Wっくわーるど/ウルセイヤツラ ◆7pf62HiyTE
Passage 11 梅盛源太の意志
情けねぇ――
人々を守る為に侍になったのに――
何も守れていない――
ダークプリキュアからあかねを守ろうとした時も殆ど何も出来なかった、
何故かダークプリキュアの気が変わり見逃してくれたから助かったがそれがなければあのまま――
仮面ライダーエターナルに襲われた時もそうだ、
本来は敵である筈の外道衆の不破十臓が引き受けてくれなければ自分達は死んでいた――
警察署でもそうだった、
何気なくシンケンゴールドに変身した事でアインハルトのトラウマを呼び起こしパニックに陥らせ飛び降りさせる羽目となった。
それを乱馬が助けてくれなければ彼女は死んでいた――
そしてあの白い怪人ダグバとの戦い、
その戦いすらも乱馬とアインハルトに任せただけで自分はあかねと一緒に見ていただけじゃなかったのか、
その結果乱馬が命を落とし、あかねを殺し合いに乗せる結果となった――
そしてそれすらも止められずこのザマだ――
何も守れていないじゃないか、
外道や子供達が守れているのに何故侍であるはずの自分が何も守れない?
これじゃ――何の為に侍になったのかわからないじゃないか――
こうしている間にも殺し合いは進んでいる――
だが身体が動かない――
自分はあまりにも――無力だ
『寿司屋……何を寝ている?』
誰だ――
「あんたは……十臓の旦那?」
夢をみているのだろうか? それとも自分はもう――
「すまねぇ……俺達を守る為にあんたは……」
だがそんな事はこの際問題ではない、自分達の所為で殺された事を謝ま――
『勘違いするな、俺はお前達を守ったつもりはない。俺は強い奴と斬り合えればそれでよかった……それに、お前の寿司を台無しにされた借りを返したかった……』
「俺はそんな事なんて……」
『貴様がどう思おうが知ったことか、俺が勝手にやっただけだ……大体貴様こそシンケンジャー……侍なのに何故外道である俺に手を貸した?』
逆に十臓から問われてしまう。だがその問答はエターナルとの戦いでも行った事だ。
「言った筈だ……あんたは俺の客だ、客を守るのが俺のポリシーなんだ! 俺は……寿司屋だからな」
『やはりお前は本当に面白いな……』
そう行って去って行こうとする。
「旦那! 何処に?」
『言っておく……お前は侍には向いていない……寿司を握っている方がお似合いだ……また、お前の寿司が食いたかった……』
その言葉を最後に十臓は――消えた。
「何だったんだ……」
と、突如後ろを振り向くとそこには、
「流ノ介……」
池波流ノ介が正座して座っていたのだ。
「流ノ介……どうして……いや、そんな事はどうだっていい……すまねぇ、俺は……」
何を謝ろうとしているのだろうか?
侍の使命に刃向かって外道を助けた事か?
侍であるにも関わらず人々を守れなかった事か?
流ノ介が戦い命を落とした一方、自身はのうのうと生き延びている事か?
目の前で外道に墜ちようとしている少女を止められなかった事か?
『確かに甘過ぎだ……貴様には侍の覚悟はない!』
言葉に詰まる十臓に流ノ介はそう言い放った。だが、
『だが……それでこそ源太だ……』
そう言って立ち上がり去って行こうとする。
『お前の様な侍が皆には必要だ……殿達もそう思っている……』
そういって流ノ介もまた消えていった――
「わかんねぇよ! 何が言いてぇんだよ!!」
だが、本当に自分が必要なのか? 今の源太にはそれを信じる事が出来なかった――
「何なんだ一体……」
苛立ちながらも周囲を見回す――と、
「……? 丈ちゃん?」
胡座をかきながら紙を折る志葉丈瑠の姿をみつけた。
「丈ちゃん……丈ちゃんなのか……!?」
何故ここに丈瑠がいるのか? いや、そんな事は今は考えるな――
『源太……お前、何故シンケンゴールドになったんだ?』
「え……?」
丈瑠は何を聞きたいのだろうか?
『お前は流ノ介達と違い侍の家に生まれたわけじゃない……志葉家の当主と共にシンケンジャーとして外道衆として戦う必要は全く無い……』
その言い方にどことなく違和感は覚えるものの今は良い、それよりも何が言いたいのだろうか? だが、その答えは決まっている。
「殿様として戦う丈ちゃんの力になりたかったからに決まってるじゃねぇか!」
『……それは、俺が志葉家の殿だからか?』
「違う、丈ちゃんは俺の大事な幼馴染み……友達だ! 友達を助けたいからに決まってるじゃねぇか!」
『そうだな……』
それを聞いた丈瑠の声は何処か穏やかだった。
『なぁ源太……どうして外道である十臓を助けたんだ?』
「え……それは……旦那は何処か他の外道とは違う気がしたんだ……いや、それ以上に……それに何よりアイツは俺の客だ、俺の寿司をうまいと言って喰ってくれたんだ。客を守るのは寿司屋として当然の……」
寿司屋だから客を守るのは当然の使命――確かにそれは事実だ。
だが、源太が客を守るのは寿司屋だからなのか?
『それは寿司屋の使命だからか?』
「……いや、少し違う……寿司屋だからじゃない……俺の寿司を食って笑ってくれたからだ!」
源太が寿司を握っているのはあくまでも親の後を継いだからだ。
源太自身が寿司が好きというのもある。
だがそれ以上に――自身が握った寿司を食べて人々を喜ばせたいからではなかろうか?
