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小話「北の教会」

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いきなり回想シーン(二年前)
法王庁残党と洗礼者達の大規模な戦闘。
洗礼者を統括するのは、かつて犯罪ギルド長だった男。
奇跡の能力を持った洗礼者をまとめあげ、かつて暗黒街の顔役にのしあがった時と同じやり方で、北方に逃げ延びた残党達を追い詰めていた。
すなわち、情報戦による敵組織の疑心暗鬼の誘発と連携の分断、補給線をあえて残しスパイを送り込む、主戦力に見せかけた囮に敵側が食いついた所で本命部隊が背後から地の理を得た上で奇襲をかける。
かつて、法王庁残党を狙った洗礼者達はいたが、今回の襲撃が最も綿密で、最も大規模であった。

『これで俺が、創世記の新王だ!』
百名以上の洗礼者達を率い、勝利を確信するギルド長だが、前方に人影を確認する。
痩身に黒神父服。
銀フレームの眼鏡の下には、猛禽を彷彿させる鋭い眼光。
『ライナス・バルグ!どうだ、追い詰められた気分は!?』
『待っていたぞ』
ライナスが指を鳴らすと、女性的なシルエットながらちょうしんのライナスより一回り大きい自動人形が現れる。
体表全体がひび割れており、右肘は根元からうしなっているが、圧倒的な存在感が同居していた。
『貴様達が、ひとかたまりになるこの瞬間を』
自動人形が左手を殺到する洗礼者達へと向ける。
白い閃光。
一瞬で、蒸発する洗礼者達。
土砂と雪を巻き上げ放たれた裁きの雷は、巨大な『片翼』の様にも見えた。

只、勝つだけでは足りない。
圧倒的な状況で、圧倒的に勝たなければならなかった。
増え続ける洗礼者達に『ライナスは別格』と、恐怖を植え付ける為に。
供に戦う者達に『ライナスがいれば大丈夫』と、希望を与える為に。
事実、『百名の洗礼者をたった一人で壊滅させた片翼鷲』の噂はアスガルド中に広まり、ライナスが束ねる法王庁残組織『北の教会』の元には、様々な人材が集う事となる。


続く



 

30: 拾郎:2016/01/14 00:19 No.71
②続き

以下、ダイジェストで

「どうされました,ルナン殿?」
回想から、引き戻されるルナンと呼ばれた修道服の男(三十代半ば)
城の城壁から、二年前にライナスに抉られた大地が塹壕の様に夕陽に向かい延びているのが見えていた。
「すまない、案内の途中だったね」
ルナンは、『難民を護衛し、『北の教会』までたどり着いた元聖冠騎士団の男』に詫びる。
行方不明の聖冠騎士団長ナーデァアの分まで役に立ちたいと、『誓いの礼』を取り熱心に訴える男に対し、『ライナスの代行』を名乗るとルナンは全線基地として使用している城の案内を申し出た。
案内しながら、男の質問に対する返答を交え、以下の説明をする。
・『北の教会』は、法王庁残党の最大精力。旧第十二教区を勢力下としている。
・元が貧しい上に流通路が途絶えた十二教区では『五十年前の生活』だが、洗礼者達により秩序の崩壊した外部よりはまし。
・難民も増え続けており、生活物資も、戦闘継続に必要な補給品も不足している。
・元審問官達を中心に、現状を打破すべくいくつかの計画を進めている。
・洗礼者達の襲撃は最近また活性化していたが、前日、中心的な一団の壊滅に成功した。
・ライナスは現在、この城の大広間で、ささやかな祝勝会に参加している。→大広間の方角からは、煮込み料理と葡萄酒の薫りが漂う。

シーンは代わり、夜。
城の中庭。杖をついて自室に戻る途中のライナスに、背後から忍びよる影。
飛び掛かる影の手にした刃物が煌めくが、
同時に一斉に照明が灯り、自身が包囲されていることに気付く襲撃者。
「'仮面`の奇跡能力があるのなら、もう少し上手く使うべきでしたね」
照明を背に出てくるルナン。
「なぜ、気づいた?」
「聖冠騎士団は、決して『膝をつかない』。たとえ最敬礼をするときでも。こちらの手の内を喋れば、早々に動いてくれると思ってました。」
「くっそ!ならば、せめて!」
ライナスに襲いかかるが、杖の一撃で倒される
「・・・後は任せたぞ、再生官」
「承知しました」
ライナスを見送った後、1人呟くルナン。
「それに知らなかったのですか。ライナス・
バルグは酒が飲めない事を」

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