カスタマーセントリックの銀行経営












この本は2018/6/29に最新版が出ています。
このページの解説は旧版のものになります。

○銀行は営利企業、なんでも顧客の言うとおりにしていたら企業としてなりたたない。(某銀役員)

  • これまで~大量に売りさばく
 例)社長にカードローン10人分のお願いセールス
  • これから~顧客を正しく理解し、戦略を展開

○銀行員らしくなるとどうなるのか→もはや「顧客」になれない
  • 固定観念がある~3時でしまるのは当たり前
  • 知りすぎている
  • 生活水準・環境が違う
 他行を利用してみる暇がない
 →一消費者として利用する機会が最も少ないのが銀行員

○データベースマーケティングの限界
  • 顧客属性・行動結果はデータベースで分かるが、ニーズ、意思決定の過程、態度は分からない。→直接聞くしかない
  • CS=利益、ではない。CSだけでは不十分

○顧客ニーズを無視したセグメンテーション
  • 例)資産10M超/3M~10M/3M未満
→これから~金融商品への興味が強い、スタンス・価値観によって顧客をセグメント分けすべき

○トランザクションデータ
(預金入出金、残高照会 等)
  • ATMの時間外手数料が絶対にイヤで、「時間内」にしか使わない人
  • 総合口座貸越がマイナスになっている人、逆に絶対にマイナスにしない人
  • 退職金
  • 勤め先(給振)
  • セグメントに利用できるのではないか、という研究の余地あり

○多くの顧客が「金利のファン」

○ 株式運用する知識のある顧客(×)→銀行ではなく証券会社へ行く
  • 興味があるが、知識がない→こちらにアプローチすべき

○自動車ローン
  • 「普通メールオーダーっていったら、郵送で全部済む。」「申し込みは出来るけど、品物受け取るのにお店に行くなんて聞いたことがない」
  • ローン申込時の見積もりのコピー→どの車を買うかなんて決めてない。
「いくら貸してくれるかで車を決めようと思っているのに・・・」














この論文は、日本の銀行(邦銀)が顧客情報を活用して顧客セグメンテーション戦略を実施してきたが、その限界について論じています。主な内容は以下の通りです。

1. 背景と問題点
情報技術の進化と銀行業の変化
1990年代以降、情報技術の進歩により直接金融が発展し、銀行の伝統的な預貸業務の収益性が低下。
個人リテールビジネスの重要性
収益性の低い法人融資から、個人向けビジネスへシフト。しかし、顧客の多様なニーズを把握できず、セグメンテーション戦略の課題が顕在化。
2. 顧客セグメンテーション戦略の課題
不適切な顧客分類
銀行は「富裕層(上位20%)」に重点を置き、その他の顧客層(80%)を軽視。
しかし、富裕層は流動的であり、固定化された顧客モデルでは将来的な成長機会を逃す。
CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の失敗
顧客情報を収集しても十分に活用されず、適切なマーケティング戦略につながっていない。
短期的な視点
既存の収益性の高い顧客に依存し、将来的に収益を生む可能性のある顧客を育成する視点が欠如。
3. 顧客エンリッチメント(CE)戦略への転換
ポートフォリオ管理の導入
顧客を「富裕層」「準富裕層」「資産形成層」「マス層」などに分類するのではなく、ライフステージや金融行動の傾向に応じたポートフォリオ管理を行う。
金融機能の選好に基づくアプローチ
顧客を「投資志向」「借入志向」などに細かく分類し、それぞれに適したサービスを提供。
将来的な顧客価値の評価
現時点での資産額ではなく、将来の取引拡大の可能性を考慮した長期的な関係構築が重要。
4. 実施上の課題と提案
個人信用情報の活用
米国ではクレジットスコアリングが発達しており、リスクを適切に管理しながら収益性の高い貸付を実現。日本でも、個人信用情報の活用を進めるべき。
クレジットカード情報の活用不足
顧客の購買履歴や信用情報が十分に活用されていない。
セグメンテーションの柔軟性向上
短期的な利益を重視するのではなく、顧客の成長とともに銀行も成長する戦略(CE戦略)を採用すべき。
5. 結論
硬直化した顧客セグメンテーション戦略ではなく、顧客の成長とともに銀行も成長する「顧客エンリッチメント(CE)戦略」が必要。
顧客情報の収集・分析の精度を向上させ、長期的な収益性を考慮したマーケティング戦略を構築することが求められる。
この論文は、日本の銀行が現在採用している富裕層中心のセグメンテーション戦略の限界を指摘し、顧客全体のライフサイクルを考慮した新しい戦略の必要性を提案しています。
最終更新:2025年02月02日 13:21