そんな人々を守りたかったのだ――それは外道であっても関係無い、寿司を食べて喜んだ時点で1人の客だ。
その客を守りたかったのだ。
『お前が寿司を握っているのは結局はそういう事なんだろう……だったらそれで良いじゃないか』
「丈ちゃん……」
『なぁ……どうしてあの子を止めたいと思ったんだ?』
それはあかねの事を言っているのだろう。
「え、そりゃ……」
だがその先が出てこない。
『侍の使命だからか?』
「いや……違う……乱馬の兄ちゃん、姉ちゃんを守る為に戦って死んだんだ……きっと兄ちゃんは姉ちゃんに戦って欲しくも傷ついて欲しくもなかったんだ……だから……」
そう、だからこその先のあかねに対する言葉なのだ。もっともそれは全く通用しなかったが――
『早乙女乱馬の為……確かにそれも間違ってはいない……だが、本当にそれだけなのか? そうじゃないだろう……なぁ、お前自身はどうなんだ?』
丈瑠は何を言いたいのだろうか?
『言い方を変えるか……そうだな……早乙女乱馬の件とは別にしてだ……全く理由も分からず突然殺し合いに乗るなんて言い出した時は止めないのか?』
「……?」
『あの子はお前の何だ? もうわかっているだろう?』
その言葉で、
「ああ、止めるさ……」
『それは外道を止める侍の使命だからか?』
「違う……」
『他の知らない誰かの為なのか?』
「違う……」
『じゃあ何の為だ?』
「それは……俺自身が止めたいからだ!!」
それが源太の答えだ。それを聞いて穏やかな笑顔を浮かべ、
『そうだ……それで良い……自分を偽るな……』
「丈ちゃん……」
『それが道を外れたものであっても気にするな、それは只の結果だ。お前はお前の心に正直に往け……侍も外道も関係無い……お前はお前だ……』
そうこうしている間に丈瑠の手にあった紙は1つの紙飛行機へと折り上げられていた。
『なぁ源太……お前に取って俺は何だ?』
「そんなの決まってる! 丈ちゃんは俺の……友達だ!!」
『良かった……それだけでもう俺は十分だ……』
そう言って紙飛行機を飛ばす、紙飛行機は闇の中を飛んでいく――
『飛び続けろ……源太……落ちずに……』
「……わかったよ丈ちゃん……俺、行ってくる」
そう言って、紙飛行機を追いかけるように走り出す――
『そうだ……お前は間違えるな……俺の……様に……』
後ろで丈瑠が何か言っているが上手く聞き取れなかった――
結局の所、何故いきなり3人が目の前に現れたのだろうか?
いや、きっと無力感で袋小路に陥った自分に思い出させたのだろう。
自分が本当にすべき事、あるいはやりたい事を――
1つだけ確信出来る事がある――死者である筈の十臓と流ノ介の後に丈瑠が現れた事の意味――
それは既に丈瑠がこの世にはいない事を意味している――
結局、丈瑠の心に何があったのか、そして何をして散っていったかはわからない。
人々を守る為に戦ったのだろうか? それとも――
だが、1つだけハッキリとしている事がある――
志葉丈瑠と梅盛源太は友達――それだけは変わらなかった。
それだけわかれば十分だ――
「一貫……献上!」
気が付けば奔っていた――
気が付けば手元にあったスシチェンジャーを寿司の様に出してシンケンゴールドへと――
そしてそのまま光溢れる外へと――
「丈ちゃん……俺は飛び続けるよ」
Passage 12 Count your crime.
「あ……あ……!」
杏子は開いた口が塞がらなかった。
「ん、どうした杏子?」
何も知らない翔太郎が問うと、
「何なんだその技は!? なんで真っ二つに分かれるんだよ!?」
杏子はWのマキシマムドライブを見て驚愕していたのだ。
「何を驚いているんだい? 僕達は2人で1人の仮面ライダーだ、1つの力を2人で分けただけじゃないか」
「だからって中央で分けるのはねぇぇぇぇ!!」
「それより奴はどうなった……」
そう、まだ戦いは終わっていない。メモリ排出を確認するまでは油断は――
「駄目だ翔太郎……」
未だナスカ・ドーパントは健在――
「外したのか?」
「いや、僕達の攻撃は確かに決まった……」
「ああ……半分な」
そう、マキシマムドライブは完全に決まらなかったのだ。
伝説の道着により強化された潜在能力のお陰で防御態勢を取る事が出来たと――
正確には一撃は決まっていた。杏子も驚愕したのだ、いきなり目の前で真っ二つに割れたのを見て初見では対応仕切れない。
だからこそその一撃は決まった。だが二撃目はそうはいかない――なんとか防御が間に合ったという事だ。
ジョーカーエクストリームは二撃で一撃の必殺技、二撃目が決まらなかった為、完全ではなかったという事だ。
故に、メモリ排出すらされなかったという事だ――
「ぐぐっ……」
故にナスカ・ドーパントは立ち上がる。
「くっ、まだやれるのかよ……」
「だが彼女のダメージは大きい、もう今までの様にはいかない筈だ」
その時、
「待て待て待てぇーい!!」
シンケンゴールドが3人(4人)の前に現れた。
「その声……」
「寿司屋の兄ちゃんか?」
「身体の方は大丈夫か?」
「こんなケガ大した事ねぇよ! それよりもだ……姉ちゃん、もういいだろ!」
シンケンゴールドはナスカ・ドーパントを止めるべく声を張り上げる。
「梅盛さん……まだ止めるつもりなの?」
「ああ、俺は絶対に諦めねぇ、姉ちゃんを外道になんて絶対にさせねぇよ!」
まだこの男はそんな安っぽい言葉を――
「アイツが喜ばないから? 私達の事を何も知らないで偉そうな事を……」
「違う! いや……違わねぇけど……それだけじゃねぇ! 確かに兄ちゃんの為というのもある……けど何よりも……姉ちゃんの為だ!」
「私の……為?」
「ああ、だって姉ちゃん……そんな外道になれる様な人じゃねぇだろ……ブタのアップリケを作ったりと可愛い所だってあるじゃねぇか!」
「イヌよ!!」
「梅盛源太と彼女何の話をしているんだい?」
「知らねぇよ?」
「姉ちゃんは本当は心優しい筈なんだ……人を殺せる様な事なんて出来るわけねぇしやっちゃいけねぇよ……」
「知った事を……」
「そんな事したら姉ちゃん心から笑えなくなっちまうじゃねぇか!! 俺にはそれが耐えられねぇ!!」
シンケンゴールドは叫ぶ、自身が本当に願う事を――
「私が何をしようと私の勝手でしょ、もう構わないで!!」
「いや構うさ!! だって姉ちゃんは俺の客だ! 客を悲しませるわけになんていかねぇよ! 俺の客にはみんな笑っていて欲しいんだ!!」
それこそがシンケンゴールドこと源太が願う事、
「くっ……だったら……」
先程までの言葉とは違いそれはナスカ・ドーパントの心に届いてはいる。だがそれならば――
