出す場所であり、もし適切な導管が作られ、十分なエネルギーを集めることができれば、ほかの世界から、より発展した技術や素材を集めることが可能になるかもしれない。
だが心せよ。...深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ。
ミカズの起源
かつて、ミカズ(Mycus)は母星に棲む寄生性の脳キノコであった。さまざまな動物の脳を乗っ取り、自らの胞子を惑星全体へと広げるために宿主の肉体を操った。時は流れ、脳とキノコの結びつきは次第に密接になり、やがて両者は互いに溶け合い、一つとなった。もはや寄生ではなく、完全なる共生であり、宿主の肉体そのものにまで浸透した一体化だった。その知性は、かつて感染した動物たちの間に生まれたかすかなテレパシーによって芽生えた。ミカズは「個」なる概念を一度たりとも知ることなく、ただ「集合意識」であり続けた。そこにあるのは、ただ一つの意識――ミカズであった。
宇宙へとその根を伸ばしたミカズは、無の広がりしか見いだせなかった。荒廃した星々、ときおり見つかる新たな宿主。彼らが求めたものはそんなものではなかった。他者の意識――つながる心、交わる魂。それを探して、マイカスは自らの現実の向こう側へと意識を向けた。しかし彼らは用心深く、異界――ネザーチューム――への物理的な門を開くことなく、まずは観察のみを行った。他の宇宙に知性が宿るのか、慎重に探るためだ。ついに運命は彼らを導いた。最初に目覚めた意識の住まう世界――そこは大変動の只中にあった私たちの宇宙だった。
ミカズは、人類文明がネザーの怪物と再び目覚めた忌まわしきものたちによって打ち砕かれるさまを見守った。自分たちと対等に対話できるかもしれない知性の消滅を嘆き悲しんだ。しかし、その眼差しの先で新たな兆しを見いだした。ほんの小さな「肉の民」が、辛うじて生き残っていたのだ。ひとりの者が他者と結びつき、小さな集まりが生まれた。かつての栄光にはとうてい及ばぬ影のようなものであり、一方では孤立し、破滅へと向かう者さえいた。
ミカズは信じた。あの知性はいまだ存在しているはずだと。散らばった心を収め、ひとつにまとめることができれば、局所的な次元崩壊さえ乗り越え、「共鳴」を果たすことができるはずだと。――。彼らは胞子を集め、門を開き、膨大な数の胞子をネザーチュームへと放った。宿主はその旅に耐えられない。だが、胞子ならば――たどりつけるだろう。荒廃した空間で多くの胞子が失われたとしても、必要なのはただひとつの意思に過ぎない。やがて、胞子は根を広げ、成長を始めるだろう。
ミカズの終着点
ミカズの望みは、根源的には利他の心に根ざしている。人類を再びひとつの存在として結びつけ、癒やされた集合意識へと導こうとしているのだ。
だが悲しいことに、ミカズには「個」という概念が存在しない。人間がそれぞれ異なる心を持つ独立した存在であり、ときに協調し、ときに争う、複雑で多様な群れであるということを、彼らは理解していない。ミカズにとって「知性」とは、全体が一つの意思を持って調和することに他ならないからだ。
ミカズが人間に接するさまは、まるで赤子や怯えた獣に向ける慈しみに似ている。かつて高い知性を誇っていたはずの人類が、今やバラバラになり、理解力を失い、この異形の世界におびえながら身を潜めている……そのようにミカズは見ている。
だからこそ、ミカズは果実を差し出す。香り高く、甘く、どこか懐かしいその贈り物と共に、「交信」という名の安らぎを差し伸べてくる。それは呼びかけであり、慰めであり、救済の提案でもある。
人類が抗い、攻撃し、交信を拒んだとしても、彼らは決して咎めることはない。むしろ深い慈悲のまなざしで、こう言うだろう――
「まだ理解できていないだけなのさ」と。
ブロブ
ブロブには高次の意識はおろか、統一された集団意識すら存在しない。ゆえに、従来の意味での「敵」として戦うことはできない。
