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 カナンでの軍の立て直しに思わぬ時間を割いたためにリュナン、リチャード、ホームズらとは若干遅れているのがセネト・セーナ軍。唯一の救いは女神ユトナの助けで風の迷宮の敵もいなくなっているからである。とはいえ、まだ風の迷宮の詳細がわかっていないのでどう進軍すべきか戸惑っていた。まずセーナはダンジョン探検のスペシャリストでもあるシャルを迷宮に進ませて、邪神の祭壇への最短経路を探させようとしたのだ。シャルは手勢60人をフルに使って風の迷宮へ侵入。数日かけてついに邪神の神殿への最短経路を見つけ出した。すぐさまセネトとセーナが断を下して進軍が再開された。先鋒は探索中に双方が話し合った通り、セネト軍のゼノンが任じられた。馬を下りても彼の膂力は十分過ぎるものがあるために同じく黒騎士団をまとめるシルヴァと共に最後の決戦に向けて在陣している。一方のセーナ率いるグリューゲルは魔道士の割合が多く、ゼノンに並ぶほどの豪の者がいないために先鋒はすんなりと決まったのである。ついでに2番手はゲインとシルヴァが務めている。
 シャルの機転で探索を終えた直後に最短経路にセーナ特製の灯篭を置いてあったためにセネト・セーナ軍はすんなりと邪神の神殿に着くことができた。しかしそこにはすでに悲劇が始まっていた。


 邪神の祭壇にはすでに生気の抜けた3人の少女の姿があった。そして祭壇の隅にはティーエとグエンカオスが何やら押し問答をしていたが、やがてグエンカオスがジャヌーラを放つためにやや間合いを空けて詠唱を始めていた。
「いけない!」
すでに到着していたセーナからは何が起きていたのかはよくわからないが、祭壇から聞こえた会話が途切れたことからガーゼル降臨の準備が整ったことを察した。
「後続を待ってることはできない。ミカ、これから扉を開けるから、あなたはすぐにワープの魔方陣を祭壇の手前に作りなさい。『あれ』を使って、祭壇をまとうバリアを破壊するわ。」
セーナとミカは第三陣、そしてその間にテムジンとカティナがいて、最後にセネトとレシエが続いている。セーナがガルダで開発したアンロックの杖を取り出して、鉄格子の鍵を解こうとした。詠唱に集中して、アンロックの杖が輝きはじめる。
 その時、アフリードのワープによってリチャードがティーエとグエンカオスとの間に現れた。彼は果敢にグエンに戦いを挑んだが、やはり賢者ローゼンバッハらを倒してきた闇魔法ザッハークの威力は凄まじく、やがてリチャードも力尽きることに。しかし彼は最後の力を振り絞って、ティーエの戒めを解き、そして復活した聖剣レダを彼女に託してついに息を引き取った。リチャードの本当の心を知ったティーエはここぞとばかりにグエンに猛攻をしかけた。さすがに聖剣の威力は凄まじく、いよいよグエンカオスを追い詰めた。あと少しでガーゼルが降臨せずに全てが終わるところだったが、しかしグエンはエンテ、ネイファ、そしてカトリの力だけでガーゼルへと変貌しようとしていた!もちろんティーエもそれを止めようと果敢に攻めたが、謎のオーラに守られて逆に弾き飛ばされてしまう。そしてそのオーラが一気に散り、その中から邪悪なる暗黒竜ガーゼルがついに姿を現した。それを三方向から見ていたリュナン、ホームズ、セーナはほぼ同時に唸った。
『あれが・・・ガーゼル。』
まず最初に行動を起こしたのが、セーナだった。アンロックで東の鉄格子を解除して、すぐさま南のリュナンの元へと向かった。一方でシャルにもう一本あるアンロックの杖で西の鉄格子を開けるために向かった。そしてミカは巨大な魔方陣を描いて、何やらワープで呼び出そうと詠唱を始めた。それを残るガーゼル軍が傘にかかって襲い掛かってくるが、ただちにゲインによって蹴散らされる。やがてセネト自身も追いつき、テムジンらから事情を知ったセネトは一時ネイファを失ったことから我を失ったが、今はそんな場合ではないテムジンに喝を入れられたセネトはすぐさま落ち着きを取り戻して祭壇へと向かって行った。まずはシャルによって西の鉄格子が開けられてホームズ軍が、そして南の鉄格子がセーナによって開けられリュナン軍が堰を絶った水のように流れ込んだ。そして東では巨大な大砲がその姿を現していた。
「ミカ、あなたの魔力を借りるわ!!」
セーナの叫びを聞いたミカはその大砲に己の魔力をつぎ込んで、祭壇にその砲口を向けた。この大砲は正式名称は魔導砲。その名の通り、魔道士の魔力をつぎ込み、魔導砲によって凝縮されたモノを一気に発射するものである。ガルダ島にてセーナが開発した『秘密兵器』である。ただし開発したてで耐久性に疑問があるのが唯一の難点。しかし今はそんなことを言っている暇はない。強烈な爆裂音と共に魔導砲が轟き、ミカの凝縮した魔弾は祭壇の魔力にめり込んで、そして破壊した。その余波がティーエを襲ったものの、途中のオープスがクッションとなって助かり大事には到らなかった。そしてリュナン、ホームズ、セネトが祭壇に踊り出る。