「だったらこのまま私を……」
放っておいてほしい、だって乱馬のいない世界で本当に笑え――
「あかねさん……ですよね、もう止めて下さいあかねさん!」
と、そこに新たな少女が姿を見せた。
「! アインハルトの嬢ちゃん……あんた無事だったのか?」
覇王形態となったアインハルトがライディング・ボードに乗って現れたのだ。
風都タワーの展望室は激闘があったせいか大分荒れていた。そして中に誰もいないのを確認したのだ。
その後、展望室から周囲の様子を確認し――ナスカ・ドーパントが撃ち落とされるのを見つけたのだ。
十中八九ナスカ・ドーパントに変身しているのはあかね、彼女がそこにいるのは間違いない。
乱馬との約束を果たす為に、手元にあったライディング・ボードを駆使し一気に移動したというわけだ。
「アインハルトちゃん……」
「ごめんなさい……私の所為で乱馬さんを死なせてしまって……いいえ……乱馬さんだけじゃない……なのはさんにフェイトさん、それにユーノさんや流ノ介さんにシャンプーさんまでみんな私に関わったばかりに……」
謝罪を始めるアインハルトの言葉に、
「ちょっと待て何言ってんだ?」
「ああ、フェイトとユーノは……」
驚きを示すのが2人と行動を共に為ていたWと杏子だ、何故無関係な少女が責任を感じているというのだ?
「え、貴方達は……」
「ああ、あたし達はフェイトとユーノと行動を共にしていた」
「あんた、まさか2人の知り合いなのか?」
「はい……そうですけど……」
「どういう事だ……」
「アインハルト・ストラトス……だが、ユーノ・スクライア達は……」
「コイツの事なんて何も話してねぇ……」
フェイト達が知らず一方的に彼女達の事を知るアインハルトの存在に疑問を浮かべるWと杏子、
「でもあかねさん……やめてください! 許嫁……恋人の貴方だったら乱馬さんがそれを望んでいないのを知っている筈です!」
「乱馬の事をよく知らないく……」
「わかります! 身体を張って屋上から落ちそうになる私なんかを助けてくれた……私なんかを信じてこれを託してくれた……」
と、T2ヒートメモリを取り出す。
「アレはT2のヒート!?」
Wが驚くのを余所にアインハルトは言葉を続ける。
「ずっと私なんかやヴィヴィオさんの事を気遣ってくれた……そして何より……あかねさんを戦わせまいと身体を張ってくれた……そんな乱馬さんがあかねさんに人殺しを望む筈がありません! それはあかねさん自身が一番知っている筈です!!」
「その通りだ、嬢ちゃんの言う通りだ! なぁ姉ちゃん……」
「……それでも私は……!」
「本気かよ姉ちゃん……本気で俺達を殺すつもりなのかよ!! いや、俺達だけじゃねぇ……友達の良牙の兄ちゃんもいるだろうが!?」
「良牙君……!!」
「なぁ姉ちゃん……殺しちまったらもう本当に戻れなくなっちまう……それで乱馬の兄ちゃんを取り戻せても……姉ちゃんは本当に笑えるのか? 兄ちゃんの前で笑えるのかよ? 友達まで殺して……それでも笑えるのかよ!?
いや笑えねぇ……笑えるわけなんてねぇ……そんな哀しい顔を乱馬の兄ちゃんに見せたいのかよ!!」
「乱馬さん……私に『あかねを止めて』と頼んでました……望んでなんかいませんよ! あかねさんが人殺しをするなんて!!」
いつの間にかアインハルトの目からは涙が溢れ出している――マスクに隠れて見えないが恐らく源太の目も潤んでいるのだろう。
「だからお願いです、乱馬さんが死んだのも全部私の所為なんです、怨むなら私だけを怨んで下さい! だから……」
「違うぜ嬢ちゃん、俺の力が足りなかったからだ……侍としても寿司屋としても……人としても未熟だったから……俺の所為なんだ!!」
全ての責を背負おうとする2人を目の当たりにし、
「何言ってんだお前等……」
「翔太郎……」
思わず口にしてしまう翔太郎、
「馬鹿……」
そんな中、ナスカ・ドーパントはゆっくりと口を開く。
「姉ちゃん……」
「あかねさん……」
「いいのよ……2人が責任なんて感じなくて……」
2人を怨む様な言葉など無い、だが。
「だって、悪いのは全部アイツなんだもの……戻ってくるって約束を破ったアイツが悪いのよ……」
「え?」
「何言ってんだよ姉ちゃん……」
全ては戻るという約束を破った乱馬が悪いと言い放ったのだ。
勿論、あかねとしては割と何時もの調子だったのだろう。
だが、命を懸けてあかねを守ったであろう乱馬が悪いと言い出した事にシンケンゴールドもアインハルトも困惑する。
「だからこうなったのは全部……アイツの……乱馬の所為……だから……」
あかね自身としてはそこまで考えたわけではなく、あくまでも2人を気遣うつもりで口にした言葉だ。その時、
「ちょっと待てよ……黙って聞いてりゃ何フザケた事ぬかしてんだ……」
今まで沈黙を保っていた杏子が口を開いた。
「何……」
「なぁあんた……それはつまり自分が殺し合いに乗ったのは全部その乱馬って彼氏の所為ってことかよ?」
「ええ全部乱馬の所為、それがどうかしたの? 別に関係無いでしょ」
「繰り返すがあたしは別にあんたが殺し合いに乗ろうが乗るまいがそんな事は知ったことじゃねぇ、あんたが決めた事ならそれは全部あんたの自業自得だ……
けどさ……あんた自身の行動を……誰かの所為になんてするんじゃねぇってんだよ!!」
杏子には許せなかった――
あかねが自身が殺し合いに乗った事を乱馬の所為にした事を――
杏子自身、自身の愚かな選択で家族を失ったがそれを誰かの所為にはしなかった――
フェイトにしてもユーノにしても自分勝手に死んでいったが誰かの所為にはしなかった筈だ――
せつなに至っては殺したモロトフを恨みもしなかったのだ――
思えば彼氏の為に奇跡を使い潰し魔法少女となったさやかだってその責をその彼氏に押しつけてはいなかった――
「あたしとしてはリンクルンさえ戻ればこんな腕なんて返しても良かった……けどあんたには渡さねぇ、自分の行動を彼氏の所為にするアンタなんかにはな!!」
怒りを宿した視線をナスカ・ドーパントに向ける――
「何ですって……良いわ、乱馬の腕は意地でも取り返すわ」
と、ゆっくりと杏子を見据えるナスカ・ドーパントである――
互いに怒りをぶつける杏子とナスカ・ドーパント、
あかねの乱馬に対する発言に涙ながらに困惑するシンケンゴールドとアインハルト、
「何だ、これ……何でこんな事になってんだ……何でこいつ等が泣かなきゃいけねぇんだ……」
一方、翔太郎は唖然としていた。
何故こんな事になってしまったのか? 何故皆泣いているのだろうか?
