1、マーケットとは何か
マーケットは不思議で魅力的な世界で、ある状況で有効だった理論が別の状況では機能しない。このマーケットの複雑さの原因は、偶然性もしくは不確実性という性質にある。
ランダムウォークでは、市場は100%偶然に支配されると結論付けている。
それに対し行動
ファイナンスは、偶然性にかなり影響を受けるが完全に支配されず、何らかの法則性を持っていると考える。
もし市場に関して何らかの法則性やトレンドを見出すことが出来れば市場平均よりも超過リターンを得ることが可能であり、それを見出すのが行動ファイナンスの意義である。
2、ランダムウォークの欠点
2-1 ランダムウォークと現実の相場の相違
ファットテール現象
実際の相場の変動は正規分布に近い。しかし細かく見てみると、わずかに上昇する頻度が多く、大幅に価格変動(特に下落)する頻度も多い。この現実の相場の分布をファットテール現象という。わずかに上昇する頻度が多い理由は、多くの投資家は最初に「買い」から始め、次に「売り」という行動にでるため、「買い」と「売り」が対等ではないからだと言われている。大幅な価格変動が起きたときに投資家はパニックを起こし、価格変動はさらに増幅されるという説明がされる。
市場の効率化のプロセス
市場が非効率な場合、合理的投資家が參入してくる。高いリターンを上げる合理的投資家が勢力を拡大し、非効率な部分が少なくなるので合理的投資家の収益は低下する。やがて高度な分析体制が維持できなくなり、インデックスファンドなどのパッシブ運用に資金が流れ、合理的投資家が撤退してゆく。合理的な勢力が衰えると市場の非効率性が拡大してゆき、やがて合理的投資家が再び參入する。
2-2 ランダムウォークの仮定
ランダムウォークが成立するには以下の3つの仮定をおく。
第一に、全ての人間は金銭的利益を最大化するよう行動する(合理的投資行動)。合理的投資家はリスクとリターンを勘案して、最も効用の高いポートフォリオを作成する。これに対する主な反論は、「すべての投資家が合理的とは限らない」というものである。しかし、一部の投資家が合理的に投資行動をしなかったとしても、合理的投資家が価格形成に大きな影響力を持っていればランダムウォークは崩れない。また、非合理な投資家が全くバラバラで特定の傾向を持ってない場合は、お互いに打ち消しあって不規則な動きをするのでランダムウォークは崩れない。しかし、もし投資家達に非合理な特定の行動を引き起こす共通の人間心理があれば一体どうなるだろうか?
第二に、相場を変動させる情報は、瞬時にマーケットに広がる(情報コストがゼロ)。これに対して、「すべての情報が瞬時にあまねく伝わることはない」という反論は第一と同じ理屈が当てはまる。重要な情報を正しく把握している投資家が主導権を握れば問題なく、不正確な情報を得て不正確にしか解釈できない投資家がいても、投資行動に偏りがなければ問題はない。しかし、もしゆっくりとしか伝達されない情報があればどうなるだろうか?
第三に、取引コストがゼロという条件は、実際の市場は取引コストが低く、ランダムウォークが崩れるほどの取引コストは発生しない。ただし、パニックなどで、取引コストが増大すればどうなるだろうか?
実際のマーケットでは、3つの仮定に反する投資行動が見られる。このEMHでは説明できない部分を分析するのが行動ファイナンスの役割だといえる。
まとめ
ランダムウォークの仮定と反論
① 情報コストがゼロ
⇒ゆっくりとしか伝達されない情報があればトレンドが形成されるかもしれない
② 取引コストがゼロ
⇒パニックなどで取引コストが増大すれば・・・
③ 投資家が合理的に行動する
⇒投資家は非合理であり且つ投資行動の偏り(バイアス)が強い
ランダムウォークと現実の相場の相違
① 価格変動が正規分布に近いが、わずかに違う。(ファットテール現象)
② 効率化のプロセス
結局のところ、効率化のプロセスが必要なためアクティブ運用は消えることがない。また、人間にはオーバーコンフィデンスがあるためにアクティブ運用に手を出す人が多いのかもしれない。
最終更新:2025年01月18日 14:15