だが人間には、ブロブがもたらす脅威――とりわけ死体の再活性化と変異――を大きく抑える力がある。
カタクリズム(大変動)以前に行われた研究によれば、再活性化の際に生じるエネルギーの不足とその後の活動維持にも、周囲のポータル活動によって補われているという。これはまるで、Nethereumの生物がエネルギーを補充する仕組みと似ている。そして、再活性化が起こるためにはある一定のエネルギー閾値を越えねばならないため、ある大きさを超えた死体のみが動き出すという現象も説明がつくだろう。
再生が可能となるには、一定のエネルギーが必要であり、さらにそれが強大であるほど、死体の大きさや状態が重要となる。ブロブが再生を遂げるためには、死体がある一定の規模でなければならない。その再生を支えるために、ポータルが果たす役割は極めて重要であった。
ニューイングランドの深層に存在する、あの中央研究所こそが、ポータルを制御している場所であり、ここで最大規模のポータルが稼働している。ポータルの起動が、次元の歪みを引き起こし、世界中で急速な死者の再生と異常な変異を招いた。
それ以前の再活性化はせいぜい実験室やポータル周辺のごく限られた地域でしか起こらず、やがて消えゆく現象にすぎなかった。つまり、カタクリズムがこれほど急速に、そして制御不能な勢いで広がった理由は、まさにこのポータルの覚醒にあったのだ。
大災厄がようやく収束し、次元の崩壊が落ち着くと、ポータルは新たな役割を果たし始めた。今や、それは大陸中に広がるゾンビたちを維持するためのエネルギー源となり、進化を促す力を供給しているのだ。
もしそのポータルを無力化できれば、ゾンビたちの狂気の営みも、進化も大きく衰えることになるだろう。その未来は果たして訪れるのだろうか?
ブロブ感染
ブロブによる「感染」は、生物がその細胞内にブロブを取り込み、通常の質量の一部をXE037に置き換えることで引き起こされる。
XE037が生物内で飽和する比率は、露出によってわずかに影響を受けるようで、たとえネセリウム内で浸されたとしても、生物の質量のごく一部が置き換えられるだけである。
小さなな生命体においては、これはほとんど影響を及ぼさない。XE037は、取り込まれた質量に応じて、その機能を発揮し、取り込んだ生物と反応して安定するようだ。
動物においては、XE037はその機能を強化する効果を示し、強く、速く、以前よりも優れた存在へと変化させ、治癒能力も向上する。しかし、昆虫には最も劇的な変化を示す。酸素摂取量の改善が本来の生物的な制限を超え、かつてないほど巨大に成長させる。
しかし、人間においては、その効果はいちじるしく異なる。XE037は体を再構築する能力を持ち、筋肉量や脳の質量、皮膚の厚みのような単純な変化から、急激な骨構造の変化や、通常存在しない器官の成長に至るまで、多様な変化を引き起こす。
これらの変化は、ブロブが休眠状態にあった表現型を再活性化させることに起因しているようで(驚くべきことに、鰓がこれに分類される)、または特定の遺伝子の過剰発現や抑制によるものだと考えられる。しかし、より劇的な変化の多くは、種に存在しないDNAを使用しているようで、これはXE037が以前接触した他の生物に関する「記憶」の一部である可能性がある。
構造は地球上の生物に似ているが、微妙に異なる点が多い。
被験者の自己意識とその意識の在り方が、変容に関わっている。変異を引き起こすためには、被験者の自己認識がいちじてきに変容しなければならない。しかし、この変化はある「閾値」を越えると永続的なものとなり、被験者はターゲットとなる生物と永久に強固な結びつきを得るようになる。
この自己認識の奇妙な制約は、自己意識の問題を再燃させる哲学的議論を呼び起こし、ある学者たちはこれこそが「魂」の証拠だと仄めかしている。
これまでのところ、動物や昆虫にはこのような広範な変異は観察されていない。彼らが自己を精神的に再発明できないことが、この現象に寄与していると考えられている。