この場には街、あるいは人々を泣かせる悪人はどこにもいない。
あかねですらも乱馬の為に殺し合いに乗っただけでしかないのだ。
本当の悪いのは誰だ? 乱馬を殺したダグバなのか?
確かに直接の切欠はそうだろう、だが本当にそうなのか?
本当に罪を数えなければならない者が他にいるだろう?
「翔太郎……君の考えている事はわかる……だが、天道あかね……彼女は既にアインハルト・ストラトス、梅盛源太……そして早乙女乱馬の生き様を泣かせた……」
相棒は自分の心中を察してくれている、同時に厳しく釘を刺してくれる――だからこそ肝心な所で間違えずに済む――
「ああ……わかっているぜ……フィリップ……!」
それでもやりきれない――
思い返すのは幼き頃に見たハードボイルド探偵の姿――
その当時は唯々格好良い、完璧な男としか感じなかったが――
だが『Nobody's perfect』、完璧な人間など存在しない――
きっと、間違いなくその探偵も何処かで間違いを犯し人々を悲しませてしまった事があるのだろう――
この事態を引き起こした事は自分にも責がある。自分の決断の甘さがこの悲劇を引き起こしたという事だ。
ああ、何処まで行っても自分は半人前だ――
そんな弱い自分をフィリップは受け入れるといった――だがそれだけでは駄目だ、
翔太郎自身がフィリップについて行ける様な男にならなければならない――
だから――ナスカ・ドーパントへ、あるいはこの場にいる者達全員に言わなければならない。
アインハルトも源太も罪を数えた、杏子も先の告白で自分なりに罪を数えたのだろう――ならば、
ゆっくりと前へと踏み出すのだ――そして、
「ひとつ……俺は自分の無力さで幼い仲間2人を死なせてしまった……」
「フェイト……ユーノ……」
「え、まさか……フェイトさんとユーノさんも……」
「ふたつ……ダグバを倒しきれず逃がしてしまい人々を泣かせる怪物を野放しにしてしまった……」
「仮面ライダーの兄ちゃん……」
「みっつ……その所為であんた達を泣かせた……」
「何が言いたいの?」
仮面ライダーW、いや左翔太郎の言葉に一同が視線を向ける。
「俺は自分の罪を数えたぜ……」
それは、悪党に自分達が永遠に投げかけるお決まりの言葉――
「天道あかね……」
「さぁ……」
しかし、今口にするそれは余りにも哀しいものだった――
「「お前の罪を数えろ……!!」」
その時――
ふしぎなことが起こった――
「翔太郎……僕達の……完全敗北だ……」
Passage 13 天道あかねの慕情
青い戦士ナスカ・ドーパント、レベル2に到達する事で超加速能力を得るミュージアムの幹部ドーパントである。
だが、ナスカの力には更にその先がある――
それは冴子によって到達したレベル3、赤いナスカ・ドーパント、またの名をRナスカ・ドーパント、
何故冴子は霧彦がレベル2にしか到達出来なかったレベル3にまで到達できたのか?
勿論、冴子自身の資質という要因、ドライバーを介さず直挿しによってダイレクトに引き出したという理由もあるだろう。
だが、別の解釈は出来ないだろうか?
ナスカ・ドーパントは元々霧彦が使用し育てていったものだと解釈される。今更語るまでも無いが霧彦は冴子の事を愛していた。
霧彦の意志が冴子に応えたという事は考えられないか?