 全ての魔力を解放して崩れたミカを支えているセーナは鞘から神剣ファルシオンを取り出して祈った。
「ファルシオン、力を貸してね。」
それに応えるかのようにファルシオンに聖なる光がまとい始めた。
「ありがとう、ファルシオン。・・・・・・ゲイン、ミカと魔導砲を死守しなさい!私は祭壇に向かいます。」
「承知!!」
ゲインの返事を確認したセーナは単騎祭壇に向かって行った。しかしファルシオンはこのリーベリアでは銀の剣より少々強い程度の威力しか発揮できない。それは神々との間でかわされた『大陸不干渉の法』が原因である。セーナのいるユグドラル大陸と、リュートらが出身のアカネイア大陸は光の神ナーガの範囲。しかしこのリーベリアでは知っての通り、女神ユトナの範囲であるためにナーガ圏の神剣ファルシオンの効果が薄れるのだ。それは特に暗黒竜ガーゼルとの戦いに表れるという。セーナは聖魔法ナーガを継承した時にそれをナーガから教えられているためによく分かっている。なので積極的に戦いに参加するつもりはないが、暗黒竜随一の攻撃力を持つガーゼルの攻撃を一身に受けようと考えているのだ。
 セーナが祭壇に登ると、すでにリュナンらがガーゼルに斬りかかっていた。ティーエからのエネルギーを吸わなかったためにまだ全力を出し切れずにいて、4人にいいように斬られていた。するとガーゼルがふと闇のブレスをティーエに向けて放った。先程の魔導砲の余波や長い戦いの疲れから一番衰弱していたのがティーエであった。いくら聖剣の加護があっても今のティーエには厳しい状況だった。ちょうど不覚を取られたティーエはもはや避けるすべはなかった。まさに闇のブレスが直撃しようとするその時、彼女の手前に同じ位の影が立ちはだかった。セーナだ。彼女がティーエの前に立つや、ファルシオンに祈りを込めた。すると2人を覆うように柔らかい光が広がっていった。やがて闇のブレスが到達するもその光によって威力がほぼかき消された。ブレスが収まったことを知ったらセーナはすぐにティーエの元に振り返って、リカバーの杖をかけた。そうしながらアドバイスを与えた。
「散発的な攻撃はガーゼルに隙を与えるわ。4つの聖剣の力を合わせてこそ、光を導けるはず。」
これはファルシオン復活の際に、ユトナがセーナに託した言葉である。初めて会うセーナの言葉だが、ティーエは疑うことなく頷いて、それを伝えにリュナンたちに向かって行った。
 ようやくカーリュオンの末裔による大反撃が始まる!

 

 

 

 

 

最終更新:2011年07月17日 02:30