フェラル
脳に何らかの異常や損傷を抱える人間に、XE037がもたらす変容は、ゾンビ化のようにも思えるが本質は異なる。こうした存在は「フェラル(野生者)」と呼ばれ、人間としての知性、道具を使う能力をある程度保っており、また、ゾンビほど極端で不気味な変貌を遂げているわけではない。だが、彼らの目には狂気の炎が灯り、周囲に存在するあらゆる生命体に対して、抑えきれない暴力の矛先を向けることになる。ゾンビたちはこのフェラルを、自分たちの一員として受け入れるように振る舞い、フェラル自身もまた、ゾンビに対してはただ静かに、不思議と穏やかに向き合う。
このような状態に陥った者が元の自分に戻れるのかどうかは、今のところ誰にも分からない。ある説によればXE037自身が、自らの意志を持たぬままに、脳の傷を癒そうと試みているではと結論付けらている。XE037は宿主の細胞の至るところへと根を張り巡らせ、もはや完全に一体化してしまっている。このため強引に除去しようとする行為は、おそらく宿主の命をも奪うだろう。まるでXE037とその宿主は、共生という名の呪縛の中に、深く閉じ込められてしまったかのように。
宿主の死
しかし、宿主の意識が消失するとブロブは肉体を再生するために思い切った手段をとる。ブロブがその体を支配し、生き延びるために餌を求めて肉体を駆り立てるのだ。突然変異はますます奇怪さを増し、宿主の細胞構造を次々と乗っ取り、より攻撃的な目的へと再編成していく(強酸ゾンビや、巨体スケルトンなどのように)。
この段階になると、ブロブは体内のCBMを乗っ取る能力を持つようだ。
電力を蓄えるためのバッテリーを電気ショックの源として利用したり、工業労働者に埋め込まれた電磁インプラントを活用したり、近接戦闘CBM内の格闘術サブルーチンを駆使することさえある(これが、兵士系ゾンビが格闘技を使こなす理由だと考えられる)。
また、バイオニクスの突然変異が「ゾンビ」特有のものではない可能性が示唆されている。自己認識の境界が「人間」と「機械」の狭間にある人物が必要だと考えられている。
この仮説に基づいた実験は、カタクリズムによって早期に中止された(このことが、試作サイボーグや壊れたサイボーグの存在を部分的に説明している)。
ミカズとブロブの関係
ミカズは、ブロブの影響力を覆すことが可能な唯一の存在だが、効果は限定的なものに過ぎない。ブロブの同化作用は、生物が「自己」という意識を持つことで抑圧される。それに対してミカズは自らの存在をもってして、肉体の支配権を手中に収める。しかし、その支配は決して永続的なものではない。やがてミカズは、感染したゾンビを徐々に弱体化させ、最後には消滅させるためにその力を行使する。まるで、自らの根を広げるために、一度腐らせた土をさらに耕し直すかのように。
プレイヤーの行動が世界に及ぼす影響
プレイヤーには、これに対処するための幾つもの選択肢が用意されるべきである。まず、最も明らかな方法――それはミカズの根を焦土とすることだ。ミカズには「女王」という中枢は存在せず、全体を統べる唯一の個体は存在しない。しかし、彼らの聖なる樹林や尖塔などの地形を破壊することで、ミカズの勢力が回復するのを防ぐことができる。
あるいは人類の「集団意識」こそがミカズに委ねられるべきだと判断するかもしれない。ミカズはその意識を自らの世界へと連れ帰り、すべての違いを拭い去った上で、永遠に彼らと共に生きるという道を選ぶこともできる。これは放棄でもあり、救済でもある。
そして最後の道――それは交渉による解決である。ミカズに、我々が蜂の巣のように一つの意識に結びついた存在ではないことを伝え、また、個々の違いは欠陥などではなく、むしろ尊ぶべき力であると説き伏せるのだ。もしその説得が成功すれば、ミカズは人類と共に生きる共生の道を選ぶかもしれない。世界が次元崩壊に飲み込まれる前の、その傷を癒すために――。