また一方で冴子が直差しを行ったのは愛する男性とも言うべき井坂の教えからだ、つまり直挿しを行ったのは井坂への愛が成した事とも言える。
つまり、メモリを強化したのは愛、つまりは想いの力というものだと考えて良いだろう。
それを裏付ける情況証拠の1つにこの地での霧彦のナスカ・ドーパントがいる。
本来ならば到達出来なかったレベル3の領域に霧彦は到達したのだ。勿論、ドライバー破損により直挿しに近い状態になっていたという理由も存在はする。
だが、一番の理由は霧彦の風都という街に対する愛といよう。
愛が奇跡を起こした――陳腐な話だろうがそういう事だ――
さて、仮面ライダーW、杏子、シンケンゴールド、そしてアインハルトと対峙しナスカ・ドーパントは絶体絶命であると感じていた。
先程のマキシマムドライブによるダメージは大きく、全力を出せない状態だ。
伝説の道着で潜在能力を引き出しているとはいえ前述の通り限界はある。1対1ならばともかく4人全員を倒すのは厳しい。
つまり、将棋で言う所の王手、チェスで言う所のチェックメイトをかけられた状態という事だ。
無論、皆の言葉が理解できないわけではない。
だが――諦められない
諦められるわけがないのだ――
もう一度、乱馬と共に笑い合ったあの日常へと帰りたいのだ――
だから願う――
伝説の道着は潜在能力を100%まで引き出すもの、
だがそれではまだ足りないのだ――
限界を――超えろ――
「乱……馬……!」
その想いに――ナスカは応えた――
余談だが、少し前にナスカのメモリは乱馬自身がダグバを倒す為に使った――そう、ダグバを倒し再びあかねの元に戻る為に――
つまり、ナスカのメモリには乱馬の想いもまた宿っていると言えよう――
そして今、あかねもまた乱馬への想いを――
互いを想う2つの想い――それはすれ違っていたとも言えるが想いは想いだ――
想いは奇跡を呼び――
限界を超え、ナスカのその先、レベル3へと到達したのだ――
赤いナスカのスペックは当然青のそれとは比較にならない――
スピードだけを見てもトップクラスを誇る仮面ライダーアクセルトライアル以上、
それ故、エクストリームではない通常のWではまず相手にはならない――
フィリップと翔太郎は最初からこの最悪の事態を想定していた――赤いナスカに変身した時点で敗北すると――
変身した時点で結末など考えるまでもないだろう――
H-7の森を赤い怪人が進む――天道あかねの変身した赤いナスカ・ドーパントだ。
だが待って欲しい、確かあかねはさらなる力を得る為C-7にある呪泉郷を目指していた筈だ――
全く真逆ではなかろうか?
そう――今の赤いナスカ・ドーパントには彼女の意志はない――
元々パワーが強い次世代型のT2のガイアメモリ、それに加えて僅かな時間でレベル3に到達したのだ。
更に言えば精神及び肉体が受けた強いダメージ――あかねはとっくの昔に限界だったのだ。
故に今のナスカ・ドーパントは強大な力を唯々振りかざす怪物でしかない――
純粋な願いの果てに変貌した意志を持たない怪物――
それでも伝説の道着は健在故にその能力は発揮される――
あかねにしてみればこれは望む結末だったのだろう。
願い通り強大な力を得られ、自我を失ったお陰で迷い無く参加者を惨殺し優勝へと近づける状態となれた――
もう、悲しまなくて済む――
その代わり、笑うことすらももうないだろう――
乱馬の愛したあの笑顔も失われたのだ――
最後にもう1つ――
呪泉郷は恐らくはあかね達が知る唯一の共通の場所である――
あかねや乱馬の友人である響良牙がそこに向かう可能性は高い――
呪泉郷に向かわなかったのはきっと――
醜い殺戮怪物となった自分の姿を――
大事な大事な友達である良牙に見られたくなかった――
天道あかねの最後の良心だったのかも知れない――
【1日目/昼】
【H-7/森】
【天道あかね@らんま1/2】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、精神的疲労(大)、とても強い後悔、とても強い悲しみ、ガイアメモリの毒素により暴走状態となり自我消失、Rナスカ・ドーパントに変身中、伝説の道着装着中
[装備]:伝説の道着@らんま1/2、T2ナスカメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、女嫌香アップリケ@らんま1/2、斎田リコの絵(グシャグシャに丸められてます)@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:”乱馬たちを守る”ためにゲームに優勝する
0:(暴走により自我消失)
1:良牙君……
[備考]
※参戦時期は37巻で呪泉郷へ訪れるよりは前で、少なくともパンスト太郎とは出会っています。
※伝説の道着を着た上でドーパントに変身しているため、潜在能力を引き出された状態となっています。また、伝説の道着を解除した場合、全裸になります。
Passage 14 The 7th stage player
「赤いナスカ……」
「姉さんと同じ……間に合わなかった……」
天道あかねの変身した青いナスカ・ドーパントが赤いナスカ・ドーパントへと進化――
それを目の当たりにした瞬間、仮面ライダーWこと翔太郎及びフィリップは敗北を察した――
勿論、捨て身覚悟で仕掛ければ勝利の可能性自体は0%ではない――
しかし、それはこの場にいる4人(5人)が全滅あるいは限りなくそれに近い状態となる(最低でも2人は犠牲になると考えて良い)事が前提だ。
しかもそれだけの犠牲をもってしても無力化までもっていける確率は1桁クラス――
それだけ絶望的な状態だったという事だ――
「翔太郎……僕達の……完全敗北だ……」
あまりにも分の悪すぎる賭けだ――
翔太郎自身――いや、あの場にいる全員が自分1人だけが犠牲になれば済むと考えているならばまだ良い。
だが、他の者を犠牲にしてまで――となれば話は別だ、それに前述の通りそれだけもってしても失敗する可能性が高い――
「ああ……俺だけならともかく杏子や梅盛、アインハルトまで命の危険に曝すわけにはいかねぇ……」
故に翔太郎とフィリップはこの場でのナスカ・ドーパントの撃破を断念、
杏子、アインハルト、源太、3人の生存確保を最優先にしたのだ――
全力で逃げに徹するならば全員生還の可能性はそこまで低くないからだ。
「掴まれ、梅盛!!」
「なっ、兄ちゃん!?」
「ぼさっとしてんじゃねぇ、ボンクラァ!?」
「えっ? あかねさんは……?」
真っ先に動いたのはW、そして杏子だ。
