①
人と竜。
混ざりあった異形の生命体。
強靭な生命力。
鉄の鱗。
圧倒的な力。
かつて「竜」と呼ばれた戦略兵器を、人型大に縮小した竜人(ドラコニアン)
地上の全てを蹂躙する最強の存在。
ベルザインによる新時代で、支配の頂点に君臨すべき存在。
複数の竜人が、攻撃対象を左右から挟撃する。
背中の翅を二段階に展開させ加速。
両手の鋭爪で伸長。
対象の首筋を射抜く
「・・・なんだよ」
襲いかかる凶爪の前にして、男の失望に似た呟き。
同時に、縫い止められたかのように、竜人の動きが止まる。
厳密には止まっていない。
男が全方位に展開した不可視かつ絶体の壁が、二段階加速と爪の衝撃を完全に受け止めている。
尚も突破しようと出力を上げ翼を拡張させる竜人達に、僅かに視線を送る。
「この適度のものなのか。」
男が呟くと、最高硬度に鍛え上げられた鋼鱗の装甲を持つ竜人が、内側から爆ぜた。
「ボクもつまらないものを作ったものだね。」
胴体から真っ二つになり、尚も四肢を痙攣させる竜人を見下ろし、調停者ベルザインは、物憂げに呟いた。
座標固定。
質量変換。
相次元反射。
言葉にすれば、これだけの事だ。
ポイントは並列起動。
改良を重ねた「嘆きの壁」は、あらゆる攻撃を跳ね返す。
試験結果の通りの完成度だった。
だが、ベルザインの顔を覆う物憂げな表情は晴れる事はない。
自身も分かっていた事だ。
稼働実験というよりは、憂さ晴らしで暴れてみただけだ。
何も解決するはずがない。
ベルザイン自身、自分の性分は理解している。
自信でルールを決め 、ペナルティを設定し、技と難易度を上げる。
積極的に楽しめるように自分を仕向けなければ、ベルザインが楽しめるものなど、この世に存在しない。
全ては、自分の理解と予想の範囲内の出来事だからだ。
ベルザインは、自分を理解している。
だから、失われたものの大きさを理解している。
僅かながら、自分の予想を越える可能性を持ったもの。
即ち、ベルザインが純粋に楽しめる可能性を持ったもの。
その最後の一つが、今日失われた。
「マクシミリアン、ロベール、イルドルフ。そして、君まで死んでしまった今、誰がこのボクの退屈を殺してくれるんだい、ライナス・バルク?」
~ライナス・バルグの死亡~
この事実を元に、最後の物語が動き出す