共生が実現すれば、ミカズからの助力も始まるだろう。例えば、共に戦う仲間や、集団意識からもたらされる技能、過去の心の断片から蘇らしめる復活の術、あるいはミカズの力を持った爆弾によって、ゾンビに感染を広げ、その力を削ぐことも可能となる。
選択は、常にプレイヤーの手の中に。そしてその選択が、人類とミカズの運命を分かつのである。
ミ=ゴの起源
ミ=ゴ――それは甲殻に覆われた人型の生命体であり、どうやら完全な階級社会を築いているらしい。個々のミ=ゴは、それぞれの役割に完璧に適応した体を持ち、必要に応じて労働者ミ=ゴが新たな地位へと昇格し、適切な改造を施されることもある。だが、その変化は一度きりの、そして永久的なものであるようだ。
彼らの社会は、種の存続への絶対的な責任感に基づいている。どのミ=ゴも、周囲の同族と単純なテレパシーで結ばれ、思考や感情を交わすことができるが、記憶の共有は不可能である。にもかかわらず、彼らには「自我」とも言うべき意識は存在せず、全体の利益のためであれば、自らの命すら惜しまず捧げるのである。
ミ=ゴの技術は、極めて高度なものでありながら、生体と機械の融合によって作り出されている。そのために、非ミ=ゴの者には直接利用することはできず、人間がそれを使うには、まるで他人の肌を無理に移植しようとするような無理が伴う。だが、その仕組みや科学原理は、必要な知識と素材があれば模倣することが可能である。知識さえあれば、敵の武器を敵に向けることも、奴隷化光線と呼ばれる「スレイバー・ビーム」を再構築することもできる。彼らの持つ技術は、すべてを転用可能な素材なのである。
ただし、彼らの肉体は寒さに極めて弱く、最適な活動環境は、人間にとって「サウナ」に近い灼熱の気温である。冷たい風が吹けば、その体は硬直しやがて動けなくなる。まるで、炎を求める蟲のようだ。
人類との接触
遥か昔、ある一群のミ=ゴは次元跳躍に失敗し、氷冠の上に取り残されることになった。カタクリズムが起こる以前、墜落した機体の残骸と、生き残りのミ=ゴは静止状態にあった。のちにXEDRAと名乗る組織の手によって回収された。彼らが使っていた次元ドライブの不完全な構造は、当時の人類の空間・次元移動に関する研究に大きな足掛かりを提供した。それでもミ=ゴが当たり前に操っているような精密な次元航行にはとうてい及ばないものだった。
そして人類は、知らず知らずのうちに、大きな過ちを犯していた。墜落した機体に手をかけたことで、静かな海面に一石を投じるがごとく、救難信号が宇宙の彼方に放たれていたのだ。その声に応じて、ミ=ゴたちがこちらへと向かってきてしまった。
彼らがやってきた当初の目的は密かに情報を収集することにあった。人類の脅威度を算定し、次元航行を確立してミーゴ文明と接触することになった場合に、対抗手段を用意するためだった。しかし調査が行われていた最中に――カタクリズムが始まった。
続く混乱の中で、ミ=ゴたちは明白な事実に気づいた。人類は、すでに異次元からの脅威に冒されていたのだ。さらなる調査と幾度かの襲撃によって、ネザーチュームとブロブが原因であることを突き止めた。
次元航行を完全に習得しているミ=ゴにとって、ブロブに関する理解は人類とは比べものにならないほど深かった。再活性化や変異を防ぐための対策がすでに存在していた。その技術はミ=ゴの生物学に基づいて設計されており、人類がそのまま利用するには大幅な改造が必要だった。この防御機構はミ=ゴの体に完全に一体化されており、ごく一握りの熱心な異星生物学者でさえ見逃すほど、外見からは一切気づくことができなかった。
ミ・ゴの終着点
この星の次元的不安定によって、ミ=ゴたちは母星との繋がりを断たれている。現在の目的は再び通信を確立すること、致命的な次元崩壊が起こる前にこの星から脱出するための安全なポータルを築くことにある。カタクリズムは彼らにとって予期せぬ災厄だった。人類が次元航行に関する実験を行っていることは把握しており、それについて自らの科学者たちを送り込み、観察もしていた。だが、XEDRAが成し遂げてしまったあまりにも巨大な愚行、その結果として巻き起こった混乱には、まったく準備がなされていなかった。