実際に戦い青いナスカの実力を把握していた杏子は赤くなった事で大幅な強化がされたのを直感的に察知、
危険性を理解した杏子は全員を生還させるべく動く――示し合わせたわけでもないのにWと同じ結論に至ったのだ。
「仕方ねぇ、姉ちゃんは……」
「また目の前で誰かが死ぬのを見てぇのかぁ!? もう見たくねぇんだったら黙って言う事聞きやがれ!」
「詳しい事は後で説明する、だから今は……!」
「はい……わかりました……!!」
一手遅れたもののアインハルト及びシンケンゴールドも赤くなった事による強化は何となく理解は出来ていた。
そしてWと杏子の動きから即座に説得を断念し撤退あるいは防戦に出た方が得策である事も理解した。
あかねをこのままにしておくのは心苦しい、それでもこれ以上誰も死なせたくないという想いから苦渋の決断をしたのだ。
ウィングを展開し高速でブレードを振り回しながら飛び回る赤いナスカ・ドーパント――
何十発も高速で放たれる光弾の嵐――
4人(5人)はひたすらに回避・待避・あるいは防御し続けた――
時間にしてみれば数十秒程度の出来事だったのだろう――
その程度であったからこそ何とか耐えきる事が出来た――
これが数分も続いたら全滅は必至――そうとしか言えなかった――
この戦いで誰も死なせなかった事を勝利と言えるのならば勝利と言って良い――
だが、フィリップの言葉通り今回の戦いは完全敗北以外の何物でも無い――
赤いナスカの実力は冴子が見せた通り、Wが戦ったドーパントの中でも最強クラスである。
それと同等、いや伝説の道着で素の戦闘能力が強化されている分それ以上と考えても良い――
更に言えば、赤いナスカ・ドーパントが結果として数十秒しか攻撃をしなかったのは暴走状態、つまり自我を失っていたから自分達にお構いなしに攻撃直後早々に追跡できない場所まで移動しただけでしかない。
恐らく今後無差別に参加者を襲撃することだろう――
結果として、最強最悪の怪物を放ってしまったのだ――自分達が倒しきれなかったばかりに多くの参加者の命を危機に晒してしまったのだ――
ついでに言えばガイアメモリの暴走が続けばメモリを使っているあかねの身体や精神、あるいは生命、それらはもう永くは保たない――
結局の所、数人の目先の命を一時的に守っただけでトータル的に言えば何も守れていないのだ、完全敗北の中の完全敗北だ――
だが――それで心が折れる程弱い連中か? 全てを諦め絶望するような連中か? 否、断じて否!!
――天道あかねの変身した赤いナスカ・ドーパント、暴走状態に陥ったその無差別な攻撃から俺達は何とか生還する事が出来た。
だが、結局の所、最強最悪の怪物を解放してしまった事もまた事実、
アインハルト・ストラトスから聞いた話では早乙女乱馬の命を賭した戦いのお陰でダグバの弱体化には成功したらしい、
しかし未だ奴は健在でありガドルの行方も知れず、梅盛源太によれば仮面ライダーエターナル大道克己は殺し合いに乗っているらしい。
アインハルトの話では風都タワーには既に誰もいなかった……つまりそこで待っていた筈のDボゥイ達も何処かへ移動したという事になる。
状況は好転どころか悪化の一途を辿っている、それでも――
「この戦いで誰も命を落とさなかった事だけは幸いだった……そして、絶対に諦めずこの殺し合いを止め……」
「何1人でナレーションしてんだよ!! しかも長ぇよ!!」
と、独り独白する翔太郎に杏子が思わず後ろから軽く叩く――
「なぁ、アンコの嬢ちゃん、そんなに怒るなよ……」
「『アンコ』じゃねぇ! あたしの名前は『キョウコ』だ! ていうかさっき自己紹介した筈よね……」
「そういえば……桜餡子というお菓子ってありませんでしたか?」
「いや、それ桜餅の事じゃねぇか?」
「そうそう、何かそれ思い出してさ! なぁアンコの嬢ちゃん」
「だから『アンコ』じゃねぇぇぇぇ!!」
赤いナスカ・ドーパントの猛攻が止み、戦いが終わった事を確認した一同はそれぞれ変身を解除し大まかな情報交換をした。
しかしその中でもアインハルトの語ったある事が翔太郎達にとってはある意味重要だった。
「つまり、アインハルト達の世界……というより時間ではフェイトやユーノ達は20過ぎで……フェイトとなのはにはヴィヴィオという娘がいる……という事でいいんだな?」
どうやらアインハルトとフェイト達の時間は10年以上も差があった。
死亡しているにも関わらずこの地にいる大道達の存在も踏まえて考えると参加者同士には時間の差異がある可能性も考えて良いだろう。
「そういやフェイトとユーノ知り合いって割にはフェイトの様子がなんか変だった気がするのはその所為だったんかな……」
「……ちなみにそっちのユーノはどうなってんだ?」
「確か仲の良いお友達……と聞いています」
「彼氏ってわけじゃないんだな」
「ユーノ……」
翔太郎は最初に出会ったユーノから高町なのはの事を特に真剣に話していた事を思い出す。
その事を考えると、ユーノの行く先に哀愁を感じてしまう翔太郎であった。
「ハードボイルドだな……ユーノ……」
「何を言っているんですか、翔太郎さん……」
「ああ、気にしなくていいぜ。兄ちゃん、ハードボイルドを気取っているだけの完成されたハーフボイルドだから」
「んな完成したかねぇよ!! 亜樹子みたいな事言うんじゃねぇ!」
そう叫ぶハーフボイルドを余所に杏子がアインハルトに対し、
「それからボンクラ……1つ言っておく事がある」
「え?」
「あんたさ、自分の所為で知り合い全員死んだと言っていたよな」
「はい……」
杏子は自分の所為で全ての参加者が死んだと思い込んでいるアインハルトに言いたい事があったのだ。
「他の連中はどうか知らねぇし実際にそうだったのかもしれないが……さっきも話したけどフェイト達に関してだけ言えば違うからな。
あいつらはあたしと兄ちゃんを守る為に勝手に犠牲になったんだ。だからそれはあいつらの自業自得、もしくはあたしと兄ちゃんの所為だ、感じる必要の無い責任まで感じる必要なんてねぇよ、むしろあたしらを責めてくれたって構わねぇ」
「ああ、ユーノ達を死なせたのは俺の決断が甘かった所為だ、アインハルトが気にする事なんてねぇよ」
「でも……」
杏子に続き翔太郎もアインハルトを気遣う言葉を言う、それでもアインハルトは素直に受け入れられないでいる。
「ああもうともかくだ、今度あたしの前でそんなうぜぇ事抜かしたらその顔ぶん殴るからな、言っておくがあたしが殴るんじゃねぇ、フェイトとユーノの分だ」
何となくだが、こうやってアインハルトが苦しむのをフェイト達は望んではいないのだろう。だからこそ杏子はこう口にしたのだ。
「ありがとうございます……アンコさん」
「ああ……ってアンコじゃねぇって!!」
また名前を間違えられて叫ぶ中、今度は源太が、
「そうだぜ嬢ちゃん、それに俺もさっき気を失っちまった時、死んだ筈の流ノ介に会ったんだ……流ノ介の奴、嬢ちゃんのこと全然怨んでなかったぜ。むしろ自殺された方が困るって言っていた……
だから流ノ介の事で責任感じているんだったら死ぬなんて絶対に駄目だ……」
厳密に言えば、流ノ介はアインハルトの事については一切触れてはいない。
だが、きっと流ノ介はアインハルトを守って死んだ事については全く気にしていない、むしろ悩まれる方が困る、だからこそ源太はこう口にしたのだ。
「それにあいつ……まど……」
「はい?」
「いや、なんでもねぇよ……」
杏子はまどかも気にしていないだろうと口にしようと思ったが止めることにした。
どうもアインハルトの様子を見る限り彼女から杏子の事は何も聞いていない様に見えた。
先の話から考えてまどかは杏子の事を知らないタイミングから来たのではと考えた。
ならば、わざわざアインハルトに彼女と知り合い(という程深い仲でもないが)である事を明かす必要もないだろう(翔太郎も深い仲ではない事は知っていた為言及はしていない)。
実際の所は、まどか視点では杏子は死亡していた為、参加している事を知らず、一瞬だけ名前を見たものの色々な事がありすぎた為、そこについて考える余裕もなかったが故に結局アインハルトに語らなかっただけである。
それ故に、アインハルトは杏子とまどかが知り合いである事を知らなかったのだ。
「(はぁ……全くあの馬鹿……)」
正直、まどかが戦って死んだ事に関しては馬鹿としか言い様がないと感じていた。
まどかに関してはフェイト達と違い全く戦いとは無縁の少女だ。
「(戦いなんてもんは誰にだって務まるもんじゃねぇってのに……)」
杏子視点から見て、毎日を幸せに不自由なく暮らしをしている奴が安っぽい感情で魔法少女になる事は許せないと感じている。
無論、何れはそういう時が来るのかも知れないが、アインハルトから聞いた状況では他にも戦える奴がいた筈だ、どう考えてもまどかが前線に出て戦う時ではない。
「(結局それで死んでボンクラに必要無い罪を背負わせたら意味ねぇじゃねぇか……)」
そう思う一方、まどかもまた誰かを守る為に命を散らせた事は理解できた。
「(全く……馬鹿な奴……)」
だが、逆にこう考える――まどかにとってはその時だったのだろうと――仲間を守りたいと必死に考えての――
もっともその結果は自身の死、そして同行者に決して消せないトラウマを植え付けたという最悪なもの――
他人の都合も知らず、勝手な行動で、結局自分を含めた誰もを不幸にした――
「(あれ……なんだこれ……なんかどっかで聞いた様な話だな……)」
杏子は気付かない、その話が最も身近な人物の事だという事を――
「(ま、いいか)」
さて、問題は今後の方針である。
翔太郎達が見た柱はどうやら乱馬とダグバの戦いによるものだとわかった以上、その確認をする必要は無くなった。
源太によると仲間達は警察署に集まっていて、一部の仲間が中学校にいる仲間を警察署に連れて行く為に向かったらしい。
もっとも中学校にいる仲間である霧彦も祈里も既に死亡している為それは徒労に終わってしまったが――
何にせよ、警察署で仲間が集結する手筈になっているらしい。
そして今現在警察署にはアインハルトの知り合いにして未来のなのはとフェイトの娘であるヴィヴィオ、姫矢の知り合いらしい孤門一輝がいる。
「私は……ヴィヴィオさんに会って、ちゃんと話をします」
まずアインハルトはヴィヴィオとちゃんと話をする為に警察署に向かうと言った。それがあの時現れた乱馬との約束でもあるのだ。
「あたしもフェイトの事を話してやらなきゃいけないから一緒に行くよ。孤門の兄ちゃんもいるらしいしな」
続いて杏子もアインハルトと同行する旨を口にした、ヴィヴィオの件もそうだが姫矢から受け継いだ力について聞く必要もある。それに――
「確かせつなの友達の美希って奴も来る手筈になっているんだろ? せつな達の事も伝えなきゃな……」
そういやさやかの名字も『ミキ』だったよな――そんな事を考えながら口にする杏子だった。
「なぁ、俺としては姉ちゃんを探しに行きてぇんだけど……」
源太としては警察署に戻りたいと思う反面、あかねの事が気に掛かっていた。
翔太郎の話ではガイアメモリによって汚染され暴走状態に陥ったらしい。このまま参加者を無差別に襲撃する危険性もさることながらあかね自身の命も危ない以上、放ってはおけない。
「梅盛の気持ちもわかるが何処に向かったかわからねぇからな……結局Dボゥイ達もどっかに消えちまうし……」
無論それは翔太郎も同じである。しかし所在がわからない上、現状の戦力では厳しいと言わざるを得ない。それに加えDボゥイ達の捜索もしたい所ではある。そういう意味では源太と翔太郎(+フィリップ)の2人(3人)で散策すべきという考えもある。
だが一方で警察署にいるヴィヴィオ達を放置できないという問題もある。
ダグバあるいはガドルがそちらに向かった可能性もあり、エターナルやダークプリキュア、更には未知なる危険人物が現れる可能性は否定できない。
それを考えるならば全員で警察署に向かう事も考えた方が良いだろう。
「時間もそう多くねぇしなぁ……」
――全く、頭の痛い話だ……そう思っていたその時だった――
『◆◆――、◆◆――』
妙に籠もったような声の様なものが聞こえてきた。
「ん? 何だ今のか?」
「あたしの……こいつは姫矢の兄ちゃんのか……」
そう言って、杏子は自身の持つデイパックの1つを探る。
さて、翔太郎と杏子は姫矢の所持品、つまりは姫矢と血祭ドウコクのデイパックを回収しこの場所まで駆けつけた。
結局、戦いの最中で翔太郎と杏子の間で何度もデイパックや支給品のやりとりをして最終的に2人のデイパックは杏子の手に渡った。
実は――姫矢の支給品の中にとある物が入ったケースがあった。
そのケースはこの地において開けられた事はあるもののそれ以後ずっと閉ざされたままだった。
翔太郎達も確認したとはいっても説明書きも無く、他の支給品の確認等もあり結局ケースの方は開けなかった。
だがナスカ・ドーパントとの激闘による衝撃で――ついにそのケースが開かれたのだ。
その時に中の物、いや『奴』とでも言うべきかそいつが飛び出した――
『奴』がケースを飛び出した時、戦いの音を耳に為た。
詳しい事は不明だがとてつもないものが起こっている事は理解した。