そのため、目的を達成するための人員も資源も不足している。それを補うためミ=ゴたちは現地の人類、この星に生きる人々を「資源」として転換する実験を始めている。人間を労働力あるいは物質として再構成することで、脱出のための最適なビーコンを構築しようとしているのだ。
ミ=ゴたちは、人類が自らの同胞に対して行った実験に憎悪を搔き立てることはない。彼らの社会には自我がないため、恨みや個人的な感情がない。そもそも想像すらできないことである。しかし人類が行った実験と、生存者たちの精神的な不安定さを総合的に判断した結果、人類を脅威と認定した。彼らの故郷や同胞が危うくなる前に、毅然と行動を起こすだろう。
プレイヤーとミ・ゴとの関係
プレイヤーがミーゴについて知るのは、主に間接的な手段を通じてであるべきだ。塔の中での発見、捕らえられた者たちの断片的な証言、あるいは静かに語り継がれる記録から、彼らの存在や目的をたどることになるだろう。ミ=ゴ自身が人類と交渉の場を設けることは決してない。彼らの目的にとって無意味であり、また、人類そのものを、あまりにも不安定で信頼に値しない存在と見做しているからだ。
しかしミ=ゴの技術を手にすること、それを己の目的のために転用することだけは、プレイヤーにも許された道である。ミ=ゴの遺した装置や武器を発見し、解きほぐし、新たな命を吹き込む。敵の力を取り込み、逆に利用する戦いの美学であり、人類が持つ「個」ならではの創造性の証でもあるだろう。
トリフィドの起源
トリフィドは人型をした植物のような生命体だが、自己完結した一つの生態系として考えるべき存在である。その生態系の中心にあるのは「トリフィドの心臓(Triffid Heart)」と呼ばれる核であり、そこから森が生まれ、戦士、女王、そしてその他あらゆる構成員が紡ぎ出されていく。
見た目はともかく、トリフィドに知性はない。それどころか、彼等が「意識」を持つことすら疑わしい。トリフィドの生態系は、ただ本能のみによって動いている。その目的は捕食し、成長し、そして新たな星へと種を飛ばす、永遠にその循環を続けることにある。そのために、トリフィドの数々の守護者たちは徘徊し、物資を収集し、やがては宇宙へと心臓を送り出すための生体砲を構築しているのだ。
トリフィドの心臓は、あらゆる刺激に応じて反応を示す。まるで設計図を引き出し、次の世代の守護者たちに本能的な対応を織り込むようにプログラムするかのようだ。菌類の敵が現れれば菌殺能力を持った守護者が生まれ、ブロブに触れたことで、耐性を持つ個体が生み出された。トリフィドがどうしてそのような能力を持ち得たのかは未解明のままだ。だが、トリフィドが異星の勢力によって作られた生物兵器であるという説が正しいならば、その創造者はすでにブロブと接触していたことを意味する。その文明がブロブによって滅んだのかどうかは定かではないが、少なくとも生物に与える脅威を深く理解し備えていた。
ある学者たちは、トリフィドの心臓こそ、滅びゆく種族が残した最後の時計仕掛けであると推測する。知性ある種が訪れ、学び取るのを待つ知識の種であり、未来へのメッセージ。ゆえにトリフィドの心臓は人類にとって極めて重要である。それが内包する情報は、ブロブやネザーについての真理かもしれないし、兵器の設計図や、トリフィドの女王が操る「魔術」、あるいは人類にとって有益な新たな生物触媒であるかもしれない。あるいは――それらすべてを。
まるで、失われた星々の声が、静かに脈打っているかのようだ。
トリフィドの心臓を回収し、新たな力を生み出すための素材として、他のレシピに組み込むこともできる。失われた生態系の鼓動を手にし、その力――捕食し、成長し、そして星々へと飛翔する――その営みを、己の手で織りなす行為なのである。
最終更新:2025年08月02日 09:14