それ故にこれ以上黙っているわけにはいかない、故に状況を把握すべく声を発したのだ――
そして、杏子がついにそれを取り出す。
「何かのデバイスですか?」
「外道衆が持ってそうな奴……とは少し違うか?」
「なんか魔法が使えそうな気がするぜ」
「何言ってんだあんたら……」
思い思いの感想を口にする4人を余所に――
『よう、あんたは確か……アンコだったか?』
指輪――魔導輪ザルバが遂に参加者と接触を果たしたのだ――
無論、それぞれに思う事はあるが、まず最初に思ったのは――
「「「「指輪が喋ったぁ!?!?!?!?」」」」
――次の放送まで後15分を切った状況、決断を迫られていた俺達だったが、それを決める新たな材料が現れてしまった。喋る指輪との接触、それは新たな何かとの出会いを予感させるものだった――
【H-8/市街地】
【左翔太郎@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、照井、霧彦の死に対する悲しみと怒り
[装備]:ダブルドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ガイアメモリ(ジョーカー、メタル、トリガー)、ランダム支給品1~3(本人確認済み) 、
ナスカメモリ(レベル3まで進化、使用自体は可能(但し必ずしも3に到達するわけではない))@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損、使用には問題なし)
[思考]
基本:殺し合いを止め、フィリップを救出する
0:魔法の指輪か!?
1:全員で警察署に向かう? 源太と共に街を散策する?
2:あの怪人(ガドル、ダグバ)は絶対に倒してみせる。あかねの暴走も止める。
3:仲間を集める
4:出来るなら杏子を救いたい
5:泉京水は信頼できないが、みんなを守る為に戦うならば一緒に行動する。
[備考]
※参戦時期はTV本編終了後です。またフィリップの参戦時期もTV本編終了後です。
※他世界の情報についてある程度知りました。
(何をどの程度知ったかは後続の書き手さんに任せます)
※魔法少女についての情報を知りました。
※姫矢の死を知りません。
【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、ソウルジェムの濁り(小)、自分自身に対する強い疑問、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×4(杏子、せつな、姫矢、ドウコク)、魔導輪ザルバ@牙狼、
リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕+リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ランダム支給品0~3(せつな0~2、ドウコク0~1)
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、人を守った後死ぬことで贖罪を果たす 。
0:アンコじゃねぇぇぇぇぇ!!!
1:ボンクラ(アインハルト)と共に警察署に向かい孤門一輝という人物に会いに行く。またヴィヴィオや美希にフェイトやせつなの事を話す。
2:自分の感情と行動が理解できない。
3:翔太郎に対して……?
4:あたしは本当にやり直す事が出来るのか……?
5:美樹さやかも参加している……?
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※彼女の行動はあくまで贖罪のためであり、自分の感情に気づいたわけではありません。
※姫矢が死んだのはネクサスの力による消耗のせいだと考えています。
【梅盛源太@侍戦隊シンケンジャー】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、後悔に勝る決意
[装備]:スシチェンジャー、寿司ディスク、サカナマル@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:支給品一式、スタングレネード×2@現実、パワーストーン@超光戦士シャンゼリオン 、 ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ
[思考]
基本:殺し合いの打破
0:新手の外道衆か!?
1:全員で警察署に向かう? 翔太郎と共に街を散策する?
2:あかねを元のあかねに戻したい。
3:警察署に戻る場合、また情報交換会議に参加する
4:より多くの人を守る
5:自分に首輪が解除できるのか…?
6:ダークプリキュア、エターナル、ダグバへの強い警戒
[備考]
※参戦時期は少なくとも十臓と出会う前です(客としても会ってない)。
※丈瑠が既に死亡している事を察しました。
【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:魔力消費(大)、ダメージ(大)、疲労(極大)、背中に怪我、極度のショック状態、激しい自責
[装備]:アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ、T2ヒートメモリ@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式(乱馬)、ランダム支給品0~2(乱馬0~2)、水とお湯の入ったポット1つずつ、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[思考]
基本:???????????
0:新手のデバイス!?
1:アンコさん(杏子)と共に警察署に向かいヴィヴィオと話をする。その後の事はヴィヴィオに委ねる。
2:乱馬の頼み(ヴィヴィオへの謝罪、あかねを止める)を果たす。
[備考]
※スバルが何者かに操られている可能性に気づいています。
※なのはとまどかの死を見たことで、精神が不安定となっています。
[全体備考]
※箸袋コレクション@超光戦士シャンゼリオンはH-8での戦いで散り散りになりました。
※ドウコクの不明支給品の1つはグリーフシード@魔法少女まどか☆マギカでした。なお既に杏子によって消費済みです。
※ぜつなの死体はG-8のビル内部に移されました。
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最終更新:2013年03月07日 14:05